第32話 ファラ
宿屋に戻り、ミーアに追加料金を払い、三人で部屋に戻る。
「さて、それじゃ自己紹介をしようか」
「……」
「……」
何これ。何で二人とも何も喋ってくれないの? ファラは無口キャラみたいだから、そんなに苦じゃないけど、ミリアが怒った顔してるのが怖い。
「ミリア、言いたい事があるなら、ちゃんと言葉にして言おう?」
「タカシさんは……やっぱり最初に思った通りの、そういう人だったんだなって思いました」
「そういう人って?」
「奴隷を性の対象としか見ていない人です!」
あぁ、だから怒っていたのか。あながち間違いではないけど、これは訂正しておく必要があるな。
「まだ勘違いしてるの? 俺はファラの覚悟を買ったんだよ? ミリアもファラの覚悟を聞いてたでしょ?」
「それは……聞きましたけど! ファラちゃんを買ったのは、その、ご、ご奉仕が……ってところじゃないですか!」
「確かに間違いではないけど、見知らぬ男にでも尽くすくらいの覚悟があるって俺は捉えたんだけどなぁ……ムッツリなミリアは違う風に捉えたんだ?」
「うぅ……ムッツリじゃないです!」
ミリアはプンプンだ。今までで、一番怒っているかもしれない。でも両手に幼い子。最高じゃないか。
「二人は付き合ってるの?」
ファラは空気が読めないのか、空気を読んだのか、見当違いな燃料を投下してきた。
「なっ!?」
「そうだよ。もう裸の付き合いもしてる仲だよ」
「ちがっ!」
「じゃあ、ファラがご奉仕したらミリア……さんは怒るね」
そっちの心配をしていたのか。だが心配ないよ。ご奉仕は大歓迎だよ。何なら二人同時でも良いくらいだ。
「怒らないです! それと、さん付けじゃなくて良いです! ご奉仕もしなくて良いです!」
「いやいや、それを決めるのは俺だよ?」
「なら、何で怒ってるの?」
「怒ってないです!」
いやいや、どこからどう見ても怒ってるじゃないですか。もう顔も真っ赤になってるし。
怒ってるのか恥ずかしいのか分からないけど。
「ミリア、それくらいにしておこう。ファラは今日来たばかりなんだ。それ以上続けるなら……俺も怒るよ?」
「うぅぅ……だって!」
「ご奉仕はミリアがすればいい。ファラも手伝う」
「しません!」
ファラはやはり空気が読めない子のようだ。何が問題になっていて、何にミリアが怒っているのか理解していない感じだ。
「はい、そこまで。それじゃ自己紹介を始めよう」
「ん」
「もう!」
「えっと、俺はタカシ・ワタナベ。タカシって呼んでくれ。冒険者をやってる。一応君たちの主人だ」
ファラはともかく、ミリアもさっき俺の奴隷になったから、間違ってはいないよな?
「ファラはファラ。タカシの奴隷」
「ファラは、うん。そうだよな。他に何かないの?」
「ない」
「そっか。じゃあ、次ミリア」
「……いいんですか。はぁ……私はミリア。ミリア・ウェールです。……不本意ですけど、さっきエッチな人の奴隷になりました」
モーモーミリアも少しは落ち着いてくれたようだ。ちゃんと自己紹介してくれた。
「えっと、俺は魔術士、剣士、僧侶なんかは一通りできる。ミリアは魔術士。ファラは何ができる?」
「えぇ!? 僧侶なんて聞いてないです!」
「あぁ、言ってないからね。それより、今はファラに聞いてるんだけど?」
「あぅ……タカシさんはずるいです……」
そういえば、ミリアには言ってなかったな。たまに治癒とか治療とか使ってたんだけど、気が付かなかったのか。
「ファラは奴隷」
「うん、だからそれは分かってるよ。魔法とか剣術とか何かできないの?」
「これから」
「そっか。これからか」
▼ファラ・オスロ Lv.5 奴隷
ファラのステータスを見てみるが、確かに奴隷だ。分かっていたことだけど。というか、それより中身が見えない。
あれ? あぁ、そういえばパーティを組んでないからなのか。
「ミリア、ファラをパーティーに入れたいんだけど、ギルドに行かないと組めないの?」
「いえ、パーティーリーダーであれば誰でもできますよ。ファラちゃん、カードを出してくれる?」
「ファラでいい。……はい」
「分かった。ありがとう、ファラ。タカシさん、自分のカードを出して、ファラのカードと重ねてからパーティーと念じてみてください」
言われるがまま、俺のカードを出してパーティーと念じてみる。
すると、パーティー窓にファラが加わっていた。
よく考えたら、ギルド外でパーティー組めないと不便だよな。
改めてファラのステータスを見てみる。
▼ファラ・オスロ Lv.5 奴隷
HP:6(6+0)
MP:6(6+0)
ATK:3(3+0)
MAG:3(3+0)
DEF:3(3+0)
AGI:3(3+0)
STR:1(+ -) VIT:1(+ -) INT:1(+ -) DEX:1(+ -) CHA:1(+ -) (4)
JOB:M奴隷Lv.5 Sなし 村人Lv.1 魔術士Lv.1 使徒Lv.1
SKL:なし
EQP:なし
INV:なし
GLD:白貨0、金貨0、銀貨0、銅貨0
やっばいな。デコピンで殺せそうなほど弱い。全ステータス1がここまでひどいものだとは……。
それと、やはり魔術士のジョブがあったな。あと、呪いってステータスには表示されないのか?
