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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
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第36話 召喚魔術

 門へ移動したら、当然遭遇する人が居る。


「おい、そっちの小さな子はどうしたんだ?」

「この子はファラ。昨日から俺の奴隷になった子です」

「ファラはファラ」

「お、おう。よくそんな金があったな。それにしても、お前は……子供、が好きなのか? ひどい事等していないだろうな?」


 何か誤解してるな。言葉を選んだ感はあるが、概ね合っているから否定はしない。


「子供は好きですよ?」

「そ、そうか……。奴隷だからって何でもして良いわけじゃないからな!?」

「分かってますよ。なぁ、ファラ?」

「ん。タカシはいい主人」


 ナイスアシストだファラ。これでもう何も言えないだろう。


「ふむ。でも、ひどい事をされたらすぐに俺のところに来い。君の主人を懲らしめてやる」

「わかった」

「ひどいですね。俺はひどいことなんてしませんよ?」

「してます!」


 黙って聞いていたミリアが突然爆弾を投下しやがった。こいつ……後でお仕置きだな。


「なにっ!? おい、そこに直れ!」

「あーあ、ミリアが空気読まないから、俺は牢屋にでも連れてかれるかもなぁ……魔法の練習できないな……」

「うぇっ!? あの、ちゃが、違います! そういう意味じゃないでしゅ! 変なことされているだけです! ひどいことはされてません! だいじょぶです!」

「変なことされてるんじゃないか! 成敗してくれる!」


 もうやだ。この単純肉だるま。俺の事は信じてくれないのに、小さい子の事はすぐに信じる。何か俺のところに来いとか言ってたし、こいつこそロリコンじゃないのか?

 この状況どうしよう……ミリアに何とかしろ、と目で合図する。


「ごめんなさい……変なことっていうのは、その別に、その、とにかく! 何でもないです! 私は幸せなので何の問題もないです!」

「お、おお、おう。変なことをされて幸せというのは、それこそ変な話だが……俺には子供の考えがよく分からん……。しかし、うーむ、本人が変なことをされて幸せなのならば、それはそれで良いのか……?」

