第88話 ルリア
屋敷に戻ると、目の前にミュウが居た。
「おわぉ!?」
「はははっ、びっくりしたか?」
「び、びびってねーです!」
「声出してビクってしてたじゃん」
「な、何を言ってやがりますか! エロ魔王がエロい事しないか、けーかいしただけデス! ふ、ふんっ!」
ミュウがバレバレの言い訳をしてそっぽを向いたので、頭を撫でつつ、送り届ける女の子達の状況を確認する。
「準備は大丈夫か?」
「は、はい! いつでも大丈夫です!」
ビエグ組の三人は既に用意が終わっていたようで、集まって待機していた。
「それじゃあ行こうか。俺の体に捕まってくれ」
女の子達の前に出て、両手を広げ、体に触れてもらう。
抱き付いてくれないかと期待したが、ビエグ組の中には好感度の高い子は居ないようで、皆ちょこんと腕に触れる程度だった。
残念だ。
そんな気持ちを抱きながら、ビエグに飛び、門番に事情を話して女の子達を解放する。
「もう捕まったりするんじゃないぞ?」
「はい! ありがとうございました!」
「タカシ様の幸せを祈っています! ありがとうございました!」
「またお会いできるのを楽しみにしています!」
女の子達は周辺の村とかではなく、ビエグの街の中の住人だそうなので、ここでお別れしても大丈夫だろう。
そう判断し、他の子達同様、女の子達神口を使い、別れる。
街中まで送ろうかと考えたが、冒険者風の男が、何度かこちらを見たりしていたので、門から姿が見えないところまで移動してから屋敷に戻る。
今度は気付かれないよう地下室の方に飛び、魔眼で屋敷内に居る人の動きを確認する。
中でも小さい人型――ミュウが、こちらの位置がが見えない方を向いたところで、こっそり背後に近付く。
「わぁっ!」
「ぴゃぁっ!?」
背後から脅かすと、可愛い声を出して前方に飛び、両腕を構えてこちらに振り返る。
「びっくりしたか?」
「むぅ、もう許さないです。みゅは怒ったです。やってやるです」
殴り掛かってきたが、まさに、ぽこぽこと擬音が付いていそうな感じだったので、全て受け止めてやる。
「はっはっはっ! そんな攻撃じゃ俺様は倒せないぞ!」
――ポカポカポカポカ!
「この! 倒れろです! 驚かせた罰です!」
「効かんなぁ。ふっふっふ、俺様も、そろそろ反撃してやろうぞ」
ミュウの両脇を掴んで持ち上げ、反対側を向かせた後、各部位をくすぐったり、弄ったり、揉んだり摘まんだりして反撃する。
「ひゃひゃ、や、あう、だめ、やめ、やめろです!」
「どうだどうだー。降参するかー?」
「ふあぅ、イヤです! ひゃう、ひゃ、ふふ、やめっ!」
――ポンポンポン!
「ん、何だ、ファラ?」
ファラの召喚獣が肩を叩いてきたので、ミュウの全身を余すことなく堪能しつつ、召喚獣の方を向く。
――ぷすり
「目ええええっ」
召喚獣が“えいっ”という感じでパンチしてきた。ミュウに意識が向いていた事もあり、思いっきりパンチが目に入る。
おもわず、そのまま床に倒れてしまう。
「いてぇっ! ちょ、ファラ、何すんだ」
召喚獣が肩から床に降り、こちらを見ながら座っている。
――タンタン!
「何? 座れって?」
召喚獣が床を叩いていたので、どうやらそこに座れ、ということらしい。雰囲気的に、とりあえず正座しておく。
座りながらミュウの方を見ると、床に転がり“ぜぇぜぇ”と息をしている。
こうやって改めて見ると、服は半分脱げて、涎を垂らしながら、肩で息をしている。
レイプ後のようだな。
召喚獣が一度ミュウを見て、再度こちらを向き、目が合ったところで、腕をクロスする。
――バッ!
やっぱり俺は怒られているらしい。
だってさ、ミュウって憎たらしいけどそこが可愛くて憎めない、ニクカワじゃん? イジメたくなるじゃん?
「ファラさん、あれはスキンシップですよ?」
――ババッ!
