第87話 ヤキモチ
翌朝……相変わらず、おかしい。
寝る時はランを抱き枕にしていたはずなのだが、やはりファラにすり替わっている。俺が寝ている間に何があったのか……。
ファラをゆっくり引き剥がし、外を見ると、まだ暗い。
そこで何処からか食べ物の匂いがすることに気が付いた。
恐らく、マルカが朝食の準備をしてくれているのだろう。メイドだから当たり前なのかもしれないが、朝起きて、既にご飯が出来ているというのは嬉しいものだな。
そんなちょっとした幸せを感じながら、静かに部屋の外へ出る。
予想通りマルカが朝食の準備をしていたが、誰かと話している。
「こっちは終わったです。そっちは何やってやがるですか?」
「みゅーちゃんに切ってもらった物を炒めるんだよ」
「みゅもやるです。覚えるです」
「うん、じゃあ見ててね」
ミュウとマルカの会話を聞くと、俺と喋っている時のマルカとは思えないほど、普通に、噛まずに喋ってるな。
雇い主の喋ることが緊張するのは分かるけど、ショックだな。
試しにゆっくり近付き、二人に話し掛けてみる。
「二人ともおはよう」
「お、おはようごじゃます!」
「出やがったです!」
「出やがったとは何だ。朝はおはよう、だろう?」
「お、おお、おは、よう、です」
「そう。朝はおはよう、だ。良く出来たな。偉いぞ」
頭を撫でてやる。ちょうど良い高さに頭があるので、撫で易い。
「ふふん、みゅはやればできるです」
「わ、わたしもできるでしゅ!」
「はいはい、偉い偉い」
二人の頭を撫でてやる。
このまま、ミュウの言葉遣いが感染しなければ良いが……。
「もうできますので、タカシしゃまは、すすわてお待ちください」
「ありがと。じゃあ、ミュウ。皆を起こしてきてくれるか?」
「みゅは料理見るので忙しいです。エロ魔人が行くです」
「はいはい、分かったよ。ミュウ、覚えてろよ」
「ふふん、悪役のセリフです。みゅが勝ったもどーぜんです」
確かに悪役の捨て台詞っぽくはあるが、ミュウに負ける要素が、何もない。その内ヒーヒー言わせてやる!
二人を残し、皆の寝ている部屋に戻る。
部屋に入ると、既に皆起きて、着替えている最中だった。
「きゃあっ!」
「タカシ、おはよ」
「おはようございます、タカシ様」
「おはよー」
ミリアの恥じらう姿が心地良い。
「お前等三人には、もう恥じらいというものがないようだな」
「はじ、らい?」
「あるにはありますが、その、タカシ様には、もう既に、隅々まで見られておりますので……」
「だって、この屋敷ってタカシくんしか男居ないもん」
ファラは良く分かってないようだ。マリーとランは、間違っちゃいないが、うん、何かもう考えるのが面倒になった。
「飯が出来るから呼びに来たんだよ。ほら、早く着替えなさい」
そう言いながら、ミリアに近付く。
「わ、分かりましたから、近付かなくてもよくないですか?」
「あれ? ミリア、胸大きくなった?」
「えっ? 本当ですか!?」
まぁ、嘘なんだけどね。
朝だから、少し寝惚けているのだろう。ミリアは朝弱いしな。
隠していた手を解き、両手で下乳を上げたり下げたりしている。持ち上がる物は無いのに。
「ほら、こことか」
「みゃんっ!」
きゅっと摘まんであげると、何か可愛い声が聞こえた。
初めて聞く声だな。
「な、なな、何してるんですか! 朝っぱらから!」
「目が覚めたようだな。それじゃあ飯に行こうか」
「もう! 初めから起きてます!」
そのまま放置して部屋を出る。
リビングに戻ると、女の子達も起きてきていたようだ。さっきのミュウと俺の会話で起きたのかもしれない。声が大きかったしな。
「皆、おはよう。ちゃんと眠れたか?」
「おはようございます! はいお陰様で!」
「タカシさま、おはようございます」
次々に挨拶をされるので、適当におはようと答えておく。
マルカとミュウの二人では、一度に全員分の食事を用意する事ができなかったようなので、先にウチのメンバー分と獣人の子達の分だけ用意してもらう。
