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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第二章
142/145

第49話 ベル

 皆をそれぞれ椅子に座らせる。


「皆集まったので、今後の話をしよう」

「今後の……? また何か面白い事でも考えたの、お兄ちゃん?」


 今後の話をすると言ったのに、そこで何故、面白い事だと思ったのか分からんが、ランだから無視しておこう。


「まずは、自己紹介だな。今日から仲間になる、ガルミとベルだ。ガルミの事は皆知っているし、良いか。ベル、自己紹介だ」

「にゃん、にゃにゃにゃ、にゃ、にゃにゃ」

「……だ、そうだ。よろしくしてやってくれ」


 呪いの事をすっかり忘れていた……まぁ、いいか。


「あの、ご主人様は、今の自己紹介が理解できたのですか……? わたしには、“にゃ”しか分かりませんでしたが……」

「ん? ベル・ファ・フォードです、よろしく。って言ってたぞ」

「にゃっ!」

「えぇー……」


 すごく複雑そうな顔だ……ソシエのこんな顔は初めて見る。


「嘘だぞ、嘘。まぁ、こいつは奴隷以下の存在、ペットだと思え。それで、今後の話だが――」

「にゃ、にゃにゃんっ! にゃあん!」

「うるさい、静かにしてろ」

「今後の話だが、次のダンジョンと、こいつの育成について、だ」

「出たばかりだというのに、もう次のダンジョンとは。タカシ殿は努力家なのだな。ボクも見習わなければ……」


 何か、ルリアが勘違いをしているようだな。

 俺は別に強くなりたくてダンジョンに入っているのではなくて、ボスを倒した際のマジックアイテム欲しさに入っているだけだ。


「旦那、ベルの育成なら、ルリアにやらせりゃあ良いんじゃ?」

「もちろんだ。だがな、それとは別に、レベルを上げたいんだよ」

「なるほど……それで、ダンジョンってわけか! さすがだぜ!」

「お前、適当に喋ってんじゃねぇぞ?」

「わりぃわりぃ」


 こいつ、適当に会話にさえ参加すれば良いとか思ってないか? バカ丸出しだぞ、おい……。


「そういうわけで、クドラングのダンジョンより比較的新しくて、良さそうな所を知らないか?」

「良さそうなところ、か。我はあまりダンジョンに詳しくないからのう……。どうじゃ、ミリア嬢?」

「うーん、さっきの件もありますし、魔族領にあるダンジョンとか良いんじゃないですか?」

「さっきの件?」

「はい。テイオス様の件です。あの方は、基本的に魔族領に居ると聞いた事があります」

「おおう、そうじゃ。あのババア、魔族領の何じゃったかのう……マシェ? とかいう所に屋敷とか持っておったな」

「屋敷のある街までは知らなかったですが、そういう事らしいので情報集めも兼ねてどうかな、と」


 さすがミリアだな……。

 そういうところまで考えが回らなかったぞ。


「じゃあ、そうするか。そのマシェって所は、周りにダンジョンがあったりするのか?」

「マシェは大陸の端なので、あまり詳しくないです。すみません」

「いや、大丈夫だ。提案してくれただけでも助かった」

「まだいくつかダンジョンがあるはずじゃ。ミリア嬢の言う通り、大陸の端で大きな港街でもないから、あまり人が集まらんしのう」

「なるほどな。とりあえず魔族領に行って、情報収集してみるか。ジジイ、良い情報だった。また褒美をやるよ」

「うっひょー。さすが主じゃのう! うひひ……」

「うわぁ……」


 ミリアにはいつも通り助けてもらっているが、ジジイもこういう時だけは役に立つよな。

