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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
58/145

第57話 精霊術士

 宿屋では、新しく増えたマリーも寝られるようベッドが二つある部屋を借り、先に晩飯を食べることにする。


「飯食ったら、風呂にしよう。ミリア、街の外で良さそうな場所ってあるかな」

「どうでしょうか……この街、西だけ門が無かったので、外壁の西に行けば良さそうですが」

「流石ミリアだ。よく見てるな。ありがとう。後からそこに行くとして、先に飯にしようか」

「ええと、私は何処でお待ちすれば良いでしょうか」


 いつもの流れでテーブルの椅子に三人座るが、マリーだけが立っている。

 そうだった。伝えておかないといけないな。


「マリーも一緒に食べるよ。ミリアの横に座ってくれ。大事な話もあるし」

「は、はい……失礼しますです」

「よし。それじゃあ、いただきます」

「「いただきます」」

「マリー、遠慮はせず食べてくれ」


 マリーは手を付けなかったので、食べるよう勧め、皆が食べ始めたのを確認してから話を始める。


「マリー、奴隷として迎えたけど、俺達の事は家族だと思ってくれ」

「え、どういうことでしょうか……?」

「俺はマリーのことを、奴隷じゃなくて家族や恋人のように扱うから、マリーも俺の事を同じように接してくれると嬉しい」

「タカシさん、恋人は余計です」

「ファラは恋人」


 恋人でも良いじゃないか。奴隷よりは、マシだと思うんだが……。

 ファラはいつも期待以上の返事ばかりしてくれるな。嬉しい。


「だから、寝食を共にするし、何か欲しいモノがあったら遠慮なく言ってくれ」

「えぇ……でも、えっと、私は奴隷で、その、良いのでしょうか?」

「良いよ。少しずつで良いから慣れていってくれ」

「が、がんばります……です」


 ミリアは奴隷になるまでに少し行動を共にしていたし、ファラは特殊すぎるから、これが普通の反応なのだろう。

 恐縮してるみたいだけど、縛り付けてしまったら面白くないし、この環境に慣れてもらおう。


「ところで、マリーは精霊魔法って知ってる?」

「ええと、はい。エルフは人族とは違って、精霊魔法を使える者だけが高位の神官になることができますです」

「あぁ、人族は簡単に神官になれるもんな。それで、マリーは使えないの?」

「はい……。私の一族は田舎の古い一族ではあるんですが、修行の出来る神殿には入れてもらえなくて……」

「田舎者は入れてもらえないってこと?」

「はい。やはりその、代々神官を輩出している一族や、貴族などが入りますので、私ではとても……それに……」


 金か……。神官が聞いて呆れるな。俺も金は大好きだけど。


「他にも何か理由があるの?」

「はい。村の者達だけで修行を行っていたのですが、村が盗賊団に襲われてしまって……私も含め、皆奴隷として売られて……だから修行も途中で……」

「え!? 盗賊が普通の人を奴隷にすることなんてできるの!?」

「できますよ。奴隷狩りですね。ただ、直接売ろうとしても無理なので、裏には仲介の奴隷商が関わっています」


 思わずミリアの方を向いて尋ねてしまったが、知っていたようでちゃんと教えてくれる。

 それにしても、奴隷狩りか……選び放題だな。ただ、恨まれる事が確実な子を手元に置きたいとは思わな……あ、だから売るのか。良くできてるな。


「それで売られていたところを、俺が買ったってことか」

「はい」

「そいつらに復讐したい?」

「正直悔しいですが、復讐を考えたところで殺されてしまうのが目に見えていますので……ただ、弟だけでも見つけ出したいです……」

「分かった。じゃあ、それも旅の目的の一つに加えよう」

「えぇ!?」


 人を見つけることは難しいだろうけど、神口で何とかなるかもしれないし、今後色々と考えてみよう。


「そのくらい何てことないさ。さて、食事も終わったし、風呂にでも行こうか」

「あ、ありがとうございます!」


 皆は既に食べ終わり、お茶を飲んで寛いでいたので、風呂の為、一度歩いて街を出ることにする。


「ここら辺か……。周りに人は居そうにないし、裏手は森だから大丈夫だろう。さすがミリアだな!」

「いえ、ただ門がないから気になっただけなので」

「ええと、ここで何をするんですか……?」

「風呂に入るんだよ、風呂」


 そう言って、いつもの小屋を作り、風呂を沸かす。

 浴槽も魔法で生成できるようになったし、そろそろ釜ともおさらばだな。鍛冶屋のおっちゃん、すまん!


