第23話 魔力障壁
ギルドに到着した俺達は、相変わらず無言の圧力を受ける。
しかし、昨日ほど酷くはないな。もうどうでも良いや的な奴等も増えてきている。
「実験では森に行くし、昨日俺が狩った兎とかも処理したいから、まずは森の依頼を見に行こうか」
「はい」
掲示板を見るとラインナップはそこまで変わっていなかった。
「ユニークは掲示板に掲載されないの?」
「いつ出てくるか分からないので、実際に人や街に被害が出ないと掲載されません。掲載されたら、緊急案件になるので直ぐに討伐されちゃいます」
「なるほど。じゃあ、ユニークを見に行くし、一緒に居るモンスターの依頼も一緒に受けておいた方が効率良いね。どれ受けたら良い?」
「ユニークの取り巻きは、基本的にDランクです。これとこれ。あと、これら4つを受けると良いと思います」
ミリアが教えてくれた依頼を全て受ける事にした。これで、ユニークが居なくてもそいつらを討伐すれば、一応金になる。
結局受けたのは、九つだ。
QST:E薬草の採取(報酬:10銅/1枚)残り23時間
QST:E野兎の討伐(報酬:1銀/1匹)残り23時間
QST:E猪の討伐(報酬:2銀/1匹)残り23時間
QST:Dハーピーの討伐(報酬:5銀/1匹)残り23時間
QST:Dバタフライの討伐(報酬:4銀/1匹)残り23時間
QST:Dセンティピードの討伐(報酬:5銀/1匹)残り23時間
QST:Dビッグオックスの討伐(報酬:4銀/1匹)残り23時間
QST:Dアサルトシープの討伐(報酬:4銀/1匹)残り23時間
QST:Dフォレストラットの討伐(報酬:4銀/1匹)残り23時間
兎、猪、鳥、牛、羊、鼠って何か干支みたいだな。辰とか居たら強そうだ。いや、居なくて良かった。
あと、Dランクから英語だな。それよりも百足ってヤバイな。毒とか使いそう。僧侶に毒治療とかあれば良いけど。こういう時は困った時のミリア先生だな。
「毒とか麻痺みたいな、状態異常ってどうやって治すの?」
「僧侶が一定以上の研鑽を積むと治療できるようになるそうです」
「そっか。比較的若い僧侶でも使えている感じ?」
「そうですね。治癒魔法の中でも簡単な方だと聞きます」
治癒魔法の次に覚えそうだな。レベルいくつか分からないけど。とりあえず10まで上げてみよう。
「それじゃあ、依頼も受けたし早速森まで行こうか」
「はい! がんばります!」
ミリアは、昨日と比べて返事も良いし、ヤル気に満ちている。魔力を上げて貰えるかもしれないというのが楽しみなのだろう。
ギルドを出て門に行き、カッシュに挨拶をしてから森に移動する。
「さて、それじゃあ……この武器を使ってモンスターを倒してみてくれるかな。俺は薬草集めてるから」
「う? ……わかりました。これが実験なんですか?」
そりゃあ疑問だよね。何にも説明していないのに、いきなり剣で戦えなんてさ。
「うん。魔力を上げるのに大事な作業なんだよ」
「はぁ、そういうものなんですか? 聞いたことありません」
「えっと、モンスターのどの部位に魔法を当てたら効果があるのか分からないとどの程度魔力を込めたら良いのか分からないでしょ? 魔法は無限に放てる訳ではないから、実際に対象に攻撃して、何処が弱点なのか知る必要があるんだよ。そうすることで、魔力のコントロールが上手くなって、結果的に魔力上昇に繋がるんだ」
「なるほど! さすがです! 考えてもみませんでした! 確かにそうですよね!」
適当な言い訳だったので早口になってしまったけど、納得どころか感心されてしまった。でもまぁ、サブジョブを付けることになるんだし間違いでもないから良いか……。
「その為に色んな武器を使ってみるから、ある程度狩ったら指示するね」
「はい! がんばります!」
ミリアは走って兎狩りに向かった。元気だなぁ。さて、俺は薬草収集しながら僧侶のレベル上げでもするか。
兎や猪を狩りながら薬草を収集していると、ミリアが早速剣士を習得したようだ。
「ミリア、次はこの武器で戦ってみて」
「え? もう良いんですか?」
「うん、問題無さそう。ちゃんと見てるから大丈夫だよ」
そうやって、この作業を何度か繰り返して昨日俺が習得したジョブと同じものを習得してもらった。
魔術士もレベルが10になっていたので、ついでにステータスを確認する。
▼ミリア・ウェール Lv.10 魔術士 Rank.E
HP:154(54+100)
MP:149(99+50)
ATK:43(27+16)
MAG:96(72+24)
DEF:56(27+29)
AGI:27(27+0)
STR:3(+ -) VIT:3(+ -) INT:8(+ -) DEX:3(+ -) CHA:3(+ -) (9)
JOB:M魔術士Lv.10 S冒険者Lv.10 村人Lv.2 商人Lv.1 奴隷Lv.1 闘士Lv.1 戦士Lv.1 剣士Lv.1 射士Lv.1 神官Lv.1 僧侶Lv.1
SKL:体力上昇小 攻撃力上昇小 魔力上昇小 初級魔術 初級魔術障壁
EQP:ウッドステッキ+4 ゴシックロリータ ヘッドドレス レザーブーツ
見慣れているステータスが、少し変わっている事に気が付いた。
「障壁……?」
「はい? どうしたんですか? しょへき?」
「あぁ、いや何でもない。ちょっと考え事しててね」
思わず口に出してしまった。
攻撃力上昇小に初級魔術障壁か。恐らく、冒険者がレベル10になって攻撃力上昇小、魔術士がレベル10になって初級魔術障壁を覚えたのだろう。
それと、基本ステータスにプラスとマイナスが表示されるようになったぞ? これは俺のアンノウンがレベル10になったからか?
