第55話 斥候
三人になった後、ミリアにザクなんとかの位置を確認しておく。
「ザクなんとかって街、どこら辺にあるの?」
「あれ? 昨日話しませんでしたっけ……」
「うん。二日くらい北に行ったところにあるって言ってたよね」
「はい。二日くらい……あっ」
しまった……という顔をした後、地面を見て、しばらくすると上目遣いでこちらを見てくる。
また何かやらかしたのだろうか。
「ごめんなさい。二日って言いましたが……エストルから二日です……」
「じゃあ、ここからだと三日くらいってことか」
「はい……ずっとあの街に居たので、普通にそこから何日かって計算してしまいました……」
「別に良いよ。どうせ二日になるから」
そう言って二人の手を掴み、エストルの近くである、初めて合成魔法の練習をした河原に移動する。
「きゃぅっ」
「んわ」
突然だったので、またびっくりしたようだ。相変わらず可愛い声を出している。
「もう! いきなり移動するのは止めてください! 驚いたじゃないですか!」
「タカシすごい」
「ごめんごめん。でも、これで二日になったでしょ? それで、ここから北だとすると、こっち?」
「もう……そっちは西です」
あれ? こっちだと思ったんだけど……違ったのか。
マップを見る――あぁ、確かに西だな。俺って今まで道に迷った事なんてなかったけど、方向音痴だったっけ……?
この世界の地理も覚えないとな……。東西南北は地理関係ないけど。
「じゃあ、道なりに進んで行けば良いだけなのか」
「はい。基本的に街から街には道が出来ていますので、そこを通って行けば良いです」
「そうなると、モンスターとか狩れないね」
「そうですね……でも、たまに出ますよ」
近くに森とか山があるし、少しは道まで出てくるのだろう。
でもそれだけじゃ、レベルは全然上がらないな。移動が二日といっても狩れる時に狩っておきたいし……。
「ここから街に着くまで、強いモンスターが出たりしない?」
「しないですね……多分ハーピーくらいです」
「人の作った道だし、仕方ないか。たまには魔法の練習でもしながらのんびり行こうか」
「はい」
「ん」
そういえば、ミリアの威力はダンジョンの中で見たけど、ファラは外に出てから召喚術士になったし、まだ確認していなかったな。
「ファラ。中級になった召喚はどんな感じ?」
「賢くなった」
「え、どういうことだ?」
「勝手に動く」
「自律するってこと?」
「ん。命令すると、あとは自分で動く」
目標を与えたら、後は自律して行動するってことか。野宿の時なんかには、護衛に使えるかもしれないな。
「自律している間は精神力ってどうなってる?」
「命令する時に調整できる。あとは、切れるまで勝手に動く」
便利だな。強い奴を召喚出来れば、戦わせることも出来るな。
「人みたいなモノは召喚できない?」
「まだやったことない」
「じゃあさ、ミリアみたいなモノ召喚してみて。ほら。ミリアをよく見てさ」
「な、何ですか突然。ファラもやらなくて良いですって」
ファラが両手を大きく広げてミリアを見ている。ミリアをイメージしながら魔力を生成しているのだろう。
集中し終わったのか、しゃがんで地面に両手を付けると魔法陣が現れ、白い光がニョキニョキと出てきた。
おお、いけるか?
「この大きさはむずかしい」
裸のミリアが出来上がった。確かにミリアだ。
しかし、折角の裸なのに、体は真っ白で顔がない。髪型と姿形がミリアと一緒なので、かろうじてミリアと分かる程度だ。
「服もむずかしい」
「ちょちょ、ちょっと! ファラ、消してください! 早く!」
「ん」
ミリアにの消せ消せコールにより、ファラが一瞬にしてミリアモドキを消す。
「えー、勿体ない。ただのミリアそっくりな人形じゃん」
「だって、裸だったじゃないですか! 体のラインとか全部……」
「真っ白だったし分からないよ。よし、ファラ。これは家の中で練習しよう」
「わかった」
「もう! 何でですか! 何で私なんですか! タカシさんで良いじゃないですか!」
「ミリアが二人居たら、俺の幸せ度が二倍になるんだよ!」
ちょっと引かれたようだ。何も言わなくなった。
とりあえずミリアは置いといて、ファラに次の指示をする。
「ファラ、次はビーでも出してみて」
「ん」
今度は簡単に召喚してみせる。やはり大きさが壁になるのか。
「そいつを空に飛ばして、進行方向に人かモンスターが居たら、教えるよう命令しておいて」
「わかった」
ビーが上空に飛んでいったのを見た後、ミリアの方も確認しておく。
「ミリアは空間魔法使えるようになった?」
「まだ……です。何かコツとかないですか?」
そういえばミリアのサブを使徒にしたから、少し教えたらすぐに覚えるだろう。
ただ、ファラは自力で覚えたし、ミリアにも少しはがんばってもらいたい。
「ファラは、練習しておいてくれって言っただけで覚えたよ?」
「うぅ……わ、分かりました! がんばります!」
既に進んでいる道は異なるが、ライバルが居る環境っていうのは良いな。
すぐに覚えることになるだろうけど、その時の喜びも大きいだろうし、とりあえずはこれ以上のヒントは止めておこう。
魔法の確認は終わったところで、次はステータスだな。
俺とミリアの上限が解放されているから、とりあえず限界まで割り振っておこう。
STR:4(+ -) VIT:4(+ -) INT:21* DEX:4(+ -) CHA:19* (9)
自分のステータスにポイントを振ると、予想では10ポイントだったけど、2ポイントしか割り振ることができなかった……。
俺の最大レベルが32で2ポイント、ファラが30で0ポイントだとすると、30からはレベル1につき1ポイントということか?