「ミリア、今日は一日皆をフリーにする。お小遣いもあげるから、買い物したり自由に過ごしてくれ」
「タカシさんは……?」
「俺は女の子達を送り届けてくる」
「分かりました」
さすがに女の子達の前で、パーティーメンバーだけにお小遣いを渡すのは気が引けるので、後で渡そう。
「何処か行きたいところはあるか?」
「うーん、私は協会の書庫に行ってみたいです」
「どこの街の協会だ?」
「ザクゼルかオスルムです」
「あー、ザクゼルか。あそこ一回会員になるの断られているから、オスルムにしておこう」
「うーん、そうですね。お願いして良いですか?」
「分かった。任せろ」
「ファラは?」
「おはか」
「墓? あぁ、ママのところか」
「うん」
「分かった。じゃあファラもオスルムな」
「マリーは?」
「私は、特に……。まだタカシ様のお役に立てませんので、魔法の練習でもしておきます!」
「そうか」
「ランは?」
「うーん、ランも特にないんだよね……あ! 可愛い部屋着とか、下着とか欲しいかも!」
「おぉ、それは良いな。俺が脱がす楽しみも増えるし」
「べ、べつに、その為だけじゃない、よ? 単に欲しいだけだよ」
「俺の事も考えてくれてるんだな。ありがとな」
「ち、ちがうって! もー! 皆居るじゃん……」
これで皆の予定は決まったな。ただ、マリーが一人可哀想だし、何とかしてやるか。
「それじゃ、小遣いはミリアとランに預けておく。遠慮なく使ってくれ。あと、折角だから、マリーもランと買い物に行ってこい」
「はい! ありがとうございます!」
「あと、ランには多めに渡しておく。ついでに、皆の下着を買っておいてくれ。とびっきり可愛いやつを、な!」
「任せてよ!」
ランはアホだけど、一応姫だ。姫のセンスを信じよう。
マリーも居るし、大丈夫だと思いたい。
「わ、私は、見せる為じゃないので……その、普通、普通ので!」
「あ、ファラ、ミリアにお小遣い渡しておくから、花とか甘い物を好きに買って良いぞ」
「うん、タカシ大好き」
ミリアが空気を読まない発言をしていたので、無視してファラに話を振っておく。……大好き、か。憂い奴め!
そんなやり取りをしている間に食事が終わる。
獣人の女の子達も食べ終わっていたので、話し掛ける。
「まずはキミ達を送っていくよ。準備してくれ」
「「はい!」」
獣人の子達はバタバタと部屋に戻って行き、他の子達は談笑しているので、今の内にミリアには2金、ランには5金渡しておく。
まだ金銭感覚が良く分からないので、適当ではあるが、これだけの大金があれば、何でも買えるだろう。
「こんなに!?」
「これなら好きなの買えそうだよー。ありがとー」
予想通りミリアは驚いているな。でもまぁ、たまには、な。
そこで女の子達が戻ってきた。
「お待たせしました!」
「すみません、挨拶してきました!」
用意するように言ったけど、そういえば持ち物なんて俺があげた雑貨くらいしかないよな。
バタバタしていたのは、他の子に挨拶を済ますためだったのか。偉いな。良い子達だ。
「ファラ、こないだの肩に乗ってた子を一匹召喚してくれないか」
「ん?」
「お前達をいつ迎えに行けば良いか分からないだろう?」
「わかった」
ファラに、狸のような猫のような召喚獣を召喚してもらい、肩に乗せる。
「ねね、ラン達はどうすればいいー?」
「お前達はクドラングだし、歩いて戻って来い」
「えぇー。ラン達だけ扱いひどくない?」
「アバンさんに馬でも借りなさい」
「ぶーぶー。分かったよ……」
文句を言っているけど、何とかしてもらおう。
「それじゃあ、ラン、マリーいくぞ」
「はーい」
「はい!」
「ミリアとファラは少し待っていてくれ」
「分かりました」
「ん」
ランとマリーには肩に手を乗せてもらい、女の子達には、こちらから肩に触れ、城門に飛ぶ。
――シュンッ!
