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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
91/145

第90話 サラ

 皆でお茶を飲みながら、雑談しながらのんびりしていると、ふと気になったことがある。


 ファラは会話とまではいかないけど、こうやって召喚獣を使って意志の疎通が出来ている。

 ミリアやマリーも、その内同じ事ができるようになるだろうが、ランやルリアは魔法自体が使えないので、連絡が取れない。

 屋敷にはマルカやミュウも居るが、同様に連絡手段がない。


 神口を使えばどうにかなるかもしれないが、もし魔法が使えないとなると、どうしようもない。

 そこで、この世界にはどんな連絡手段があるのか気になった。


「なぁ、遠い所に居る人に連絡を取りたい時って、皆はどうやって連絡しているんだ?」

「手紙書けば良いじゃん」

「会いに行く、ですかね」

「手紙は確実に届くのか? 一瞬で会いに行けるのか?」

「うっ……絶対、ではないよ? でも普通、手紙書くでしょ」

「馬を使えば速いですよ? あっ! 高位の転移魔法の使える方が居れば、街まですぐです! 居れば、ですが……」


 なるほど。基本は手紙なのか。わざわざ馬を使ってまで移動するというのは面倒だよな。

 電話なんてあるわけないし。


「転移魔法の使える空間術士って、どのくらい居るんだ?」

「さぁ。ウチには居なかったよ?」

「エルフも基本は精霊使いなので、魔導士系統の魔法を使える人は見たことないです。スフラは田舎ですし……」

「使えない奴等だな」

「ひどいっ!?」

「そんなっ!?」


 やっぱり魔法関係、というか、何かを情報を知りたい時はミリアに聞かないといけないな。


「あっ! そうだ! ウチの宝物庫に身に付けて魔力を込めると、互いに会話の出来るマジックアイテムがあったよ!」

「まじか!? よし、それを盗んで来い」

「えぇっ!? ダメだよ! 怒られるもん!」

「やっぱり使えない奴だな」

「ひどいっ!?」


 マジックアイテムか……便利な物があるんだな。

 これは是非とも手に入れたい。


「ファラ、今近くにミリア居るか?」


――ポンポン!


 居ないのか。そりゃあそうだよな。ミリアは図書館で、ファラは外で食べ歩きしているだろうし。

 どうせだから調べてもらおうと思ったんだが、無理か。


「ラン、宝物庫には他にマジックアイテムとか無いのか?」

「うーん、あるんじゃないかなぁ。興味が無かったから、あんまり詳しくは知らないけど」

「会話の出来るやつは知ってたじゃないか」

「あれは……小さい頃、お姉ちゃんが持ってきて、城の中で離れたところから話して遊んでたから……」

「使えない奴だな」

「ひどいっ!?」


 でも、仮にそのアイテムを手に入れたとして、複製出来ないし、誰かにお使いを頼む時くらいしか使えないな。

 便利ではあるけど、沢山ないと意味がない。


「ほんと、使えない奴だ」

「まだ言うの!? もー! 分かったよ! 行ってくるよ! もし見つかったら、タカシくんにやらされたって言うからねっ!」

「人のせいにするとか最低だな。いいよ、俺が行くから」

「あのアイテム、お姉ちゃんが気に入っている指輪だし、多分無理だと思うよ? ランもお願いしたけど、断られたもん」


 ランがお願いしてもくれなかった指輪か。あ、いや、ランだからこそくれなかったのかもな。


「そりゃあ、ランだからな。お前じゃ無理だ」

「えー、いくらタカシくんでも無理だと思うなー? ふふっ」


 ニヤニヤしやがって。こいつ……。


「じゃあ、賭けるか?」

「いいよー。お姉ちゃんって、あれでも頑固なんだから。一回でもダメって言った事はずっとダメだもん!」

「よし、貰えなかったら、何でも言う事を一つだけ聞いてやろう。お前は? 何か賭けるモノあるか?」


 これ……完全にフラグだよな。

 俺は先日の件でサラに借りを作っているから、貰える自信あるんだが、ランはそこがすっぽり抜け落ちているようだ。


「うーん、持っている物ってお金くらいだもんなぁ。タカシくん、何かして欲しいことある?」

「じゃあ、お前は俺の嫁兼、性奴隷になれよ。お前を嫁にすれば、宝物庫のアイテムが、全部貰えるかもしれないしな」

「えぇっ!? ランはアイテムのおまけ!?」

「おう。性奴隷もアイテムもゲット。ウハウハだな」

「ひどいっ!?」


――たしたし!