試しにミリアにもポイントを振ってみる。
STR:3(+ -) VIT:4(+ -) INT:20* DEX:4(+ -) CHA:17* (8)
やはりそうだ……。ミリアが31で1ポイントだから、これはもう間違いないだろう。
そうなると、ジョブの設定もまた考え直さないといけないし、ポイントを余らせておくのも勿体ないな……。
メインは確実に上げたいジョブ、または状況に合わせたジョブにするとして、サブはステータスの上限解放用にすべきか?
ファラは最小限のジョブしかないし、予定通りのジョブになっているから、このままで問題ない。
でも、ミリアは魔術士と僧侶だしな……。使徒が30になるまで我慢してもらうか。念願の魔導士にもなれたことだし、少しは大丈夫だろう。
「タカシ、また実験?」
「え、あぁ、いや、ちょっと考え事してただけだよ」
「そう」
ステータスの伸び率が緩やかになってきたし、装備も揃える必要があるな。
それに、二人のメイン装備であるゴスロリと制服も、交互に着ているとはいえ、新鮮味が欠けてきたし。
次の街に着いたらギルドで換金しよう。大量にビーを狩ったから、100金は超えているはずだ。
それだけあれば防具を新調できるだろう。残りの金で新しい奴隷を迎えることも考えよう。
足りなければ、また稼げば良いだけだ。
「ミリア、今向かってる街の近くのモンスターはどうなんだ? 強い?」
「魔族の国が近いので、強いモンスターも多いです」
「ミリアの故郷? どこら辺にあるんだ?」
「北東の方、あっちの方角ですね」
魔族の国に近ければモンスターが強いというのがよく分からないが、強いモンスターなのであれば、その分報酬も多いだろう。これは期待できる。
周辺のモンスターを狩ってみて余裕あれば、ダンジョンも考えることにしよう。
一度経験したとはいえ、中に入ってみないことには、出てこられるかどうかすら分からない所っていうのは、やはり怖い。
「周辺にダンジョンはあるの?」
「ありますよ。ただ、少し古いダンジョンなので、あまりお勧めはしません」
「そうか。残念だ……」
そう簡単にはいかないか。
まぁ、街には狩り目的ではなく、ミリアの希望で来ただけなので、お金稼ぎではない。色々なモンスターと戦う経験が積める程度に考えておこう。
そういえば、かなり移動したな。
ファラの召喚している斥候ビーが優秀なので、前方の状況が分かるため、時間が掛からず移動できているからだろう。
ほぼ魔法の練習をしながらの移動だったが、夕方になりつつあった。
「ファラ、ビーを使って周りに家が建てられそうなところを探してくれないか?」
「わかった」
歩きながら指示を飛ばすだけで、斥候が調べてきてくれる。
召喚術士は魔導士とは違う面で便利なジョブだな。
「あっち」
「案内してくれるか?」
「ん」
ファラに案内してもらい、家を建てて野宿する場所を確保する。
「日も落ちてきたし、今日はここで休もう」
「はい」
「ん」
飯を食べ、風呂に入り、ベッドに移動する。
昨日の今日なので、あまり悪戯する気にはなれず、どうしようかと考えていたら、珍しくファラの方が先にMP切れで倒れた。
驚いてミリアのMPを確認すると、ミリアも既に残り二桁ほどしかなく、危うく一人寂しく寝ることになるところだった。
召喚は思っている以上にMPを消費するらしい。気を付けて見ておかないとな。
「ファラの方が先に倒れるって初めてだよな」
「そ、そうで、すね……」
「ミリアもそれ以上魔法使うと倒れるよ」
「えぇ!?」
こう言っておけば、ミリアもこれ以上は魔法を使わないだろう。
ファラを運び一緒に横になる。
「さ、ミリアも寝よう」
「はい……」
二人の肌を感じながら幸せに浸りつつ、眠る。