 喜んでいるジジイを見て、ミリアは若干引いてしまっているが、ジジイだけではなく、ミリアにもご褒美でもあげたいところだ。

 何が喜ぶだろうな……今度、さり気なく聞いてみよう。


「魔族領に行くの? 結局、ベルはどうなったの?」

「ラン。今のやり取り聞いてたよな?」

「話には入らない方がいいかなーと思って、半分くらい……ね?」

「お前なぁ……まぁ、いいか。お前とガルミの頭じゃ、貴重な情報なんかは出てこないだろうし、期待はしていない」

「あっはっは、確かに、そりゃそうだっ!」

「ひどいっ!?」


 こいつら、良いボケコンビになるかもな。

 ボケても、俺以外にツッコむ奴は居ないが……。


「まず、魔族領に行ってテイオスっていうババアの情報を集める。その後、ダンジョンに行ってベルのレベル上げだ。オーケー?」

「りょーかーい」

「旦那は分かり易いな!」


 分かり易い……それだとまるで、俺が単純男みたいじゃないか。

 話の流れのお陰で言いたい事は分かるが、一応、このメンバーでジジイと俺を除いたら最年長だし、もう少し言葉を勉強させた方が良いかもしれないな……考えておこう。


「これで次の目的、目標は決まったな。皆、他に何かやりたい事や行ってみたい所はないか?」


 明日はオフにするつもりだし、何か要望があれば聞いておこう。


「また調べ物の為、図書館に行きたいですね」

「お菓子」

「私はタカシ様と一緒であれば、何処でも……」

「ランは、たまにはゆっくり寝たいかなー」

「ボクはそろそろ、タカシ殿と本気の打ち合いをやってみたいな」

「う、ウチは、とと、特に、ないでしゅ!」

「みゅは一度、村に行ってみたいです」

「アタイはボスと一緒に冒険してみたいなー」

「あ、パルずるい! アタシだってボスと遊びたい!」

「我は褒美を! 今度は人間の街で!」

「ご主人様さえ良ければ、ミリアさんとご一緒したいです」

「オレは特にねぇな。あ、いや、旦那に魔術を習いたいぜ!」

「にゃ、にゃん、にゃにゃん……」


 ばっらばらだな……。

 我欲の強い奴等と違って、勉強がしたいというミリアとソシエは最優先で行動させてあげよう。

 次に訓練をしたいというルリアとガルミ、それとついでにベル。こいつらは俺が相手してやるか。

 ベルが何と言ったのか分からないが、大好きなお姉様と一緒なら何も文句は無いだろう。


 訓練の間、ランは寝かせておいて、何処でも良いというマリーは訓練に付き合わせるか。


 ジジイは街に一人で置き去りにするとして、問題はミュウか。

 ジジイは俺から一日程度離れたら奴隷紋の効果で死ぬと理解しているから良い。だが、ミュウは奴隷にしていないし、一人で出歩かせるわけにはいかない。

 かといってマルカと一緒に行動をさせても心配だ。


 ミュウの村は魔族領だから、ババアの情報を集める時、ついでに寄り道するという事で我慢してもらうか。

 あぁ、ついでにミリアの故郷にも行ってみたいな。

 今度、旅程をミリアと相談しよう。


 今回はファラ、ミュウ、マルカ、パル、パロの五人で買い物でもしてもらおう。


 今回のオフはこんなものかな。

 前回と大して変わっていないような気もするが、本人達が良いのであれば、それで良いのだろう。

 その間、俺は買い物なんかを済ませておこう。


「よし、明日はダンジョン後恒例のオフにする」

「いいんですか?」

「おう。ミリアとソシエは図書館。ランは睡眠。ルリア、マリー、ガルミ、ベルは訓練。ジジイは例のアレ。ファラ、ミュウ、マルカ、パル、パロは希望する街で買い物。街はどこにするか五人で相談して、俺に教えてくれ。皆、こんな感じで良いか?」

