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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
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第74話 ガス

 食堂に着いたら、どうやらバイキング形式だったようで、皆立って待っていた。

 ファラなんかは待ちきれないようで果物やデザートのテーブルを凝視している。すまんな……。


「もー! 遅いよー。何の話してたの?」

「ごめんなさいね。タカシさんに相談に乗ってもらってたの」

「あぁ、そういうことだ。それより、食べよう。ファラの我慢がそろそろ限界みたいだ」


 サラに腕を組まれたまま、誘導される。

 バイキングではあるが、給仕が居るので、欲しい料理を言えば運んできてくれるのだろう。


「タカシさん、何かサラさんと仲良くなりすぎじゃないですか?」

「さーて、いただきまーす」


 ミリアが突っ込んできたので、食事開始の合図をして、皿に食材を乗せてテーブルに移動する。

 もう、何なんですか! など言っているが、無視しておこう。

 サラが離れないので、ついでに彼女の分も取ってあげてから席に着く。


「タカシさん、はい、あーん」

「ん? あぁ、あーん。んぐ。ありがとな」

「タカシさん!?」

「お姉ちゃん!?」

「どうしたの、ラン?」

「どうした、ミリア?」


 同時に声を掛けられ、同時に返事してしまう。

 別にあーんくらい良いだろうに。あぁ、でも王族だったな。食事中のあーんははしたないのだろう。

 ランとミリアも互いに同時だったので、見つめ合って、どうぞどうぞと発言権を譲り合っている。


「お姉ちゃん、あの短時間の間に、タカシくんと何があったの? ものすごく、その、親しそうなんだけど!?」

「そうですよ、タカシさん! 何をやらかしたんですか!?」

「お前等、失礼だな。俺は別に何もしてないぞ」

「そうよ? タカシさんは、紳士よ? 惚れちゃうくらい」


「「はぁ!?」」


 こいつら息ピッタリだな。

 それよりも俺に惚れたのか? まぁ、また冗談だろうが。

 面倒なので女どもは放置して、少し離れたところに居るアバンのところに向かい、話し掛ける。


「これ、美味いですね。素材は何を使っているんです?」

「国を流れる大河から採れた魚ですね。上に乗っているのは、森で採れたキノコです。我が国の一般家庭でも食べられる料理ですよ」

「久しく魚を食べていなかったのもあって、本当に美味しいです」

「ありがとうございます」


 魚か……クドラングを出る前に買っていこう。


 そんな会話をしながら、ラン達の方を見ると、あいつらまだ言い合って……あ、いや、違うみたいだな。

 王位の事について、ランに言い聞かせているのか。

 そっとしておこう。ミリアは話に巻き込まれてしまったようで、戸惑っているが、口さえ閉じておけば問題ない。


「いやー、満足しました」

「それは良かった。急いで支度をしたので、このような形式となり、申し訳ないです。あ、こちらにどうぞ」


 形式とはバイキング形式のことだろう。王族の立食パーティーなどは知っているが、こんな形式で食事したりもするんだな。

 アバンに勧められた席に座り、料理について話をする。


 ファラもマリーも満足したようで、お茶を飲みながら近くにあった椅子に深く座っている。

 食事も終わり、落ち着いたのか、ファラが歩いてきて、定位置である膝の上に乗ってきた。よしよし。


「タカシ、これおいしかった」

「そうだな。美味しくて食べ過ぎた」

「ファラも」


 それにしてもサラの目が見えていることに、誰も気が付かないのは何でだろうか。

 と思っていたら、ちょうどその話をしていたようで、バッとミリアがこちらを向いた。

 目を逸らしておこう。


「アバンさん、今日は泊めてもらえるらしいですが、部外者なんて泊めて大丈夫なんです?」

「あぁ、タカシ様たちは、命の恩人です。何の問題もありません。国王にもお伝えしております」

「国王はあの子達の父親ですよね。苦労してそうだ……」

「えぇ……まぁ……」


 まだ言い合っているな。時間が掛かりそうだし、先に風呂にでも入ってくるかな。


「そういえば、お風呂って借りることってできます?」

「えぇ、もちろんです。案内し……」

「アバーン!」

「ん? すみません、ちょっと失礼しますね」


 アバンを召喚しやがった。

 呼ばれたアバンは、ランに何か言われ、慌てて部屋を出て行く。

 あいつ、何か無茶な事でも言ったんじゃないだろうな。

 アバンとランが話している隙に、ミリアが戻ってきた。


「タカシさん。サラさんの件、タカシさんですよね」

「ん? 何のことだ?」

「目です! 目! 今度は何をしたんですか!?」

「胸を揉ませてくれたから、見えるようにしてあげただけだ」


 間違ってないよな。設定上はエッチな事をさせてくれたら恩恵を与えるってものだし。

 あ、パーティーに入っていたら、だっけ。奴隷になったら、だっけ。まぁ、別にどうでも良いか。


「いつも私達のを揉んでいるだけでは足りなかったんですか!」

「え、それとこれとは話が違うでしょ」

