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2,気持ち悪い

第二話です。楽しんでいただけたら幸いです。




布団のなかで寝返りをうつ。

暇だなぁ。

そう思いつつも安静にしなければならないのはわかっている。


がいつ効き始めるのか分からないのだから。




実は、5時間前くらいだろうか。

紅葉が突然倒れたのだ。すぐに医者を呼び、原因を調べた所毒によるものらしい。

詳細には教えてくれなかった。紅葉だけではない可能性が高いため一旦、屋敷全ての人間が休んでいる。

症状が出てきた場合、すぐに対処できるよう医者は数人よんでいるらしい。





今はそれよりも紅葉が心配だった。














________数日後_________



















私も症状が出た。だが、即座に対処されたので2日もあれば完璧に治った。が、念のためもう一日寝込み、本日ようやく解放された。


久方ぶりに学校に行く。






無言で教室に入り、席につく。

雰囲気から察したかもしれないが、私は教室で馴染めてはいない。

一番の理由はやはり、「あのとき」だったろう。

小一の時だった。初めての友達を家によんだ。友人が家に入ろうとしたその時だった。






「まあ!寧音、そのかたが学友?」





「そう、だけど」





その時私はビックリした。だって、お母様の友達を見る目が塵を見るような目だったから。





"パシーン!!"





「・・・っ!!」





響き渡る、お母様が当時の私を平手打ちする音。

あの時の音とお母様の顔は忘れられない。






寧音ねね!!あなたは莉鶴鹿りづるか家の自覚を持ちなさい!!こんな庶民を学友にすることは許されません!!!」







何で?私は友達も選べないの?習い事なんて辞めたかった。堅苦しい食事も嫌いだった。召し使いなんかいらなかった。車での学校通学も嫌いだった。学校の授業で学ぶことが無いことも、ろくに外出が出来ないことも言葉使いを強要されることも、全部全部我慢したのに友達も選べないの?何で、私だけ。何で、私だけ________。



そう、言いたかった。叫びたかった。でも無理だった。これを言って何かを失うか、我慢するかどっちがいいかわかっていた。分かってしまった。

結局溢れたのは涙が少しだけだった。

ここぐらいからだったけな、感情を表に出すのが苦手になったのは。






「早く出ていきなさい」






友達は強制的に追い払われた。泣きながら帰っていった、その後ろ姿。余計に涙が溢れた。






「何泣いているんです?さっさと立ち上がりなさい。服が汚れてしまうわ」





あまりにも無慈悲なその言葉。

やっぱり、やっぱりお母様は私の事は「娘」ではなく、「跡継ぎ」として見ていた。何となく分かっていたけど、やっぱり苦しくて悲しくて心にぽっかりと穴が空いてしまったかのような、そんな感じ。






次の日学校に行くと、誰が見ていたのだろう_______「寧音の友達になると半殺しにされる」という噂が流れ始めた。そして誰も私に近寄らなくなった。悲しかったけど、それ以前にあんなことにはもうなりたくない、という思いから何だかどうでもよくなった。周りの声も、目線も_______







「寧音っ!!お早う!!」







と、物思いに耽っていた時に話しかけられ、現実に戻される。


彼女は隣の席の赭津輝あかつき 癒漓ゆりという人だ。

妙に馴れ馴れしく、よく話しかけてくる。

もちろん、仲良くなる気はさらさらない。





「莉鶴鹿んとこ、毒がご飯に入ってたんでしょ?お母さんが言ってた」





「・・・そうだけど」





準備をしながら言う。





どこから噂が広がったんだか。






「やっぱり、そーか!!最近、休んでたもんね!!」





嬉しそうに告げる、癒漓に吐き気がする。





気持ち悪い、気持ち悪い。





何だか、「あの」時から学校の人間や、大人達が話しかけてくること、こっちを見ることが気持ち悪く、そしてうざったらしくなった気がする。

雄一例外として妹や紅葉、昔からいる召し使い等は気持ち悪くない。







「ドラマみたいだよね!!」






この言葉を聞いた瞬間、言葉が勝手に出た。






「ドラマみたい、とか簡単に言わないで。毒のせいで苦しんだ人がいるのにそんな事言わないで。そんな事言うなら、自分で毒食ってみなよ」





わかってる。別に悪い意味で言っていないのは。でも勝手に出た。

しばらく、無言だった。顔を見る勇気は私にはなかった_________。











次の日、学校に行くと、席に癒漓が無言で座っていた。

昨日から話していない。少し悪い気がしたが、それは少しだけだった。





「あの、さ」






いきなり話しかけられ、ビックリする。







「・・・」







「昨日は、ごめん!!私、そんな事言うつもり無くて。でも、傷つけたんならごめん」







『いいよ、私こそごめん』




と、たった一言言うだけだった。なのに言えなかった。

癒漓はそのまま去ってしまった。追いかけるなんて出来なかった。


意気地無し。






一番、気持ち悪いのは自分だ_____________





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