「分かってるって、ファラもミリアも俺の嫁だからな」


――ポン!


「タカシ様! 私は!? 私は嫁にしていただけないのです!?」

「お前は性奴隷だろう? ただ俺の子どもが欲しいだけなんだし」

「そんなっ……」


 よし、そうと決まれば早速城に行こう。

 サラに会うのは久し振りな気がする。また乳を揉ませてくれ……るわけないか。まぁ、良い。


「よし、行ってくる」

「タカシくんが、すごく嫌がる事考えておくからねっ!」

「タカシ様! タカシ様! 私も嫁にしっ」


――シュンッ!


 マリーが何か言っていたが、放置しておく。

 相変わらず、頭上にファラの召喚獣が乗ったままの状態だから、あまり過激な事はできないな。


 城門の前に移動して、門番に話し掛ける。


「こんにちは。サラ姫に会いに来たんですが、通してくれます?」

「ま、待ってくれ! アバン様をお連れする!」


 当然だよな……。仕方ない。待つことにしよう。

 あぁ、そういえば、もう夕方だし、そろそろザクゼルに行かないといけない時間なんだよな。

 これが終わったら、そのままあっちに行ってからミリアとファラを迎えに行くか。


 そんな事を考えているとアバンがやって来た。


「これはこれは、タカシ様。今回はサラ様にお会いに来たのだそうですが、どのようなご用件で?」

「えぇ、サラに少しお願いがあってですね。少しだけ、会う時間をいただけないですかね」

「サラ様はまだ公務中です。もう暫くしましたら終わるとは思うのですが、少しだけお待ちいただけませんか?」

「仕事中なら仕方ないです。あ、そうだ。ちょっと寄るところがあるので、暫くしたらまた来ますね。サラに伝えておいて下さい」

「申し訳ないです。必ず、お伝えいたします。それでは後ほど」


 まだ仕事中らしいので、アバンと別れ、先にザクゼルへ飛ぶ。


 ザクゼルの街中へ移動してみると、何やらバタバタと慌てている人が多い。何かあったのだろうか……?

 モンスター襲撃などではないようだが、念の為周りを警戒しつつ騎士団の居る詰所の建物へ移動する。


 建物の前には檻がいくつも並べられ、その中を見てみると盗賊が入っていた。見覚えのある顔が多い――ヴェルムだな。

 騎士団がアジトから、盗賊共を捕えて帰ってきたのだろう。

 その騎士団に中に、今朝話をした団長が居たので近づくと、向こうもこちらに気が付いたようで手を挙げ挨拶する。


「どうも、ソーンさん。お疲れ様でした」

「やぁ、ワタナベくんの報告通り全員埋まっていて、掘り返すのに苦労したが、全て捕えることが出来たぞ。感謝する!」

「いえいえ、一晩置いたので、逃げていたらどうしようかと思っていましたが、間に合ったようで良かったです」


 そんな会話をしながら、団長に建物内へ案内される。


「全て生きていて驚いたぞ。討伐に参加したパーティーは、皆優秀だったのだな。今はキミ一人なのか?」

「えぇ、皆良く働いてくれましたので、今日は自由にさせてます」

「そうか。つい先程、盗賊どもの確認作業が終わったところでな、今賞金を用意させているところだ」


 ナイスタイミングだったみたいだな。

 しばらく、ヴェルムから街がどれだけの被害を受けたか、などと話をしていると、団員が四人ほど入ってきた。


「只今戻りました! 団長、こちらが噂のワタナベ殿ですか!?」

「あぁ、お前達も挨拶しておけ」

「この度は、ヴェルム討伐お疲れ様でした!」

「お疲れ様でした!」

「そちらこそ、お疲れ様でした」


 団員から挨拶されたので、無難な返答をしておく。


 内二人が、団長にジャラジャラ鳴っている袋を渡しているので、あれが賞金なのだろう。二人掛かり……すごい量だな。

 残りの二人は大金を運搬する為の護衛なのだろう。


「恐らく、ワタナベ殿の事であろうと思うのですが、盗賊共が皆、怯えておりました。大火力で蹂躙したには盗賊に死人は居りませんでしたし、どのような殲滅をされたのですか……?」

