第84話 モフモフ
かき氷を食べ終わった後、マナポーションを飲み、ファラのぷにぷにを堪能しながら、確認しておく。
「なぁ、ミリア。シュスルスの森って何処にあるんだ?」
「ふんっ、知りませんっ!」
「何で怒ってんの?」
「怒ってませんっ!」
「何で拗ねてんの?」
「拗ねてませんもんっ!」
「じゃあ、俺が怒って拗ねようかなー」
「何でですかっ!」
盗賊からアジトの場所を強制的に聞き出した魔法――神口について知りたいらしいが、これは口では説明できないもんな。
それにミリアでは絶対に使うことができないスキルだし、それを分からせたら分からせたで拗ねるだけだし、面倒だな。
「じゃあ、もうミリアには何も聞かないし、何も教えない」
「もーう! またそうやって! 何でも教えてくれるって、言ったじゃないですかー! 何でアレだけ教えてくれないんですか!?」
「えー。だってアレは絶対に俺にしか使えないんだもーん。それを知ったら、ミリアちゃん拗ねるじゃないですかー」
「拗ねないです! というか、その喋り方何なんですか!」
右隣の椅子に座っているミリアを抱き寄せて、頬にキスをする。
「きゃっ!」
「ね、教えて? シュスルスの森、何処にあるの?」
「もう! また誤魔化すんですね……」
「アレは今度、手取り足取り腰取り教えてあげるから。ね?」
「はぁ……もう良いです。シュスルスの森は、ザクゼルから北東に半日くらい歩いた所にあります」
「森に湖は何個くらいある?」
「一つしかないです。森に入って更に歩いたところです」
「さっすがミリアちゃん! 良く知ってるね! 大好きだよ!」
「だっ……す! もう! 魔族の国に近いところなので知っていただけです。それと、そのちゃん付け止めてください!」
ザクゼルから半日、更に歩いたところか……。
早朝にザクゼルを出発して、森に到着、そこからアジトに向かって、更に二時間くらい戦ったとして、夕方までには何とかなるか?
「いつまで触っているんですか?」
「え? あぁ、ごめん。考え事してた」
ミリアの胸とファラの腹を揉みながら考え事をしていたようだ。
「ねぇ、思ったんだけど、タカシくん、いつもそんな感じなの?」
「あ? 今更だな。俺はずっとこんな感じだぞ?」
左隣の椅子に座っているランも抱き寄せて、胸を揉む。
「あんっ! ちょ、ちょっと! 別にランにはしなくて良いよ!」
「ついでだ、ついで。俺に慣れろ」
「もー、ランは慣れるつもりはないんだけどなー」
良く考えたら、エルフの男共がずっと見ているんだった。
こいつら勇者だと思っているみたいだし、勇者の評価を下げる意味も込めて見せつけておこう。
「流石勇者様だぜ……」
「さっき聞いた話では、あの獣人のクドラングの姫らしいぜ?」
「まじか……勇者様うらや……いや、すげぇ……」
これあかんやつや。逆に評価上がってるかもしれない。
ミリアとランを椅子に戻す。
――ダダダダッ!
