第47話 クッキー
翌朝、一番に目が覚めた。
二人はまだ寝ているようなので、動けない。
今日は何をしようか。
とりあえず当面の目標は、ダンジョンが攻略されるまで狩りをして、三人揃ってレベル30を超えることなのは変わりない。
ただ、毎日狩りをするだけというのは面白くないし、そろそろ上位ジョブのことについて勉強しておく必要もある。
今日は早めに終わらせて、ミリアに色々と教えてもらお……いや、ミリアのことだ。今聞いてしまうと、もう上位になれるから聞いたのかと勘違いされそうだ。
レベル30になっただけで上位ジョブに就けるとは限らないし、ジョブ一覧を確認してから勉強会を開くことにしよう。
そうなると早くレベル30にしたくなるな……。
今のレベルは24だし、まとまったモンスターを狩っていたら、明日には30になるだろう。
でも、レベル20を超えてから、次に上がるまでに狩らないといけないモンスターの量が、一気に増えてきたんだよな。
本来なら数パーティーで時間を掛けて狩るモンスターを、三人で狩れるからこそのレベル上昇速度なんだけど、更に強いモンスターを狩るようにシフトするか……。
そういえば、ランクBであるキラービーやエレメントが瞬殺だったな。
このダンジョンでも出るだろうから、そいつらを優先的に、且つ、後からミリアに、もっと強いモンスターを教えてもらおう。
あと気がかりなのは、ステータスくらいか。
CHAは、現状でカンストしたことが分かったので、余りを全てINTに振ってあげるとミリアは喜ぶだろうけど、どうしたものか。
もし30で上限解放された際、ポイントを残しておいた方が、今INTに振るより伸び率が高いから悩むところだ。
とりあえずレベルが30になった時の事を考え、10だけ残して、あとは全部INTに割り振ってあげるかな……。
あ、そうだった! ミリアにはお仕置きがあったんだ。ファラもやる(してほしい)って言ってたし、それを口実にポイントを……。
アリだな。「今回のお仕置きは、多分魔力が上がる」的な事を事前に言っておけば、今下がっているミリアのテンションも間違いなく上がるだろう。
うおぉ、俺頭良いな! 考えただけで興奮してきた! よし、この作戦でいこう……いや逝かせよう!
「ふふふ……」
「……タカシさん、怖いですよ……?」
「うお、起きてたのか!」
「何かブツブツ言っていたので……」
長々と考え事をしていたので、かわいい寝息を聞きそびれた。
途中からミリアはジッと俺を見ていたらしく、ずっと「んー」、「いや」、「でも」などの独り言の後、最後に「むふふ」などニヤついていたらしい。キモイな、俺……。
「ごめん、色々と今後の事を考えてた。起きてたのなら、教えてくれれば良いのに」
「だって、うんうん唸ってたから、声掛け辛かったですし……」
「そっか。ん、ファラも起きてたんだな。二人とも起こしたみたいで、ごめんな?」
「だいじょぶ」
ミリアが起き上がったので、つられて皆起き上がり、服を着る。
「よーし、少し早いけど朝食にしよう。ついでだし、あいつらの分も作ってあげるか」
「ん」
身支度を整えた後、三人で九人分の朝飯を作る。
朝食だし、そこまで手の込んだ物じゃなくて良いだろう。
三人で作っても手が余るな。昨日言っていたクッキーの作り方をファラに教えてあげよう。
「ミリア、朝食の準備一人で任せて良い?」
「え? 私だけで、ですか? 別に構いませんが……」
「よし、じゃあファラ。俺等は今日のおやつを作ろうか」
「ん!? つくる!」
ミリアに朝食を作ってもらっている間に、街で買っていた小麦粉や卵などをベースに、クッキーの作成に入る。
ボウルが無かったので、桶に材料を入れ、混ぜる。
「ファラ、材料は覚えた? 後はこれを手で、こんな風にコネてくれ」
「覚えた。こねる!」
ファラに生地を作ってもらっているところで、ミリアが話し掛けてきた。
「それで、どうするんですか? 今日から、あの方達と一緒に行動するんですか?」
「え? 何で?」
「だって……ラン姫様の事気に入ったみたいですし……」
ヤキモチか!? 妬いてくれているのか!?
