モブの俺が現代社会に転生しました〜王弟は無自覚にやらかしている〜
連載の気力がなく、思いついたネタを勢いでまとめたものになります。
モブと思っている主人公が乙女ゲームの世界から現実世界に転生して好きな人を溺愛する話です。
ほんのりボーイズラブっぽい要素があります。
「本当は、逃げてしまいたいよ。でも、逃げられない。私は、この世界の人たちを見捨てられない」
そうやって、独りで泣いた彼女を救いたくて、ただの木こりが、無茶をした。
口を開ける天災に、この身の総てを擲った。
生まれて初めて、世界に反抗した。
「…お初にお目にかかります、ソハールさま」
『お前は…そうか、お前が、私に【渡す】のか』
神が求めていたのは、無償の愛。
人間の汚辱に塗れた神は、人間の愛情に触れなければ、禍ツ神と成り果てるしかなかった。
わざわざ彼女を連れてきたのは、聖魔法を使える少女であるのと同時に、この世で一番美しい魂を持つ人間だったから。
彼女の魂を捧げれば、神は気を納める筈だった。
けれど、木こりはどうしてもそのことが受け入れられなかった。
彼女に生きていて欲しかった。
だから、木こりは生まれてからずっと使っていなかった魔力を身に纏い、彼女への愛を込めて……眼前に開かれた、神へと通じる門へと身を投げたのだ。
「っ、木こりさんっ!」
「兄様っ!」
名前くらい、教えておけば良かった。
そうしたら、最後の最後に、君に呼んでもらえたのに。
───貴女を、愛している
これは、呪いだ。
けして解けない呪い。
愛という、呪い。
***
麗らかな春。
さくら幼稚園もも組の教室の中で。
俺はそんな『ヘビー過ぎる過去』を思い出した。
「……なぁに?」
不思議そうに目を瞬かせる幼女。
これほど幼く、あの頃とは違っていても、俺にはこの子が、最期まで愛し抜いた女性であると分かってた。
自然と膝をつく。
まだ小さな手足では思ったような動きは出来なかったが、そんなことは関係なかった。
未だ頼りない手で、柔らかく可愛らしい彼女の手を取り───初めて、唇で触れる。
「あいちています。…どうか、おれと、けっこんちてくだしゃい」
園内は瞬く間に歓声に包まれたが、俺にそれを気にしている余裕はなかった。
その日の夜のこと。
「聞いてよ、あなた。今日、凛が幼稚園で女の子に告白したのよ」
「なんだって?可愛い子か?」
「そうね、愛らしい感じの子だったわ…でも、想像できる?私たちの息子が騎士のように膝をついて他所様の娘さんの手を取って…『愛しています、結婚してください』って言ったのよ」
「なんだって?!どこで覚えてきたんだ、そんなセリフ!」
両親の会話が頭上で交わされる中、俺はムシャムシャと夕食を片付けていた。
…昼間の出来事は、かなりセンセーショナルだったらしい。周囲の子供より側で見ていた保護者や先生達の方が衝撃を受けていた。
しかし、俺は気にしない。
齢3つとは言えど、俺には二十数年分の記憶が蘇ったばかり。
有り体に言ってしまえば、『前世の記憶』というやつだ。
前世の俺は、森の奥に引きこもり、俗世と離れた生活をしていた木こりだった。
そうなるまでにそれなりの経緯はあったのだが、今は思い返しても仕方のないことだ。
世界は神の恵みに溢れ、その恩恵によって、生かされていた。木こりの俺は毎日の糧を労せず得ることができたし、なおかつ時折訪れる可愛い可愛い甥っ子が差し入れをしてくれたから、のうのうと暮らしていけたのだ。
しかし平穏な日々は、太陽神の加護が失われ、国中が暗黒に包まれてしまったことで終わりを告げる。
太陽神ソハールは、人間に見切りをつけて、根絶やしにしようと考えたのだ。
そのせいで荒廃した世界のため、甥っ子は忙しくなり、森に立ち入らなくなったし、俺はますます森を出ることが難しくなっていった。
そんな現状を憂いた月神ルーミナが、ソハールに対する生贄を指し示した。
それが、マナ。王都を遠く離れた村外れに暮らす、ひとりの少女だった。
マナは不思議な少女だった。
俺より10近く年下だったが、あの世界を救おうと尽力していた。
俺とマナは偶然森で出会い…少しずつ、話をするようになっていった。
マナは、『わたしは本当なら、こんなことを解決出来るような人間じゃない』と言った。
『でもそれでも、私がやらなくちゃ、皆が死んじゃう。…そんなの、嫌だよ』
森の奥で一人で引きこもって生きてきた俺は、彼女のその痛々しいまでの世界への献身に胸打たれた。
そして、徐々に…惹かれていった。
マナは聖魔法を使えたが、それ故に暴走したこの世界の神と対決する際、その身を捧げなければならなかった。
それを怖がっていたのに、いざ森小屋に迎えに来ると、そんな弱音を封じ込めて毅然と立ち上がり、「ありがとうございました」とだけ言い捨てて去っていく。
