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森翡翠
私は特殊なチカラを持っている。
物心つくかどうかというくらいの頃、祖父母の家に泊まりに行くと、決まって夢の中で何処までも長く棚引く光の霞の様なものを見た。
最初は自分の立つ場所のずっと下方にあり、手は足の下に伸ばせるのに足がその立ち位置を地面として認識しているのか、降りる事ができなかった。キラキラと煌めく光のオビをもっと近くで見たかった私は、座ってみる、逆さまに立てるか等トンチの様なことをあれこれ試しているうちに自分の固定観念の問題であると思い至り、光の直ぐそばまで近寄ることができるようになった。
近寄れるようになると、触れたくなるもので、ついその光に触れてしまった。光は私の身体へ流れ込み、以降、他の人は使えないような不思議なチカラが備わったのである。
そして今、銃口をこちらに向けて立て篭る男達を前に、私はそのチカラを行使すべきか悩んでいる。