第53話 召喚術士
ミリアが見つけてくれたポイントに着いた頃には、日が傾いてきていた。
すぐに自分達とラン達用の家を作り、内装の調整を行う。
「こんなものかな」
「我々の分までありがとうございます」
「いえ、それじゃ俺達はそっちの家に居ますんで、何かあれば声でも掛けてください」
「はい、本当にご厚意感謝します」
アバン達と別れ、家に入る。
「さて、ダンジョンを攻略したのは良いが、素直に喜べない状況だな」
「そうですね……」
「ん」
「何かしてあげられたら良いが、そもそも獣人達の国ってどこら辺にあるんだ? ミリア、知ってる?」
「はい、ここからはそんなに遠くないです。西の方に三日程の位置にあります」
三日で遠くないっていう認識なのか。戦闘する時間も含まれているからだろうか。それでも俺には遠いとしか思えないが。
「四人を国に返してあげたいって言ってたけど、その距離を運ぶのは大変だな……」
「モンスターにも注意しながらとなると、厳しい旅になりますね」
「棺と、移動のための馬車……は流石に無理だから、荷車でも用意してあげるか」
「はい! そうですね!」
涼しいとはいえ、どの程度の時間で遺体が痛むか分からないが、三日も運ぶのは無理だろう。
棺と荷車があれば、ひとまずは何とかなるかもしれない。
「よし、街に移動しよう。俺の転移が本当に使えるかどうか実験もしたいから」
「分かりました」
アバン達には何かあれば声掛けてくださいと言ってしまったが、少しの間くらいならば問題ないだろう。
二人の肩に触れ、ミリアと出会った街、名前なんだっけ……。そういえば聞いてなかったな。
「えっと、今まで通ってきた街の名前って何だっけ?」
「ビエグにエストルです。街の入口に書いてあったじゃないですか……」
「ごめん、見てなかった。よし、ビエグに行こう」
ミリアと出会った街がどちらか分からないが、とりあえず宣言して神脚を使い、城壁の外に移動する。
「わふっ」
「んっ」
何かかわいい声出しているけど、いきなり転移して、数センチメートル浮いた状態からの着地だったので、舌でも噛んだのだろうか。
「あれ……。え? ここエストルじゃないですか!」
「あれ? ミリア達と出会った街に移動したつもりだったんだけど……」
「え、あぁ、じゃあ合って……あれ? じゃない! ビエグって言ってましたよね?」
「あぁ、こっちがエストルなのか。ごめんごめん。もう覚えたから大丈夫」
教えてもらっておいて言うのも何だが、普通移動してきた順に街の名前を言うじゃん。だからこっちがビエグかと思ったのに……。
そんなやり取りをしつつ、奴の前に移動する。
「おう、お前達か。最近見なかったから心配したぞ。元気そうでなによりだ」
「カッシュさんもお元気そうで」
「うむ。それより、ここ数日どこに行っていたんだ?」
「ちょっと隣町まで」
「そうか。小さな子も居るんだ。あまり無理はするなよ?」
「はい。心配どうもです」
チラチラとミリアとファラを見つつ、心配してくれるので適当に挨拶してその場を去る。
棺と言えば材木屋だろうということで、材木屋の方へ移動する。
「ちわっす! お久しぶりっす」
「こんばんは。えっと、お使いで棺を探しているんですけど、あります?」
「棺っすか……誰かお亡くなりに?」
「えぇ、ちょっと知り合いが」
「そうっすね……棺って基本、特注っすから、作り置きはないっすね……」
そうだよな。レプリカとかならあるだろうけど、人それぞれサイズが違うだろうしな。流石に置いてないか……。
「あ、教会ならストックがあると思うっすよ。大、中、小って大きさは選べないっすけど。一昨日? 卸したばかりなんで!」
「おお、良い情報どもっす。それと、棺を運ぶ為に荷車も探してるんですけど、あります?」
「荷車なら、大きいのから小さいのまであるっす」
「じゃあ、棺が4つ程乗る程度の大きさで、屋根がある物を一つください」
「あざっす」
兄貴の為っすから! ということで、頑丈そうな荷車を1金で譲ってもらった。荷車高いな……。
そのまま二人を荷車に乗せて、ミリアの案内で教会の方へ移動する。
「こんばんは」
「はい、こんばんは。本日はどのようなご用件で?」
神父さんらしき人に挨拶をしたら、道具屋的なノリで返事された。
懺悔はー。お布施はー。という感じかと思っていたんだが、勝手な思い込みだったようだ。
「えっと、棺を探しているんですが、材木屋から、教会に行けばあるだろうと聞いたので来ました」
「えぇ、ありますよ。どなたかお亡くなりに?」
「はい。知り合いの冒険者パーティーで四人ほど」
「それはそれは……さぞ、お辛いことでしょう……」
祈りのポーズで返される。これが神父か……見るのは初めてだ。
「それで、棺を譲っていただけたらと……」
「もちろんですとも。こちらへどうぞ」