そんな姿を見てから、俺は少しずつ彼女に会えないかと森をうろつくことが増えた。
そうしたら自然と彼女と会うことが多くなり、話すことも増えていく。
自然と惹かれていき、彼女を愛するようになった。
けれど、彼女の周りには、ちゃんと彼女を守ることができる人間がわんさかいた。
どうしようもなく臆病な俺は、自分の立場と世界を背負いこむ彼女に怖気付いて、何も伝えることが出来なかった。
けれど、最後の最後に、人間を切り捨てると宣言した神に対抗するには、『ほんの少し』力が足りなかった。
俺はその決戦のとき、こっそり王城の森を抜け出していた。
20年以上の間、破ろうと思えば破れた結界を叩き壊したのだ。
そして、神と向かい合ったマナ達の前に飛び出してそのまま神様の中に飲みこまれた。
最期の最期に自分自身が太陽神ソハールへの生贄になってしまったのだから、救えない。
…しかし、そう考えると不思議なことだ。
あのとき、俺は太陽神に総てを捧げた。
それはその時の身体だけではなく、魂と呼ばれる部分も含めてだ。
しかし、そんな俺の魂は今、ソハールの手を離れて別の世界に渡っている。
そして、3歳の幼児として、同じように生まれ変わったマナのいる世界で生きているのだ。
「…いったい、なにがおこっているのやら」
ぼそりと呟いてからお行儀よく「ごちそうさまでした」と手を合わせた俺に、両親は笑みを返してくれた。
…なるほど、これは生まれ変わった特典として享受しておきたいところだな。
「…おはよう、まなちゃん」
翌朝。
母親に連れられて幼稚園に着いた俺は、ちょうど同じくらいのタイミングで親と手を繋いだマナが門を通るところと出会った。
「あ…お、おはよ……」
少し照れたように返してくれた彼女に、俺の気分も上がる。
そしてそんな俺を他所に、母はマナの家族にマシンガントークを打ちかます。
「あらあらあら、おはようございます!
貴女が愛奈ちゃん?うちの息子に告白されたなんて、びっくりしたでしょう」
「ふぇ……」
「かわいい……」
今世の母は明るい人で誰にでも分け隔てなく話をする。それは俺とは異なる性質だ。
愛奈の母親は微笑ましいものを見る目で見ていたが、愛奈は戸惑っている。
とても可愛い。
守ってあげたい。
最期のあの時まで、俺は彼女に手を差し出す勇気を持てなかった。だから、今くらいは。
そう思って、俺は愛奈の前に膝をついた。
「え?」
「あら」
「えっ?!」
「…おどろかせて、ごめんなさい。よかったら、ともだちからはじめてもらえませんか?」
3歳児に、色恋を押し付けるなんて、間違っている。その上、結婚などと…昨日の俺はなんだかんだで激しく動揺していたのだろう。
距離や詰め方が間違えていたと、愛奈の困ったような表情を見て、ようやく気づけた。
「おれは、りん、といいます。りん、とよんでもらえませんか?」
「え、えっと…り、りん、くん…?」
愛奈は辿々しく、おれの名前を呼んでくれた。
…前世ではけして、彼女に名を呼ばれなかった。名前を告げることさえしなかった。
けれど今は、この一歩を踏み出すことができる。
「…ありがとう。これから、よろしくね」
昨日と同じように手を取り、彼女の手の甲に唇を落とす。
なぜか周囲が大きく騒ついたけれど、そんな些細なことは、この時の幸せを妨げるほどではなかったのだ。
愛奈と『友達』としての一歩を踏み出したこの日。
何か特別なことをした、というわけではないけれど、俺は愛奈がしたいと言った遊びに全て付き合った。
お絵かき、絵本、積み木、じゃんけん。
先生がピアノを弾く歌の時間になるまで、愛奈はよく色んなことに興味を持って俺を連れ回した。
…あの、いつも泣いていた子が、こんなに明るく走り回っている。
それだけで、俺は嬉しくて仕方がなかった。
愛奈にはこのまま、ずっと笑顔でいて欲しい。
「りんくんは、なにかやりたいの、ある…?」
こてん、と首を傾ける愛奈は、文句なしに可愛かった。
「まなちゃんといっしょなら、なんでもたのしいよ」
「そうなの…?」
そうなのだ。愛奈の笑顔があればなんだっていいのだ。そして、その笑顔が俺に向けられていたらそれだけで幸せになってしまうのだから。
「じゃあ…おままごと、する?」
「うん、いいよ」
おままごとが何であるかを知らないまま頷いた俺は、その後、こんなに幸せな遊びがあるだろうかと嬉しくて吐きそうになった。
*
前世の俺の母は、俺を産んだ時に命を落とした。
医療事情がこの世界よりも劣っていた、ということはあるだろう。治癒魔法はあったけれど、王族ならまだしも平民が手を出せるようなものではなかった。
つまり、何が言いたいかと言うと。
「びっくりしないで聞いてね、凛。貴方に兄弟ができるのよ」
