第52話 オフⅢ
ランとしっぽりした後、服を着て二人で庭に戻る。
「タカシ様、私もご一緒したかったです……」
「にゃ!?」
マリーにはランとしっぽりしていたことはバレバレであったらしい。別に隠すつもりはないが、羨ましがられたら答えないわけにはいかない。今夜にでも相手をしてもらおう。
「今夜な、今夜」
「は、はいっ!」
さて、風呂に入ってベッドでしっぽりしたら眠たくなるわけで……。気が付いたら夕方だ。そろそろ皆を迎えに行くには良い時間かもしれない。
それにしても、あれから何時間寝たのか分からないが、こいつらは元気だな。未だに訓練してやがるし……。皆汗だくで息を切らしている。ほぼ休憩なしだったのだろう。
「おや、タカシ殿。おかえり」
「ん、旦那じゃねーか。どこ行ってたんだよ!」
「あぁ、ちょっとな」
結局訓練にはほぼ参加していない。ガルミ以外にはわざわざ言わなくても察してくれるだろうし、ここは適当に答えておく。
様子を見るに訓練も一段落したところのようだし、訓練組が互いの良い・悪いところを指摘し合っている間に屋敷内に戻り、風呂を沸かす。ついでに冷たい飲み物と果物などをテーブルの上に出して、再び庭に行く。
「おい、お前達。飲み物を出しておいたから、話し合いはテーブルの上でやるといい。その後は風呂に入れ」
「ありがとうございます、タカシ様!」
「おぉ、タカシ殿。ありがとう!」
「さすが旦那だぜ、気が利く!」
「にゃにゃにゃんにゃ!」
「はーい」
何故か何もしていないランまで混じっているが……別に良いか。
「じゃあ、俺は皆を迎えに行ってくる。後は頼む」
「はい、いってらっしゃいませ!」
「いってらー」
椅子に座って飲み物を飲みながら再び話し合いが始まったのを見て、屋敷を出る。
さて、誰から迎えに行こうか。ジジイは後回しにしておいてやろう。
――ミリア、聞こえるか?
――――え、あ、は、はい。聞こえますよ。どうしましたか、タカシさん?
――そろそろ迎えの時間だろうから連絡してみたんだが、どんな感じだ?
――――え、もうそんな時間ですか。じゃあ、そろそろ集合地点に向かいますね。
――おう、頼む。
――――はい!
話し掛けた瞬間驚いた感じだった。恐らく体がビクンっとなったはずだ。後でこっそりソシエに聞いてみよう。
それと、時間も忘れて勉強をしていたのだろうし、ちゃんと昼食を摂ったかどうかも、な。
次はファラ達か。とりあえずパシリに飛んでおくか。
――シュンッ
「おわぁっ!?」
「ひぅっ!」
飛んだ先では既に皆待っていたようで、真正面にファラが居て驚いてしまった。ファラも珍しく驚いたようで目を丸くしている。レアな表情だ。目に焼き付けておこう。
「驚かせてすまない。どうだ、何か収獲はあったか?」
「ん。だいじょぶ。美味しいのあった」
「そっかそっか。それは良かった。後で俺にも食べさせてくれ」
「ん」
ミュウやマルカ、パルとパロもそれぞれ楽しかったようで、笑いながら雑談している。こういう自然な笑顔のためにも、たまには俺抜きで休日を設けないといけないな。
「さぁ帰るぞー。皆掴まれ」
「ん」
「ひゃいっ!」
「早くいくです!」
「ほーい」
「ほいー」
――シュンッ
屋敷に到着すると、部屋の中にはランしか居なかった。話し合いは終わって風呂にでも入っているのだろう。マルカとミュウには晩飯の準備をお願いし、それ以外はファラに頼んでザグゼルへと飛ぶ。
――シュンッ
ミリア達の利用している図書館は門から少し離れている場所なので、こちらに向かっている途中なのだろう。飛んだ地点にはまだ誰の姿も無かったので、少しその場で待機すると、ミリアとソシエが走ってきた。
「おいおい、そんなに急がなくて良いぞ」
「はぁはぁ、いえ、時間も忘れて集中していたので……」
「明確な時間は約束していないんだから、大丈夫だって」
「はぁはぁ、そ、そう、でした、ね……」
「ほれ、これでも飲んで落ち着け」
「あ、ありがとう、ございます」
「はい、ありがとうございます!」
ソシエの方はそこまで息切れしていないな。ミリアより体力があるのだろう。流石前線で戦うだけある。
二人に飲み物を渡して息をを整えさせる。
「よし、それじゃあ戻ろうか」
「はい!」
「はい!」
――シュンッ
ミリアとソシエを屋敷に送り届け、最後にジジイを迎えに行く。
――シュンッ
ミーアの宿屋に飛ぶと、ミーアは仕事をしているのだろうか、カウンター付近には見当たらず、ジジイが大人しく椅子に座って待っていた。どういうことだ……?
