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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
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第15話 キス

 ひとまずは無理なところから攻めていって、少し条件判断を鈍らせてみよう。


「ほんとだよ? じゃあ、エッチなことでもしてみる? 多分、魔法程度なら一瞬で使えるようになるよ」

「はぁ!? え、ええち、エッチ!? そんな、ムリです! 騙そうとしてるでしょ! そんなことできるわけないです! しかも魔法程度って何ですか! 私はそれに悩んで今まで生きてきたのに!」


 無理か……でも、あと一押しだな!


「ごめん、そういう意味で言ったんじゃないんだよ。でも、どうしたら信じてくれる?」

「エ、エッチなことは、な、無しで、今の状態で私に何か恩恵を与えたりできないんですか?」


 そうきたか。惜しい。少しだけ見せて反応を窺ってみるか。


「んー、どうだろう。俺の事好き?」

「うっ……す、きではないかもしれませんし、そうかもしれません」

「ミリアから抱きついてきてくれたぐらいだし、少しは期待したんだけどなぁ。まぁいいや。ちょっとやってみようか?」


 そういって、ミリアにちょいちょいと俺の傍まで呼ぶ。


「今からやってみるけど、嫌がらないでね? 傷付くから」


 スっとミリアの後ろに手を回して優しく抱いてみる。その隙にミリアのメインジョブを冒険者から奴隷に変える。


「きゃっ! ちょ、ちょっと……エッチなのは無しだって言ったのに」

「いいから。カードを見てみて」


 抱き付いたまま。ミリアの体をくるんっと反対側に向けてあげる。そして出したカードが後ろからも見えるように位置を取る。


ミリア・ウェール Lv.1 奴隷 Rank.E


「あれ!? ど、奴隷になってる! 何ですかこれ、何をしたんですか!?」

「あー、やっぱりダメかぁ。まだ親しくなってないのが分かっちゃった……ちょっとショックだなぁ」


 わざとらしく、ショックを受けた振りをする俺。ごめんよミリア! これも俺の夢の為なんだ!


「え!? 何で!? なに……私いつの間に奴隷に!?」


 折角演技したのに、聞いていない。そりゃあ自分のジョブが勝手に変わったら驚くよな。

 何度もカードを出したり入れたり、すごいワタワタしている。


「ミリア!」

「ひゃ、ひゃわい!」

「落ち着いて、ね? 俺の力、分かってくれた?」

「信じられないです。何なんですか、その力! それより、私ずっと奴隷なんですか!?」


 そうだった。戻す時のこと考えてなかった。どうしよう。


「ミリア、このことは絶対内緒だよ?」

「はい。強制的に奴隷なんて……さすがにこれは人に言えないです」

「それとさ、ミリアのジョブを元に戻す為に、1つお願いがあるんだ」

「なんでしょう。あっ! ダメですよ! 能力は分かりましたけど、そういうのはまだ早いです!」


 鋭い。良い流れだと思ったんだが。仕方ない、ギリギリのラインで攻めてみるか。


「俺にキスして欲しい。別に口じゃなくて良いから。チュっと!」

「む、むむむ、むムリです! ダメだって言ったじゃないですか!」

「でも、そうなるとずっと奴隷のままだよ」

「えぇ!? やっと奴隷から変えることができたのに……うぅ」


 あ、やばい泣きそうだ。ミリアにとっては口以外のところでもキス自体がギリギリどころか、アウトだったらしい。


「分かった分かった! じゃあ、こうしよう。一緒の布団で寝よう! 元々仮眠するだけだったんだから! ね! 寝るだけ! ね?」

「ぅぅ……どうしても、そうしないとダメなんですか? 何とかできないですか……?」


 泣きそうな上目遣いでそんなこと言われたら……いや! ダメだ! ここはミリアをモノにするため、心を無にして!

 欲望まみれで無なんて到底無理だけど。


「今、力を込めてみたけど、ダメみたい。夕飯までだから。ね?」

「うぅ……分かりました」


 やった! 何とかここまで来れたか。

 ベッドの布団を捲り、中に入ることにした。

 ミリアを堪能する為ではない! ジョブを元に戻す為だ!


「ささ、おいで」


 腕枕を作り、そこに来るようスペースを作る。


「はい……」


 まだ心の準備が出来ていなかったのだろうか、恐る恐るという感じでミリアが俺の横に入り込んでくる。


「ミリアと一緒に寝られるなんて、幸せだなぁ」

「わ、私は複雑です。奴隷にされて、戻りたければ一緒の布団で寝ろ、だなんて……」

「人聞きが悪いな。できないのか? って言ったのはミリアじゃん」

「そうですけど、まさか本当にそんな力があるなんて普通は信じられませんし」


 俺の腕枕の中、至近距離でそんな話をする。これ、我慢できるか心配だな。俺が。


「私、お父さんともこんなことしたことないのに。うぅ……」

「俺が初めての男ってわけだね。光栄だよ」

「変な言い方しないでください!」


「はは、そうやって返してくれるミリアも好きだよ」

「また! 何で軽い感じで、そういうことが言えるんですか!?」


 軽い感じだろうか?