そんなやり取りをしていたら、一人のエルフが走ってきた。
「勇者様ー! 騎士団が到着しました!」
そのエルフの方を見ると、後ろに騎士団数人が歩いてきていた。
ひょいっとファラを持ち上げ、肩車した後、騎士団の方へ行く。
「おお、先程の。お早いお着きで」
「そういえば申し遅れていたな。私は、スワルトで騎士団長を務めさせていただいている、カピル・ファ・ドーンだ」
「ドーンさん、どうもです。俺はタカシ・ワタナベ。冒険者です」
「ワタナベ殿。早速だが、盗賊は何処に拘束しているのだ?」
「土の中です。なぁ、解除するから連れてきてくれないか?」
近くにいたエルフに連れてくるよう依頼する。
「承知しました、勇者様!」
土の棺を解除したところに、エルフが走って行く。
「ん? ワタナベ殿、勇者というのは?」
「あぁ、何か村を救ったって事で、彼等が勝手にそう呼んでるだけです。俺はただの冒険者なので、気にしないでください」
「ふむ。そうか。まぁ、分からないでもないが、しかし、うーむ。我々エルフが、そう簡単に勇者と……」
何か考え出したので、話を変えておく。
「えっと、狂賊のゴルドって知ってますか?」
「知っているも何も、ヴェルムの大幹部ではないかっ!」
「あぁ、そうなんですか。実は捕えた中にそいつが居たんですよ」
「なん、だと!? 通りで簡単に落ちなかったわけだ……」
カピルの話では、何度か討伐隊を編成して討伐に向かったらしいが、逃げられたり、罠に掛けられたりで攻略できなかったらしい。
「でかした! さぞ、高名なメンバー達で討伐に出たのであろう。今後も依頼を行うかもしれぬ、是非その者達を紹介してくれ!」
「おぉ、直接の依頼は嬉しいですね。えっと、この子がミリア」
「こんにちは。ミリア・ウェールです」
「この子がファラ」
「ファラ。こんにちは」
「この子がラン」
「どうもー。ランでーす」
「あぁ、後一人はちょっと訳あって休んでます」
カピルがキョロキョロ周りを見ている。
「どうされました?」
「ん? 他のメンバーは、もう帰ったのか?」
「あぁ、盗賊をここまで運んでもらうのに、この村の住人の手を借りました」
「いや、違う。他に戦ったメンバーのことだ」
「このメンバーだけですよ?」
「なん、だと……!? 我が騎士団で出来なかった事を、この少女達だけで成し遂げたというのか!?」
まぁ、そうなるよね。
大丈夫。フォローは考えている。
「あぁ、このミリアは体は小さいですが、魔導士なんですよ。だから、奇襲を掛けて高火力魔法でドーンと一網打尽です」
「小さいは余計です!」
「なんと……。そうなのか。素晴らしい!」
そんなやり取りをしている間に、盗賊共の引き渡しが終わった。
「カピル様、全部で二十八名。確かに捕縛完了しました」
「うむ、ご苦労。ワタナベ殿、ミリア殿、報酬の事もある。実際にアジトを攻略した際の話も聞きたいしな。スワルトに戻って、食事でもしながら、話でもどうだろうか?」
「うーん、明日急用があるので、これからすぐに移動しないといけないんですよ。明後日、伺うということではダメですか?」
「了解した。では、明後日までにギルドの方にも報告しておこう」
明日はシュスルスの森に行く予定なので、断っておく。
「お手数お掛けします。あぁ、それとお願いしたいことがあるんですが良いですかね」
「何でも言ってくれ。それだけの功績を上げたのだ」
「えっと、この村、奴隷狩りに遭って若者は居ないし、男達はほぼ盗賊に殺されちゃったんですよ。何とかならないですか?」
「そうだな。奴隷狩りの事は聞き及んでいる。開拓という名目で、物資や人員の便宜を図ろう」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
「あぁ、任された」
約束は取り付けたので、もうこの村は大丈夫だろう。
後はマリーだけだな。
「では、我々は戻る。また会えることを楽しみにしているぞ」
「はい。それでは」
騎士団と別れて一息ついたので、また先程まで座っていた椅子に座り、ファラを肩から下ろし膝に座らせる。