「そうみたいです。では、今日は忙しいからもう行きますね!」


 自称変な事で幸せを感じるミリアはテンパっていて、これ以上の会話は泥沼になりそうだ。

 早急にこの場を去らねば。


「変なこと……幸せ……ひどくはない……何なのだ……」

「さぁ、二人とも行くよ」


 カッシュが一人の世界に入ったので、そそくさとその場を去る。


「変なことで幸せを感じるミリアさん。さっきのあれは、ちょっとひどいんじゃないですか?」

「うぁう……」


 もうダメだ。ショートする寸前だ。お仕置きは夜に残しておいて、ひとまず移動しよう。

 ミリアをおんぶして、ファラと共に道沿いに歩いて行くと、ミリアはそのまま意識を失ったようだ。


「タカシ、どこいく? ミリアだいじょうぶ?」

「とりあえず、このまま道なりに進んでみよう。ミリアはたまにこうなるんだよ。だから大丈夫」


 10分ほど歩いただろうか。ここ数日行っていた森とは雰囲気の違う森に到着した。ここら辺、森が多すぎだろう。

 その入口付近には家の跡だろうか。石が積み重ねられて壁のようなものがある。


「そこにちょうど良い場所があるし、練習前に着替えておこうか」

「ん」

「はい、これ服ね。あと、装備は槍って言ってたけど、魔法の練習をするから魔力の上がるワンド装備にしておこう」

「タカシがそう言うならそうする」


 装備を一通り渡して着替えてくれるのを待つが、ファラは手に持ったまま着替えない。

 そうか。俺が居るからか! 今朝怒られたばかりなのに期待して見てたわ。


「あぁ、ごめん。俺、外見ておくわ」


 ミリアを壁にもたれ掛からせて、壁の外側に出て行こうとする。


「タカシまって」

「うん? どうした?」

「これどうやって着るの? 分からない。教えて」


 そうか。こんなデザインの服なんて売ってないもんな。紐みたいなの多いし、確かに分からないかもな。

 そう思っていると、ファラが今まで着ていた服を脱いでパンツ一枚になったので、そのままゴスロリを着せてあげる。


 これはまずい。パンツ一枚はそりゃあもう興奮するけど、ゴスロリ姿のファラもやばい。

 ミリアの時も可愛すぎて抱きしめたかった、いや、抱きしめたが、ファラは違う。飾りたい。これはもう芸術だ。


「どうしたの、タカシ?」

「え、あ、ううん。大丈夫。ファラが可愛すぎて見惚れてた」

「そう」


 この素気ない態度も相まって、まさにこの子の為にあるような服だな。


「着替えたし、ミリアが目を覚ますまで、少し休憩しようか」

「ん」


 そう言ってミリアの右側に腰を下ろす。

 ファラは当然の如く、胡坐をかいた俺の上に乗ってきたので、ファラを抱っこして頭を撫でつつ、ファラの育成方針を考える為、少し深く聞いてみることにした。


「ファラの両親は有名な魔術士だって聞いたんだけど?」

「ん。召喚を専門にしてた。ファラはその手伝いをしてた」

「そっか。やっぱりファラも召喚魔術士になりたいの?」

「ん。目指すところは召喚かも?」


 何か曖昧な返事だな。何で疑問形なんだろうか。他にやりたいことでもあるのだろうか。


「そっか。あとね、ファラってモンスターを呼ぶ呪いに掛かってるって聞いたんだけど、それ以外に何かあったりする?」

「かんじょー? なくなった? みたいに聞いた」

「あぁ、なるほどね。それって治るの?」

「しらない。別に治らなくてもいい」


 無表情だけど、たまに感情の込もった顔をする時があるから、実際に感情が無くなったわけではないのだろう。

 本人は別に治らなくて良いと言っているが、治す方法でも見つかったら、また本人に聞いてみよう。


「ファラ。召喚魔法使ってみたい?」

「ん。目指すべきところ」

「どうやって使うか知ってる?」

「ん。召喚したい所に魔力? で陣? を描く? そして、モンスターの生態? を考えるらしい?」

「曖昧だね。何処で知ったの?」

「ずっと見たり聞いてたから」


 親が召喚魔術士で、その実験の手伝いをしていたのなら知っていて当然か。でも曖昧すぎるだろう。


「召喚って、何処かに居るモンスターの本物を召喚することができるの?」

「ちがう。魔力。本体を召喚するのは伝説級。空間? 合成? 召喚? 何か色々極めたら? できる? ……かも」

「なるほど。モンスターを魔力で生成するのか」

「ん」


 俺は本体だから伝説級の魔法で召喚されたことになるのか?

 そりゃあまぁ、神が使う魔法だったら初級だろうが伝説級だろうが関係ないか。


「魔法陣ってどんな物なの?」

「円ならなんでもいい。大きさが重要」

「あぁ、その円に収まる大きさじゃないと召喚できないわけなのね」


 大きな対象を召喚したければ、それだけ魔力を使って円を描く必要があるのか。なるほど。理に適っている。


「召喚したモンスターって襲ってきたりしないの?」

「そういう性格にすればいい」

「あぁ、そうか。魔力で生成するから、召喚対象の思考は操作できるのか」

「ん。一度召喚したら、誰かに消されるか、主が消えろって言うか、主の精神力が切れるまで消えない」


 便利だな。でも、これで召喚魔術というものがどういうものか分かった。これなら俺にも出来そうだな。

 ミリアはまだ起きそうにないし、実験してみるか。


 右手のナデナデを中止して、地面にかざす。左手はファラのプニプニお腹を堪能したままだ。


 魔力を放出し、地面に円を描く。

 次に目を閉じて、今まで一番相手をしたであろう野兎がイメージし易かったので、姿形や生態をイメージする。

 性格は従順。常に俺に懐いてくる性格になるよう、更にイメージ。

 最後にその形を魔力にして、円の中に出現するようイメージ。


――ボフッ


 円の中では白い兎がキョロキョロ周りを見ていた。

 目が合った瞬間、ピョンピョン跳ねながらこちらに向かってくる。俺を探していたのか?