ダメらしい。再度バツ印をもらった。
「はい、すみません」
「ふっ、ザコめ、です」
召喚獣とそんなやり取りをしていたら、フラフラになりながらも立ち上がってきたミュウが見て、また煽ってきた。
「ふっふっふ、またやられたいようだな?」
「なっ、やめ、やめるです! あれはひきょーです」
手をワキワキさせながら、立ち上がろうとすると、また召喚獣の“タンタン”が聞こえた。
そちらを向くと、やっぱり両腕でバツ印を作っている。
……分かりました、分かりましたよ。
「じゃあ、行くかな。もう準備は出来ているんだろう?」
召喚獣やミュウとのやり取りを、女の子達と一緒に傍観していたマルカに聞いてみる。
「ひゃっ!? え、えと、はい! できで、できっ、できちぇ」
「落ち着け」
「すぅ……はぁ……、はい! できてましゅ!」
惜しい! 深呼吸して、わざわざ言い直したのに噛んだ。
噛みすぎだろう……これで城のメイドが務まるのか?
もし戻ってクビになったらウチで雇ってやろう……。
今度はマルカではなく、残りの女の子二人に直接声を掛ける。
「これ以上、ミュウで遊ぶとファラに怒られるから、行こうか」
「はい、お願いします!」
「はい……」
人間の方の子が元気ないけど、どうしたんだろうか?
まぁ、街に帰れば元気になるだろう。
屋敷の事をマルカとミュウに任せて、残り二人に触れてもらい、スワルトに飛ぶ。
「キミ達はスワルトに住んでいたんだよな?」
「はい! 送っていただいて、ありがとうございます!」
「僕は修行の途中で寄っただけであり、住人というわけでは……」
「そっか。別のところが良いなら送るけど?」
「いや、うん、大丈夫だ、です」
何か煮え切らない返事だな。何か悩みでもあるのか?
「タカシ様、私はこれにて失礼いたしますね!」
「あ、あぁ、元気でな!」
「はい、それでは!」
エルフの子は、そのまま走って街の中に入って行った。
この人間の子――ルリアに気を取られていたので、神口で魔法の事を忘れさせられなかった……まぁ、一人くらいいいか。
「どうしたんだ? 悩みでもあるのか? 相談に乗るぞ?」
「タカシ殿、盗賊に捕まり、奴隷になっていた魔族の子を、屋敷で雇うことになったというのは、本当、でしょうか?」
「え、あぁ。ミュウか。そうだよ? もう家族は居ないようだし、ウチで面倒見ることにした。まぁ、俺の奴隷みたいなもんだな」
「その、もう一人、お傍に置くことはできない、でしょうか?」
何か真剣な顔でこっちを見つけているけど、何を言いたいんだ、このボインちゃんは?
「誰を?」
「あの、ぼ、僕を……」
「は? 何で? ルリアも家族が居ないとか?」
「いえ、僕の父はまだ生きています」
「じゃあ、どうして。家族も心配しているだろう?」
修行していたとか言ってたから、家は出てきているのだろうけど流石に心配はするだろう。
「ぼ、僕は修行中の身! ですが、ガインという輩に手も足も出ず……悔しかった」
「そうか。あいつ強かったもんな」
俺は一撃で倒したようなものだけど、ファラがボロボロにされていたし、強かったのだろう。
「そ、それで、ぼ、僕を! で、弟子にしてくだ」
「やだよ」
「即答!? な、何故です!」
「前さ、ランにも言われたことあるんだよな。強くなりたいから、パーティーに入れてくれないか的なことをさ」
「ラン殿が良くて、僕だダメな理由は何ですか!?」
あの時、アバンさんなら入れてあげる的な事を言った時のランの顔……思い出しただけでも笑える。
「その時は、今のように即、断ったぞ」
「しかし、現にパーティーに居るではないですか!」
「あぁ、あいつはもう俺のモノになったからな。だから、入れた。色んな意味でな」
「色んな……? ぼ、僕でも、その条件を満たせないですか!? 強く、もっと強くなりたいのです!」
ルリアに入れるのは簡単……じゃなかった。ルリアに入れたい。じゃない! 入れたい! あぁ! 煩悩が邪魔をする!
「じゃあ、俺のモノになれ。俺の奴隷になるなら考えてやる」
「それで強くなれるのでしたら!」
「あぁ、昼も夜も強くしてやるよ」
「感謝です! では、早速奴隷商のところへ! さぁ!」
「え、あぁ、そう、だな」
何なの、このボインちゃん。何でこんな乗り気なの……?
奴隷ジョブって、この世界で最下層に位置するんじゃないの? もう戻れないんじゃないの? まぁ、俺は戻せるけど。
ミュウの奴隷を解除したことを知っていて、いつでも解除できるから大丈夫だとでも思っているのか?