▼タカシ・ワタナベ Lv.6 僧侶 Rank.D
HP:168(216+0)
MP:314(264+50)
ATK:111(96+15)
MAG:142(120+22)
DEF:173(120+53)
AGI:96(96+0)
STR:4(+ -) VIT:5(+ -) INT:7(+ -) DEX:4(+ -) CHA:8(+ -) (9)
JOB:M僧侶Lv.6 SアンノウンLv.10 村人Lv.1 冒険者Lv.9 魔術士Lv.4 闘士Lv.1 戦士Lv.1 剣士Lv.1 射士Lv.1 神官Lv.1
SKL:魔力上昇小 初級治癒 神手 神眼
EQP:アイアンメイス+2 アイアンシールド+1 ハーフプレート レザーガントレット+1 レザーブーツ+1
やっぱりスキルが増えてる。神眼か……。
今まで見えなかったプラスとマイナスが神眼によって見えるようになったのか? ちょっと実験したくなってきたな。
でも、ポイントを使って戻らなくなったらショックだな……今はまだ依頼の途中だし、今日の夜にでも実験してみよう。
「よし、こんなものだな」
「終わりですか? 私の魔力は上がったんでしょうか……?」
そうだった。これは魔力を上げる為にやらせてることだったか。
冷静に考えれば、この程度で魔力が上がるわけがない。もし上がるならこの世界の魔術士は最強だろう。
それでも俺を信じてくれているミリアには何とか誤魔化しておかないと、がっかりさせるのは可哀想だ。
「ミリア、今朝俺のこと好きだって言ってくれたけど、本当?」
「え!? な、なな何ですかいきなり!?」
「俺の能力の説明は話したでしょ? これは大事なことなんだ」
「ええっと、その……嫌いじゃないです。不本意ながら、裸も見られていますし。じ、じ自分で言ってて恥ずかしいです!」
両手で顔を覆って恥ずかしがっている。
しつこいようだが、真顔で質問してみる。内心デュフフ……と言っているのは隠さねばならぬ。
「ミリアから俺にキスを出来るくらいには好き?」
「そ、それは……ちょっと、まだ……恥ずかしいです」
「恥ずかしいけど、出来るって解釈して良いのかな?」
「あぁ、もう! ……分かりました! できますよ! もう! ほっぺ! ほっぺに! ほら!」
ちゅっ! と頬にキスをしてくれる。一瞬だが、それでもミリアには大変だったようで、今にもショートしそうなほど顔が真っ赤だ。
ありがとうとお礼を言い、赤ミリアを抱きしめてミリアに治癒魔術を施しながら、サブジョブを冒険者から僧侶に変えてあげる。
何故治癒魔術かというと、魔術行使の際に掌が淡い光を放つから、力を分け与えてますよーという演出の為だ。
▼ミリア・ウェール Lv.10 魔術士 Rank.E
HP:45(45+0)
MP:208(108+100)
ATK:24(18+6)
MAG:124(90+34)
DEF:56(27+29)
AGI:18(18+0)
STR:2(+ -) VIT:3(+ -) INT:10(+ -) DEX:2(+ -) CHA:3(+ -) (9)
JOB:M魔術士Lv.10 S僧侶Lv.1 冒険者Lv.10 村人Lv.2 商人Lv.1 奴隷Lv.1 闘士Lv.1 戦士Lv.1 剣士Lv.1 射士Lv.1 神官Lv.1
SKL:魔力上昇小 魔力上昇小 初級魔術 初級魔術障壁
EQP:ウッドステッキ+4 ゴシックロリータ ヘッドドレス レザーブーツ
それにしても紙装甲だよな。狼に一発貰っただけで死んでしまいそうだ。確かに魔力が三割程度増えているが、その他がダメだ。
ポイントを全て振りたいところだけど、確認するまでは安易に振れない。どうしようか。
「ミリア。今から大事な話をする。ちょっと、こっちに来て。うん、そこに座って」
「え……何ですか。何かいけないことしちゃいましたか、私?」
そう言いながら二人揃って、森のど真ん中で座ってミリアの状況について話をすることにした。
「えっと、今現在のミリアの話です。冷静になって聞いて、正しい判断をしてね?」
「な、何でしょうか」
「また俺と仲良くなってくれたお陰で、多分ミリアの魔力は三割程度上昇しました」
「本当ですか!? あれだけで!?」
がばっと立ち上がるので、試しに魔法を使ってみたいのだろう。
「いいよ。試してごらん?」
コクンと頷いて試してみるよう合図する。
「万物の根源たる偉大なる炎よ、彼の者を燃やし給え! ファイアー!」
――ゴオオオオオウ!
