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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
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第18話 貿易商材

 部屋に戻ったところで、あることに気が付いた。そういえば、俺、風呂に入っていない!

 そんな状態でミリアを抱きしめたのか!? うわぁ。今になって恥ずかしくなってきた。

 ミリアは良い匂いだったけど、俺、臭くなかったかな?


「あ、あの。ミリアさん」

「はい、なんですか?」

「このせか……いや、この国ってお風呂に入る習慣とかないの?」

「お風呂ですか。入るのは貴族くらいですかね。タカシさんの国では、違ったんですか?」


 まじで!? 風呂が無いだと!? ダメだ……この世界に来て、初めて心が折れそうだ。何とかならないだろうか……。


「俺の国は水が豊富だったからね。皆風呂に入ってたんだよ」

「良い国だったんですね。ここでは皆、体が汚れたら濡れた布で、体を拭く程度です」

「何とかならないかな? 何かこう、人が入れそうな石とか鉄、いや、木でも良い! そういうの用意できない?」

「うーん、材木屋さんに頼めば木製のお風呂くらい作れそうですけど、お湯が用意できません」


 確かに風呂の為だけに何百リットルものお湯を用意するのは大変そうだな。

 でも、そこはほら、魔法の世界なんだしさ。魔法でちょいちょいやればできるんじゃないかな。


「ほかに何かない?」

「お湯を用意するとなると炊き出し用の釜くらいですかね。でも、お湯を沸かせても熱いし重くて持てません」


 釜か……五右衛門風呂! よし、それでいこう。


「よし! その炊き出し用の釜を買おう!」

「えぇ!? どこにでもあるものじゃないですよ!」

「何とかなる。よし、武具屋に相談に行こう! すぐに!」

「もう夜も遅いですし、明日にしましょうよ? それに、もう日も落ちてきましたし」


 分かってないなぁ。日が落ちる? 尚更だよ! お風呂っていうのは夜に入って一日の疲れを取るものなんだから。


「ほら、ミリア。行くよ」

「えぇ!? 私も行くんですか!?」

「当たり前じゃん。俺ら一心同体なんだから。ほら! 日が落ちちゃう!」


 そう言ってドアを出て足早に移動する。


「もう……本当行動の読めない人です」


 ミリアは文句を言いながらも、ちゃんと付いてきてくれる。

 程無くして武具屋に到着した。


「おや、これはこれはタカシ様。こんな時間に、どうされたのですか?」

「えっと、ご相談したいことがございまして」


 やばい、何も考えてなかった。どうしよう。

 この人、アイデアを出したら割引するとか言ってたな。何かアイデアを出して、それの対価として釜用意してくれないかな。


「アイデアは沢山あるんですが、どのような物が利益を取れるか分からなくてですね、希望を聞いておこうかと思ってきました」

「おお! 本当ですか!? それでは折角の機会ですし、他の店の者も連れて参ります! 少々お待ちを!」


 ミリアがジト目でこちらを見てくる。それよりも、店主が何か人を集め出したぞ? そんなに大事にする気は無いんだけど!?


「……今度は何を考えてるんですか?」

「まぁ、色々とね」


 店主が戻るまで、ミリアから何を企んでいるのかと勘繰られるがはぐらかして、ここは任せてね。と伝えておく。


「お待たせしました! バタバタしてすみません。折角なので、意見を出し合おうかと考えまして」


 意外に戻るの早かったな。じいさんとお姉さん、後若いチンピラみたいな奴を連れてきた。


「えっと、皆さん。こちらの方は、本日我が武具屋の看板商品を考案してくださったタカシ様です。我等の商売繁盛の為に、知恵を貸していただけるそうなので、何か希望などありましたら、仰ってください」