今世の母の懐妊に、喜びより先に恐怖を覚えてしまった、ということだ。
母の妊娠が分かってから、俺は積極的に母を助けるようになった。
出産が大仕事だということは知っている。そして母体は出産までの間にも動き回って大変なのだ。
だから、ちょっとした外出でもけして手を煩わせないよう気を配ったし、この身体には大重量の扉を開け、危険物が無いかと確認することも怠らなかった。
「もう、凛ったら心配性ね」
「だって…」
クスクスと笑う母は二度目の出産ということもあってか、俺ほど警戒してはいない。父も母の身体を気遣ってはいるが、「凛が何でもしてくれるから、俺の出番が無いな」と苦笑するレベルだ。
「だって、これからおかあさんは、あかちゃんをうむんでしょ?その…とても、たいへんだから、だから…」
どうにか危機感を持ってもらおうと口を開くが、幼児として不自然でない程度の言葉を選び、尚且つ俺自身にはどうしようもない舌ったらずのおかげで、どうにも発言が甘くなる。
「ああ、分かっているよ。お前が一番気を使ってくれてるから、これ以上が無いだけだ」
本当だな、今世の父よ。
嘘だったら容赦しないぞ。
安定期に入り、母のお腹がだいぶ大きくなった頃。
「りんくんのおかあさん、おなか、どうしたの?」
「えっとね…じつは、こんど、きょうだいがうまれるんだ」
幼稚園で愛奈に問いかけられたとき、どきりとしながら、それでもワクワクが抑えきれなかった。
そんな俺に、愛奈はふわりと笑った。
「りんくん、たのしそう」
「…そう、かな?」
「うん…りんくん、うれしいんだね」
前世では弟妹なんていなかった。弟のように思っていた甥はいたけれど、それでも、弟というには少し遠い相手だったように思う。
「そっか…おれ、きょうだいがほしかつたのか」
そう考えれば、何かがすとんと体の中に嵌り込んだ気がした。
今までどれだけ過保護だと言われても母を守らなければと思っていた理由も、きっと俺の憧れが詰まっていたからだった。
「よかったね」
自分のことように、愛奈が笑ってくれる。それがとても嬉しくて、俺もまた笑顔になっていた。
「うん。ありがとう」
その時の俺は、数ヶ月後にあんなことになるなんて思ってもいなかった。
「…おい、うそだろ」
生まれた兄弟を前にして、俺は唖然とした。
前世から引き継いだ魂のお陰で、俺は人間の魂から溢れる魔力が見えた。その魔力は魂一つ一つに違っていて、全く同じものはあり得ない。
そして、この赤ん坊の魔力のかたちは。
「レオナルド……」
前世の甥っ子、レオナルドと全く同じだったのである。
しかし、驚きはそれだけでは終わらない。
「れおなるど?男の子の名前じゃない」
「え…おとこのこじゃ、ない…?」
「ええ…この子は、女の子よ。妹が生まれたのよ」
ふふふ、と微笑む母親に、なんと返せば良かったのか。
俺は呆然と、妹を見つめるしか無かった。
前世のレオナルドは、金髪碧眼、すっと通った鼻梁に甘いマスクというどこを取っても完璧な王子様だった。
そう、王子様。
これは比喩でも何でもなく、本物の王子様だ。
かわいい甥っ子レオナルドは、当時の王様の息子でもあった。
マナがルーミナに選ばれる場面に立ち会ったというくらいには、あの世界で確固たる地位を築いてもいた。
それに、王子なのにすごい良い子で、俺みたいな世捨て人でも血の繋がりがあるからと定期的に世話を焼きに来てくれていた。本当に俺の甥っ子良い子すぎる。
…あとレオナルドは辛かったり苦しかったりすると他人には弱みは見せられないとひっそり森に泣きに来ることもあった。マナを連れてくるときも、本当にこれで良いのかと悩みすぎて俺のところに来ていた。繊細で、優しい子なのだ。
そんなレオナルドが、今や目に入れても全く痛くない、俺の妹になっている。
…。
……。
………いや、俺は別にいいんだ。
ただ、万が一、女の子に生まれ変わったレオナルドに記憶が蘇ってしまった場合…それは、ちょっと可哀想なことになるんじゃないだろうか。
俺は愛奈のことがあったから三歳児万歳!くらいの気持ちになれた。
でもレオナルドはそれまでの地位や身体をまるごと失って、その上性別も変わってしまうことになるのだ。
そこまで考えてしまったら、もうだめだった。
「…おまえのことは、おれがちゃんとまもってやるからな、れお……」
なお、この時の俺の呟きを家族に聞かれてしまったせいか、今世でのレオナルドの名前は「蓮」になった。
「リオにいさまときょうだいになれて、とてもうれしいです」
俺の心配は杞憂だった。
幼稚園に入園した妹は、レオナルドとしての記憶を取り戻して早々、俺に満面の笑みですり寄ってくれたのである。
これほどの幸福はない。