「タカシ、おこづかい」

「おう、今回も皆には小遣いを出すから、好きに使ってくれ」


 皆から元気の良い返事を貰い、それぞれに3金ずつ渡していく。


「それはもう、自分のお金だ。余ったら自分で管理してくれ」

「ありがとうございます!」

「あ、マルカ。お前には、今回も食材調達をお願いしたい。これで買えるだけ買っておいてくれ」


 マルカに追加で10金渡しておく。


「はう、はわわ……た、たた、大金でしゅ……」

「大丈夫だ、安心しろ。必ず、天才ミュウが守ってくれるから」

「え、あ、ふ、ふんっ! 当然です! お姉ちゃんを守るです!」

「ミュウちゃん、お願いねぇ?」

「頼んだぞ、ミュウ」

「任せるです!」


 チョロい。


「さて、明日の予定も決まったし、風呂に入って寝るか」

「そうですね。今日はドキドキやハラハラで疲れました……」

「風呂の後は、もっとドキドキさせてやろう」

「いえ、大丈夫です」

「なぁ、ファラ。あのミリアの顔見た? 最近冷たいんだけど?」

「大丈夫。あれでも、ミリアはタカシのこと、すき。だいすき」

「もう! そういうのはいいってば、ファラ!」

「そっか。ファラが言うなら間違いないな。ありがとうミリア」

「もう! さ、先に行って沸かせてますからね!」


 そんなやり取りをしながら、風呂に向かう。

 二人ほど、何をするのか理解せず一緒に来ている獣人が居るが。


「なぁ、旦那。風呂って?」

「ダンジョンで、俺等が風呂に入っていたの見てただろう?」

「おう。仲が良いなって見てた。……それが?」

「仲間になったら一緒に風呂に入る決まりなんだよ」

「なるほど……だからオレとベルも一緒な……はぁ!?」


 脱衣所に入った所まで気が付かなかったのか。

 風呂に入ると行って、皆で移動しているのだから、皆で入るとは思わなかったのだろうか……?