「おい、ジジイ。どうした。もう賢者タイムには飽きたのか……?」
「違うわい! ただ……少し虚しくなったのじゃ……」
「何がだよ」
「賢者のお陰で興奮できるじゃろ?」
「あぁ、まぁな。それで?」
「じゃが、それだけなんじゃ」
「……ん? どういうことだ?」
「気持ちが高まって高まって、それだけなんじゃ……」
あぁ、なるほど……。興奮して気持ちが高まっても、今は体が幼女のアルメだから、ナニをアレできないのか。流石にそこまでは面倒を看きれない。
「昇天、アルメ。昇天、アルメ。昇天、アルメ」
「ひゃうっ!? くっ!? んがっ!?」
「ほら、これで良いだろ。んじゃ、帰るぞ」
「……」
突然すぎて失禁してしまったようだ。仕方がないので、ミーアに見つかる前に掃除をして、証拠隠滅した後、ちょうど現れたミーアにお礼を言って屋敷へと戻る。
屋敷に戻りジジイを洗っておくよう風呂組に預ける。ジジイは未だ意識が無いし、仮に意識が戻ったとしてもナニが出来るわけではないから、何の問題も無いだろう。
そのままリビングへと移動すると、晩飯の準備が進んでいるらしく良い匂いで腹が鳴る。どうやらガルミと立ち合った後、ランと激しく運動したのでお腹が空いているらしい。晩飯が出来るまでファラのプニプニでも堪能しておこう。
「タカシ、これ」
「お土産か?」
「ん」
「そうか。でも晩飯前だから後で食べような」
「ん、わかった」
「ボス、ボス! 情報仕入れてきやしたぜぇ!」
「あ、パルずるい! アタシが先に報告しようと思ってたのに!」
ファラとイチャついていたら、パルとパロが後ろから首にまとわりついてきた。
「分かった分かった。ちゃんとどっちも聞くから、順番だ。とりあえず椅子に座れ」
「はーい。んしょっと。えっと、アタイは街の情報を仕入れてきたよ! パシリの南西? に大きな街があるんだって! そんで、大陸自体はそんなに大きくなくて、パシリを含めて4つの街で1つの国として成り立ってるんだってさ! ちなみに、国の中心はパシリの南西の街らしくて、せ、せこる? せくす? そんな名前!」
「おぉ、ちゃんと詳しく調べてきてくれたんだな! でも、街の名前が惜しいな!」
「くぅーっ! アタイとしたことがーっ!」
「ふっふっふ。アタシは完璧に調べてきたんですぜ、ボス?」
「おう、そうだな。パロを含めて二人の採点をしようじゃないか。どうだ、ダンジョンはあったか?」
「うん、3つあるみたい。1つはセコールの西にある街の中心に入口があって、そこが一番大きいらしいよん。あとは、パシリの西とセコールの南。街の中心にあるダンジョンは、噂ではダンジョンの中に街が出来ているんじゃないかって話」
うん? どういうことだ? 街の中にダンジョンがあって、そのダンジョンの中にも街?
「最初はダンジョンに王族が挑んだんだってさー。んで、その王族パーティーが戻らないから、支援物資を送る為にダンジョンの横に物資の保管場所を作ったらそれが村になって、物資の種類が増える毎にその村がどんどん大きくなって街になった。んで、ダンジョン内に物資を運んだ非戦闘員もかなりの人数になるし、今でもちょろちょろ入っていく人も居るから、街が出来ていてもおかしくないだろうなっていう、皆の希望? らしいよ!」
「なるほどな。そうだと面白いな。うん、二人とも良い情報だった。満点だ、ありがとう!」
「まっかせろー!」
「ふふーん!」
そのダンジョンには興味があるけれども、もしダンジョン内に街や国が出来ていて王政続いていたとしたら、ダンジョンを攻略すると現政権と争いが起こりそう……そのダンジョンは放置しておいた方が良さそうだな。
そんなワクワクするような会話にミリアが参加しなかったのでチラっと見ると、その会話をメモしていた。
ソシエはソシエで、そんなミリアのメモの一部を指差しながら、訂正や注釈を追記させているし。
流石ウチの参謀達だ。抜かりない……。
「そういえば、ミリア。スキルの習得方法は何か分かったか?」
「え、あ、いえ。やっぱり精霊契約や装備以外には特にありませんでした」
「えっと、勇者の従者が使徒だったということはそこそこ知られている話なのですが、その職のスキルは固定ではなく、何でも好きなスキルを覚えられた、という話です」
「そうなのか」
「はい、間違いなさそうです」
そういえばソシエは勇者関連について調べるって言っていたな……。結果的にミリアにお願いしていたスキルの件について補足という形になっている。俺は既に知っていたが、良くそこまで調べたものだ……。
「二人共、流石だ! ありがとうな! これからも頼む!」
「はい!」
「はいっ!」
ミリアが調べていたのは大魔導士の事らしいし、自身のことだろうから詳しくは聞かないでおこう。
さて、晩飯も出来たようだし、情報収集はこんなものかな。
明日から魔族領に行く話をしないといけないし、後は飯を食った後にでも皆で話そう。