今のレオナルドはとっても可愛らしい女の子になっている。ぱちりと大きな目に、ふくりとした頬、笑顔を浮かべればそれだけで天使。俺の妹は天使です、皆さん、大事に大事にしてください。
前世のレオナルドが小さい頃、俺は世俗と離れすぎていて、可愛い甥っ子の存在すら知らなかったのだ。
もっともあの頃にレオナルドの存在を知っていても、素直に祝福できたかは怪しいのだが。
蓮は俺が死んだ後のことはあまり覚えていないと言っていた。
ただ、マナは俺がソハールへの生贄になると同時にルーミナの光を浴び『彼女自身が望んだ場所』に向かったらしいことは知っていた。
もともと世界を揺るがす問題に無関係だった彼女が、自らの望みを叶えられたというなら…それは、喜ばしいことだ。
その場所が、どこかがわからなくて、とても、胸が苦しいけれど。
「…にいさまはやはり、かのじょのことがすきなのですね」
蓮はちょっと寂しそうにしていた。
俺はレオナルドもマナのことが好きだったのかもしれないと、そこでようやく思い至ったのだが、蓮はその疑惑を否定した。
「わたしがすきだったひとは、かのじょではありませんから」
レオナルドが3歳になる年、俺は7歳になっていた。
そして、小学校とやらに入学することになった。
俺は前世でも学校なんてものに通わせてもらった記憶はない。だから、幼稚園に引き続き初めての場所で、かなり緊張した。
妹にまで「にいさまなら大丈夫です」と励まされる始末。全く情けない兄である。
しかし、不安になるのも仕方ないと思う。
「いっしょのクラスになれるといいね」
そう、愛奈が可愛すぎるのだ。
つやつやとした黒髪を可愛らしくツインテールにして、それが動くたびにブンブンと揺れている。
瞳の中は星が閉じ込められたようにキラキラしていて、覗き込んだらもう彼女にとらわれてしまう。
赤く丸く可愛らしいほっぺは昔よりしゅっとしてきたけれど、それでもやはり子供特有の柔らかさがある。
かわいい。かわいいがすぎる。
そして俺は、そんな愛奈とは違うクラスになってしまったのである。
こんなかわいい愛奈と、一緒にいられないなんて、恐ろしいことだ。同じクラスの、彼女の魅力に気づいた男達に取られてしまうかもしれない。相手が子供であろうと、今の俺は同じ舞台に立っているのだ。うっかり負けてしまう可能性だって十分にある。
余裕なんて小指の先程も無い俺は、繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
「りんくん…?」
「まなちゃん…クラスがはなれてても、おれのこと、すてないでくれる?」
「すてるってなに?りんくんはおともだちでしょう?すてないよ」
「そう…良かった……」
ほっと胸を撫で下ろした俺は、約束だよ、と今世で覚えた指切りげんまんまでやった。
後ろの方で母親が「あの子、どこで捨てるなんて言葉を…」とかなんとか言っていたが、愛奈の手の柔らかさの前にそんな小言は全て溶けて消えてしまったのだ。
「愛奈ちゃん、遊びに来たよ」
「リンくん!」
小学校に入学してすぐ、休み時間になると俺は居ても立っても居られず、愛奈のクラスに突撃した。
クラスの女の子達が少し騒ついていた気がするが気にしない。俺のように幼稚園や保育園からの友達のところに尋ねる奴もいないわけじゃ無い。
愛奈は周囲の女の子達と話していたみたいだが、俺が声をかけるとすぐに教室の入口まで来てくれた。
がたん、と椅子を鳴らして立ち上がる様子さえ、何故かキラキラして見える。
初めての場所に対する緊張もあるのかもしれない。俺は愛奈と違ってクラスメイト達にあまり話しかけられなかったし。
「どうしたの?」
「…愛奈ちゃんにあいたくて。嫌だった?」
「ううん、リンくんもいっしょにおしゃべりする?」
そう言って愛奈は俺を女子の集団に一緒に入れてくれた。
その子達は皆、顔を赤くしていたので、心配になる。
「具合わるいの?」
「え?」
「みんな、顔赤いし…えっと、こういうときは、保健室、だっけ?」
「あっ、ほんとだ!えっと…せんせい!せんせいよんでこなきゃ!!」
「おれも行くよ」
愛奈が慌てて教室の外に駆けていく。俺の初めての教室訪問はこうしてばたばたして終わった。
ついでに言うと、次の授業に遅刻して目立ってしまった。ちょっと恥ずかしかった。
小学校生活は瞬く間に過ぎ去った…とまではいかないが、俺はそれまでと同じように、自分の好きなようにしかしてこなかった。
愛奈から困った課題があると聞けば全力でお手伝いしたし、クラスメイトにいじめられたと聞けば二度とそんな気が起こらないように躾もした。
伊達に二十数年の間、森に引きこもっていたわけではないので、子供(動物)の扱いは心得ているのだ。
唯一悲しかったことは、クラブ活動が始まった際、愛奈が女子しか入れないチアリーディングを選択してしまったことだろうか。