「タカシさん、明日の用事って何ですか?」
「明日は、シュスルスの森に行く」
「えぇ!? また盗賊狩りですか?」
「あぁ、俺達が行くところに絡んでくるヴェルムが、いい加減うざくなってきたからな。それとマリーの復讐の意味もある」
「なるほど……ほとんどタカシさんの私怨だと思いますが、マリーの件は協力します」
明日の予定などを話していた時に、ふと思い出した。
「あぁぁぁ! 忘れてた!」
「わっ! 何なに、どうしたのよタカシくん」
「盗賊は引き渡して安心していたけど、そういえば、エルフで奴隷になっている子達が居たんだった!」
「ああああ! そうですよ! まずいです! どうしましょう!」
「ミリア。ちょっと奴隷の子達を連れてきてくれ!」
「はい!」
ミリアに奴隷の子達を連れてきてもらう。
でも、ここで奴隷紋を解除するのは目立つな……昨日借りていた家でやるか。
「ちょっと出掛けてくる。ここで待っててくれ」
「ん」
「もー。タカシくんは忙しいなぁー」
家に走っている時、ちょうどミリアが奴隷二人を連れてきていたので、一緒に家の中に入る。
「ミリア、外で見張っていてくれ。誰も中に入れるなよ?」
「分かりました」
ミリアを見張りに出し、奴隷二人を椅子に座らせる。
こうやって解除する準備を整えたのは良いが、ミリアの時は倒れてしまったんだよな。
前回がMP1200くらいで、八割――1000くらい消費したんだっけ。
あれからMPは約二倍になったけど、大丈夫だろうか。
奴隷二人は何事かとオドオドしている。
「今から、ちょっとした儀式を行う。もし、俺の意識が無くなったら、外のミリアを呼んでくれ」
「え、あ、は、はい」
「はい」
「じゃあ、開始する。二人の奴隷紋は何処にある?」
二人は互いを見た後、何かを察したのだろうか。互いに頷いて、上着を脱ぎ始めた。
これはまた形の良い胸ですね――じゃなくて、一人は肩に、もう一人は胸の下に奴隷紋がある。
肩なら別に服を脱ぐ必要なくない? 伸縮しない服だと肩が出せないのか? まぁ得をしたから良いか。あぁ、揉みたい。
二人のカードを見せてもらいつつ、MPは全開間近だが、マナポーションを飲んでおく。
主の名前を確認した後、MPを確認しながら、肩に触れて奴隷紋を解除してみる。
「ぐぅ……」
手を離し、奴隷紋を確認すると、紋は無くなっていた。
それにしても、意識は失わなかったが、やっぱり一気にMPが減るとクラクラするな。
案の定、MPは1000ほど消費している。これならもう一回いける。
「はぁ……はぁ……」
「あ、あの、だい、じょうぶ、でしょうか?」
「あぁ、大丈夫。ふぅ。それじゃ次はキミだな」
胸に手を被せる。
「んっ……」
あ、間違えた。
胸の下の奴隷紋に掌を当て、解除する。
――ガスッ
意識が一瞬無くなったけど、テーブルに頭が当たった痛みで目が覚めた。
「がぁ……あぁ、良かった……成功か」
「あの、勇者様。私達に、何を、されたのでしょうか?」
「何故、そんなに疲れていらっしゃるのでしょうか?」
「はぁ、はぁ……えと、奴隷、解除だよ。奴隷紋を、見てごらん」
フラフラするので、テーブルに突っ伏したまま、むき出しの胸を見ながら答える。
「えっ!? まさかとは思ったけど、本当に!?」
「え、え、うそ、ほんと!? どうやって!?」
「キミ達の主である盗賊は連れて行かれたし、解除しておかないと死んじゃうところだったからね」
「あぁ、あぁ……」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
泣いて喜んでる。やった甲斐があったな。
「私達に出来ることであれば何でもします!」
「はい! 何でも言ってください!」
「じゃあお礼は、その体で払ってくれ」
胸の突起を突いて、要求を伝える。
「えっ!?」
「きゃっ!?」
「うそうそ。この事は黙っておいてくれ。それが俺からの要求だ。この事は、まだこの世界で数人しか知らない魔法だからな。誰かに知られたら、キミ達だと判断して、また奴隷に戻すからな?」