 そうやって俺の事を紹介して、勝手にワイワイやり始めた。もう良い時間なので、手短に済ませたかったのだが。

 四人が話している間にミリアがそれぞれの人を教えてくれたが、あのじいさんは鍛冶屋の店主らしい。

 釜を持ってるかもしれない。もしくは、作ってくれるかもしれない。これは期待して良さそうだな。


 ミリアからの紹介も終わり、四人の話し合いを聞いていると、どうやら意見がまとまりそうだ。

 そこで、ミリアにはこっそり紹介してもらったが、会話に参加する為に各々に聞いてみることにした。


「えっと、今居る方のお店ではどんな商品を取り扱っているんですか?」

「おっと、これは申し訳ありません。今居るのは、私が武具屋、こちらが鍛冶屋、そちらが仕立屋、あちらが材木屋です」


 金属、布、木か。素材だけで考えれば何とかなりそうだな。


「これだけの技術と素材があれば、何でも出来そうですね」

「そうですね。今ちょうど話がまとまってきたのですが、聞いていただけますか?」

「はい、お願いします」


 大体の話はミリアと一緒に聞いていたが、確認も込めて本人達から聞くことにする。


「長期的に考えて、低価格で万人が買える物。そして壊れたらまたすぐ買うような物が好ましいです」


 低価格で万人が買える物か……季節商品とかどうだろうか。日本は今丁度雨季だし。


「季節と聞いて思い出したんですが、この国では雨季とかあるんですか?」

「ありますよ。ここら辺ではもうそろそろ雨季になり、断続的に雨が降り続きます」


 雨季とはいえ雨は年中降るし、雨の日に使えるアイテムとか良いんじゃないだろうか。


「なるほど。雨の日って何をして過ごすんですか?」

「出来るだけ外には出ません。濡れますので」


 それじゃあ、屋内で使用する物が良いか。

 屋内……色々あるけど、やっぱり屋内には電気が必要なんだよな。とりあえず保留だ。

 そうなると屋外だよな。雨の日に使用する、傘やレインコートって化学繊維だからこの世界にはないよな?


「雨ってどうやって防ぐんですか?」

「え!? 普通に布を羽織りますが……?」


 何言ってんだこいつ、みたいな顔で答えられた。ミリアも俺が誰でも知っているような事を聞いたからなのか、オロオロしてる。


「ひらめきました」

「ほ、本当ですか!?」

「まず、図にしますね」


 そうやって、傘の絵を描く。

 これなら簡単に作成できて、すぐにでも商品化できるし良いんじゃないだろうか。


「こ、これは、何ですか? 三角に棒?」

「これは、そうですね。アンブレラと命名しましょうか」

「何に使うんですか? 先程聞かれた、雨と何か関係があるんですか?」

「はい。これは人が雨に濡れなくする為のアイテムです」


 そう言って次に、柄の部分と軸の棒を木、骨は鉄、傘の部分は水を弾く布または皮で作るよう図面を描いていく。

 最後に、開閉のギミックを描きながら、傘の説明を終える。


「「「「おぉぉぉ!」」」」


 四人が同時に驚きの声を上げる。

 まさか、傘程度でここまで驚かれることになるとは……。


「えっと、このアンブレラを使えば、雨の日限定ではありますが、年中使えるんじゃないですか?」

「これは画期的なアイテムですね! しかも、鍛冶屋、材木屋、仕立屋が全員でそれぞれの部品を作れば、予算はそんなに必要ない!」


 四人は俺の描いた絵を見ながら、まさかこれほどとは……なんて言ってる。元の世界では、当たり前のようにあるアイテムでも、ここまで驚かれると嬉しいな。


「これなら、明日からでも商品化できそうですね! 皆さん!」

「そうですなぁ。これはすごいぞ。街の貿易にも使えるぞい!」

「すごい想像力ですわ! 早速案を詰めましょう!」

「そっすね!」


 まさか貿易の話にまで膨らむとは思ってもみなかった。でも、この世界に無い物なのであれば輸出もできるだろうな。

 さて、それでは報酬の話に進みますかね。


「喜んで貰えて嬉しいですよ。それで、最初の相談の話に戻るんですが」

「そうでした! すみません。興奮しちゃって! それで、ご相談というのは、何でしょうか? もう何でも言ってください! 出来る限りご協力させていただきます!」


 おお、これは期待できそうだな。


「えっと、まず、大きな釜が欲しいんです。人が数人入れそうな」

「それなら、ワシの所にあるぞい。是非使ってやってくれい」


 おお、早速今日の目的が達成できた! 後は武器だな。


「ありがとうございます! それと、売れ残りや安い物で良いので、一通りの種類の武器を探しています」

「武具であれば、ウチの物をお譲りできます!」

「魔術系の武器だったら、ウチにあるっす!」

「私だけ何もしないのは申し訳ないので、布や皮系の装備をご提供いたしますわ」


 おお、武器だけ欲しかったのに防具まで付いてきたぞ! 言ってみるものだな!


「そ、そんなに貰ってしまって良いんですかね……」

「いえいえ、提案していただいたアイテムの価値は計り知れませんので!」

「そうですか、それじゃあお言葉に甘えさせていただきますね」


 いくらか安くなるだろう程度の事を考えていたけど、まさかタダで貰えるとは思ってなかった。これからも、色々考えておこう!


「それでは皆さん一度解散といたしましょうか。タカシ様にお礼の品もお渡ししないといけませんし!」


 そして会議はお開きとなった。

 それぞれが、店でお礼の品を用意しておくので、一度顔を出してくれと言い帰っていく。

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