案内されたところは倉庫らしく、棺やら燭台などがいくつも保管されていた。
その中から四つほど選ばせてもらい、1つずつ荷車まで運ぶ。
「助かりました。ありがとうございます。それで……寄付などはどちらに……?」
「痛み入ります。そちらへお願いします」
大きなお皿のような物が置いてあったので、4金ほど入れておく。
「おお、ご不幸があったにも拘わらず、多額の寄付、どうか神のご加護のあらんことを」
「こちらこそありがとうございました」
見えなくなるまでお祈りのポーズのまま見送りされた。相場が分からないって怖いね……。
「さて、後は何か必要な物ってあるかな?」
「三日間移動することになるので、封印の護符とかあると喜ばれるかもです」
「そんなのあるんだ? 道具屋かな?」
「はい」
ミリアの話によると、使われていない部屋などに封印の護符を貼ると、数日間は貼った時の状態で保つことができるらしい。但し、密室の状態に限るのだとか。
それを棺の蓋を閉めた状態で貼ると、腐乱を防げるのではないかということらしい。便利だな。
説明を受けつつ道具屋に到着し、封印の護符を8枚程購入。ここでも4金。以外に金使ったな……。
街を出る前にミリアに、ハーピー、バタフライ、猪、兎の報酬を受け取ってきてもらうことにした。
4金20銀になったらしい。ジャラジャラと渡される。
「ありがとう」
「いえ、思っていたより少ないですね」
「ビーばかり狩ってたからね」
「ビーとエレメントの分は明日報酬貰いに行こう」
「はい」
そのままカッシュの下に戻り、棺を運んでいることをしつこく聞かれたが、知り合いの為だから早く行かないといけない、という旨伝えて、外に出る。
「じゃあ戻ろうか」
「はい」
「ん」
荷車の上に二人を乗せていたが、念の為肩に触れてもらい、神脚で戻る。
「ぐっ……」
「タカシさん!?」
「タカシ!?」
棺と荷車分も人数と換算されたらしく、MPがごっそり持っていかれて思わず膝を突いてしまう。
「大丈夫。ちょっと精神力を使いすぎただけだから……」
立ち上がり、大丈夫だからと二人の頭を撫でる。
「無理はしないでください」
「ん」
「ありがとう。大丈夫だよ。まだ余裕はあるから。それより、アバンさん達の所に行こうか」
このMPが大量になくなる感覚にも慣れておかないとな……。
少し眩暈がするが、マナポーションを飲んで、そのままアバン達の家に向かう。
「おお、タカシ様、その荷物は……ん? 棺ですか!?」
「えぇ、流石にそのまま寝かせておくのは可哀想かなと思い買ってきました。荷車も持ってきたので、これも使ってください」
「ぐぅ……本当に、何から、何まで……あ、ありがとう……ござい……ます」
「気にしないでください。それじゃ俺達は戻りますね」
中には俯いて動かないランが見えたが、アバンも涙をこらえているようだったので、すぐにその場を後にして家に戻る。
まだ晩飯を食べていないことに気が付いたので、晩飯の準備を行い、五人分用意する。
「これ届けてくるから、すまないが少しだけ待っててくれるか?」
「はい」
「ん」
再びアバン達の下に飯を届けるが、食べる気は無さそうだ……。
テーブルの上に二人分だけ飯を置いて、ちゃんと食べるよう言い残し、また家に戻る。
ランが全く動いてなかったな……大丈夫だろうか。アバンが居るから変な事にはならないとは思うが、少し心配だ。
「ただいま。それじゃあ食べようか」
こっちもお通夜ムードになっていたので、今後の事について相談しておく。
「明日からはどうしようか」
「大きな街には魔術士協会があって、そこに登録したいです……」
「おお、そっか。魔導士になったもんな。登録すると、何か特典みたいなのあるの?」
「はい。大きな図書館などで、普通なら閲覧できない書物などを読めたりします」
「ミリアは勉強熱心だな。ここから一番近い大きな街ってどのくらいの距離にあるの?」
「二日程北へ行ったところにザクゼルという街があります」
ミリアが協会に登録したら騒ぎになるかもしれないな。でも、ミリアの夢だった魔導士だから登録してあげたい。
悩むところではあるが、面倒な事は断れば良いんだ。好きにさせてあげよう。
「分かった。じゃあ、その街に向かおう。但し、ミリアをお仕置きしなくて良いように先に言っておくけど、俺の事は何も言わないでね?」
「だ、だいじょぶです……。流石に何度も同じ間違いはしません!」
本当に大丈夫だろうか。どう聞いてもフラグにしか聞こえない。
「ファラは何処か行きたいところある?」
「タカシと同じとこ」
「そっか。ありがとうな」
「うぅ……」
ミリアがしまった……という顔をしている。どうせ、私だけ我儘な事を言っちゃった……とでも思っているのだろう。
俺もファラもそんな気はないので、スルーしておく。