「うーん、大火力の魔法で驚かせた後、奇襲しただけですよ」

「ふむ、いやはや、お見事としか言いようがないです。是非、他の騎士団員達に稽古を付けてやって欲しいくらいです」

「そうだな。どうだろうか、ワタナベくん? ウチの団員たちに、稽古を付けてやってはくれまいか?」


 騎士ってやつはどいつもこいつも、訓練ばかりだな。

 街を守る為とはいえ、男共に囲まれて汗を流すなんて面倒だ。


「ええと、俺も戦い方などの勉強になるので、お受けしたいところではあるんですが、すぐに出立しないといけないんですよ」

「うむぅ、そうか。それは残念だな……」

「クドラングに居るので、もしお越しの際はお声掛けください」

「分かった。街と街との共同訓練などで、クドラングに行くこともあるだろう。その時は、是非頼むぞ」

「えぇ、こちらこそお願いしますね」


 そういって、袋をこちらに渡してきた。

 団員が二人掛かりで運んできた袋を一人で持ち上げるとは、この団長、力持ちだな……。

 試しに一人で持ち上げてみるが、持ち上がらない。重い!


 悔しかったので、空間魔法を使って軽々持ち上げた風を装う。

 団員達からは“おぉっ”など声が上がっていたが、見栄を張っただけなので無視しておく。


「それが、今回の賞金だ。白貨を用意したかったところなのだが、ストックが無くてな。金貨ですまない」

「いえいえ、金貨の方が分配が楽なので、助かります」


 これも見栄だ。

 皆頑張ったけど、俺が独り占めなので、分配などは無い。


 あっ……ファラが見てる!?

 まぁ、ファラなら大丈夫か。でも、念の為口止めしておくかな。甘い物で釣れば安全だ。

 金貨をインベントリに移して、お礼を言っておく。


「ありがとうございました。また盗賊を討伐したら、報告します」

「いや、こちらこそ助かったぞ。ありがとう」

「それでは、申し訳ないですが、後の事はお願いします」

「承知した。あぁ、そうだ。忘れておった。先程、盗賊を全員確認したのだがな、ヴェルムのナンバー2とナンバー3だけ居なかったのだが、ワタナベ殿は何か知らぬか?」


 ナンバー3はスフラで捕まえてスワルトの騎士団に渡した奴の事だろうが、ナンバー2は知らないな。


「ゴルドは先日捕まえて、スワルトの騎士団に引き渡しましたが、ナンバー2は知らないですね」

「おお、ゴルドまで捕まえておったか、流石だ。しかし、サームは知らぬか。こちらでも行動は把握しておらぬ。心配は要らぬと思うが、一応注意はしておいてくれ」

「サームですね。分かりました。ご忠告感謝です」


 そのまま挨拶を済ませて、ザクゼルから出る。

 街は盗賊討伐のせいもあり、野次馬等でごった返していたので、門から外に出た後、再度クドラング城に飛ぶ。


「おわぁ!?」

「どうも。アバンさんお願いできますか?」

「あ、あぁ、アバン様からは、城内へお連れするよう伺っております。ご案内させていただきますので、こちらへどうぞ」


 アバンが手配してくれていたようで、門番に案内され、そのまま城に入る。


 サラの部屋は先日案内されたところから変わっていないようで、部屋の前まで案内されたところで、門番は去って行った。


 門番が見えなくなったところで、部屋をノックすると、開けてもいないドアが勝手に開く。


――バンッ!


