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どこに戻れば  作者: 祥子
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次の日、何年振りだろうか、いや、初めてか。

たった一人で学校へ向かう。

引っ越さなかったら今頃みんなと楽しく高校へ通っていたんだろうな。

言っても仕方ないけど、寂しいものは寂しかった。

教室に入るのもとても緊張した。

そばにいる子に話しかけてみたいけれど、また何か言われるかもしれないと思うと話しかけられなかった。席に座りただひたすら時間が過ぎるのを待とうと決めた。

本でも持ってくればよかった…

そう思っている時、「おはよう」と隣の席の子が話しかけてくれた。

驚いて顔を上げ「おはよう」と咄嗟に返した。

「やっぱり東京弁なんやね。おはようから違うわ」と笑われた。

またか…。もう何も言葉が出なかった。

「ごめん、ごめん。嫌な気させたかな?そんなつもりないねん。私もな、小学生の時親の転勤で東京住んでたことあんねん。だから東京から来たって聞いて気になっててん。昨日は入学式でバタバタしてたから話しかけられへんかったけど。隣の席やし思い切って話しかけてみようって思って」と言ってくれた。

「ありがとう。東京住んでたんだね!心細かったから話しかけてもらえて嬉しいよ」

「東京は3年間くらいかな。でも小学生の低学年やったしあんまり覚えてないねん。方言で苦労したのは覚えてるわ。関西弁!言うて笑われたりしてな」

「そうなんだ…。中々周りにいないから珍しかったんだろうね」

「そうやと思う。でも私は私やって開き直ってたわ。田中さんやったっよな?田中さんのおはようって言うの聞いて思わず東京弁や!って反応してしまった自分があの頃のみんなと一緒やなって反省したわ。気にせんとってな。みんな珍しいだけやと思うから」

私は思わず泣きそうになった。私が今不安に思っていたことを汲み取ってくれたように感じたのだ。

「そう言ってくれて本当にありがとう。知っている人も全然いなくて不安でしかなかったんだ」

「そうやんな。友達もおらへんよな。どこに住んでるの?近かったら一緒に帰ろう。私の友達も紹介するわ」

「えっ、いいの?家は仁川なんだ」

「仁川?私隣の駅やで!一緒に帰ろ、帰ろ」

とそこからは話が色々弾んで私の緊張の糸も少しほぐれてきた。

そして神戸に引っ越してきて最初の友達となった。

この子の名前は福田えりちゃん。

えりちゃんと出会わなかったら私は一体どおなっていたのだろうか…。あのまま殻にこもったまま高校生活が終わっていたのだろうか。

えりちゃんには今でも感謝しかない。


えりちゃんは中学からの友達がクラスに二人いて、その子たちとお弁当を食べるからとその輪の中にもいれてくれた。

えりちゃんの友達もみな優しかった。

帰りもみんなで帰ろうと快く賛成してくれたのだ。

昨日の入学式の帰り、泣きながらパスタを食べたのが嘘のようである。1日にしてこんなに楽しい時間を過ごすことができた。話している時も緊張はしっぱなしであったが友達ができたという喜びが大きかった。そして早くお母さんに報告したかった。

「バイバイ」とみんなと別れ家路につく。

あのパスタ屋さんの前を通る。

「よし、もう大丈夫。どこにいても私は私だよね」と思えることができた。

そして母に今日の出来事を話した。

久々に学校や友達のことを楽しそうに話す私を見て母はとても嬉しそうだった。

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