「は、はい……」
「し、承知しました!」
「ほら、キミ達のそんな姿を見られたら、俺がミリアに怒られちゃう。早く服を着なさい」
本当は体で払って欲しかったけど、今はMPが空に近い状態で動けそうにないし、二人相手はキツイから、仕方がない。
でも、胸に奴隷紋があった子は表情からして満更でもなさそうだけど……いや、いかんいかん。
マリーみたいに子どもが欲しいとか言われたら困るしな。
「ちょっと疲れた。もう、戻って良いよ。家を出る時に、外に居るミリアを呼んでくれる?」
「はい! ありがとうございました!」
「勇者様! このご恩は決して忘れません!」
「おう、これから村の復旧がんばってな」
テーブルに突っ伏したまま、手を振って応える。
二人が出て行った後、ミリアが部屋に入ってくる。
「タカシさん! 大丈夫ですか!?」
「あぁ、ちょっと精神力使いすぎてキツイ。皆のところまで連れていってくれないか」
「はい! さぁ、捕まってください!」
肩を貸してもらい、胸を揉む。
――ドサッ
「いってぇ……ちょっと! ミリアひどくない!?」
「元気じゃないですか! む、むむ胸を揉む必要ないでしょ!」
「あるんだよ! 俺はそうやって精神力を回復するんだから!」
「もう! 嘘ばっかり! ちゃんとしてください! ほら!」
そう言いながらも、また肩を貸してくれる。
「はぁ、はぁ……」
次落とされたら立ち上がれそうになかったので、両肩にしがみ付く形でミリアに運んでもらう。
「本当にキツそうですね」
「だから、本当に、キツイんだって……」
「じゃあ、その手が元気なのは何なんですか」
「今回復してるから、もうちょっとだけ我慢して」
ミリア成分を補充して、屋敷に帰ることができる程度MPが回復したところで、皆の所に到着する。
すると、マリーが椅子に座って待っていた。
「タカシ様、ご迷惑をお掛けしました。もう大丈夫です」
「そうか。でも、今日一日はまだ村、いや弟の側に居てやれ」
「いえ! 弟や村人の弔いは先程済みましたし、私にはタカシ様と子を作る作業がありますから!」
「えぇ!?」
皆驚いている。当然だよな。
「いや、しばらく会いに来れないかもしれないから、ここに居ろ」
「うぅ……分かりました。迎えに来てください、ますよね?」
「あぁ、明日は盗賊狩りだからな。早朝に迎えに来る」
「はい! では、お待ちしております。旦那様!」
「えぇ!?」
ミリアは睨んでくるし、ファラは蹴ってくるし、ランはニヤニヤしているだけで、何なんだよ。
「よし、それじゃあお前達、屋敷に戻るぞ! マリー、村長によろしく言っておいてくれ」
沈黙が続いていたので、話を切り出す。
「はい! 伝えておきます!」
「……はい」
「ん」
「はーい」
――シュンッ!
屋敷に戻ると、女の子達が一斉に集まってきた。
「タカシ様、この度はお救いくださりありがとうございました!」
皆一斉にお礼を言ってきたけど、どうなってんだこれ。
マルカが何かしたのか?
折角回復したMPをまた使ってしまったので、うまく考えることができない。
「あ、あぁ。気にしないでくれ。それより、皆で飯の準備を頼む。ミリア、食材出してあげて」
「はい」
椅子に座ると、膝の上にファラが座ってきたので、ファラの肩に顎を乗せて、脱力する。
あー、疲れた。ダメだ力が入らない。
「あ、そうだ。マルカ。皆に自己紹介しておいてくれ」
「ひゃ、ひゃい! みゃるかマルカ・サプタルでしゅ! この度、お屋敷で使っていてゃだくことになりました!」
また噛んでるよ。大丈夫かな……。
「アバンさんの紹介で、ウチで雇うことになった。皆、仲良くしてやってくれ」
「まーた、タカシくんはー。本当、小さい子好きだよねー」
「はぁ? ちげーよ。え、あれ、いや、違わねぇのか。あぁ、でも俺はランの事も好きだぞ?」
「も、もう! ランの事はいいんだよ。でも、ふふ、ありがとっ」
ランが赤くなってる。これはこれで新鮮だな。
ミリア達はそのまま、晩飯の支度に入ったところで、女の子達の代表らしき子が近付いてきた。