俺は泣く泣くサッカー部に入らざるを得なかった。けしてサッカー部なら愛奈が応援に来てくれるかもしれないなどという下心は無かった。断じて無かった。
「本当のところは?」
「…ちょっと期待した」
「リオ兄様、素直になりましたね」
何故か妹に頭を撫でられた。
「凛くんっていつも私と一緒だけど、楽しいの?」
「え?もちろん」
楽しいに決まっている。可愛い愛奈を愛でて、可愛い愛奈とお喋りも出来るのだ。
欲を言えば結婚してほしいが、彼女の気持ちを蔑ろにしたくないので、3歳の頃からプロポーズは封印している。俺頑張って我慢してる。
愛奈がサッカー部のマネージャーになると言ったのでこれ幸いと俺もサッカー部に入った。何だかんだずっと一緒に入られて、とても嬉しかった。
幸せだ。
愛奈に良いところを見せたくて張り切りすぎたり、褒められたのが嬉しくて浮かれすぎたりと、うっかり色々と部内でやらかしてしまった気がするが、最終的に俺と愛奈は可能な限り一緒に過ごすことが出来たので何も問題無かった。
高校受験は少し大変だった。
愛奈が隣県の女子校の制服に憧れていると知った時、どうして俺は彼女と同い年に生まれてしまったのだろうと悩みに悩んだ。
ひとまず現実的な解決策として、近くのちょっと難易度高めの私立校への進学を検討し、家計への負担を鑑みて奨学生になれる程度の学力を身につけた。…が、結局、愛奈はそこではなく近所の高校に通うというので軌道修正した。
教師には嘆かれたし、サッカーの推薦も取れそうではあったけれど、俺の中の優先順位は決まっていたので、微塵も悩まなかった。
「凛、愛奈ちゃんの志望する高校に進路変更するって本気?」
「一途すぎて怖いな」
「お兄さまはそういうところが素敵です」
「蓮は凛をお兄様って呼んでるのか?!ちょ、お父様って呼んでみて!」
「どうしたの、お父さん」
「うーん!惜しい!嬉しいけどちょっと惜しい!今はそっちじゃない!」
「じゃあ、おとん」
「遠ざかったー!!」
「あなたたち、うるさい」
母の一喝に静かになる父と妹。
しかし母もまた、俺のことを止める気は無いようだった。
「凛は本当に、愛奈ちゃんのことが好きよねぇ…」
「うん」
「思春期っぽい照れた感じもないわね…。凛は反抗期も来た記憶が無いし、本当に出来た息子だと思ってるけど、やっぱりちょっと…」
「ちょっと…?」
「気持ち悪いわね」
若干傷ついた。
しかし。
「絶対に在学中に愛奈ちゃんを口説き落としてきなさい」
「っ、もちろん!」
母は偉大だと実感した。
後は、愛奈の学力を俺と一緒に鍛えるだけだった。運動部でマネージャーをしていたのだ。かなり体力もあったし、かなり本気で取り組んでいたこともあり、なんとか二人とも志望校に合格できた。
これはプロポーズまでの第一歩だろう。
「そう言えば、愛奈ちゃんはどうしてこの高校に決めたの?」
驚くなかれ、15を過ぎても俺は愛奈を呼び捨てに出来ていない。どうしてもちゃん付けしてしまうのだ。
「えっ…その……やっぱり、近所が良いかなって、思って…」
「そうだったんだね」
受験も全部落ち着いたタイミングで聞くことではなかったとは思うが、その答えに特別な事情などが見えなくて臆病な俺はすごく安心した。
入学式や新入生代表の挨拶などは大したことではないのでスキップする。
俺は愛奈と同じクラスになれたので、それ以上に語るべきことはない。3年の進路希望に合わせた時以外はクラス替えはないらしいので、2年間は薔薇色の高校生活を楽しめることだろう。
「また、よろしくね」
「う、うん…」
学校生活は充実していた。
席は隣だし、行きも帰りも一緒。
クラスメイトも遊びに誘うときは俺と愛奈を二人同時に招いてくれる。
「城守って、天宮のこと好きなのか?」
「え?うん。そうだけど」
「おっふ」
「きゃーかっこいい!」
「素直だわ…」
「愛情表現に迷いが一ミクロンもない」
「50000点かっこいいわ」
「イケメンで頭も性格も良くて一途とかどんなお買い得物件…?」
「残念、売却済みだ」
クラスメイト達も、かなり優しい。俺のことを応援してくれているようだ。
「っ!」
「愛奈ちゃん…?」
「っ、な、なんでも、ない…!」
ただ、どうしてか。
ここ数年、愛奈の様子がおかしかった。
顔が赤かったり、ちょっとしたことで動揺したりしてる。まあまだ十代だし前世よりも成人の遅い今世なので、そんな態度でも問題はないが…。
「具合でも悪いのかもしれない…心配だ」
「…愛奈さんが?」
「えっ、なんで分かったんだ?」
蓮はエスパーなのかもしれない。
「兄様の考えそうなことなら基本はわかりますよ」
訂正する。人の考えていることが統計的に理解できるのならば、天才の域だ。
俺の妹(甥っ子)、天才だった。
