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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
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第67話 ママ

 翌朝、久し振りにぐっすり眠れたので、一番に起きる。

 皆はまだ全裸で寝たままだ。そろそろ窓を開けないと、暑さで寝苦しくなってきそうだな。


 寝る前に氷などを出したりしておくか……または、寝ている間は、風の精霊に扇風機代わりになってもらうのも良いな。まぁ、やってくれるかどうかは分からないが。


 たまには先に飯でも作っておくか。


 作り始めたのは良いが、一人で飯を作るのは寂しいな。などと考えていると、まだまだ眠たそうなファラが起きてきた。

 すぐに服を着せてあげると、飯の準備を手伝うということなので一緒に作り始める。


「ファラ、昨日お墓参り行けなかったから、今日行こうか」

「…うん。ありがと」


 基本的に二人で居る時はあまり会話をしない。会話に気を使う必要がないっていうのは、居心地が良いな。

 マリーは二人きりになると緊張されるし、ミリアの時はからかいたくなるし。ファラ相手は楽だ。


 そんな事を考えながら調理していると、ミリアが起きてきた。


「おはようございます」

「あぁ、おはよう、ミリア」

「ん。おはよ」


 マリーがまだ寝ているなんて珍しい。寝かせておいてあげよう。


「もう少しで出来る。たまには座って待っててくれ」

「え、あぁ、はい。ありがとうございます……」


 まだ眠たそうだな。昨日は、魔法の練習を後回しにして、協会から貰った冊子を先に読んでいたからな。単に寝不足なのだろう。

 結局、ミリアだけ魔法の練習が出来なかったし、お仕置きだな。


「よし、こんなもんかな。ミリア、マリーを起こしてきてくれ」

「はい」

「ファラ、これテーブルに持って行ってくれ」

「ん。わかった」


 マリーが起きてきたので、四人で朝食をとる。


「今日は一度オスルムに行く」

「分かりました。ギルドで依頼を受けるんですか?」

「いや、墓参りだ」

「…? あぁ、なるほど。ファラ良かったね」

「ん。タカシ、ありがと」


「それで、ミリアとマリーには買い物を頼みたいんだよ」

「分かりました。そういうことなら喜んで」

「にゃん!」


 必要な物を伝えておく。主に食料だ。

 後は、今日考えていた氷を入れる大きな桶や、生活用品を頼み、5金程渡しておく。これだけあれば十分だろう。

 奴隷は大金が持てないので、こういう時にミリアが奴隷でないと楽だな。


「あとは好きな物でも買ってくれ。あ、お菓子を買うならファラの分もな。待ち合わせは、街の入り口、門の前な」

「はい、分かりました。ありがとうございます!」

「にゃん、にゃんにゃん!」


 待ち合わせ場所も決めたところで朝食も終わったので、後片付けをして出発する。

 家を何度も作ったが、こんなに長居したのは初めてだな。今までありがとうな。

 感謝した後、家を崩しておく。


「よし、出発だ」

「はい!」

「うん」

「にゃん!」


 三人抱き寄せ、街の外側に移動する。

 この移動、毎回思うけど転移先に誰か居たり、何かあった場合どうなるんだろうな。壁の中とか……考えただけでゾッとする。

 そんな怖い事を考えながら、ファラに案内してもらい、門の中に入ったところでミリア達と一時分かれる。


「タカシ、こっち」

「おう」


 墓地は街の隅にあるのか。

 ファラと手を繋いで歩いていると、墓が見えてきた。


「お、壊れてないな。良かったな」

「うん、タカシのお陰。ありがと」

「おう」


 墓と墓の間を移動しながら、目的の場所まで移動する。


「ここか?」

「ん」


 苔や草などが酷いな。ファラはボーっと墓を見ている。何を思っているんだろうな。

 よし、折角来たんだ。今後、しばらくは戻って来れなくなるかもしれないから、掃除しておこう。


「ファラ」

「ん?」

「ちょっと、待っててくれ」

「分かった」


 神脚でエストルに戻り、門まで走る。


「んお!? な、何者だ!?」

「カッシュさん、俺ですよ、俺」


 いきなり横に走ってきたのでびっくりしたのだろう。

 シュタッと手を挙げて街の中に入っていく。


「お前か。今まで……って、おい、おい! 待たんか!」

「すんません、ちょっと急いでいるんで!」


 カッシュを無視し、街の中に走って行く。

 ラン達の為に棺を買いに来た時に、花が売っている移動式の露店を見つけていたので、そこまで走る。まだあると良いが……。


 以前見掛けた露店の場所まで到着したが、店は無くなっていた。……やっぱり移動式の店だから仕方ないか。


 それでも、諦められず、周りの人に聞いてみると、協会の側に移動しているとのことで、そこまで走って移動する。


「い、いらっしゃい。そんなに急いで、どうしたんだい?」

「はぁはぁ……どうも、こん、にちは。墓、参り用の花を、見繕ってくれませんか。はぁはぁ……」