 ドアが突然開いた事に驚いていると、サラが飛んできた。


「タカシさーん! お会いしたかったです」


 走ってきた勢いで抱き付かれて、勢いを逃がせず、立ったまま、その場でぐるぐると回ってしまう。

 ある程度回った後、その場にストンと降ろすが、未だ抱き付いたままだ。……サラってこんな大胆な子だったか?


「こんなことをする子だとは思っていなかったから、驚いたぞ」

「うふふ。タカシさんは恩人ですから、特別な存在なのですよ?」

「それは嬉しいな。とりあえず部屋に入れてくれるか?」

「えぇ、何もない部屋ですが」


 抱き付いたままだったので、お姫様抱っこをして部屋に入る。


「ふふふ、さすがタカシさんね。女性の扱い方を分かってるわぁ」

「そうか? そう言ってもらえると、悪い気はしないな」


 部屋に入ったのは良いが、さて、二人きりだな……。


「二人きりになってしまいましたね」

「お、おう。そうだな」


 思っていたことを先に言われたので、驚く。

 一瞬動揺してしまったが、それを隠す為、そのまま話を続ける。


「あぁ、そうだった。ランから聞いたんだけど、遠く離れていても会話の出来る指輪を持っているんだって?」

「ええと、これのことですか?」


 そう言って、指にはめている指輪を見せてくれる。

 指輪自体は、中央に青色の小さい宝石のようなキレイな物が一つ付いているだけで、至ってシンプルだ。


「それって二つしかないのか?」

「そうですね。私の知っている限り、これと対となっている指輪があるだけです。この、透き通るような青が気に入っているのです。ふふ、どうです、キレイでしょう?」

「……あぁ、その青色、サラに似合っているな」


 まずいな、気に入っていると言われた物をよこせとは言えない。

 どうやって話を進めようか……。


「それで、この指輪がどうかされ……あ、まさか! 私との、連絡手段に使っていただけるのですか!?」

「え、あ、いや、そういうわけじゃないんだ」

「では、他に何か……?」」

「うん、実はウチで俺専属のメイドを雇う事になってな。それで、俺が出掛けている間に連絡が取れないのに困っていてな……」

「はぁ、それで、この指輪が欲しい、と?」

「まぁ、そういうことになるかな。理解が早くて助かる」


 何かサラが今まで見たことのない表情になっている。

 指輪を使って俺と会話がしたかったのだろうか。


「やっと再会できたと思い、喜んだのですが……私目的ではなく、指輪目的だなんて、少しショックです。そこは嘘でも、私に会いに来たと言って欲しかったです」

「すまないな。でも、指輪を口実にしてサラに会えると思ったからこそ、城に来たのは変わりないぞ?」

「でも、本当は指輪目的なのでしょう?」

「うっ、まぁ、そうなるかな……でも、サラ以外から、その指輪を手に入れる方法があるなら、それを聞くだけで終わるだろうから、指輪じゃなくサラが目的ってことになるぞ?」