「…兄様、頭は良いのに結構な天然ですよね」
「テンネン?」
「いえ、何でもないです」
年々、蓮は俺に対して遠慮がなくなってきている気がする。
昔はもっと俺を年上として頼ってくれていたものだが、最近では蓮の方が年長者であるかのように俺を諭してくることがある。
…きちんと教育を受けてきた王太子であったのだから、前世では気を遣わせてしまっていたのかもしれない。
反省した。
そうして落ち込んでいた俺に、蓮は感情を読ませない笑顔を向けた。
「突然ですが、兄様にお知らせがあります」
「ん?何だ?」
「……こちらをご覧ください」
でん、と置かれたのはなにかのゲームソフトと、その説明書だった。
「なになに…『神様は愛を知らなかった』?……?!」
一見して、何かのゲームなのだとは理解できた。その表紙に既視感を覚えて、無意識にページをめくり…気づけば俺は、その設定に引き込まれていた。
主人公のデフォルメネームは【マナ】
外れの村に住むひとりの少女が聖女として覚醒し、攻略対象達と愛を深めて禍ツ神を浄化するストーリー。
その世界には魔法があり、【太陽神】ソハールが世界を治めていた。ソハールは双子の【月の神】ルーミナと共にスペースワールドを創生し、ソハールは天命を司る神として、ルーミナは人々を助ける神としてそれぞれ天と地に別れたのだ。
しかし長い長い年月、人間を守り続けたソハールはそのうちに、人間達の醜さをも知るようになる。
やがて彼は人間に失望し…そんな生き物を作り出してしまった自らを恥じ、世界のリセットを考える。
それにより、世界は緩やかな滅びに向かって転がりだす。
太陽は翳り、雷雨や嵐が地上を襲った。大地はひび割れ、人々の多くはその生活を失った。
一方、人間側に根付いたルーミナは、ソハールのように人間の醜悪さよりも、人間達や国を世界を収めようと尽力する王家の直向きさに心を打たれた。
王家の者や魔力を持つ貴族階級の者達は、崩壊に向かう世界を少しでも食い止めようと、天を守る結界を作り出した。人間の身で神の御業に抗うなど焼け石に水のようなものだが、それでも彼らは諦めていなかったのだ。
ルーミナは、どうにか人間の美しさをソハールに伝えられないかと考えた。
そしてその結果、【美しい心を持つ者】の存在をソハールに伝えるべきだと考えたのだ。そして【誰よりも美しい心の持ち主】を探した結果…招ばれたのがヒロイン、【マナ】である、というのだ。
『人間は、愚かだ。醜い争いを繰り返し、安全な世界を自らの野心で害する生き物だ」
『そういうこともある。けれど、それだけじゃない』
『というと?』
『人間には、心がある。誰かを愛し、慈しむことができる』
『それは、この欠点を補うほどのものだと?』
『そうだ。だから…その愛を、ソハール、君に証明してみせる』
ゲームパッケージの裏に書かれたそのやり取りも、覚えがある。
たしかに、前世の世界で信仰していた神々の、その裏側を表すのにふさわしい文言。
それが真実であるのだと、誰に教えられるでもなく理解できた。
「どういう、ことだ…?」
「僕にも詳しいことはわかりませんが…どうやらこのゲーム、非常に僕らの前世と近しい内容の、乙女ゲームらしいです」
「乙女ゲーム…?それは、女性向けの恋愛をメインとした…?」
「ええ」
嘘だろ。
頭が真っ白だ。
思考整理が追いつかない。
それなのに、これがかつての自分たちだと、確かに理解できるのだ。
その上信じられないことに、このゲームは【マナ】が登場する男の誰かと恋愛関係になる、というものなのだ。
設定内には【攻略対象】として、レオナルド(甥っ子)の名前があった。名前だけ聞いていたレオナルドの友人や近衛、宰相殿まで載っている。イラストにはなっているが、特徴的な髪や瞳の色などからして、やはり、レオナルド達の事だろうと思ってしまう。
そして設定を捲りに捲ったが、俺の名前は終ぞ出てこなかった。ほんの一瞬森の木こり的なワードはあったが、俺の姿は無い。
俺が攻略対象では無いことは明確だった。その事実にショックを受けていることも、また、明らかだった。
「じゃあ、じゃあ…マナは、本当なら、この中の誰かを好きになって、一緒にあの世界を救ったんじゃないのか…」
いや、もしかしたら、『あの時点』で、俺が、ソハールに身を捧げる前に、彼女は…。
「それは違いますよ、『リオ兄様』」
呆然としていた俺に、蓮が言った。
「彼女はこの中の誰とも特別な関係ではありませんでした。それに…ゲームは、ゲームです」
まだ小学生の妹(蓮)の高い声が、成長した甥の落ち着いた声に重なっている気がした。
人を落ち着かせる為にはどう喋ればいいのか、きちんと学び、理解している声だ。彼の父親と同じ、威厳のある声。
