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地獄に棲む 三つ目の犬とネコ

本文には出てきませんが、地獄に棲む犬や猫は、人間界において、無残な死に方、三味線の革にされたり、自動車に引き殺されたり、あるいは、野良犬として保健所へ連れて行かれ安楽死させられた動物たちで、地獄でその怨恨を存分に晴らすという設定になっています。地獄で罪人たちが受けている拷問というのは、もしかするとこの人間界で、人間が他の動物たちにしている目に見えぬ虐待そのものなのかもしれません。っちゅうわけで・・・三島由紀夫の転生を自負する倉本保志の新作連載小説ここに投稿。

 地獄百景  第3話   地獄に住む動物たち


趣味による狩猟で動物を絢めたものは、地獄に住む鬼蓄たちの餌食となる。丸ごと頭からかじられたり内臓を食われたりする


Kは、罪人の拷問をしばらく見るうちに、その拷問を行っている鬼たちのことが気になった。この鬼たちは、一体、如何なる心境で、この残忍な、行為を行っているのだろうか・・・?

おそらく、この地獄界で、何百回、いや、何千回という拷問を、繰り返しているに違いない。

たとえその相手が、娑婆の世界で、酷い罪を犯した者たちであったとしても、地獄に住む鬼たちは、その被害者と言うわけではない。罪人に対して、憎しみのような直接的な感情をいだくとは考えられない。いや、仮に激しい憎しみを彼らに抱いていたとして、このような仕打ちを、毎日繰り返し行うことが、はたして可能であろうか・・?

犯罪の被害者が、もし、その相手に、このような仕打ちができるとして、一度あるいは、二度も行えば、その憎しみは、恐らくは、消え去るのではないか、よほどの執着、怨恨が募っていない限り、その恨みは晴れて、相手を許す気になるのではないだろうか・・・・?

・・・・・・・・・・

Kは自分が、相当に激しい気性の持ち主であることを自覚していた。

娑婆の世界(人間界において)抗争相手の連中にならば、殴る・蹴る、そんな暴力は、さほど、気にもとめずに、これまで、平気でやってきたことは紛れもない事実である。

しかし、その自分ですら、これほどまでに、相手を残虐な行為で、虐殺することが、できるかどうか・・・変な言い方になるかも知れないが、Kには、およそ、その自信がなかった。

( 慣れ などという、そんな単純な言葉で済ませられるものなのだろうか・・・・)

・・・・・・・・・・・・

Kは知らないうちに、深く考えこんでいたため、周りの状況の変化に気づくのが遅れてしまった。

身をひそめていたはずの草葉の周囲には、地獄猫、地獄犬といった、ここに住みついている

動物たちが、Kを取り囲むようにして、徘徊し、Kの様子を伺いながら、低い声で呻っていた。

直近でみると、彼らは、人間界のそれら、犬 猫、とは違う点があった。

額の部分に、大きく縦にさけたようにもう一つの目がついている。そしてその目は、他の二つとは違い、なぜかビー玉をとってつけたかのように、何の感情も表わさずに空を見上げていた。

・・・・・・・・・・・・・

「ひゃっ・・こいつら・・・」

「いったい、いつのまに・・・?」

・・・・・・・・・・・・・・

驚いて、身をひるがえすと、Kは、近くにあった棒きれを、大きく振りまわした。

動物たちは、一度引き下がるようなしぐさを見せたが、暫くして、Kが、ぜえ、ぜえ、と息を切らせてきたのを知ると、少しづつ、その間を詰めてきた。

もう、すぐそばにまで来ている・・・

「この、犬猫の分際で、人さまを舐めやがって・・・」

「ほりゃあ・・」

変な掛け声と共に、地面に叩きつけた瞬間、棒は、真っ二つに折れてしまった。

隙をみて、一斉に動物たちが、Kに襲い掛かった。

バウウウ・・・

地獄犬が、Kの二の腕辺りにガブリと食らいついた。その勢いと、痛さの余り、Kは、後ろにひっくり返ってしまう。

「うがああああっ・・・」

大声で悲鳴を上げたKは、必死で地獄犬を振り解こうともがくが、深く食い込んだ犬歯が腕から、離れることはなかった。

ブチイイッ・・・

鈍い音がした。

Kは、犬が、自分の腕から離れたため、急いで立ち上がろうとして、変にバランスを崩し、またすぐに転んでしまった。バランスを崩した理由は、Kの腕が食いちぎられていたためであったが、腕が痺れて感覚がマヒしていたせいで、そのことが、すぐには判らなかった。

Kが、そのことに気づいたのは、再び立ち上がろうとして、地面に手を突こうとしたときだった。

・・・・・・・・・・・・・

「わああああっ・・」

Kは大きな悲鳴を上げ、右手で、千切れた左腕の肘のところを、思いきり握りしめた。

付け根からぼたぼたと血が滴り落ち、指がぬるっと抜け落ちそうになる。

ふと前を見ると 地獄犬が、Kの腕をくわえたたまま、低い声で、ウウウッ と呻っている。

・・・・・・・・・・・

「くっ・・・この、クソ犬があああっ・・・」

まさに鬼の形相で、髪を振り乱し、Kはその犬に飛びかかった。

ピイイイイイ・・・・

・・・・・・・・

どこからか、甲高い音がした。

地獄犬、そして地獄猫までが、その音のする方向を振り向くと、一斉に駆け出しっていった。

はあ、はあ、はあ、・・・

大きく肩で息をするKだけが、その場に取り残される形になった。

Kは、汗とも、涙ともとれない、びっしょりになった顔を、右腕で拭うと、そのまま、ごろんと

草の上に横になった。

・・・・・・・・・・・・・

地獄草の、くさいきれ が、辺りに漂っている。

それは、自分の腕から滴り落ちる血のにおいと混じりあって、酷く吐き気を催すものであった。

自分の腹越しに動物たちの向かった方向を見ると、鬼たちが、罪人たちの手足や、腸を引きちぎって、彼らに餌のように与えているのが、ぼんやりと見えた。

・・・・・・・・・・・

はあ、はあ、はあ、はあ、・・・

Kの弾むような息が、赤黒く、くぐもった、地獄の空に、跳ね返ってくるように、はっきりと聞こえていた。


どれくらい時間がすぎたであろうか・・・?

Kは、知らないうちに眠ってしまい、先ほどまでは、赤黒い色をして垂れていた地獄の空が、俄かに明るくなったせいで、目が覚めた。

・・・・朝だ、

地獄にも、朝が来るのか・・・・・

Kは、この、どん底の状況の中でさえ、朝がもたらす、菅菅しさというものを僅かに感じ、そのことに妙な、安心感を覚えていた。

人間界で、朝が、清々しいなどと、一度たりとも、思ったことのない、この自分が、地獄に来てそう感じているのは、何とも皮肉なものだとKは、思った。

涼しい風が、吹き、頬を撫でるように通り過ぎていく。

・・・・・・・・・・

(先へ進むか・・・・)

Kは、そう決意して、ひょいと立ちあがった。

犬にちぎられた左腕は、もう元に戻っていた。

・・・・・・・・・・・・

                         おわり


地獄犬、地獄ネコというのは、我ながらいいフレーズ、ネーミングだと思っています。あの、超有名マンガ、「げげげの・・・・」に使われてもいいんじゃないの・・?と、また性懲りもなく、いつものビッグマウスをふかしております。妖怪関連の作品を書いておられる、みなさん、どうですか?タフマンじゃないですが、このネーミングお譲りしますよ・・・ご一報ください。 倉本保志

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