あのバカ狸、見た目は美少女で、スタイルも良いし、イジり甲斐はありそうだけど、別に気に入ったわけではないんだが……。
「別に気に入ってないよ? バカだからイジってるだけだよ」
「ばっ!? ちょっ! ダメですよ! 姫様なんですから!」
「えぇー。皆思ってるんじゃない? あいつバカだって」
「ばっ!? 姫様なんですよ! 言葉選ばないと!」
姫だろうが、別に敬う必要はない。俺には関係ないし。
「タカシ、できた」
「お? ちゃんと出来てるな。じゃあ、これを全部使っていいから、こんな感じで好きな形を沢山作ってくれ」
「わかった」
ファラに教えつつ、ミリアとの会話に戻る。
「あいつは指示に従わなそうだし、俺は二人に魔法を教えないといけないから、一緒に行動はしない」
「はい! ありがとうございます!」
「それに、俺は早くレベル上げたいし、俺達の事がバレるのは避けたいしな」
「うぅ……そうですね」
昨日余計な事を言ったのを気にしているのだろう。
それはもう、ムフフなお仕置き決定ってことで、水に流したのだから、気にするな。
「そんなわけで、今日は俺等だけで、このダンジョンの中でも強いモンスターを狩ろうと思うんだけど、どんなモンスターがどこら辺に居るか予想とかできないか?」
「うーん……そうですね……。昨日の森はハーピーやバタフライだったので、近くの山で大きな木があるところには多分、キラービーの巣があると思います」
「あいつらは集団で毒があるからこそBランクの依頼でしょ? それより、単体で強いモンスターとか居ないかな」
「単体ですか……このダンジョンでは、多分キラービーやエレメントが一番強いと思います」
ダンジョンはモンスターの思念の塊で出来ているんだったな。そうなると、街で蜂以上の討伐依頼が無かったってことは、そういうことになるのか。
早速、俺の予定が崩れてしまった……。
「じゃあさ、ビーやエレメントが大量に居るところとか分からないかな?」
「大量に……ですか。縄張りがあるので、巣は一つの山に一つしかないから、山を回るしかないないかと……」
「そっか。皆飛べたら楽に回れるだろうが……」
「すみません……」
「いやいや、俺自身が飛べないんだから、気にしないでくれよ? ただの願望だから。それより、一緒に練習がんばろうな」
「はい!」
俺自身が飛べないのに、ミリア達を責めるわけがない。
でもそうなると、山でビーを狩りつつ、次の山に移動する感じで狩り続けるのがベストかな。
「タカシ、できた」
「お? 可愛いのが沢山出来たな。それじゃあ、これを焼こうか」
「ん」
家を作る時に一緒に作っておいた即席の小さなピザ釜モドキでクッキーを焼く。
砂糖が無かったので蜂蜜を代用したが、大丈夫だろうか……生地はちゃんと出来ていたが心配だ。
甘い匂いが漂ってきて、生地に焼き色が付いてきた。焼き色が付くのが早い……火加減が難しいな。
これ以上焼いても焦げるだけなので、ひとまず取り出して試食してみる。
サクサクというより、ボリボリという感じだな。焼き過ぎたか。
「ミリア、ファラ、どうだ?」
「おいしいです」
「おいしい」
「そっか。なら良かった。じゃあ後は焼いておくから、ファラは朝食を運んで、ミリアはあっちの連中を呼んできてくれ」
「ん」
「はい」
二人には朝食の準備をお願いしている間に、全てのクッキーを焼き終え、皮の袋に割れないように並べて詰める。
後はこれをファラに持たせておいて、おやつにしよう。
作業が終わったので、昨日作ったテーブルに移動すると、既に全員揃っていた。
「んー。眠いー」
「ほら、姫様! ええと、昨日に引き続き、朝食までご用意していただき、ありがとうございます」
「んー。ありがとうー」
「いえ、早く起きてやりたい事もあったので、そのついでですよ」
ランは眠そうだ。朝に弱いのか? 狸って朝に弱いんだっけ……そんなわけないよな。
「さぁ、食べましょうか」
「はい、それではお言葉に甘えて。いただきます」
「「「「いただきます」」」」
皆それぞれ、食事をしているので今の内に今後の事をアバンに聞いてみる。
「そちらのパーティーは、これからどうされるんですか?」
「そうですね……昨日のような事がないように、飛行型を避けて狩りを続けようと考えています」
「そうですか。では、俺等とは反対ですね」
よし、別行動にする為の先制が効いた。
「そうなんですか……良ければご一緒にと考えていたのですが……」
「飛行型は総じて火に弱いようなので、相性が良いんですよ。それに、この子達に魔法を教える修行の為にダンジョンに来たので」
「なるほど。それならば、残念ですが……仕方ないですね」
「えー、タカシくん達一緒に行かないのー?」
俺はイチャイチャしたいんだよ。行くわけないだろ。
ランと一緒に行く行かないの話をしていたら、皆食事が終わっていた。朝食だし、こんなものだろう。
別行動になったので、良かった。それだけでも良しとしよう。
「昨日、今日と、色々としていただき、本当に感謝いたします」
「いえいえ、こうやって出会えたのも、何かの縁です。またお会いしましょう」
「次お会いする時は、外に出た時ですかね。その際は、是非我々の国へお越しください。最大限おもてなし致しますので」
「えぇ、是非立ち寄らせていただきます」
最後に全員と握手をして、別れの挨拶を交わし、それぞれの準備の為、解散となった。
「とりあえず、こんな感じかな。それじゃあ、家の中を片付けようか」
「はい、分かりました」
「ん」
家の中を片付けて外に出たら、既に向こうのパーティーは出発した後のようだったので、こちらも早々出発することにする。
「よし、今日はおやつがある。ファラ、がんばろうな!」
「うん」
「ミリアもビーの居そうな所への案内よろしくな!」
「はい」
さっきまでは賑やかだったので、三人になった途端静かになったが、気を使わなくて良いので楽だ。やっぱりこの子達と一緒にブラブラする方が俺に合っているな。
ミリアの案内の下、一番近い山に向かって進んで行く。