「うわ……すごい……魔法が使えるんですね……」

「一応、皆使えるよ。マリーにも教えてあげるな」

「ほ、本当ですか!?」

「あぁ、それじゃあ入ろうか」


 ファラと一緒に服を脱ぎ、風呂に入る。


「さぁ、マリーさんも行きましょう?」

「私の事はマリーとお呼びください」

「分かりました、マリー。私のこともミリアと呼んでくださいね」

「それより、ええと、ぬ、脱ぐんですか……? ここで……?」

「はい……。一緒に入らないとタカシさん、怒るんですよ……」


 ミリアが説明してくれていたので、口は挟まずファラと二人先に風呂を堪能する。


「わ、わかりました……です」


 ミリアが脱ぎ始めたのを見て、覚悟を決めたようで、マリーも脱ぎ始める。

 エルフってのは何でこう、皆スリムなんだろうか。細すぎず、太過ぎず、絶妙なスタイルだよなぁ。


「失礼します……あつっ! ふ、ふぅ……」


 当然入るまでは恥ずかしかったようで、力んでいたが、片足からゆっくり中に入り、浸かってしまった後は目を瞑って力を抜き始めた。


「風呂はどう?」

「はい、すごく気持ち良いです! エルフは基本的に水浴びだけなので、湯浴みは初めてです」

「出来るだけ毎日入るからね」

「ま、毎日ですか!? そんな、贅沢です!」

「いいのいいの。魔法でどうとでもなるから。それよりほら、こっちおいで。髪を洗ってあげる」


 マリーを引き寄せて、目を瞑らせ、髪を洗ってあげる。

 折角の長い髪がバサバサで見てられなかったんだよな。だから、ファラには悪いが、マリーの方が先だ。

 さすがに三人は一緒に洗えないので、今後、ファラ以外には自分で洗ってもらうことが増えるかもしれない。非常に残念だ……。


 ファラの全身を洗ってあげた後、マリーも洗い、まったりする。

 髪を洗うまではパッとしないマリーだったが、髪を洗って額を出したマリーは美人だった。これは嬉しい。


「ふあぁ……。やっぱり、一日の終わりには、この時間が必要だな」

「ん」

「私はまだ恥ずかしいですが……」

「恥ずかしいけど、気持ちよいですぅ……」


 皆で風呂を堪能し、着替えた後宿屋に戻り、ベッドに腰を下ろす。


 マリーはまだ遠慮しているようなので、隣に座るよう伝え、皆座ったのを確認した後、話を進める。


「さて、それでは重大発表があります」

「こ、今度は何ですか……?」

「マリーには……今日から精霊術士になってもらいます」

「えぇえぇ!? む、むりだす! です!」

「いきなりマリーにひどいことするんですか!?」


 何だよひどいことって……。さっき風呂に入って体洗ったから、それをネタにしようと思っていたんだが、フリなのか?


「え……さっき裸の付き合いしたから、それで十分だと思ったんだけど、やっぱりした方が良いの?」

「ちがっ、そういう意味じゃないです! ダメですよ?」

「ダメって言われたら、やりたくなるな」

「もう! ダメですからね!」


 ミリアと言い合いながら、ファラを膝の上から横に座らせ、代わりにマリーを膝の上に乗せる。


「マリー、少しじっとしててね」

「え、あ、はい……です」

「ダメですよ!?」


 マリーの頭に当てた手から光を出して、マリーのジョブを精霊術士にする。


▼マリー・カレーズ Lv.1 精霊術士 Rank.E

HP:108(108+0)

MP:230(180+50)


ATK:58(54+4)

MAG:130(108+22)

DEF:81(54+27)

AGI:72(72+0)

STR:3(+ -) VIT:3(+ -) INT:6(+ -) DEX:4(+ -) CHA:6(+ -) (1)

JOB:M精霊術士Lv.1 S使徒Lv.1 冒険者Lv.1 射士Lv.1 奴隷Lv.1 村人Lv.2

SKL:風精霊召喚 魔力上昇小

EQP:ウッドステッキ+2 ライトプレート フォレストバンド レザーブーツ

INV:マナポーション10 投げナイフ10 マジックローブ マジックローブ ライトプレート 布の服 布の靴

GLD:白貨0、金貨0、銀貨49、銅貨100


 見る限り、精霊術士は魔術士と違って、単一系を覚えるらしい。

 スキルに下級などが付いていないということは、上位互換が無いのだろうか。召喚スキルならば召喚士でも良かったんじゃないか? 気になるな……。


「マリー、風の精霊召喚ってどうやるか分かる?」

「はい、修行の時に精霊を呼ぶ勉強をしたので……」

「じゃあ修行の通りやってみて」

「え……? 今、ですか?」

「うん、今」


 マリーを立たせてあげ、またファラを膝の上に乗せつつ、召喚を行うよう指示する。

 ミリアが「え、ほんとに……」など言っているが、スルーしておく。


「顕現せよ、ウインドスピリッツ!」


――ブォォオン!