「ほら、今もファラの揉んでるし!」


 あれ、いつの間にか揉んでた……。揉める物なんてないけど。


「どうやって、治してあげたんですか?」

「え、治さなかった方が良かったの?」

「いえ、そうじゃないです。どうやって治したのかと……」

「治れ! ハァ! って治しただけだよ」

「はぁ……」


 両手を前に出し、力を込める振りをしたら、呆れられた。

 どうやってと言われてもな、口に出して治しただけだし。


「ぽんぽこ!」

「ん? マリーも興味あるのか?」

「ぽんぽこ! ぽんぽこ!」

「そこ! ぽんぽこぽんぽこうるさい!」

「ぽんぽこ……」


 ランには聞こえていたらしい。シュンとなった。

 ランとのやり取りも堪能したし、後で解除してやるか。


 それより、さっさと風呂に入りたいので、あちらの話を終わらせる為、ミリアに内容を聞いておこう。


「それで、あっちはどんな話してたんだ?」

「何かサラさんが王位を継承するので、ランさんはタカシさんと一緒に旅に出てきなさいって言ってました」

「それで、ランは何て?」

「嬉しいけど、サラさんの目のこともあるし、王位は私が継ぐって話になって、言い合いが……タカシさん、ランさんを連れて行くんですか?」

「さぁ。別に、俺は来いとも来るなとも言わないよ。決めるのはあいつらじゃないか?」

「そ、そうですね」


 ファラを抱っこしたまま立ちあがり、そのまま持ち上げて肩車の形になり、サラとランのところに向かう。


「おい、お前達。そろそろ良いんじゃないか? 俺は飯も食ったし、さっさと風呂に入りたいんだが」

「タカシさん、この子が話を納得してくれなくて……」

「サラは目が見えるようになった。だからランの手助けは要らないよってことだろう? それで話はまとまるじゃないか」

「でも、ここで諦めたらランを守ってくれた人達に申し訳……」

「あいつらはお前を守っていただけで、別に王に祭り上げようとしていたわけじゃないだろ。お前はお前の人生を歩めば、それで良いんじゃないか?」

「うぅ……」


 そんな話をしていると、バンっとドアが開いてアバンを含め三人が入ってくる。


「おい、サラの目が見えるようになったとは、本当か!?」

「サラ、本当なの!?」


 王と王妃か? 確かにランに似ているな。

 サラは外見が変わってしまっているから、似てないが。


「えぇ、お父様お母様、本当よ」

「おお、なんということだ……」

「本当なのね!?」


 面倒なことになりそうだったので、手招きでアバンを呼ぶ。


「どうされたのですか?」

「感動の場面だろうから俺達は外に出ます。案内してくれます?」

「あ、はい。分かりました。こちらです」


 そそくさと立ち去ろうとしたところで、嫌な会話が聞こえた。


「して、何故突然見えるようになったのだ!?」

「えっと、それは……」


 あぁ……視線を感じる。この後の展開は読める。そう……。


「彼か!」


 やっぱり!


 うん、そうなるよね。

 まぁ、ここはサラのフォローをする感じで誤魔化しておくか。


「タカシ様」

「アバンさん。王様と王妃様の名……」

「ガス様とマル様です」


 アバンに道を塞がれたので、こっそり名前だけでも聞こうかと思ったら、先に教えてくれる。流石アバンだ。

 名前を聞いたので、そのまま王の方へ向き直る。


「おお、ガス様にマル様ではないですか。お初にお目にかかります。私、タカシ・ワタナベと申します。お会い出来て光栄です」


 少しわざとらしかったかな? でもまぁ、こんなものだろう。


「お主がサラの目を治してくれたのか?」

「えぇ。少々呪いの治療に関して、心得がありましたので」

「そうか、良くやってくれた! 何でも望みを言ってくれ! 褒美を取らせよう!」


 サラに援護するよう目配せをしておく。


「そうですか。では、ラン姫を我々の旅に同行させてくれる許可をいただけませんか?」

「そんなことで良いのか! ふむ。こやつは、小さい頃から冒険に出たいと申しておったからなぁ。しかし、それだけで良いのか……? そのままランを貰ってくれても良いぞ」

「はぁ!? ちょっと、お父様!?」


 ランがガスに抗議しているが、無視しておこう。


「その、厚かましいとは思うのですが、サラ姫の呪いも完全に消えたわけではないので、出来れば研究の為、土地などが欲しいのですが……」

「ふむ。土地か……。お主には感謝はしておる。しかし、その、なぁ。ワシの権限で何とかならんこともないのだが、諸侯達が黙っておらぬだろうしな……何でもとは言ったが、すまぬな」


 何でもって言葉に釣られたが、やっぱり土地はダメか。

 そうだよな。どこの馬の骨とも知らない奴がいきなり土地を持ったら、土地を任されている貴族たちはそりゃあ怒るだろう。


「お父様。私からもお願いしたいです」

「ぬぅぅ。サラまでもか……。だが、こればかりは、いくらお前達の頼みであろうと、ワシ一人で決められる問題でもないのだ。分かってくれ」

「お父様。タカシさんが、ランを貰ってくだされば、土地を与えたとしても、あの方々は意見してこないのでは?」

「おう、そうか! その手があったか!」

「ちょ、ちょっと、お父様! お姉ちゃん! 何言ってるの!?」


 ランって家族からはこういう扱いなのか……?