「す、すごい……」
「ね? 魔力が上がっているのが分かるでしょ? じゃあ話の続きをしようか」
ジっとミリアを見て座るよう促す。
「ごめんなさい……それで何を判断するんですか?」
「それでね、その代わり、というか、そのせいというか、生命力がね、半分、くらいになってます」
目を見開いて、そ、そんな……と口にして、この世の終わりのような顔をしている。
「多分ね、俺が素手で殴っても死んでしまうかもしれません。それが今のミリアの状態です」
「そんなに……」
「今なら生命力を戻すことはできます。でも魔力も元に戻ります。どうする?」
「足手まといになるくらいなら、戻すしか……」
やばい泣きそうだ。魔力が上がるのを今日の楽しみにしていたフシがあるからなぁ。仕方ないよな。
そうだった。あと、新しい魔法のことを教えてあげないと元に戻すことになるよな。
「あ、それとね。魔力が上がったから魔力障壁が使えるようになってるよ」
「えぇ!? 魔力障壁って、あの魔力障壁ですか!?」
「えっと、うん。多分その魔力障壁だと思う」
「私が……あの魔力障壁を!? そんな、ウソ!?」
何? 魔力障壁ってそんなにすごいの? 驚きすぎじゃない? 魔法が使えるようになった時並に驚いてない?
「ただの壁だと思ってたんだけど、そんなにすごいの?」
「すごいです! 精神力の続く限り、体に魔力をまとって、防御力が飛躍的に向上するすごい魔法なんです」
「うん、名前のまんまだよね。どのくらい上がるの?」
「上級の魔術士は、剣での攻撃すら無効化するくらい防御力が得られます」
軽減じゃなくて、無効化ときたか。そりゃあすごい。ただ、精神力が続く限りってことは、MPが持続的に減っていくってことか?
「ちょっと使ってみてよ」
「分かりました!」
また立ち上がり、いつもなら腕を前にかざして魔法を使うのに対して、今は腕を横に開いて何やら集中している。
「我が躰に、魔力の衣を纏いて、全てのものを拒絶したまえ、マジックバリア!」
何か聞いている方が恥ずかしい詠唱をしたと思ったら、ミリアの全身を白い膜のような物が覆っていた。
「ほんとだ! すごいです!」
「ミリア、思ったんだけど、詠唱って何処で習ったの?」
「魔法が使えるようになるため、本を読んで勉強しました!」
この恥ずかしい詠唱は、本から得た知識なのか。やっぱり雰囲気は大事なんだろうな。俺はやらないけど。
「ダガーを貸してもらっていいですか?」
「ほい」
魔力障壁がどの程度か気になるし、多分俺が刺したりしたら貫通しちゃうだろうから、自分でやってもらおう。
――シュッ!
ミリアが自分の掌に向かってダガーを刺すが、音がするだけで、刺さらない。
フン! フン! って何度か力いっぱい刺しているけど、一向に刺さらないことを確認して障壁を解除した。
「思ったより、すごいね」
「すごいです! これだったら、何とかなりそうです!」
「うーん。でも、何かあったら即死しちゃうレベルだしなぁ。やっぱり心配だよ」
「魔術士になるのが夢だったんです。少しくらいの苦難は乗り越えてみせます!」
心配だ。ミリアにもしもの事があったらと考えると怖い。やはり、VITの高いジョブにしておいた方が良いだろう。
「お願いです……このままやらせてください!」
ジョブを変えようとミリアに手を伸ばしたところで、上目遣いで懇願されてしまった。断れるわけがない。
でもなぁ。やっぱり心配だなぁ。危なくなったらすぐ戻そう。
「……分かった。でも、危険だと感じたら、すぐに戻すからね? あと、俺の指示には絶対に従ってね?」
「はい! 分かりました! ありがとうございます!」
何気に絶対服従を盛り込んでみた。服従。ふふふ。
ひとまずは、この状態でやってみることにするか。使うMPにさえ気を使えば何回か戦闘は出来るだろうし。
「それじゃ、早速ユニーク狩りに行きますかね。案内してくれる?」
「はい! がんばります!」
何か障壁が使えるようになってから、舞い上がっているみたいで返答がおかしいけど、大丈夫だよな?
そして、実験と称したジョブ習得からユニーク狩りに移行した。