それより、使徒って何だよ。
使徒やら魔術士をメインやサブに入れ替えてみて、色々と確認してみる。
すると、今度は魔術士をメインにしたところで、初級召喚魔術というスキルを覚えていることが分かった。
この子、何でまだ就いてもいないレベル1のジョブで初級魔術以外の魔法を最初から覚えているんだよ。
あぁもう、分からないことだらけだ。
「ミリア、気になったんだけどさ、使徒ってジョブ知ってる?」
「しと? うーん、勇者のパーティで、どんなスキルでも使えた人がそんなジョブだったと思いますが、どうしてですか?」
「いや、何でもない。じゃあさ、召喚魔術ってどんなものか知ってる?」
「何なんですかもう……。召喚魔術はその名の通り、モンスターを召喚できます。私も魔術士なので、がんばれば……」
それより、何でただの奴隷であるファラがそんなジョブと魔法を持ってるんだ?
そんなジョブなら俺も欲しい。ミリアにも覚えさせたいし、習得条件が知りたいな。
「そもそも勇者の物語自体が作り物だという噂ですので、そのジョブ自体もあるかどうか疑わしいんですが……」
「そうなの?」
「はい。だって、勇者はこの世界に召喚されるところから物語が始まるんです。その時点で、まず意味が分かりません」
うん? 意味が分からないってどういうことだ……? それに、俺はこの世界の人間じゃないんだが、まさか勇者じゃないよな?
そんな目立つの勘弁してほしい。モテるなら話は別だが……いや、ないな。アレやコレやと色々任されそうだ。俺はそんな優越感に浸りたくてこの世界に来たわけじゃないし。
「まぁ、いいや。勇者の話は今はおいておこう」
「さっきから何なんですかもう!」
またモーモーミリアに戻ってる。放置しておこう。
さて、そんなことよりまずはファラのジョブだ。何とかしておかないと、野兎にすら殺されてしまいそうだし、それはあんまりだ。
「ファラ、冒険するにあたって、どんな戦い方をしたい?」
「魔法を使いたい」
「やっぱりそうだよな……ごめん、聞き方が悪かった。魔法はもうちょっと俺達と仲良くなってくれたら、使い方を教えてあげる。でも、とりあえずは、武器を持ってモンスターと戦う練習をしてみようか。そんなわけで、どんな武器が良い?」
「分かった。じゃあ槍」
素直でよろしい。槍か。じゃあ戦闘系の簡単なジョブにしておこう。使徒はバレるとマズイから、とりあえずサブにしておくか。
それにしても、さっきからミリアの視線が痛い。
「……さっきから何、ミリア?」
「魔法を教えるって何ですか……私の時みたいに襲うんですか?」
「おいおい、人聞きが悪いな! もちろん合意のうえだよ!」
「タカシになら襲われてもいい」
ちょっとファラさん、空気読んでくださいよ。ミリアに燃料投下したらダメだって。
「お、おそっ! ダメだよ! もっと自分を大事にしなきゃ!」
「……? ファラはタカシの奴隷。ならご奉仕は当然。ミリアは奴隷なのに、ご奉仕しないの……?」
「そうだね。ファラは良い子だね」
「な、なっ!?」
ファラをナデナデしてつつミリアを見ると、顔を真っ赤にしてワナワナ震えている。
「でもねファラ。ご奉仕は、ファラが自分からしたくなった時だけで良いよ? じゃないと俺がミリアに怒られちゃうから」
「分かった」
「もう! またそうやって私が悪いみたいに!」
ミリアにもナデナデしつつ、ファラのステータス確認に戻る。
▼ファラ・オスロ Lv.5 奴隷
HP:90(90+0)
MP:90(90+0)
ATK:45(45+0)
MAG:45(45+0)
DEF:45(45+0)
AGI:45(45+0)
STR:3(+ -) VIT:3(+ -) INT:3(+ -) DEX:3(+ -) CHA:5(+ -) (4)
JOB:M奴隷Lv.5 S使徒Lv.1 村人Lv.1 魔術士Lv.1
SKL:模倣
EQP:なし
INV:なし
GLD:白貨0、金貨0、銀貨0、銅貨0
こんなところだろう。後は装備を何とかしてあげないとな。
ミリアの時みたいに、武具屋にファラに似合いそうな防具を作ってもらおう。何が良いかな……。
クールな無口キャラ。それこそゴスロリにクマのぬいぐるみでも持たせたら最強だけど、それは残しておこう。
ミリアと着せ替えするのも良いな。そう考えると二人に似合いそうな……やっぱり学生服か!?
制服と言えばセーラーとブレザー。でも、二人ともアジア系の顔じゃないし……ブレザーしかないな。
「よし、それじゃあファラの服を作りに行こうか!」
「服? 今着てる」
「俺のパーティーに入る子は、俺の選んだ服を着てもらうんだよ」
「そんなのいつ決まったんですか!?」
今だよ今。まぁ、そんな事言ったらまたモーモー言い出すから言わないけれども。
ミリアの質問には答えず「ほら行くよ」と言って、二人を部屋から連れ出す。