「よし、行先も決まったところで、風呂にでも入ろうか」
「はい」
「ん」
ティータイムが終わったばかりなのに、すぐにファラが服を脱いで風呂に向かった。早いな。
脱ぎ散らかした服を回収しながら、自分も裸になり、ファラの後を追う。
ミリアも渋々といった感じだが、ちゃんと付いてきたので、すぐに風呂を沸かせて、三人で風呂に入る。
「ふぅ……今日は疲れたな……」
「ふぁ……ですね……色々ありましたし……」
「んぅ……」
今日は流石に悪戯する気にはなれないので、ファラの体を洗い、ミリアと二人自分達の体を洗う。
十分に体が温まった後、そのまま体を拭いてベッドに移動。
「ミリア。空間魔法の練習をしておいてくれる?」
「分かりました」
ミリアには空間魔術士を覚えさせたいので、サブを僧侶から使徒に変更させて、空間魔法の練習をさせる。
「ファラは召喚術士になってるよ。だから、召喚魔法の練習をしておいて」
「わかった」
「え!? ファラ、召喚術士になってるんですか!?」
「うん、良い子にしてくれているからね」
「ずるいです……」
ミリアがジトっと見てくるが、放置しておく。
ダンジョンも終わり一段落ついたので、それぞれのステータスを確認しておく。
▼タカシ・ワタナベ Lv.26 魔術士 Rank.C
HP:408(408+0)
MP:614(1173+100)
ATK:219(204+15)
MAG:1001(969+32)
DEF:257(204+53)
AGI:204(204+0)
STR:4(+ -) VIT:4(+ -) INT:19(+ -) DEX:4(+ -) CHA:17(+ -) (11)
JOB:M魔術士Lv.26 SアンノウンLv.32 僧侶Lv.30 冒険者Lv.9 聖職者Lv.1 村人Lv.1 闘士Lv.1 戦士Lv.1 剣士Lv.1 射士Lv.1 神官Lv.1
SKL:魔力上昇小 初級魔術 初級魔術障壁 初級魔術付与 魔力上昇小* 初級治癒* 初級治療* 初級付与魔術* 初級合成魔術* 初級錬金魔術 初級空間魔術 神手 神眼 神脚 神口
▼ミリア・ウェール Lv.8 魔導士 Rank.C
HP:336(336+0)
MP:401(1104+200)
ATK:150(144+6)
MAG:966(912+54)
DEF:221(192+29)
AGI:192(192+0)
STR:3(+ -) VIT:4(+ -) INT:19(+ -) DEX:4(+ -) CHA:16(+ -) (10)
JOB:M魔導士Lv.8 S使徒Lv.1 魔術士Lv.30 僧侶Lv.31 冒険者Lv.10 村人Lv.2 聖職者Lv.1 付与術士Lv.1 商人Lv.1 奴隷Lv.1 闘士Lv.1 戦士Lv.1 剣士Lv.1 射士Lv.1 神官Lv.1
SKL:魔力上昇中 中級魔術 魔力上昇小* 魔力上昇小* 初級魔術* 初級治癒* 初級治療* 初級魔術障壁* 初級付与魔術* 初級合成魔術* 模倣
▼ファラ・オスロ Lv.1 召喚術士 Rank.E
HP:306(306+0)
MP:358(1122+150)
ATK:161(153+8)
MAG:919(867+42)
DEF:182(153+29)
AGI:255(255+0)
STR:3(+ -) VIT:3(+ -) INT:17* DEX:5(+ -) CHA:17* (9)
JOB:M召喚術士Lv.1 S使徒Lv.30 魔術士Lv.30 奴隷Lv.5 魔導士Lv.1 冒険者Lv.1 村人Lv.1
SKL:魔力上昇中 中級召喚魔術 魔力上昇小* 初級召喚魔術* 初級魔術* 初級魔術障壁* 初級付与魔術* 初級合成魔術* 中級治癒 初級空間魔術 模倣 転換
気になるところが数点ある……。まずいつの間にか上限解放されていることだ。ファラだけ解放されていないということは、恐らくレベル31から解放されるのだろう。
そこはファラが31になってからまた確認しよう。
次にミリアのランクが1つ上がっている。一人でギルドに報告させたからだろうか……?
報告にパーティーは関係ないのか? これも色々と確認する必要があるな……。今度ミリアにでも聞いてみよう。
最後に、ファラが転換というスキルを覚えている。HPをMPにしたりするのだろうか。
それとも、スキルを別の物にしたりするのだろうか。気になる……これも実験しないといけないな。
色々と確認することが増えた。
どうせ街に着くまでに時間はあるんだ。その間に少しずつ確認していこう。
「さぁ、そろそろ寝ようか」
「はい」
「ん」
色々と疑問を残したままだが、明日に備えて寝ることにする。
ラン達はちゃんと飯食って寝ただろうか……気になるが仕方ない。今はそっとしておこう……。