「おい、ルリア。奴隷になってしまったら、もう戻れないんだぞ、それでも良いのか?」
「はい。僕は強くなれたらそれで満足です!」
「何でそこまで強さに拘るんだ?」
「強さへの拘り、ですか……」
「あぁ、奴隷になってまで、強くなってやり遂げたいことがあるんだろう? まずはそれを教えてくれ」
このテンション、怖いからな。今の内に理由を知っておきたい。
「僕の本名は、ルリア・S・ツェルトンです。ツェルトンと聞いて分かりませんか?」
「知らん」
「そ、そう、です……か。僕の父――カール・S・ツェルトンは、剣聖なんです」
「へー」
「えっ? あ、あの、僕はカール・S・ツェルトンの娘です」
「うん、すごいな。それで?」
普通は剣聖と聞いて驚くのかもしれないけれど、正直おっさんの話なんかに興味はない。そこまでのボインになった、成長記録とかだったら興味はあるのだがな……。
「へ、あ、はい。ええと……」
長々とルリアとカールの関係について、話される。……長い。
要するに、小さい頃からカールにしごかれて育った。父を倒せるくらい強くなるまで帰ってくるなと、家を追い出された。そして、盗賊に襲われた。強くなるまで帰られない、だそうだ。
……バカじゃなかろうか。
「面倒だ、俺が倒してやろうか?」
「だ、ダメです! タカシ殿がいくら強くても、父は剣聖です! 剣においては右に出る者は居ないほど強いのです!」
「大丈夫だ。一撃で仕留める」
「い、いち、いちげっ」
そんな脳筋思考な親子喧嘩には付き合っていられない。
奴隷にしようと思ったけど、辞めようかな……。
「じゃあ、俺は帰るよ。強くなれよ?」
「えぇ!? ぼ、僕を奴隷にしてくれるのでは!?」
「そのおっぱいは魅力的だけど、何か面倒になった」
「おぱっ、ちょ、ちょちょっと、ま待ってください! 僕も連れて行ってくださいよ!」
このボインちゃん、しつこいな。
「なぁ、ルリア。お前、処女か?」
「はぁ!? そ、それが、どどど、どう関係するの、ですか!?」
「お前、俺の子ども作れるか? 奴隷になるって、そういう覚悟も必要なんだぞ?」
「つ、強くなるまで作る気はないです!」
「じゃあ、奴隷の件は無しだ。お前達の親子喧嘩に付き合っているほど俺はヒマじゃないんだよ。別に弟子入りするなら、俺じゃなくても良いんじゃないか? 世の中に、強い奴は沢山居るだろうし」
「タカシ殿は強いです。間違いありません! 聞いた話によると、盗賊もほぼ一人で壊滅させたそうではないですか」
女の子達は地下に居たから、俺が戦っているところを見ていないはず。誰か話しやがったな……恐らくマリー辺りだろう。
あいつは後でお仕置き決定だな。
「奴等は本当に強かった。各々の強さは、僕の父に及ばない、とは思いますが、そいつらをたった一人で屠れるほどの実力の持ち主、この大陸で思い当たる人物はタカシ殿以外に知りません!」
「俺はそんなに強くない。買い被りすぎだ。ミリアの方が魔力が高いぞ? 最年少魔導士だぞ?」
「ミリア殿の魔法もすごいと聞いておりますが、それを教えたのはタカシ殿という話ではありませんか!」
ミリアも話しやがったのか。あいつら……。
「あいつには魔法の才能があって、俺には教える才能があっただけの話じゃないか」
「だからこそです! 僕に、稽古を付けてください!」
「やだよ。めんどくせぇ」
「そこを何とか! 何でもします! 奴隷にだってなります!」
うーむ、面倒なことになった。
いっその事、放置して屋敷に飛ぼうかな……。
「そ、その、こ、子どもを作るのは勘弁していただきたいですが、夜は、あの……努力しますので」
「何をだ?」
「マリー殿から伺っております。そういう行為がお好きなのだと。自信はないですが、頑張りますので!」
「性行為か?」
「せっ、うぅ、は、はい……」
仕方ないなぁ。
そこまで言うのなら、入れないわけにはいかないよな。色々と。
「分かった。但し、俺の言う事には必ず従うこと。いいな?」
「はいっ!」
「夜も、俺が何も言わずとも、お前の方から奉仕してくれよ?」
「は、はい……」
――ガリッ!
「いってえ!」
「ど、どうされたのですか!?」
今まで黙っていた召喚獣が、突然爪で頬を引っ掻いてきた。
「ちょっと! ファラ、痛いだろう!?」
――ガリッ!
「いつっ! やめろって! いてぇ!」
ファラのヤキモチは嬉しいけど、痛い。
「ミリアも一緒に居るのか?」
――ポン
「ミリアに言ってくれ、俺は胸の小さな子が好きだから、と」
――ぺちぺち
何だこの新しい動作は……。
引っ掻いたところを爪を立てずに触れてきた。
傷付けてごめんということなのだろうか。優しいタッチだ。
「あ、そういえば、全員の胸を触った感じだと、ファラのはミュウより小さいから、俺はファラが一番好きだということになるのか」
――ぺろぺろ
やはりそうなのか。さっきの優しいタッチも、もう怒っていないアピールで、舐めるやつは、いつもの大好きアピールか?
