第41話 キラービー
街に到着したのは良いが、まだ昼過ぎだ。夕方まで狩りでもするかな……。
とりあえず、ギルドに行って依頼を覗いてみよう。
「まだ日が落ちるまで時間があるし、ギルドに顔出して依頼でも受けてみようか」
「はい」
「ん」
場所が分からなかったので、冒険者風の一団にギルドの場所を尋ねることにする。
どうやら、すぐ近くにあるそうだ。まだ二つしか街を知らないが、やっぱり門の近くにあるのが普通なのだろうか。
到着してすぐに掲示板を覗くと、特に稼ぎになりそうな依頼はなかったが、昨日大量に倒したスネークの依頼があったので先に受けておく。
ミリアに尋ねたところ、掲示板を見る限り、山と、その周辺に居るモンスターの依頼が多いそうだ。
暗くなるまでしか狩りをしないので、とりあえず山のモンスター討伐の依頼を受けることにした。
QST:E薬草の採取(報酬:10銅/1枚)残り23時間
QST:D鉄鉱石の採取(報酬:40銅/1個)残り23時間
QST:D生命水の採取(報酬:50銅/1個)残り23時間
QST:Dスネークの討伐(報酬:4銀/1匹)残り23時間
QST:Dスライムの討伐(報酬:4銀/1匹)残り23時間
QST:Dセンティピードの討伐(報酬:5銀/1匹)残り23時間
QST:Dフォレストラットの討伐(報酬:4銀/1匹)残り23時間
QST:Cグリフォンの討伐(報酬:20銀/1匹)残り23時間
QST:Bキラービーの討伐(報酬:60銀/1匹)残り23時間
QST:Bエレメントの採取(報酬:50銀/1匹)残り23時間
キラービー……蜂のくせに名前すごいな。一撃必殺という感じだろうか。それとも、やっぱり集団で襲ってくるんだろうか。
後者であるなら、魔法でまとめて殲滅できるから楽が出来そうだな。致死性の高い毒とか使うようなら避けた方が良いだろう。
「ミリア。キラービーってどんなモンスターなの?」
「キラービーは主に山に生息します。女王であるユニークを中心に巣を作り、集団で襲ってくるモンスターです。女王は人間を即死させる程の毒を持っています。周りのビー達は、一斉に針を刺してきますが、体が麻痺する程度の毒です」
「なるほど……ビーが一斉に襲って、マヒさせたところを、女王が一撃で仕留めるっていう戦い方をしてくるんだな」
「はい。パーティーに高位の魔術士でも居ないと、全滅してしまう危険性が非常に高い、とても恐ろしいモンスターです」
今の俺達なら多分大丈夫だろう。一気に殲滅できるだけの瞬間的な火力はあるはずだ。
グリフォンは、蜂よりランクが低いんだ。まぁデカいだけの鳥だろうな。残るはエレメントか。採取で一つ50銀はとても魅力的だ。
「エレメントってどうやって採取するの? どこに行けば落ちてるの?」
「エレメントは採取系のクエストになっていますが、エレメント系のモンスターを倒すと手に入ります」
「それだったら、採取じゃなくて討伐で良いんじゃないの?」
「そうですね、ただ、色んな属性のエレメントがあるので、どれを持ってきても良いように採取扱いにされているんです。ここらへんで言うと、アースエレメントが山に居ると思います」
そういうことだったのか。
蜂と戦うには作戦を立てる必要があるけど、山、楽しそうだな……。そんなに狩りをするつもりはないし、行ってみるか。
「それじゃあ山に見学に行ってみようか」
「はい」
「ん」
森には行かないので、薬草と百足と鼠以外のクエストを全て受け、街を出る。
街の周囲には山がいくつかあるので、一番登り易そうな、あまり木の生い茂っていない山に向かうことにした。
「ここら辺、本当に山が多いな。鉱山か何かなの?」
「はい、質の良い鉄鉱石がよく取れるそうで……あ、あれがアースエレメントです」
「あの鏡みたいな板みたいな奴?」
「鏡? 見たことないので分かりませんが、はい。あの茶色の浮かんでいるものです」
鏡を見たことがない? アースエレメントより、そっちの方が衝撃だ。これはネタになるかもしれない。あの武具屋に会ったら鏡に関して提案してみよう。
お金儲けの話は置いておいて、アースと言うくらいだから、水や風に弱いのだろうか。
「それでは、魔力が一番高いミリアさん、物凄く速い水の玉をイメージして、エレメントに放ってみて」
「はい!」
ブツブツ詠唱してる。詠唱なんて要らないのに。
――バシュウウッ!