「ですが、このゲームと似た世界に居た僕たちがどういうわけか生まれ変わった、というのは事実です。しかし、それならば…同じように、他の攻略対象たちも生まれ変わっているかもしれませんね」
「凛くん…最近、元気、ない…?」
「えっ?」
昼休みに机をくっつけて、お弁当を食べていたとき。
ここ最近急に綺麗になってきた愛奈が、俺を心配そうに覗き込んでいた。
「そんなことないと思ったんだけど…」
「嘘。だって凛くん、ずっと、変」
「…ほんとに?」
「うん」
そこまで分かりやすかっただろうか。
一応前世での年齢を足すと今世父母より長生きしている筈で、それなりに表情や感情を取り繕うことは出来ると思っていた。
でも、愛奈にはお見通しだったらしい。
「その…悩み事とか、あるなら、聞くよ…?」
「悩みっていうか…」
ううむ。
これは、どうしようもなく、俺が情けない、というだけの話なのだ。
前世の俺はとても臆病で、ゲームでは愛奈と恋愛する土俵にすら上がれなかった。そしてその根っこの部分にあるこの欠点が、どうしようもなく嫌だという、それだけのことなのだ。
だから、あえて愛奈に話すべきではないと思うし、出来ることなら、話したくない。
「私じゃ、頼りにならない?」
「そんなこと…」
「でも、だって、そうじゃない!」
否定しようとした俺を、もっと強い言葉で、愛奈が否定した。
愛奈が、否定した。
「愛奈ちゃん…?」
「いっつもそう!凛くんは私を助けてばかりで、自分のこと全然言わない!わ、私のこと、好きって言うくせに…私のこと、子供みたいに思ってるじゃない!」
それは前世から含めて初めて見る、愛奈の感情が爆発した瞬間だった。
激しい怒りが、俺に真っ直ぐ突き刺さる。
「昔からずっと、凛くんは周りにいっぱい人がいて、私なんて全然で、それなのに、凛くんは自分のことを後回しにして、私の世話ばかり焼いて…!」
そんなことはない。
愛奈が可愛いから、俺が手を出したくなってしまっただけだ。
「道で転んだ時も、給食で嫌いな食べ物が出た時も、勉強が分からなかった時も、友達と喧嘩した時も、クラスの男の子に虐められた時も、野良犬に吠えられた時も、不審者に追われた時も、全部、全部、凛くんは助けてくれたのに…どうして、私が凛くんに頼られたいと思ったらダメなの?!」
えっ。
えっと、それは…。
「もしかして…愛奈ちゃん、俺のことを助けたかったの…?」
「そうだよ!」
「俺に頼られたいって…こと?
「そうだよ!」
「俺の、情けないとこを見たいとか、そういうこと…?」
「そっ…いや、えっと、その…広い意味では、そう、だよ…?」
「そ、そうなんだ…」
いつのまにか、愛奈は言葉の勢いをなくしていた。
そして俺は、得体の知れない感情に自分自身が支配されているように思う。
前世から、俺は『誰か』を頼ったりしないで生きてきた。
強いて言うなら死ぬ前にルーミナ様にお祈りを捧げた程度だろうか。
森の奥で暮らしていたとき、レオナルドが差し入れをくれたりもしたけれど…あれが無くても最悪生きて行くだけならどうにでもなった。
誰かを頼ったり、誰かに頼られたり、というのが、とても希薄な生活だった。
だから、今世でまたマナと会えたとき、とても嬉しくて、何でもしてあげたいと思って、彼女を苦しめるものがないようにしたくて、そんな愛奈を一番近くで見ていたくて、必死だった。
誰かに身を任せるということは、考えて来なかったのだ。
だから、愛奈の言葉は新鮮で、やっぱりこの子はいつでも、俺の心の上限を簡単に飛び越えていくのだと思った。
「その…じゃあ、情けない話、するね?」
「え…あ、うん!聞く!」
「その…愛奈ちゃんに、好きな人が出来たらどうしようって思って」
「……ん?」
「いや、その…俺はずっと愛奈ちゃんのことが好きだし、昔言ったように結婚してほしいと思ってるけど、愛奈ちゃんは違うよねって思って」
「え…?」
ぽかん、と口を開けた愛奈は、しばらくして、ぼん、と顔を赤くした。
「な、な、な…!」
「えっとだからこれが俺の悩みなんだけど…幻滅した?」
「げ、げんめつ…?」
「その…格好悪いかなって」
「そ、そんなことないっ!」
愛奈は赤い顔のまま、どん、と机を叩く。お弁当が揺れた。
「わ、私も!」
「え?」
「わ、私も…凛くんのこと、その、好きだし…だから、えっと…ほかに、好きな人なんて居ないから!」
「…本当?」
ぶわり、と全身を暖かなものが駆け巡った。次いで顔面に熱が集中した。
そして愛奈は、恥ずかしそうに俯いた。
「凛くん、ずっと私のこと『愛奈ちゃん』って呼ぶから…子供扱いしてるんだと思ってた」
「え?だって、それは…」
「それは?」
「……どんなに好きでも、付き合っても結婚してもいない相手を呼び捨てにするなんて、出来ないよ」