 要らない子なのかね。ちょっと可哀想になってきた。


「冗談だ。お前が慌てる姿など、あまり見ることが出来ぬからな。少しからかってみただけだ」

「うふふ。ランったら、顔赤いわよ?」

「もー! もう、ランのこと要らないのかと思ったじゃない!」

「要らんのは本当だがな」

「そうね」

「えぇ!?」


 何なんだよ。この親子漫才。でも、楽しそうな家族だな。

 もう、様とか姫とか付けるのがバカらしくなってきた。


「おっと、すまぬ。それで、どうだ?」

「えっと、ラン姫を貰うかどうかってことですか?」

「それはもう、どうでもよい。他に何かあれば言ってくれ」

「やっぱりランの事はどうでも良いの!?」


 既にランは放置されている。雑な扱いだな。

 今後は俺も、そういう接し方にしよう。


「では、家を探しているので、誰も使っていない家などがあれば」

「家か。ランに与えた屋敷があったな。そこを使って良いぞ」

「ちょっと!? だから、何でランの!?」

「ありがとうございます。では、そこを使わせていただきますね」

「ねぇ、聞いてる!? お父様! タカシくん!」


 この親父とは気が合いそうだ。今度酒でも一緒に飲みたいな。

 王様だから無理だろうけど。


「よし、そうと決まれば、使用人なども用意させよう」

「ありがとうございます。でも、研究の資料やアイテムなどを触られても困りますので、自分達でやるから大丈夫ですよ」

「そうか。何か困ったことなどあれば、ランに言ってくれ」

「はい、そうさせていただきます」


 いい加減、ランも諦めたらしい。何も言ってこなくなった。

 家もゲットできたし、今回は満足だ。


「それでは、俺達はこれで失礼しますね」

「あぁ、ランの事を頼むぞ。今度正式に礼を言わせてもらう場を設ける。その際は是非足を運んでくれ」

「はい、分かりました」

「タカシ様、屋敷には私が案内させていただきます」


 アバンの案内の元、部屋を出ようとしたところ、ドアの前でサラはともかくランまでその場に残ろうとしていたので、声を掛ける。


「おい、ラン何してんだ。お前も来るんだろ?」

「え!? さっきの話、本気だったの!?」

「は? お前も聞いていただろう? 何言ってんだ」

「えぇー!? 確かに冒険には行きたいけど、何なの!?」

「いや、俺が何なの、なんだが。父親からの許しも出たし、奴隷のようにこき使ってやるよ。早くこい」


「ラン、あなたが行かないなら、タカシさんは私が貰っちゃうわよ?」

「ちょっとちょっと! 何、それ。まるでランがタカシくんに惚れてるみたいな言い方!」

「え、違ったのかしら。じゃあ私が貰うわね?」

「だから! 何でそうなるの!?」

「金には困ら無さそうだし、サラを嫁にするのも悪くないな」


 三人で会話をしていたら、今まで王の前で恐縮していたミリア達まで会話に参加してきた。


「タカシさん、ダメですよ?」

「タカシ、いこ」

「ぽんぽこ!」

「あなたは黙ってて!」

「ぽん…」


 マリーにだけランから激しいツッコミが。

 屋敷に着いたら解除してやろう。


「冗談だ。って痛い! ファラ、毛を毟るな。ほら、ラン行くぞ」

「ほら、ラン。国の事は私に任せて、楽しんでいらっしゃい」

「もー! 分かったよ! 行くよ! また目が見えなくなっても、もう知らないんだからねっ!」

「あぁ、それは大丈夫だ。俺が治すし」

「……」


 折角の捨て台詞を粉砕してやると、黙ってしまった。

 そんなランの肩を抱き、部屋から連れ出す。


「サラ、またな」

「うん。今度遊びに行くわね」


 ランを解放し、城を出て屋敷に向かうが、城を出たところでアバンが屋敷の説明をしてくれる。


 どうやら、屋敷は城から遠いらしい。


 その屋敷は、ランがパーティーメンバーと共に過ごす為に貰ったもので、現在はほとんど使用していないとのこと。

 まぁ、そのパーティーも今となっては、ランとアバンだけになってしまったので仕方ないか。

 屋敷というくらいだからな。二人では広すぎるだろうし、側近とはいえアバンも男ということもあるのだろう。


 説明が終わったところで、思い出した。

 そういえば、ファラを肩車しているんだ。軽いから忘れてたな。


 この状態で王と話していたのか。常識的に考えたら失礼だよな。何で、誰も何も言わなかったんだ?

 そういえば、王妃がチラチラ見ていた気はするが……。


 まぁ、良いか。


 そんなことを思いながら、屋敷を目指す。

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