「でも、結局は指輪目的なのでしょう?」

「むぅ、まぁ、そうなるな」


 実際に指輪目的なんだし、反論できないのもあって、自分で何を言っているのか分からなかった。

 最近は乙女心なんて考えなくても良い環境だったから、すっかり応対をミスをしてしまったな。


「うふふ、タカシさんは正直なのですね」

「サラを騙したところで俺に何の得もないしな」

「分かりませんわよ?」

「まぁ、そんなわけで、俺は指輪が欲しいんだよ」

「クドラングの恩人であるタカシさんの頼みなので、差し上げたくは思うのですが……」


 クドラングの恩人? 何か違和感のある言い方だな。

 俺がサラに何もしなかったら、ランが王位を継ぐ、イコール国が滅んだかもしれない、ということか? まさかな。

 まぁ、そんなことはどうでも良いか。


「そうか、残念だ。その指輪、どこで入手したんだ? 入手経路か仕組みを教えてくれると嬉しいんだが」

「仕組みは、ごめんなさい。分からないです。ただ、ご先祖様が、国を挙げてダンジョン攻略をした際に、そこで入手したのだとか」

「ダンジョンの中には、その指輪みたいなマジックアイテムが沢山あったりするのか?」

「そうですね、私は行った事がありませんので、実際にどうなのか分かりませんが、聞いた話によると、そういうことらしいです」


 ダンジョンか……。

 ヴェルム討伐が終わったら、皆のレベル上げも兼ねてダンジョンに入ろうとは思っていたけど、益々行かないと行けなくなったな。


「うーむ……どうしたもんか」

「うふふ、困った顔、初めて見ました。素敵ですねっ」


 こいつ、俺が困っているのを見て楽しんでやがるな。

 実は、これが目的で渋っただけとか……ないよな。


「よし、こうしよう。俺がサラに似合う代わりの指輪をプレゼントする。それと交換に、その指輪をくれ」

「分かりました!」


 やっぱりダメ……じゃない!?


「ふぁ!? 本当に良いのか!?」

「えぇ、タカシさんが、選んでくれるのでしょう? 私に似合う、私のための、私だけに、指輪を」

「え、あぁ。それはもちろんだが。大事な指輪じゃないのか?」

「ご先祖様が大事にしていましたが、色が気に入っていただけですので、私としては、それよりもお慕いしている方から貰える指輪の方が何倍も素敵です。きゃ、お慕いしているなんて……うふふ」