「ぬぁあ!? ひ、姫様!?」
また門番を驚かせてしまう。
今回は突然現れた俺ではなく、ランへの驚きが大きいようだ。
ランにアバンを呼んでくるよう伝え、門の外で待つ。
「おはようございます、タカシ様。今日はどのようなご用件で?」
「おはようございます、アバンさん。えっと、今日は、この子達が盗賊に捕まっていたので保護してきました」
「なんとっ!?」
「それで、この子達を村まで送り届けてくれないかと思いまして」
「もちろんですとも! キミ達、怪我などはなかったのか?」
「はい! 良くしていただきました!」
「まだ住まわせていただきたかったくらいです」
嬉しい事言ってくれるねぇ。奴隷になるなら喜んで、と言いたいところではあるけど、奴隷になる前に救ったのに、俺がこの子達を奴隷にしてしまったら何の意味もないもんな。
「タカシ様、同胞をお救いくださり、ありがとうございます。王に代わり、お礼申し上げます」
「いえいえ、私用で盗賊狩りをしたら、偶然この子達が囚われていただけなので、そこまでお礼を言われるほどの事ではないですよ」
「この子達は、必ず家まで送り届けます」
「俺が行けば良いんですけど、場所が分からないので助かります」
これで、まず二人終わった――あ、いや、まだだ。
「キミ達、ちょっとこっちに来てくれる?」
「え?」
「はい?」
アバンやマリー達から少し距離を取り、神口を発動して、ミュウが奴隷ではなかったと伝えておく。
記憶を操作するのは初めてだけど、うまくいくかな……。
念の為、口頭でも伝えておく。
「俺がやったことや、俺が使った魔法は内緒だよ?」
「は、はい」
「もちろんです!」
口止めも終わったので、解放する。
「もうお話しは終わりですか?」
「はい、もう大丈夫です。あぁ、それと、マルカの事なんですが、ウチで俺専属のメイドを一人雇う事になったんですよ」
「ほほう、流石タカシ様ですね」
「でも、その子はまだ子どもでメイドなんて初めてだから、しばらくマルカに色々と教えてもらいたいんですが……」
「あぁ、そういうことですか。えぇ、大丈夫ですよ。ただ、見習いなのでお役に立てるかどうか心配です」
「十分世話してもらってますよ。えと、そこでご相談なんですが、メイドってどのくらいお給料をあげたら良いですかね?」
流石に無給で仕事をさせるのは酷だ。
見習いとはいえ、未経験の子に家事を教えてもらうだけの為に、ウチに居てもらうのだから、給料は出しておかないとな。
「ふーむ、メイド長までになると月4、5金ほど出していますが、あの子はまだ見習いの身。1金もあれば高給ではないかと」
「なるほど。参考にさせてもらいますね」
「また追加でメイドが必要な際はお声掛けください」
「はは、二人も居れば十分ですよ」
メイドだらけになっても困るし。でも、夜のご奉仕をしてくれるメイドであれば大歓迎で雇うが。
そんなメイドは居ないだろう。それなら、奴隷を買えって話だ。
「それじゃ、この子達のことお願いしますね」
「確かに承りました」
「最後に、マリーとランを残していきますが、自由にさせてやってください。ただの買い物なので」
「はい、分かりました」
「それじゃ、マリー、ラン、例の物、任せたぞ?」
「分かってるよー。とびっきりの選んじゃうんだから!」
「お任せください!」
こっそり、マルカとミュウの下着もお願いして、頼もしい言葉を聞きながら屋敷に戻る。
あぁ、かわいい下着が楽しみだ。
マルカとミュウも、その内下着を脱がせられるような関係になると良いな。いや、なろう!