女性を、それも名前を呼び捨てにするなんて、本当に特別な人じゃないとやっちゃいけないと思う。
愛奈が赤い顔をして、水面に顔を出す鯉のように口をパクパクさせている。
とても可愛くて、綺麗だった。
思わず、いつかと同じように膝をつき、手を取った。
「ずっと前から、愛しています。…俺と、結婚してください」
「は、はい…っ」
たちまちクラスメイト達からの拍手に包まれて、俺はそのときようやく、その場所が昼休みの教室であることに気づいたのだった。
***
「ああ、やっとくっついてくれた」
ほっと、息を吐くのと同時に、眼から熱い雫が溢れた。
前世越しに、好きな人が幸せになるのを見られた。
恋情とは違う。違うけれど…それでも、ずっと、幸せになってほしいと思っていた人だったから、嬉しくて嬉しくて、涙が止まらなかった。
他の攻略対象達が生まれ変わる、なんて適当なことを言って焚きつけてしまったけれど、上手くいって本当に良かった。
蓮は知っている。
他の攻略対象達はそれぞれマナを取り合ったけれど彼女の心を得ることは出来なかった。
そして、マナがリオの後を追うように消えてしまった後、リオの存在を知っていたレオナルド(一国の王太子)を、怒りに任せて殺したのだ。
その行為は彼らの魂に消えない傷を付けたのだ…と、レオナルドを転生させた神は言った。
『お前には、悪いことをした。せめて、その願いを叶えてやろう』
その言葉に背中を押されるようにして、レオナルドは凛の妹として、この世界に生を受けたのだ。
この世界に、前世を模したゲームがあることは知らなかった。きっとソハールかルーミナの悪戯だろうとは思うけれど、悪趣味極まりない。こんな、凛を除け者にしたゲームなんて…。
「あら、そのゲーム、蓮が持ってたの?」
不意に、母親の声がして、蓮は泣いていたことをおくびにも出さずに顔を上げた。
「うん、ちょっと見てた。これ、面白いの?」
「ええ、私のお気に入りよ!」
どん、と胸を叩く母は高校生の息子がいるとは見えないほど若々しい。そして堂々と乙女ゲームをプレイするのだ。
「…ちなみに、お気に入りって?」
「そうね…これはネタバレになっちゃうんだけど、シークレットキャラが居てね?」
「シークレットキャラ…?」
「森に住む木こりのね、リオってキャラクターが、一番、主人公のことを大事にしてくれるのよ」
─ああ、貴方はやっぱり、僕の尊敬する兄様だった。
・城守 凛/リオ/主人公
前世、木こり…に見せかけた、王位継承権の無い、前王と侍女の間の子。現王の異母弟。しかし市井に逃れることも出来ずに城内の森で生きていた。
王城を、森を含めてこっそり管理していた。
王位を継ぐ為の魔力は現在の王太子よりも多かったが、亡くなった前王以外、誰もそのことを知らなかった。
初恋に身を捧げて、気づいたら3歳児になっていた。
そして、目の前に愛した人と同じ魂を持つ幼女。堪らずプロポーズした。
この後、自分の異常性に気がついて方針転換し、緩やかな囲い込みに入る。
本人は気づいていないが、なかなかスペックが高いイケメン。
・天宮 愛菜/マナ/ヒロイン
16歳の誕生日を迎える10日前にルーミナによって見出された聖女。
いい子。すごくいい子。
生まれ変わってからは、初対面で告白してきた男の子とずっと一緒に居たせいで、その子以外目に入らなくなってしまった。…ように見えるが、実は彼女も凛に一目惚れしている。
前世で、密かに想いを寄せていた『木こりさん』が自分の代わりに犠牲になったことに絶望。
憐れに思ったルーミナによって、リオと同じ世界(マナが望む場所)へ転生させられた。
前世の記憶は覚えていない。
・城守 蓮/レオナルド/主人公の前世の甥・今世の妹
さりげなくTSしていたが、びっくりするくらい影響を受けなかった子。
前世から叔父のリオに懐いており、王太子時代は美人の婚約者が出来ても女の子に興味を持てなかった。かと言って男が好きかと言われると微妙なライン。
前世の記憶は3歳の時に転んで頭を強かに打ち付けたことで思い出した。
混乱してリオに泣きついて「助けてリオにいさま」と叫んだ。周囲は言い間違えだと判断したがリオだけは理解し、妹(甥)を落ち着かせるためにヨシヨシした。
びっくりするくらいリオが好き。
前世でリオが目の前でソハールに身を捧げたのがトラウマ。
リオが生贄の条件に当てはまるかもしれないと思いつつ確認せず、ルーミナの言葉通りにマナをソハールに捧げようとした。そのせいでマナを好いていたものたちからの反感を買い、暗殺される。
リオがソハールに身を捧げたことで天災は去ったが、数年後に起こったクーデターによって、王国は滅びた。
なお、マナはリオが身を捧げるとほぼ同時に、ルーミナによって同じ世界へ転生へさせられたので、このことを知らない。