でもよく考えたらファラって、年下であるミュウより、全体的に小さいんだよな。もっと甘い物食べさせよう。
「ありがとな。俺もファラの事好きだぞ」
――たしっ!
「あの、結局僕はファラ殿に反対されたのでしょうか……」
「いや、パーティーに入って問題なさそうだぞ。良かったな」
「本当ですか! ありがとう、ファラ殿!」
――ポン!
「はい、だってさ。それじゃあパーティーに入れるぞ」
ルリアからカードを受け取り、パーティーに加入させる。
これでパーティーの人数がフルになってしまったな。でも、別にパーティーが一つじゃないといけないということはないはずだ。
ユニークなんかは複数のパーティーで狩るっていうしな。
次から女の子を誘う時は、別パーティーを作ろう。
とりあえずはルリアをどうにかしないといけない。
MPもそこそこ回復しているので、まだやったことのない奴隷契約でも行ってみるか。
「ルリア、ちょっとこっちに来い」
外壁沿いに人の気配がないところまで移動する。
「ここら辺で良いか。ルリア、胸を見せろ」
「へぁっ!? こ、こここ、ここで、ですか!? まだ昼です!」
「いいから早くしろ」
「えぇっ!?」
躊躇っていたので、無理やり上着――鎧を剥がし、服の中に手を突っ込んで胸を揉む。
「あんっ! ちょ、ちょっと、おまま、お待ちを! お待ちを!」
「静かにしていろ」
「むー、むぅーっ!」
大きな声でうるさかったので、口を塞いで胸を揉む。
あ、違った。揉むのが目的じゃなかったんだ。
そう、奴隷契約だ。
「ルリア・S・ツェルトンをタカシ・ワタナベの奴隷にする」
「むーっ! んんーっ!」
詠唱後掌が光っていたが、しばらくすると光が収まる。
終わったのか?
確認の意味も込めて、突っ込んでいた手を抜いて、服を捲り上げ胸の谷間を確認すると、そこにはしっかりと奴隷紋があった。
奴隷一覧を見てもルリアの名前があるので問題なさそうだ。
ルリアのステータスを見ると、奴隷と使徒があったので、間違いないだろう。ついでにサブジョブを使徒にしておく。
▼ルリア・S・ツェルトン Lv.21 剣士
HP:212(162+50)
MP:126(126+0)
ATK:113(90+23)
MAG:54(54+0)
DEF:107(72+35)
AGI:72(72+0)
STR:5(+ -) VIT:4(+ -) INT:3(+ -) DEX:4(+ -) CHA:6(+ -) (20)
JOB:M剣士Lv.21 S使徒Lv.1 村人Lv.6 奴隷Lv.1
SKL:スラッシュ 攻撃力上昇小 模倣
EQP:アイアンソード アイアンシールド レザーアーマー レザーガントレット レザーブーツ
GLD:白貨0、金貨0、銀貨0、銅貨0
こいつ、冒険者になっていないのか。
早速ギルドに連れて行ってやるか……。
「ルリア、これで今からお前は俺の奴隷になった。とりあえずは、冒険者ギルドに行くぞ」
「ミュウ殿から聞きましたが、奴隷にしたり解放したりするのは、どうやっているのでしょう?」
「秘密だ。絶対に口外するなよ?」
「は、はい……」
一応口止めしておくが、ウチのパーティーは基本口の軽い奴しか居ないから意味はないだろうな。
まぁ、口を滑らしたらお仕置きだから、神口で口止めする必要は特にないだろう。
それにしても、文無しなのかよ。
金は盗賊に渡したのか、奪われたのか知らないが一文無しだ。
そういえば、お金ってインベントリに入っていると思っていたんだけど、別枠のようなんだよな。
だから奪えないし、渡したのだろう。
もしかしたら物理的に奪えるかもしれないので、後でミリア先生に聞いておこう。
ルリアには、脱がせた鎧を自分で装着させ、着替え終わったところで冒険者ギルドに向かい、ルリアを冒険者登録しておく。
「そうだ。申し訳ないです、僕、登録してないんだった。あれ? でも何で分かったんですか?」
「勘だ」
「勘、ですか……僕も、もっと鍛えます!」
無駄であろうが、何も言わないことにする。
さて、全員送り届けたし、パーティーメンバーもフルメンバーになった。後はヴェルム共の賞金を貰いに行くだけだな。
とりあえずは、このままスワルトの騎士団だ。
ルリアを連れて、騎士団の詰所に向かう。