 俺の知り合いの女の子ってミリアしかいないから、ミリアにしか言わないんだけど、軽い感じだと誰にでも言ってるように聞こえるのかな。

 あと、ミーアさんは女の子という枠じゃないからね?


「だって本当のことだよ? ギルドで、初めてミリアを見た時から、かわいい子だなぁ。って思ってたし。一目惚れってやつ?」

「そ、そう言われると、悪い気はしないです。でも、能力を見せたりとか、好きだとか、何で私なんですか?」

「んー。直感? この子なら俺の事をちゃんとした目で見てくれるだろうなーって」

「そうですか。そう言ってもらえると嬉しいです。ただ、この状況には納得できませんが」


 まだ警戒しているらしい。そりゃあそうだ。でもこの体温、ずっと味わっていたいな。


「ミリアも、初めから俺に良くしてくれたじゃん?」

「あ、あれは! あれは、仕事で」


「本当に? 何で今戸惑ったの?」

「だって……」


 確かに営業スマイルだったけど、俺に気が付いてすぐこちらにきてくれたのは覚えている。


「本当は、雰囲気がお父さんに似てるなぁと思って、目で追ってしまいました」

「そっか。でも知ってる? 女の子の惚れる相手、お父さんに似てる人って割合高いんだよ?」


 適当に言ったんだけど、少しは意識してくれたのか、うぅ……と言って布団の中に潜ってしまった。


「しょんなことないです!」


 布団の中に入って丸まっているからか、珍しく噛んでるし。ちくしょう、かわいいじゃないか。


「ミリア、こっちきて」

「はい?」


 呼んだら素直に布団の中からひょっこり出てきた。猫みたいだ。


「一緒の布団で寝るの、もう慣れた?」

「ドキドキして慣れはしないですけど、もう、どうにもならないし、諦めました」


 少しは緊張が解けたらしい。同じ布団の中だというのに、素のミリアに戻りつつあった。


「そっか。じゃあ、もうちょっと大丈夫だね」

「え!? えぇ!?」


 ちょっと強めに抱きしめてみた。折角のチャンスだ。どこまでいけるか確認しておかないと。


「く、くるしいです」

「ごめんごめん、ミリアが猫みたいで可愛かったからさ、つい我慢できなかった」

「ね、猫じゃないです……」


 照れているのか、恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めてくる。


「こうやっていると、本当の恋人みたいだね」

「うぅ。まだその設定続いてるんですか!?」

「だって、こんなにかわいい彼女ができたら嬉しいからさ」


 少しだけ嬉しそうな表情を見せたけど、すぐに少し落ち込んだような表情になる。


「でも、私奴隷ですよ? それに、まだ昨日出会ったばかりですし」

「そんなの関係ないさ。その内、奴隷というジョブも消えるかもしれないし」


 ただ、俺の奴隷ではないっていうのは嫌だな。ミーアさんに所有権を俺に移してくれないか、お願いでもしてみるか。

 そんな事を考えていると、ミリアが顔を上げてこちらを向く。


「その、奴隷を消したりとか、そんなことも出来るんですか?」

「分からない。でも、ミーアさんにお願いすることはできる」

「あはは、お母さんなら所有権を渡しそうです」

「でしょ? お願いはしてみるよ。俺に移ればジョブはあってないようなものだから」


 うん、近い内に相談してみよう。お義母さん、娘さんを僕にください!って。


「お母さんは、無理な事は言わないので、今もあってないようなものですよ?」

「そうだろうね。ミリアの事を考えてくれている、良いお母さんだもんね」

「はい!」


 ミリアの気分を良くしたところで、少し強めに攻めてみる。


「それでも俺はミリアの全てが欲しいんだよ。独占欲が強いからさ」

「うぅ。そういうこと言うの反則です……」


 涙目になってこちらを見ている。これは破壊力があるな。

 思わず頬にキスをしてしまった。


「ひゃっ!」

「照れてるミリアもかわいいね」

「うぅ、もう……ダメだって言ったのに……」


 頭は俺の腕枕、腰は逆の手でホールドしているから、ミリアは逃げられない。

 抗議したいのか、こちらに顔を向けてきたので、もう一度、今度は額にキスをする。


 一瞬驚いたような顔をして、怒ったような照れているような感じでこちらを見ている。

 少しだけ無言で見つめ合い、最後に口にキスをする。


「んぅん……っ」


 肩や腰に力を入れて硬直している。でも、離れたりはしない。


 キスが終わると、怒ったような顔が更に真っ赤になり、どうしたら良いのか分からず、潤んだ目が泳いでいる。


「わわわわっ……あ、あ、キ、キキすぅぅ……」


 そんな目を真っ直ぐに見つつ、頭をナデてあげる。


「嫌がらないでくれて、ありがとう」

「はわぁ……」


 ショートしたらしい。本日二度目である。

 意識を失ったミリアを優しく抱き寄せて、もう一度キスをした後、メインジョブを魔術士にしておいた。

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