――バァァァァン!
もうね、水の音じゃないよね。水圧凄そう。
案の定、エレメントさんの中央にデカデカと穴が開いちゃってるし。属性なんて関係なさそうだな。
「やりました!」
「うん。大したもんだ」
ミリアが喜んでいるので、頭を撫でつつエレメントを回収しておく。本当にエレメントが手に入った。
「とりあえず適当にブラブラしてみようか。あ、キラービーが出た時は、すぐに障壁を張って全力の火魔法で一気に殲滅するからよろしく」
「分かりました!」
「ん」
魔法が実戦で使える時のミリアは輝いているな。返事も元気が良いし、やっぱり元気なミリアはかわいいな。
そんな感じでファラを愛でつつ、元気なミリアを観察しながらエレメントやグリフォンを倒していると、ミリアが少し開けた広場の前で立ち止って、地面を見ていた。
「どうしたの、ミリア?」
「この辺り、鉄鉱石がありますね。回収しておきましょう」
「ん」
ミリアの周辺にはごつい岩が沢山ある。角度を変えたりすると、日の光を反射している石もある。確かに金属を含んでいそうだ。
ファラは適当にひょいひょい集めているけど、これをギルドに持って行くとしたら、どのような換算をするんだろうか。
含有量なんて、この世界では分解するまで分かるはずもないし。数量なら、割れば増えるしな……重さか? いや、気にしたら負けだ。
考えるのは止めよう。プロであるギルド職員に任せよう。
「エレメントもグリフォンも、そろそろ飽きてきたな」
「飽きたって……本来なら先日倒したユニークと同等なんですよ? フルパーティーで倒すくらいの強さなのに!」
「だって、ミリアが一撃で倒しちゃうじゃん。それって、ミリア一人でフルパーティー分の強さがあるってことでしょ。さっすがだなー。可愛くて強い! 惚れちゃう! もう惚れてるけど」
「茶化さないでください! 私だって……正直、混乱してるんです。タカシさんが居なかったら何度死んでも倒せない程のモンスターですし……」
「タカシのおかげ」
やはりジョブとステータスのお陰なんだろうな。俺から見たらサクサク狩りできる程度なんだけど、本来はそうではないのだろう。
他のパーティーが戦っているところなんて見たことないし。分からなくて当然か。
今度他のパーティーが戦闘でもしていたら、勉強の為にちょっと見学させてもらおう。
そんなことを考えていたら、ファラが腕を叩いてきた。
「タカシ、きた」
「うん? おしっこ?」
「ちがう。ビー」
「え?」
ファラが指差した先を見ると、“ブブブブ”と音を立てながらバスケットボール大の蜂が大量に迫って来ていた。
中には一匹、ファラくらいの大きさの蜂が居る。あれが女王だろうか。それにしてもデカい。気持ち悪いな。
そんなことを思っている場合ではない。まずい、いきなりすぎて何も準備していない。
「障壁を張れ! ミリアは左右に火の壁! ファラは後方と上に火の壁! 隙間がないように! できるだけ広めに!」
「はい!」
「ん!」
指示通り障壁を張って、周囲に火の壁を作ってくれた。これで正面からしか襲ってこれないだろう。
どうせなら出来るだけ数を狩りたい。女王は最後に仕留めるか。
ジョブを魔術士に変えておく。
全部が射程内に入るまで適当に寄せて、数匹ずつ的確に石と火の合成魔術で狙撃して処理する。
それにしても数が多い。集団とは聞いてたけど、ここまで多いのか。
これなら、フルパーティーが全滅するのも分かる。
「タカシさん、いつまで壁を張れば良いですか?」
「今目の前に居るビーを一気に処理するから、それまで張ってて」
「分かりました」
「ん」
全てが射程に入った事を確認して、火炎放射器の要領で目の前の蜂を殲滅する。
女王には拳大の岩を高速で何度か貫通させ、蜂の巣にしてあげた。蜂だけに。
……面白くないな。カッシュレベルだ。
「よし、壁は解除して良いよ。後は皆で処理しよう。基本は火で処理するように」
「はい!」
「ん」
二人が残党を狩っている間に倒したビーを回収していく。
いったいどこからこんな大量に来たんだ?
