王様の悩み
王都の君主。見た目は白髭を生やした老人。この国の王様。王には悩みがあります。それは王都の問題を瞬時に解決してしまうこと。王は全て分かってしまうのです。それは脳が弾き出す最適解。ある日、農民は言う。「作物がなかなか育ちません。」王は答える。「王都の土はアルカリ性じゃ。石灰を撒いて酸性にしてみなさい。」王の言う通りにした途端。作物はみるみる育ちます。ある日、商人は言う。「商品がなかなか売れません。」王は答える。「そなたが心から欲しいと思う新しい商品を仕入れなさい。」すると、それは瞬く間に売れます。さらにある日。鉱山の採掘員は言う。「硬い岩盤に当たってしまい掘ることができません。」王は答える。「宝物庫のダイヤでドリルを作りなさい。」王は宝物庫の宝石を差し出した。王の答えは常に最適。解決できないことは1つ。自身の抱く悩みだけでした。深夜のバルコニーで王はため息をつきます。『何で答えが分かってしまうのじゃ。』王が欲しいもの。それは謎。しっかり悩み、考えて答えを導き出したいのでした。ふと、夜空に一筋の彗星が落ちる。すると王は閃きました。『王都に謎を作り出そう。』王には民の欲しいものが全て分かっているのです。
浮力を持った水。その水は宙に浮いていました。重力と等しい反発力。神秘に満ちた球体。その球体の水は王都の宝として管理されました。貴族たちは考えます。『この水を有効活用できないか?』しかしその水は掴むことも動かすこともできません。全ての物体はすり抜けます。さらにその水は強い酸性を呈していました。そのため飲むことも汲むこともできません。ただそこにある神秘。王は興味を示しませんでした。しかしある日、神秘の水の前で王は言います。「世界樹を持ってくるのじゃ。」それはこの国の御神木。長年の歳月を王によって受け継がれた大切な巨木。しかし王のお考え。貴族たちは即座に世界樹の枝を切り、王の前に用意しました。王はその枝の切り口を水の中に差し込みます。すると、どんなものでも溶かしていた水は世界樹に吸収されてゆきます。見る見る成長してゆく世界樹。遂には太い丸太になりました。そして王は生き生きとした表情で命じます。「この丸太で大きなソリを作るのじゃ。」貴族たちはポカンとした表情。しかし王のお考え。貴族たちはその丸太で大きなソリを作り上げました。そのソリは浮力を持っています。王は満足気にある準備を始めるのでした。