「あの、タカシ様。盗賊の方は片付いたのでしょうか?」
「あぁ、何とか。騎士団に引き渡したよ」
「では、私達は帰れるのですか……?」
そうだった。そういう約束をしているんだった。
ただ、MPがない。八人も送ることは無理だ。
「その事なんだが、奴隷の子達が居たのを覚えているか?」
「え、はい。一緒に捕えられていたエルフの子ですね」
「あの子達が死んでしまわないよう、色々と魔法を使っちゃったら精神力が無くなってしまったんだ。だから、今皆を送り届けることはできない、すまないが、もう少しだけ待ってくれないか?」
「いえ、もしお許しいただけるのでしたら、私達だけでもここから歩いて戻りますが」
「それは無理だろう」
流石にここ――クドラングから歩いて戻るのは無理だろう。
「ダメですか……」
「いや、許可しないってわけじゃないんだよ。だって、ここ、クドラングだよ? ここから歩いて帰るのはキツイだろう?」
「えぇ!? クドラングなのですか!? スワルトでは!?」
「ここは、クドラングにある俺の屋敷だよ」
クドラングと聞いて、女の子達がザワついている。無理もない。
今朝までエルフの国に居たのに、今は獣人の国に居るのだから。
「あぁ、それともう一つ」
「え、あ、はい。何でしょうか」
「明日ね、用事が出来ちゃった。申し訳ないけど、キミ達を送り届けるのは明後日で良いかな? ここに居る間、不自由させないし、確実に送り届ける事は約束するからさ」
「いえ、十分良くしてもらっています。むしろ、元の生活より贅沢をさせていただいているくらいです」
「そ、そうです! ここに住みたいくらいです!」
「ですです! お傍に置いて欲しいくらいです!」
キラーンとミリアの目が光ったような気がしたので、女の子達の言葉はスルーしておく。
「そ、そっか。じゃあ明日までは夢だと思ってさ、ここでゆっくりしておいてくれ」
あ、そうだ。この子達を泊めるのは良いが、布団がない。
体がだるいけど、買いにいくか。ついでに食料も買わないとな。
「ちょっと出てくる。留守番よろしくな」
「わかった」
――シュンッ!
街まで飛び、布団が売ってそうな店を聞いて回る。
店はすぐに見つかったので、女の子達八人分の布団を購入。
屋敷には、召使用の部屋があったので、マルカにはそこのベッドを使ってもらおう。
次に野菜や肉、果物など材料と、適当に目についた調味料的な物を大量に購入する。
家にメイドを置くなら、食料の保存をしたいな。
冷蔵庫なんてないだろうから、鍛冶屋に鉄製の保管庫でも作ってもらうか。
あぁ、そうだ。鍛冶屋に頼んだ物を取りに行かないといけないんだ。今行っておくか。
――シュンッ!
疲れているので、カッシュに挨拶は無しだ。直接鍛冶屋の前に飛んで店の中に入る。
「こんにちは」
「おう、お前さんか。例の物作ってみたら簡単じゃったから、もう完成しておるぞ」
「流石ですね! あぁ、それともう一つ頼みたい物がありまして。依頼して大丈夫です?」
「あぁ、構わんよ。お前さんは上客じゃからな! はっはっは!」
ヴァストールが奥に行き、攪拌機と書くものを持ってきた。
「まずはこれを見てくれ。どうじゃ? 出来ておるか?」
「どれどれ」
ハンドルを回すと、下に接続された、四つのホイッパーが回る。逆に回してもホイッパーが回る。完璧だ。
「良いですね! 流石としか言いようがありません」
「そうかそうか! 良かったぞい。食べ物に使うということで、一応、分解して丸洗いできるようにしておいたからの」
「おお、完璧です! お見事!」
「お前さんの例えが分かり易かったからの! して、もう一つの頼みとやらは何じゃ?」
「あぁ、そうでした」
紙に長方形を描く。それを立体にして、扉を描く。
「なんじゃこれは。箱か?」
「えぇ、似たような物です。俺が氷を出せるのは、先日見せたので分かりますよね?」
「あぁ、あの氷は旨かったのぅ」
「これは、中の壁を氷漬けにして、中に食料を保管する倉庫です」
「おおう、それは良いのぅ」
次に、壁や扉は二重構造になっている図を描く。