 慕ってもらうのは大いに歓迎ではあるが、それが原因で、自分の世界に入られるのは困るな。正直、後が怖い。


「但しっ! 今現在私が身に付けている指輪は、タカシさんが肌身離さず付けてくださいね? 約束ですよ?」

「あぁ、もちろんだ。片方は俺が使う為、貰いに来たんだからな」


 そう言いながら、近くにあった鏡台の引き出しを開けて、指輪を取り出す。

 貴重なマジックアイテムを、そんなところに保管していて大丈夫なのかよ、とは思ったが口には出さないでおこう。


「さ、指を出してくださいます?」

「ほい」


 手を出して、指輪を指に通してもらう。

 サラがしているほど小さい指輪だったので、俺には無理だろうと思ったが、スルスルと指を通っていく。

 サイズが身に付ける人によって変わるタイプのマジックアイテムのようだ。便利だな……。


 そして、対となっている指輪を貰い受ける。


「指輪、約束ですからね?」

「任せてくれ。あ、そうだ。どうせだから、今から買いに行こう。宝石屋って、この国にあるか?」

「えっ!? えぇ、ありますけれども。でも、無理かと思います。私、あまり外には出ないようアバンから言われていますし」

「大丈夫だ、任せろ。ただ、今からすることは口外するなよ?」

「へっ?」


 サラの腰を抱き寄せ、街に飛ぶ。

 店が何処にあるか分からなかったので、買い出しで来た事のある仕立て屋や鍛冶屋の並ぶところに飛ぶ。


「え、えっ、えぇっ!?」


 サラが驚いたまま辺りをキョロキョロしていたが、そのまま手を引いて布団が売っていた店に入る。


「こんにちは」

「おや、またあんたかい。また布団かい?」

「いえ、布団はまた今度買わせてもらいますね。それより、宝石屋を探しているんですが、場所を教えてもらえませんか?」

「宝石屋なら、二軒隣を曲がったところにあるよ」

「ありがとうございます」


 布団屋のおばちゃんにお礼を言って、まだキョロキョロしているサラの手を引いて宝石屋に向かう。


「あの、あの! タカシさん!? これは!?」

「転移は初めてか? 驚いたか?」

「え、あ、はい。えっ!? 転移も使えるのですか!?」

「あぁ、言ってなかったっけ? 秘密だからな?」

「言ってません! でも、はぁ……。すごいですね! やっぱり、タカシさんは、すごい! すごいです!」


 “すごい”しか言ってないサラを連れて宝石屋に到着する。


「ようこそいらっしゃいました」

「どうも。指輪を見たいんですが、置いてますか?」

「はい、ございますとも。こちらです。そちらの女性の方にプレゼントされ……サラ姫様!?」

「えぇ、ごきげんよう。お邪魔しますわね」


 さっきまでのすごいすごいサラが、突然キリっと変化した。

 これが外向けの顔なのか……ニコニコしていて隙がないな。


「な、なな、なぜ、こ、こここのようなところへ!?」

「この方が、指輪をお求めでしたので、ご案内差し上げたのです」

「そ、そそそれは、ありが、とうござりますっ!」

「おい、サラ。そういうのは良いから。これなんかどうだ? サラにすごく似合いそうだぞ?」

「もう! タカシさんったら台無しです……乙女心は分かっても、空気は読まないのですね」


 ポカンとなっている店員は無視して、指輪を選ぶ。

 サラのルックスやスタイル、金髪から、少し派手目なブルーの、大きめな石が付いた指輪が似合いそうなんだよな。

 そんな指輪がないか、端から順に見ていく。


「おおっ!? これ! これ、すっげぇ似合いそう!」


 透き通るようなブルーの大きな石と、その両端に二つのピンク色に輝く石が横に並んでいる指輪がある。とてもキレイだ。


「これ、触ってみても良いです?」

「え、えぇ! もちろんです! どうぞ!」


 指輪を出してもらい、サラの指に通す。


「もうこれしかないだろう。サラの為にあるような指輪だ」

「とてもキレイですね。でも、選ぶの早過ぎやしませんかね?」

「こういうのは、第一印象が大事なんだ! 端から全部見たけど、それ以上にサラに似合う指輪は無いと言い切れる」

「そ、そうです、か? うふふ」


 お世辞とかではなく、本当に似合うな。


「それで良いか?」

「タカシさんがお選びになった指輪ですから」


 納得してもらえたようなので、その指輪に決める。


「これおいくらですか?」

「えっ!? あの、いえ、姫様から代金を頂戴するなどっ!」

「おいくら、ですか?」

「その……70金……です……」


 たけぇっ!

 70って!? 奴隷が何人買えるんだよ!


 それにしても、代金を払わない訳にはいかないとは思ったけど、こんなに高いのなら、貰っておけば良かったな。

 でも、これだけ豪華でキレイな指輪なんだ、もしかすると、姫ということで割引きしてくれたのかもしれない。

 藪を突くのは辞めておこう……。


 見栄もあるし、ジャラジャラと金貨を出し、支払いを行う。


「サラが此処に来たことは内緒にしてくださいね? じゃないと、サラが怒られてしまいますから」

「えぇ、えぇ、もち、もちろんでございますともっ!」


 終始驚いていた店員にお礼を言い、そそくさと店を出て、すぐにサラの部屋に戻る。


「ふわっ!」

「ふぅ。似合う指輪があって良かった」

「転移というのは、いきなりだと驚きますけど、便利ですね」

「そうだろう? 最近は日のある内に出掛けて、転移でクドラングの屋敷に戻って、また日のある内に旅をしている感じだ」

「それならば、私もお付き合いできますね」


 サラを旅に連れて行っても良いが、さっきから頭の上の召喚獣が“ペシペシ”から“バシバシ”になっているので自重しよう。


「お前は公務があるんだろう?」

「タカシさんは意地悪ですね」

「それをお前が言うか」

「ふふふ、でも、指輪、ありがとうございます。ずっと大切に肌身離さず付けておきますね!」

「喜んでもらえて嬉しいよ。こちらこそ、指輪ありがとうな」


 高い買い物ではあったけど、マジックアイテムが手に入ったのだと考えることで、無かったことにしよう。


「また会いに来てくれますか?」

「あぁ、もちろんだ。今度は一緒に食事でもしよう。何だったら、ウチに招待しても良いし」

「まぁ、それは素敵ですね。是非お誘いください」

「おう。その時はまたこうやって会いにくるよ。この部屋に直接来ても良いか?」

「うふふ、そうやって着替えを覗いたりするおつもりですね?」


 バレてる……。

 でも、別に着替えなんて覗かなくても、賢者を使えば下着どころか、全裸を見ることができるんだけどな。


「おう、夜這いとかな」

「ふふ、いつでも歓迎ですよ」

「そうか。では、また今度な!」

「はい、お待ちしております」


 最後に片膝をつき、サラの手を取る。

 そのまま、指輪にキスをした後、手を離してから屋敷に戻る。

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