「こいつら、あっちの広場の奥から来たよね。巣があるのかな? 行ってみよう」
「巣は高く売れるので、是非持ち帰りたいですね」
「おいしい」
何か一人だけお金以外の事を考えてる奴が居るけど、まぁ良い。かわいいからスルーしておこう。
ファラを撫でながら、蜂の来た方へ向かうと、木に大量の巣があった……が、違和感があるな。確かにどうみても蜂の巣だ。
俺の知っている蜂の巣って、何十匹もの蜂で一つなんだが、この蜂の巣、あいつらより一回り大きい程度だ。これじゃあ、中に入れないじゃないか。
「えっと、俺の知ってる蜂の巣と違うんだけど、あいつらって一匹一つの巣を持ってるの?」
「違う? 私はこれしか知らないですが……そうです。中心に幼虫が居て、その周りは蜜で出来ていて、外側は木や葉を固めて作られています」
「そ、そうか……。ファラは美味しいって言ってたし、好きなんだよね? ミリアは?」
「おいしい」
「確かに蜜は美味しいですけど、私はちょっと……怖いです」
これ回収するんだよな。中にデカい芋虫みたいなのが居るんだよな。怖いわ!
「じゃあ、俺とミリアで回り警戒しておくから、ファラ、全部回収してくれ」
「ん。……食べていい?」
「だーめ。帰ったらね」
「わかった」
ファラの意外な一面が見れたな。甘い物が好きなのか。今度俺の知ってる甘いお菓子でも作ってあげよう。
巣を回収中、数匹巣に帰ってきたが瞬殺してさしあげた。
「ビーがこの程度なら、ここら辺は余裕みたいだな。他に何かお金を稼ぐ場所とかない?」
「うーん……ここら辺ではキラービー以上は……もうダンジョンくらいしか無いですね」
「あぁ、出来たばかりのってやつね。でも、いつ出られるのか分からないし、まだ入るのは怖いな」
「タカシさんなら、早期に踏破してしまうと思います」
「なんで? 過大評価し過ぎじゃない?」
「いえ、ダンジョンは数パーティーで中に入り、皆が合流した後に力を合わせて踏破するんですが、数パーティーで討伐をするようなモンスターを一人で倒してしまうんです。踏破は容易かと思います」
「ミリアがそう言ってくれるのは嬉しいけど、折角のパーティーなんだし、そこはやっぱり強力するよ?」
「もちろんです!」
「ん」
慎重なミリアが容易と言うんだ。本当に簡単なのだろう。
まだ入るつもりはなかったが、一考の余地はあるな……。
「本当に踏破できると思う? すぐに出られると思う?」
「そうですね。キラービーも倒せますし、まだ出来たばかりなので簡単では行かないにしても、タカシさんなら数日ではないかと」
「俺的には、パーティーメンバーが揃ってからダンジョンに行こうと思ってたんだけど、そこまで言うなら、明日から行ってみる?」
「明日からですか……。大丈夫だと思いますけど、行くなら準備をしないとです」
「ミリアが大丈夫だと言うなら大丈夫だな。よし、明日行ってみよう。とりあえずは、ここを片付けてからだ。後で、ダンジョンの事詳しく教えてくれる?」
「分かりました!」
後半はやることも無かったので、ミリアには鉄鉱石を探してもらい、俺は蜂の巣の回収を手伝う。
そして、全て回収が終わった頃には夕方になっていた。
「そろそろ帰ろうか」
「そうですね」
「ん。たのしみ」
ここで風呂に入っても良いが、風呂に入ってから下山では汗を掻いて意味がない。入口付近まで戻ってから風呂に入ろう。
何が楽しみなのかは言うまでもない。蜜を食べたいのだろう。
まさか、蜂の子の方じゃないよな……?
帰り道ではファラはどんなお菓子が好きなのか聞き、食べ物の話をしながらグリフォンとエレメントを数匹狩りつつ下山。
合間に鉄鉱石を回収していると、あっという間に山の入口まで戻ってきてしまった。