「それで、この壁は二重構造になっています。この空間は、一切の隙間が無い状態です」
「それは何でじゃ?」
「この壁が、外の空気に直接触れてしまうと、中の氷がすぐに溶けてしまいますので、その為です。だから、空気が一切入らないようにして欲しいです」
「なるほどのう」
最後に、中から外に水を出せるような穴と、食料を乗せるための棚のような図を描く。
「中の氷が溶けて水になれば、この穴から外に出るようにします。あと、この棚は食料を乗せるためのものです」
「うむ。これならばすぐに出来るぞい」
「良かった。いくらくらいで出来そうですか?」
「うーむ、今回は物が大きいからのう。鉄も大量に使うし、3金でどうじゃ?」
「助かります。では、はい。これで、お願いします」
3金を渡して交渉成立。
「明日は用事があるので、明後日取りに来ても大丈夫ですか?」
「うむ。鉄を伸ばした物は既にあるし、繋げるだけじゃしな。明日一日で出来るじゃろう」
「分かりました。では、お願いしますね!」
「承知した」
依頼も終わったので、外に出てそのまま屋敷に戻る。
「わぁっ!? あぁ、タカシさんおかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
「タカシ、ご飯できてる」
「そうか。じゃあ、食べようかな」
ミリアが用意してくれたのだろうか。リビングには、女の子達の分もテーブルが増えている。
皆で席に着いて食事を開始しようとしたが、マルカが立ったまま皆を見ていたので、声を掛ける。
「おい、マルカ、何してんだ。お前も座りなさい」
「えぇ!? で、でも、私はミェイドでしゅので!」
「そういう常識は、俺の前では無効だ。この屋敷では、全員で一緒に飯を食うんだよ。分かったら、ほら、座れ」
「ひゃいっ」
マルカを席に座らせ、食事を開始する。
体のダルさは少しは取れたが、未だにキツイ。マナポーションを飲んだこともあって、MPを何千か使っているからな……。
女の子達も緊張が少しは和らいだのか、食事中も会話が弾んで賑やかだった。
早々に食事を終わらせると、女の子達が片付けは自分達がすると言い出したので、お願いしておく。
後は女の子達に任せて、彼女達のために買ってきておいた物を、一番広い部屋に置いておく。
そのままミリア達を呼んで、一緒に風呂に入る。
悪戯するも、何かダルさの方が勝っていたので、ファラの要求に応える程度で済ませておく。
風呂から上がったら、風呂を洗って、また沸かせておく。
「ミリア、あの子達に風呂に入るよう言っておいてくれ。あと、マルカにはミリアから風呂に入るように言っておいてくれ。どうも、あいつは俺に遠慮してるようだから」
「はい! 分かりました!」
ミリアに女の子達を任せ、マルカの所に行く。
「マルカ。お前はあそこの部屋を使ってくれ」
「えぇ!? お部屋をいただけるのですか!?」
「あぁ。好きに使ってくれ。あと、女の子達は一番広い部屋を使ってもらってくれ。さっき必要な物は置いてきた」
「あ、あう、ありがとうごじゃいましゅ!」
何かあったらすぐに呼びに来るよう伝え、部屋に入る。
「ファラ、魔法の練習しておいてくれ」
「わかった」
「タカシくん、ランは?」
「お前は……何かしてろ」
「ひどい!?」
こういう時、ランが魔法を使えないっていうのはヒマだろうな。
「分かった。じゃあ、こっちこい」
「うん? なになに? 何か教えてくれるの?」
近寄ってきたところで、がばっと抱き付き、そのまま尻尾をモフモフしながらベッドの中に転がる。
「きゃうっ! や、やめへっ! だめ! んんっ!」
「タカシ、ずるい。ファラも」
「ファラは魔法の練習な。俺は眠たいから寝る。ランは抱き枕だ」
「えぇ!? それだけ!?」
何を期待しているのか……別に、期待に応えてあげても良いが、もう眠気がやばい。
「観念しろ。というわけで俺は寝るぞ」
「もー! 悪戯しちゃうからね!」
「あぁ、また後悔させてみろ。ふぁぁ、おやすみ」
ランの尻尾をモフモフしながら、眠りに落ちる。