 室内なのに小さな竜巻ができ、風が収まった後、緑色の小さな人の形をしたモノがフワフワと浮いていた。


「え……」

「これが風の精霊か。かわいいな」

「え、えぇ……!?」


 当然マリーは精霊が出てくるとは思っていなかったようで、信じられないという顔で精霊とこちらを交互に見ている。


「何で……っ」

「マリーの修行の成果だな」

「でも! 私、奴隷で……!? えっ……」

「落ち着いて。ほら、精霊がこっち見てるよ。話してみたら?」


 マリーが精霊に向かって「こんばんは」など挨拶している。

 そんなマリーを見ていたら、視線を感じたのでミリアを見ると、じーっとこちらを見ていた。


「どうしたんだ、ミリア?」

「いえ、マリーは今日出会ったばかりなのに、恩恵を与えることができるんですね……」

「風呂でスキンシップできたからな。多分それじゃない?」


 納得してなさそうな顔をしているが、これ以上深く突っ込まれるのも困るし、そこは無視しておこう。

 マリーが精霊と何の会話をしているのか気になるので、再度マリーの方を見てみる。


「……はい」

「……お願いします」

「……分かりました」


 独り言……?

 精霊の声が全く聞こえないので、マリーが一人で人形に向かって喋っているようにしか見えない。


「マリー、精霊は何だって?」

「ええと、召喚したのは君か? 力を借りたいのか? 何かして欲しいことがあれば言ってくれ。だそうです」

「そっか。俺等には声が聞こえないみたいだ」

「あ、はい。何か頭の中に直接聞こえてくるんです」


 召喚した本人にしか聞こえないのか。俺も話したかったな。というか、頭の中で聞こえるなら、そのまま頭の中で答えればいいじゃないか。マリーは天然さんなのか?


「あの……先程、私に何をしたんですか……?」

「あぁ、マリーの潜在的な力を引き出したんだよ」

「そんなことできるんですか。タカシ様はすご……はっ!? もしかして……教皇様なんですか!?」


 ミリアは勇者とか言っていたけど、マリーは教皇と思ったのか。


「タカシは勇者」

「おい、ファラ! いやいや、違うよ。ただの魔術士だよ」

「はわっ……タカシ様! ゆ、ゆゆ、勇者様なんですか!?」

「違うって。ただの魔術士だって!」


 珍しくファラが余計な事言いやがった。

 ミリアが喋らないなと見てみたら、精霊に興味があるのか、こっちの話は聞いていないようで、精霊に触れようとしている。


「俺は魔術士。分かった?」

「は、はい……秘密なんですね。分かりました」

「……秘密にしてくれるなら、いい。内緒だぞ?」

「はい!」

「ほら、ミリアも精霊と遊んでないで、魔法の練習をしなさい」

「はぅ! はい……」


 見られていないとでも思っていたようで、ビクッとした後魔法の練習を始めた。ファラもそれを見て開始する。

 昼間も練習していたし、限界は近いだろうから、寝る準備でもしておくとするか。


「マリー。精霊は消せるの?」

「……あ、消えることは出来るそうです」

「じゃあ今は消えておいてもらおうか」

「はい。精霊さん、お願いします」


 マリーが声を掛けると精霊がスーッと静かに消えていく。消える時はあっけないな。

 ついでにMPを確認したが、どうやら召喚の時にしか消費しないらしい。

 召喚魔法は召喚した後、維持にMPを使うので、召喚と精霊は少し違うようだな。


「よし、それじゃあ明日に備えて寝ようか」

「私は……どちらに向かえば良いですか?」

「そうか……食事の時にも言ったけど、奴隷扱いはしないから、当然一緒に寝るよ」

「あ、ありがとうございます、です」


 マリーに協力してもらって、ベッドを繋げて皆並んで寝られるよう準備する。


「二人はまだ練習するから、先に寝ておこう」

「え、いいんですか……?」

「大丈夫。二人もすぐ寝るから」


 そんな話をしている間にミリアがベッドの上に倒れた。


「ほら」

「え!? だ、大丈夫なんですか!?」

「大丈夫だよ」


 ミリアをベッドの真ん中に寝かせつつ、ファラのMPを確認すると、ファラもそろそろ倒れる頃だったので、止めておく。

 ミリアのMPもちゃんと見ておいてあげれば良かったな……。


「ファラ、あと二回くらいで落ちるよ。寝ようか」

「ん」

「それじゃ、寝るよー。マリーはミリアの横な」

「はい」


 四人並んでベッドに横になって暫くすると、ファラが求めてきたので応えてあげる。

 癖になったのか? こちらとしては嬉しいから良いんだけど。


 明日は協会か。ミリアの喜ぶ姿が目に浮かぶな。

 ファラが寝たのを確認して、眠る……。

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