 俺の傍に来て、俺の脚にスリスリと頬を擦り付けている。


「え? タカシ、召喚? ……使った?」

「え? うん。使えたね?」

「なんで?」

「いや、何でって言われても。使えたから?」


 驚いたのか、自称呪いで感情の無いファラが目を見開いた顔でこちらをガン見してくる。


「ファラにも教えてあげようか?」

「やりたい。ファラにもできる?」


 ファラが既に召喚魔術を使えるのは、昨日見たので知っている。

 何故覚えていたのか分からなかったが、今なら分かる。やはり使い方を知っているかどうかが重要なのだろう。

 これなら、錬金や空間、合成などを覚えさせるのも簡単そうだ。


「分かった。ミリアもまだ目を覚まさないし、教えてあげる」

「おー……タカシ好き」

「俺もファラの事好きだよ。召喚できるようになったら、何かお礼してね?」

「わかった」


 ひとまず俺の召喚した兎は邪魔だから、ミリアの横にでも移動させておこう。起きた時驚くだろう。

 ミリアの横に移動するんだ、と念じたらちゃんと移動してくれた。偉いぞ。


 さて、どうするかな。

 できるからやってみろ、というだけじゃダメだよな。ミリアにやった時みたいにするか。

 堪能していたお腹から左手を離して、ファラの左手を握る。

 右手も同様にして、ジョブを僧侶に変え、手を光らせて神聖さを醸し出す為、治癒魔法を掛ける。


「何してるの?」

「ファラが召喚魔術を使えるようにしてるんだよ」

「それでできるようになるの?」

「うん。でも、これが知られると困るから、俺とミリアとファラだけの秘密だよ?」

「わかった」


 こんなもんで良いかな。


 そのままファラの左手を下ろし、俺の左手は元の位置でお腹を堪能する。

 右手はファラの手首に持ち替えて、地面に向ける。


「ファラ。そこの地面に、この兎が入れそうな円を魔力で描いてみて」

「ん」

「おっけー。次に、目を瞑って、頭の中でファラの知っている兎の姿形をイメージしてみて」

「ん」


 ファラが地面に魔力で円を描いたまま、想像を開始する。


「どう? 兎がイメージできた?」

「ん」

「次に、その兎の性格をイメージしよう。そうだな、性格は優しくて俺の召喚した兎と仲が良いというのはどう?」

「そうする」


 さすがに人がイメージしている時にお腹をサワサワされていたら集中できないだろうから、左手は頭を撫でることにする。


「よし、じゃあ、イメージしたその兎の輪郭をなぞるように魔力で形にしてみて」

「……できた」

「最後に、魔力で形にしたイメージを、そのまま陣の中で生成しよう」

「んん!」


――ボフッ


 成功したようだ。俺の時と同じく白い兎が召喚され、先程と同じようにキョロキョロしている。

 対象を見つけたのか、俺の召喚した兎目掛けて駆けて行った。


「成功したね」

「ん。できた。タカシのおかげ」

「今みたいにやれば、大体の事は出来ると思うから、精神力に余裕がある時にでも練習しような」

「分かった」


 そういってファラは向きを180度変え、座ったまま正面から抱き付いてくる形になる。


「お礼」

「ぅんぅっ!?」


 何をしてくれるのかと聞こうとしたら、首に腕を回されてそのままキスされた。

 ファラめ。分かってるじゃないか。上出来だ。


「ありがとう。タカシはすごい」

「俺こそお礼ありがとう。嬉しいよ」


 二人して見つめ合っていると、横から気配がした。


「あの……な、何で、き、キス……とかしてるんですか? 見つめ合って……しかもファラからだし……」


 物凄く良い、いや、悪いタイミングでミリアが目を覚ましたらしい。しかも涙目だ。


「え、あ、いや、これはファラからだし、問題ないよな?」

「ん。タカシへのお礼」

「お礼……? キスをする程のこと? 何があったんですか……?」


 未だに抱き合っている俺等を見ていて恥ずかしいのか、顔を赤くしたままミリアが尋ねてくる。


「そうだ、ミリア。そこ見てみて」


 兎がイチャイチャしているところを、目で合図する。


「え? きゃああ! う、さぎ!」

「あぁ、大丈夫だよ。それ、召喚した兎だから」

「えぇ!? 召喚!?」


 飛び退いたミリアが兎に警戒しながら、こちらに向き直る。


「ん。ファラが召喚した」

「ファラが!? 昨日魔術士になったばかりなのに!?」

「良くできてるでしょ? そのお礼だってファラが俺にキスしてくれてたんだよ」

「ずるいです! 私もまだ使えないのに!」


 確かに、ミリアが気を失っている間に教えたのはずるいかもしれない。

 でも、自爆したのはミリアだしなぁ。


「教えたら、キスしてくれるの? ミリアから?」

「えぇ!? き、きき、キス!?」

「うん。ファラがキスしてくれたから」


 ミリアからしてくれるとは思えないな。でも、期待せずにはいられない。


「ずるいです! ファラ!」

「ファラはタカシになら何でもできる」

「うぅ……」

「今度教えてあげるよ」


 涙目でうーうー言ってる。モーモーだったり、ウーウーだったり、本当にミリアは可愛いなぁ。飽きない。


「さて、ファラにキスされて元気も出たことだし、そろそろ休憩は終わり! 今度こそ本当に出発しようか!」

「うぅ……キス……魔法……ずるいですファラ……」

「ずるくない。ミリアもすればいい。ちゅーってするだけ。簡単」

「だって……は、はずかしいし……」


 ファラを俺の上から下ろし、立たせてあげた後、伸びをして準備する。


「さぁ行こうか。ミリア、お金になりそうなモンスターは何処に行けば居る?」

「え、あぁ、はい。キス、じゃない。えっと、ここの森を抜けた先に街があるんですが、その周辺に山が沢山あって、洞窟内にはモンスターの巣が沢山あると思います」

「じゃあ、初めての遠出ということで、その街を目指してみようか」

「森は半日もあれば抜けられると思いますが、そこから更に半日は掛かると思います。途中野宿になりますが……」


 野宿か……。三人で協力して頑丈な石の小屋でも作れば問題ないだろう。出発する時壊せば良いし。

 あ、いや、また使うかもしれないし誰の土地でもないなら、残しておいた方が便利なのか? 他の冒険者が使うかもしれないし。


「初野宿だね。小屋でも作って、そこで野宿しよう。森は危険だから、魔法の練習は小屋を作った後、小屋の中でしよう」

「分かりました」

「ん」


 やっと出発できる。ひとまず森を抜けることにしよう。

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