「はいよ、墓参り用ね。とりあえず座って落ち着きなさいな」

「どうも……」


 椅子を勧められたので、とりあえず座って息を整える。

 おばちゃんは、テキパキと花を用意してくれる。紙は無いようで、紐で結ぶ感じだ。


「ほい、お待たせ。50銅になるけど、良いかい?」

「じゃあ、それと色違いの花であと二束作ってもらっていいすか」

「そんなに良いのかい?」

「えぇ、しばらく墓に顔出せないので」


 追加の花束を作ってもらい、2銀を渡しておく。


「お釣りは……」

「お釣りは良いです。またお願いしますね! それじゃ!」

「おい、ちょっと!」


 おばちゃんが呼んでいたけど、花束をインベントリに入れ、そのまま道具屋まで走る。


「いらっしゃい」

「えっと、石を磨くようなブラシみたいなものありますか?」

「ブラシ? うーん、そこら辺のモノはどうだ?」

「あぁ、これで良いです。あと、これとこれ」

「まいど。ええと、60、60、50、50で220銅だよ」

「じゃあ、これで」


 3銀渡して、インベントリに入れて、そのまま道具屋を出る。


「おい、釣り!」

「また今度きますんでー」


 そう言って門まで走る。

 久し振りにミーアの所に寄ろうかと思ったが、今はそれどころではないので、次の機会にする。


「おい! 待て! お前はいつも……」

「それじゃ!」

「こら!」


 そのまま走り去る。

 カッシュを振り切ったところで、神脚を使い、さっきの墓地をイメージし、ファラの横まで移動する。


「んわっ!?」

「すまんすまん。ただいま」

「お、かえり」


 突然現れたので珍しく驚いているが、すぐにいつも通りのファラに戻る。


「ファラ、魔法でこれに水を入れてくれ」

「ん? わかった」


 道具屋で買ってきたバケツにファラの魔法で水を入れてもらい、そこにブラシを二本入れる。


「このままじゃ可哀想だから、ママをキレイにしてあげよう」

「え」


 こっちの世界では、墓石を掃除してあげたり、墓の周りを掃除してあげるという習慣はないのだろうか?

 墓石に水を掛けてブラシでゴシゴシ磨いてあげているのを見て、ファラは戸惑っているようだ。


「ほら、ファラも」

「う、うん……」


 二人で時間を掛けて墓石を磨いてあげる。

 ファラもコツをつかんだようなので、磨くのはファラに任せて、周りの草をスコップで除去する。

 除去した草は燃やして、ボコボコになった地面は土魔法で整えながらコーティングする。これで雑草はしばらく生えないだろう。


 ファラの方も墓石の磨き上げが終わったようなので、最後に水を掛けて布で拭いてキレイにする。

 最後に花を出して、墓を飾り、完成だ。


「おう、キレイになったな!」

「わぁ……」

「これで、ママも喜んでくれるんじゃないか?」

「ん……。タカシ……あり、がど……」


 ガシっと腹にタックルしてきて抱き締められる。

 ファラから抱き付いてくるのは初めてだ。


 しばらくそのままの態勢で、頭を撫でながら待ってあげる。


「よし、それじゃあママにお別れ言って皆の所に戻るか」

「ん。バイバイ、ママ」

「近い内にまた来るから、そこは、またね、だぞ」

「わかった。またね、ママ」


 そして手を繋いで、墓地を後にする。


「ファラ、今度ママとの思い出、教えてくれな?」

「うん」


 ……ファラの笑顔を見たのは初めてだ。

 すぐにいつもの顔に戻ったので、勘違いかもしれないが、それでも良い。可愛かったな……。


 ファラの笑顔を目に焼き付けながら、門に到着する。


「すまん、遅れた」

「あ、タカシさん! 待ちましたよ!」

「誰も居ない所でファラと二人、濡らしたり擦ったりしてたら止められなくなってさ。な、ファラ?」

「うん。タカシは優しかった」

「なっ!? もう! そういうのは家の中だけにしてください!」

「にゃん! にゃん、にゃん!」


 ミリアは何を想像したんだろうな。やっぱりムッツリだ。


「今度はお前達も連れて行ってあげるからさ」

「わ、私は、まだ結構です!」

「にゃん!」

「そうかそうか、じゃあマリーだけめちゃくちゃにしてやろう」

「にゃん!?」


 そんなバカなやり取りをしつつ、門を出る。

 まだ昼にもなってないな。ある程度は移動出来るだろう。


「よし、ミリアが体を許してくれないので、代わりにランの体を堪能する為、クドラングに向かおう」

「おうー」

「なっ!? ダメですよ! ランさんはお姫様なんですから!」

「にゃにゃん!?」


 ファラは墓参りで吹っ切れたのか、乗り気になってくれているが、ミリアは反対らしい。


「姫? そんなの関係ない。ランはラン。ただの馬鹿狸だ」

「ひどいっ!」

「にゃん、にゃん!?」


 マリーが何か言いたげだが、俺の事を勇者と勘違いして騒ぐくらいミーハーだからな。どうせ姫と聞いて興奮しているんだろう。


「さぁ、いざクドラングへ」

「おー」

「もう…」

「にゃん!」


 そうやって、また魔法の練習をしながらクドラングを目指して南に向けて出発した。

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