4,変化
第四話です。楽しんでいただけたら幸いです。
「________という訳なんだけども」
菜月旗のことについて説明し終わる。
正直少し怖かった。この話を聞いたら友達やめるんじゃないかなって。
でも、全然そうじゃなかった。
癒漓は悲しそうな顔をした。
「そうなんだ。なんか、私にはわかんない。でも、苦しいのは分かる」
そう言って笑った癒漓を羨ましく思う。
普通の家庭が良かったな・・・・。
「じゃあ、菜月旗呼ぼうか?」
「お願い」
「ん」
菜月旗の部屋へ向かう。
そういえば、しばらく話してなかったなあ。
そんな事を思いながらノックする。
「菜月旗ー?」
しばらくしてから扉があき、菜月旗が出てくる。
「何?お姉ちゃん。珍しいね」
「ちょっと聞きたいことがあって」
「何?」
「こっち来てくれる?」
案外すんなり受け入れてくれた菜月旗と共に戻る。
わたしの座布団の隣に座布団があった。
案外気が利くんだな。
そう思って癒漓を見ると案の定緊張している様子だった。
「誰、この人」
「友達」
何かいってくると思ったが想定外の事を菜月旗はいった。
「お姉ちゃんってほしがりだね」
皮肉、だろうか。仕方ないことなのかもしれない。
「こんにちは」
癒漓が言い出しずづらそうに言う。
「どーも」
「じ、自己紹介しとく?」
「そういうのいいから。早く話して」
この場に流れる、いや~な雰囲気。
私は空気をかき混ぜるように話す。
「菜月旗、桜餅作ったよね?」
「それが」
「最初から最後まで作ったの?」
「いや、葉っぱ巻く作業だけ」
・・・となると、表面にしか毒は入れられない。しかし、怪しい所は特になかった気がする。
「何でそんな事きくの________ちなみに私、毒入れてないから」
バレてたんだ。
癒漓は慌てたような表情をしていたが、私が頷きかけると落ち着いた表情に変わった。
「だって、毒入れて自分で食うなんてバカなことはしないし、隠すためだったら、紅葉とか阿善に見つかる。私に毒を入れる隙なんかない。やったとしたらあの二人だと思うよ」
「ありがと」
彼女の発言は本当ぽかった。
菜月旗を帰らせてから二人で話す。
「嘘ついてた可能性は?」
癒漓が最初に聞いてくる。
「ほぼない。嘘ついたとしても私達が紅葉とかに聞いたら一発でバレて犯人だと思われるだけ」
「そっか。グルの可能性は?」
「そっちもない。菜月旗の性格上、群れるのは好きじゃないし私に恨みがあるなら私の召し使いの仲間にはならないと思う」
「そうかなあ」
「うん、毒の入手は出来ないと思うし」
「じゃあ、紅葉さんか阿善さんだね」
立ち上がろうとすると、癒漓が言った。
「悲しくない?」
「え」
「私ならいつもあってる人が自分をもしかしたら_______。・・・悲しくて、怖いよ」
そんな事考えたこともなかった。確かにそうなのかもしれない。
何だか、まぶしい。 何でだろう。人間らしさ、かな。私はどこか抜けている気がする。
「大丈夫。怖くないから」
「そ、う」
「うん」
笑顔を見せるのが最適だと判断し、ニッコリと微笑む。
安心したように癒漓はお茶を煽った。
正直、犯人を見つけられる気はしていない。
しかし、これで癒漓と仲良くなれるのなら、有意義な時間だ、と思う。
そんな事を考える。それから阿善の事を考える。
そんなに関わりは無かったよなあ、乳母の紅葉や妹の菜月旗と違って。
まあ、そんなもんだと思うけど。
「阿善?」
「何ですか?」
何度も押し掛けて迷惑だろうに、阿善はニコニコしている。悪い人ではないように感じる。まあ、人を表面だけでは判断してはいけないのは理解しているが。
「今から話せる?」
「・・・申し訳ありません。今は、少し・・・」
「そう、いいのよ、別に」
「本当に申し訳ありません。ちなみに何の話だったんですか?」
「さっきの桜餅の話」
「あ、後で話は聞きますので」
「もういいわよ」
「そ、そうでございますか」
「うん」
それから、厨房を出ようとする_________その時だった。
「あ、あの__________」
一人の料理人が話しかけてきた。
たしか、この人は山口だったっけ。
「料理長と桜餅について話してましたよね」
「ええ、少し桜餅を作ったときの事等を聞きたくて」
「やっぱりそうですか」
そう言って山口はにっこりと笑った。
「実は、桜餅を作ってるときにビデオを撮っていまして」
「え__________?」
「料理を作る際に参考用に料理長の調理を撮っているんです。こうすることで、料理の腕の向上を見込めますので」
「そう、ですか」
「み、見ますか?」
「見ます」
「ど、どうぞ」
そういわれ、スマホを差し出される。
「いいんですか、スマホ」
「はい、このスマホ撮る専用なので」
「そうですか」
「はい、どうぞ」
「後で返しますので」
そう言って、スマホを手に癒漓が待っている部屋へ向かう。
その時、私は気づかなかった。自分がうっすらと微笑んでいて、ヒントを掴んだことを嬉しく思っていたことを。