「お待たせ」
「いつでも大丈夫です」
ちょうど、ザクゼル組も朝食を食べ終わっていたようで、ミリアから準備完了の報告を受ける。
これからMP消費が激しくなるので、先にマナポーションを飲み、女の子四人と手を繋いでザクゼルに飛ぶ。
そのまま門を抜けて、騎士団の詰所に入る。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。朝早くからどうしたのだ?」
「盗賊団ヴェルムについてお話があるので、騎士団長さんをお願いできませんか?」
「む、何か事件か?」
「幹部を捕えたので、その報告です」
「それは真か!? うーむ、しかし、まだ団長は来ていないのだ。呼びに行くので、ここでしばし待たれよ」
奥の部屋にある椅子を案内された後、待つように言われたので、女の子四人に座ってもらう。
「ちょっと盗賊連れてくるから、待っててくれ」
「分かりました。お気を付けて!」
ちょうど部屋には騎士などが居なかったので、屋敷の地下室前に戻り、鍵を開けて、ヴェルムファミリーを連れて詰所に戻る。
「わぁっ!?」
「あぁ、すまん驚かせたか?」
「戻るのが早すぎてびっくりしました」
「あぁ、行って、触れて、戻るだけだからな」
連れてくると言ってから、二十秒くらいしか経ってないもんな。
準備が完了したので、神口を発動。
奴隷解除や、俺が使った魔法などを忘れさせておく。
神口での処理が終わったところで、ちょうど人が入ってきた。
「待たせたな。ザクゼル騎士団、団長のソーン・アス・パラスだ。キミか、ヴェルムの幹部を捕えたというのは?」
「どうも、俺は冒険者のタカシ・ワタナベです。捕えたヴェルムはこいつらです」
「どれ……ぬぉ!? ガインではないか! これはお手柄だぞ! こいつはヴァンの息子で――」
「あぁ、ヴァンも居ますよ」
「なにいいい!?」
一番手前の布団だけ剥いで確認していたので、その横にヴァンが居ることを教えてあげる。
目を見開いて、こちらを睨んだまま固まっている。そこまで驚くこと……だよな。ボスだもんな。
「ガインとヴィルは、訳あって殺してしまったんですが、ヴァンは生かしてます。確認してください」
「ほ、本当にワタナベくんがやったのか!?」
「はい。ただ一人でやったわけじゃないですけどね。パーティーで奇襲を掛けて討伐したので」
「そ、そうか……我々も何年にも渡ってやり合ったのだが、よもや冒険者に遅れを取るとは……」
冒険者に先を越されて悔しいのか、床を殴っている。
でもまぁ、脅威が去ったのだから良いじゃないか。
「それで、この子達が捕えられていたので保護してきました」
「そうか。ご苦労であった」
「この子達のこと、お願いできますかね? 可能であれば、家まで送ってあげてほしいんですが」
「ヴェルム討伐に比べれば、お安い御用だ。おい、今日周辺の村を回る部隊があるだろう。彼等に送らせろ」
「はっ」
初めに応対してくれた騎士に、指示が出る。
「タカシ様、このご恩は忘れません!」
「村の近くに来られましたら、是非お声掛けください!」
「ありがとうございました!」
「また、お会いできます、よね?」
――ペシペシ!
「……あぁ、皆元気でな。また会おう」
一人だけ脈がありそうな子が居たけど、ファラが聞いていたか、召喚獣が肩ではなく頬を叩いてきたので、無難な挨拶をしておく。
危うくアドレス交換――もとい、住所を聞くところだった。
女の子達は騎士と一緒に外に出ていく。
「報酬なのだが、今はここにない。しばし時間をくれぬか?」
「大丈夫です。待ちますよ」
「そうか、助かる」
「あぁ、それと、ついでにこいつらのアジトを壊滅させたんです。そこに盗賊どもを捕えているので、回収していただけます?」
「なんと……キミ達はどれだけの大部隊で奇襲を掛けたんだ!?」
「少々大きめの火力で……それより、どうでしょう。回収していただけるなら、場所をお教えしますけれど」
「ヴェルムのアジトは把握しておる。今から出立したとして、回収したとしても、戻るのは夕方だな……」
こちらをチラチラ見ながら、時間を気にしている様子だ。
あぁ、報酬を渡すのが遅れることを気にしているのか。
「報酬はそれからでも良いですよ。俺もこれから用事があるので」
「そうか! すまぬな! では早々用意しよう。盗賊共は何人ほど捕獲したのだ?」