「ほら、早く脱げ」

「え、いやいやいやいや、ちょっと待てよ。オレとベルも!?」

「にゃにゃ、にゃん!」

「当然だろうが。ほら見ろ。皆脱いでいるだろうが。あ、ジジイ。お前は違うからな、スリープ」

「なぜじ――」

「ほら、俺がアルメの服を脱がし終わるまでが制限時間だぞ?」

「ちょ、ちょまっ、まじかよ!?」

「にゃんっ!」


 二人を無視して全裸になり、アルメの服を順に脱がしていく。

 その光景を二人は眺めているだけで、脱ぐ気配が無い。


「脱がし終わるぞ? 一緒に入らなければどうなるか分かるか?」

「えっ……」

「にゃ……」


 それだけを伝え、服を脱がしたアルメを小脇に抱え、二人を残し風呂へと入って行く。


「タカシ殿、あまり言いたくはないが、中身は良いとして、身体は大事に扱ってやるべきではないだろうか?」

「おっと、そうだった。助言ありがとうな」

「気付いてくれたなら、良いんだ」

「次から気を付けるよ」


 ジジイという意識がるものだから、つい雑に扱ってしまう……。今度からは気を付けよう。

 荷物扱いしていたアルメを大事に両手で抱え直し、掛け湯をして湯船に浸かる。


「あれ、お兄ちゃん? ガルミとベルは?」

「一緒に入るのに抵抗があるそうだ」

「へー」


 聞いておきながら興味無さげだな、おい……。

 いつもの自分のポジションにアルメが居る事で、機嫌の悪そうなファラを右手で抱き寄せ、両手に幼女という犯罪的な場を楽しんでいると、ガルミとベルが入ってきた。

 ガルミはさっきまでの恥ずかしそうにしていた姿とは一転して、ブルンブルンさせながら歩いて来た。

 ベルは恥ずかしそうに、両手で大事な所を隠して歩いている。


 二人とも、それぞれの味が出ていて良いな。


「お、やっと来たか」

「おう、こういうのって恥ずかしいと思うから恥ずかしいんだよ。オレ達は家族なんだろう? だったら別に良いかなってさ!」

「にゃ、にゃん……」


 やっぱり、ガルミはガルミだな。

 こういう人物が集団の中に一人は必要だ。

 仲間になってくれて良かった。


「ほら、入れ入れ」

「おう、お邪魔するぜー」

「にゃ……」


 掛け湯もせずに、豪快に入ってきやがった。

 これが見ず知らずの奴なら叱るところではあるが、湯船に浸かるという行為が珍しい文化では仕方がない事なのだろう。

 それに、身内で自宅だ。それとなく教えるだけにしておこう。


「ふぅぃ……風呂ってやつは気持ち良いもんだなぁ!」

「だろう? 体もキレイになって、疲れも取れる。最高だ」

「だなぁ……。な、ベル!」

「にゃっ!? にゃ、にゃあん……」


 そうですね、とでも言っているのだろうか。

 こいつら、体育会系な奴等だからな。恥ずかしい事だとしても、慣れるのは早そうだ。


「ところでミリア。明日は何を調べるんだ?」

「ふぇ? あぁ、はい。えっと、ジョブとスキルです」

「ほう……どんな事を中心に調べたいんだ?」

「大魔導士関連と、皆のジョブスキルについてです」

「本当に勉強熱心だな。関心するよ。いつもありがとうな」

「そうでもないです。折角タカシさんの側に居られるんです。研究しないと勿体ないですから……」

「ボクもミリア君を見習わないとな!」

「ボス、アタイも何かボスの為にやりたい!」

「アタシも!」


 ルリアは一人でも訓練出来るから良いとして、パルとパロの特性って隠密や諜報とかだもんな……。


「パルとパロは、手持ちのスキルをいつでも使えるように、完璧にマスターしてくれ。それだけで助かる」

「はいよ!」

「任せてー!」


 こいつら、いつも俺の言いなりで、不満とかは無いんだろうか。

 もっと相手をしてやらないとな……。


「それで、ソシエは何を調べたいんだ?」

「え、わたしは、その……」

「何だ、言い難い事か?」

「いえ、あの、勇者の行動やスキルに関して、調べたくて……」

「そっか。何か面白いスキルとかあったら是非教えてくれな?」

「えっと、お、怒らないんです、か?」

「何でだよ?」

「こそこそ自分の事を調べられるのって、嫌かなと思いまして」

「そんな事全く思わねぇよ? むしろ俺の代わりに勉強してくれて嬉しいんだが?」


 何故そんな事で怒らないといけないんだ?

 こそこそと、俺の個人情報を集められたら、嫌な思いをするかもしれないが、勇者は勇者でも、俺じゃなくて元勇者の事だしな。

 不快な気持ちになる要素が一切無い。


「大丈夫だよ、ソシエ。タカシさんはそういう人だから」

「そ、そういうものなのですか……? わたしなら嫌ですが……」

「お前達が勉強してくれているお陰で、俺はとても助かっている。感謝こそすれ、嫌な気持ちになることは無い。決して、な」

「そう、ですか。ありがとうございます。勉強、頑張ります!」

「俺こそ、ありがとうな」

「はい!」


 笑顔で目をキラキラとさせているソシエは、キレイだな。

 両手をグッと握り締めて決意を表す表現も可愛いし、この笑顔を守る為なら、何だってやれそうな気にさせてくれる。

 ソシエとミリアに飛びつくのを抑え、身体を洗い始める。


 俺がアルメやファラなどの体を洗い始めると、マルカとミュウがこそこそと隅で体を洗い始める。

 こいつら、相変わらず気配を消しているな。

 もしかしたら、パルとパロより隠密が上手いかもしれない。


「タカシ、ファラも」

「うん?」

「ファラもタカシに何かする」


 マルカとミュウの方に目を向けていると、ぬっと視界にファラが入ってきて、嬉しい事を言ってくれる。


「お前はいつも俺の傍に居てくれ。それだけで俺は嬉しいから」

「わかった。そうする」


 いつも肌と肌が触れているくらい傍に居るので、特に変化はないが、それで納得してくれるのなら良かった。

 ファラのぷにぷにが無い生活なんて、耐えられないからな。


 そのぷにぷにを堪能している間、皆も体を順に洗い、最後に体を温め直してから風呂を上がる。

 そのままファラとアルメに服を着せ、部屋に戻る。


「それじゃあ寝るか。今日は精神的に疲れたからな」

「そうですね……」


 そう言いつつも、ミリアはベッドから立ち上がって、窓の方へと歩いて行く。何をする気だ……?


「どうしたんだ、ミリア?」

「えっと、精神力が残ったまま寝るのは勿体無いなぁ……と」


 窓から両手を空に向けて伸ばし、“バースト”を詠唱している。

 そういうことか……。


「ふぅ……これ、やっぱり疲れます、ね……」

「一気に放出するからな。あまり使えるタイミングは無いな」

「はい。でも、すぐに精神力が尽きるので、寝る前は便利です」


 恐らく、現在のミリアだと、二発で確実に意識を失うだろうな。放出の調整を行うためにも、毎日寝る前に練習させるか……。


「魔術の練習をする者はやって良いぞ。但し、俺は寝る」


 アルメを布団で丸めた後、布団に入る。


「それじゃあ、おやすみ」


 皆からおやすみの挨拶を貰った後、ファラとベルを抱いて寝る。

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