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千薙木瀧雄6

センナギが革命軍に雇われ始めてからどれくらい経った頃か、ある日ギテンから呼び出された。彼の話では、とても危険な地に革命軍の旗頭が向かうのでその護衛をするという事らしい。呼び出された部屋では、旗頭のみならず軍の幹部やセンナギ以外の護衛を担う兵士や傭兵達も集まり、打ち合わせが行なわれた。

「後で内容は説明するから、とりあえず今は参加する仲間の顔を覚えてね」

ギテンからそう言われたので、何を言っているのかわからない会話について考える事はせずに、顔を覚える事に集中した。人数はそこまで多くないので、この場ではなんとなく顔を識別できそうだが、実際に外に出て大量の人に紛れたらセンナギには彼等を判別するのは難しそうである。何か特徴でも見つけられればと、それぞれじっと見つめていたら、彼等はセンナギを横目に見つつ困った様に近くの者とヒソヒソ話していた。

「そんなにヒトの顔を覚えるの苦手なの?結構真面目な話してたんだけど…君が変に圧をかけてくるせいで、みんななかなか話に集中できなくて、変な空気になっちゃったよ」

「…。仕方ないだろ、話の内容なんてわからないし。それにこっちだって、何か特徴でもあればと思って真面目に見てたんだけど。此処に慣れてるアンタには分からないだろうけど…今は確かに人数少ないからなんとなく見分けられるけど、この数でも街中とかで他人と紛れると見分けられる自信がない」

話が終わったのかと思ったら、どうやら休憩時間だったらしい。失笑気味に抗議しつつ、会議の内容を教えてくれた。

「まだ話の途中だけど、これまでの話の内容をざっと説明するとね、この国にいる他の派閥の組織のところに挨拶に行く事になったんだよ。何故かって言うと、ウチが取引してる情報屋から、その組織が捕らえた人質を自分達側の人間として再教育してからわざと政府側に救出させて、彼等からそれぞれ所属してる国や組織の情報を得ているらしいって話を聞いたんだ。それが結構有用な情報も集まってるんじゃないかって噂でね。ちなみに、その情報を得るのに相当な犠牲が出たとかで、物凄い吹っ掛けられたってさ。

まあ、余談はいいとして、其処は所謂過激派ってヤツで、ウチはどちらかと言うと穏健派寄りだし、考え方も相入れないところはあるんだけど…ウチは情報に関してはそんなに強くないというか…結構情報屋に頼ってるからね。資金的な意味でも、信頼度っていう意味でもそういう伝手は必要なんだよ。それにね、その相手組織は過激派って言われるだけあって、テロ行為とかなかなか激しいから、後々の事を考えると、あんまり敵対したくないっていうのもあるんだ。だから、協力関係は無理でも、敵対はしないよって約束を取り付けたくて、交渉人を送ったんだ。

そしたら、彼は頭部だけ戻って来てさ。しかもわざわざ本人の声を録音した機械が口の中に…っていう感じでね。箱が届いてさ、開けたら再生されてね、紐でスイッチが入るようにしてあったらしくて。"私の様な下っ端を使いに出さずに大将自ら挨拶に来い"だってさ。それで、急いで人選と召集、会議って流れらしいよ。まあ、君は部隊全体の被害を抑えつつ、ウチの大将を護るっていうのが仕事になりそうかな」

そんな説明を聞いた。彼等との協議を止めるという選択肢を取ろうにも、挨拶しないで変に目を付けられてしまうのを恐れる仲間も多いらしい。組織の幹部やら後援の連中の間で、とりあえず挨拶だけでもして余計な荒波を立てないでおこうという決定が出たとの事である。

「そんなに危険な組織なのか?」

だったら、旗頭の身代わりを用意するとか、その右腕か左腕みたいな立ち位置の人間でもいいのではと思ったが、ギテンはこれにはかぶりを振った。

「残念だけど、あの組織は…全然良い話は聞かないね。彼等は自組織を大きくする為に他の革命組織を襲ったなんて噂もあるよ。捕虜に対しても人道的な扱いは一切しないとか…。でも、彼等はこの国で1番政府とぶつかってる組織でもあるんだよ。あの人達みたいな苛烈なやり方はどうかとは思っても、今の政府は良くないって考える仲間が増えたのは彼等がいたっていうのも大きい。彼等とは全く対話できないって事は無い…と思うんだ」

そう言いながら、ギテンは少し難しい顔をする。その過激派組織について考えているのか、それとも彼等との対話に参加しなければならない自身や旗頭の身を案じているのか、センナギには全く分からなかった。

「…それに、ウチは大将の元に人が集まったっていう組織じゃなくてさ、現政府のやり方に反抗した国の有力者達の一部が後援という形をとって革命軍を組織して、その際に旗頭として選ばれたのが大将なんだよ。そういう意味で最悪頭の挿げ替えはできるから、身代わりとか必要とされないし、下手に大将以外の者を使いに出して攻撃の的にでもされたらって考えたら畢竟、ウチの大将が出ない訳にはってなるんだよ」

有力者達にとってはそこそこ民衆から支持を得て、自分達の言うことも聞くというのが人選の際の条件だったらしい。こんな所にも哀れな人間がいたのかと、センナギは服の上から携帯電話に手をやり握りしめた。ギテンは諦観混じりにため息を漏らす。

「ウチは強力な力を得て、ようやくちょっとずつ大きくなり始めてるからね。ここであのアドゥレスカと協力…とまではいかなくとも、何かしらの取り決めを作れれば、名が上がる。協力者が増えて、今の後援者達に意見もできる様になる…」

休憩時間が終わり、会議が再開されたが内容が全く分からないセンナギは、引き続き顔を覚える事に専念した。後半は主に隊列の配置決めを行った様である。センナギに関しては「とりあえず私のそばにいれば大丈夫」とだけギテンに言われた。最近はもうギテンの隣が定位置の様な扱いになっているようだ。それから、護衛の優先度が高い人を紹介すると言われ、彼に付いて旗頭、交渉を行なう政治参謀、部隊の作戦指揮官などの面々と挨拶を交わした。ギテンは気を回して彼等を覚えやすい様に特徴も教えてくれた。

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