「うーん、46人だったと思います。全員手足は拘束はしていますが、ただ埋めて生け捕りにしているだけなので、土から出す時には注意してくださいね」
「埋めっ!? 46人を埋めるとは……キミ達のパーティーには、高名な魔導士でも居るのか!?」
「はい。でも、盗賊狩りなんかやったとバレたら、協会に怒られるかもしれないので、内緒でお願いしますね?」
「ふむ、そうだな。世の為になることをしたとしても、あいつらはうるさいからな。分かった、約束しよう」
念のためカードを見せてくれ、ということだったので、ジョブを魔術士に変えて見せておく。
盗賊間の裏切りかもしれないと疑われたのだろうか。何事も確認しておくのは騎士団の仕事でもあるのだろう。
カード確認後、団長が紙に何かを書いて渡してくる。何が書いてあるか分からないが、団長が言うには、名前と顔だけでは不安なので、この紙と交換で報酬をくれるらしい。
律儀だな。まぁ金額も大きいだろうし、証書は必要か。
「これで大丈夫だな。それにしても、キミも魔術士だったのか」
「えぇ、まだまだウチの魔導士には叶いそうにありませんが」
「そう謙遜するな。ヴェルムを捕えたのだ。大したものだ」
「ありがとうございます。それでは、また夕方顔を出しますね」
「あぁ、我々も急いでアジトに向かうことにしよう」
詰所を出て、団長が見えなくなったところで、屋敷に戻る。
次はオスルムだ。
「ミリア、ファラ、お待たせ」
「いえ、いつでも行けます!」
「はやくいこ」
ファラが待ちきれないようだったので、すぐにミリアとファラ、オスルムに送る三人と手を繋いでからオスルムに飛ぶ。
オスルムでは、騎士団には行かず、パーシルの所に向かうつもりなので、ミリアとファラは先に解放しておく。
「後は俺がやっておくから、ミリアとファラは行っておいで」
「え、でも。別に急ぎではないですから」
「ファラを見ろ。……な? だから、行っておいで」
ファラがずっとソワソワしているのが分かる。珍しい。
ミリアもそれに気が付いたようで、クスクス笑っている。
いつもはあまり表情の分からないポーカーフェイスなんだけど、好きなお菓子や果物を買って良いというだけで、これだ。
「ふふ、ファラは本当甘い物が好きだね」
「好き。タカシと同じくらい」
「あ、そうだ。ミリア。ジョブについて調べてきてくれないか? どんなジョブがあるか、条件や、派生ジョブ、上位ジョブとか」
「はい、任せてください! それじゃあ、行ってきますね」
「おう、調べものを頼んでおいて言うのもなんだけどさ、ミリアもちゃんと楽しんでこいよ? ファラは、帰る時教えろよ?」
「はい!」
「わかった!」
ミリア、ファラと別れ、パーシルの館に向かう。
その道中で神口を使い、諸々を忘れさせておく。
「これはこれは、タカシ様。本日はどのようなご用件でしょうか」
門番にパーシルへの面会を頼むと、執事のヴェルトが出てきた。
「オスルム領地の女の子達が、盗賊に囚われていたので、保護してきたんです」
「それはそれは、領民をお助けいただき、ありがとうございます。ただ、現在、主は留守でして……」
「そうなんですか。では騎士団にでもお願いしてきますかね……」
仕方なく騎士団に行こうとすると、引き留められる。
「いえ! タカシ様がこうやって我が主を頼って来られたのです。ここは、私の方でお預かりさせていただきます!」
「そうですか。ではお願いできますか? この子達を故郷まで送り届けて欲しいんですが」
「もちろんです。すぐにご用意させていただきます」
「助かります。じゃあ、キミ達、もう捕まらないようにな?」
「はい!」
「もうお別れなのですね……」
「ありがとうございました!」
――ペシペシ!
分かってるって……普通にお別れすれば良いんだろう?
「また会おうな!」
――ペペペペペぺ!
痛い! つめ、爪はやめて!
「いてて……、じゃあ皆元気でな! ヴェルトさん、あとはお願いしますね? パーシルさんにもよろしく言っておいてください」
「はい、お任せくださいませ」
手を振って別れを告げる。
「痛いじゃないか。別に何もしていないだろう?」
――タシ!
「お小遣い無しにするぞ?」
――タシタシ! タシ……
「うそうそ、ごめんな。ただのヤキモチだったんだよな?」
――ポン!
「そっかそっか。後で可愛がってあげるな?」
――ポン!
召喚獣相手だと、何故かファラの感情が良く分かるな……。
そんな事を考えながら、召喚獣の頭を撫でつつ、屋敷に戻る。




