不思議な袋
あるところに一人のおじいさんがおりました。そのおじいさんは小太りで裕福。欲しいものは何でも手に入る。食べたい物は何でも食べれる。その秘密は大きな白い袋。それは何でも出せる不思議な袋。毎日おじいさんは自分のやりたいことをします。ソリを出して山でスキー。板を出して海でサーフィン。体の衰えはありません。ある日、おじいさんは考えます。『本当に欲しいものは何だろう?』何をしても幸福感が変わることはありません。そこに通りかかる足を怪我した少年。いつものおじいさんなら気に留めません。しかし、ふと袋に手をかける。「坊や、この靴下をあげよう。」足を引きずる少年はそれを履いてみます。すると「痛くない…おじいさんありがとう。」おじいさんは初めて子供の嬉しそうな顔を見ました。それまで一人で自分の為に生きてきたおじいさん。不思議と目からは一雫。それは袋の中で弾けます。すると空からはふわふわの雪。あっという間に街は白に染まります。少年はキュロキョロとおじいさんを探しました。しかし、どこにもおじいさんはいません。少年は家に帰り嬉しそうに暖炉へその靴下をかけました。そして、この街にはそんな暖かい噂話が広まるのでした。