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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第二章
141/145

第48話 引っ越し

 屋敷に戻り、皆には着替えるよう指示して、一人考える。


 新たに、ガルミとベルを仲間になった事で、大所帯に……いや、既に大所帯だったか。

 これだけ人数が増えると、この屋敷では狭くなってきた。


 マルカとミュウ以外は皆同じ部屋で寝ているから、という理由もあるけれども……。

 こればかりは、俺の楽しみの一つなので、止められない。


 そろそろ改築、もしくは引っ越しを……といっても、物件なんて探した事がないし、当てもない。

 クドラング王あたりに強請るのは……何か違う気がする。

 どうせ嫌われているし、既にこの屋敷を貰ったからな。


 そうなると、別の土地に……という事になる。


 魔族領か、エルフ領、はたまたオスルムダンジョンの先にある、別大陸か……。

 ミリア達のお陰で、行動可能範囲はかなり広くなったけれども、やはり各地に当てはない。

 お金は、そこそこ貯まってきたが、土地と屋敷を買うとなれば、恐らく手持ちでは足りないだろう。


 うーむ……難しい。


「旦那。難しい顔なんかして、どうしたんだよ?」

「ん、お? もう着替え終わったのか?」


 考え事をしていると、皆と同じく着替えに行ったはずのガルミがシャツ一枚というラフな格好で、部屋から出てきた。

 一部の主張が激しい。


「おう。オレは別にオシャレなんてしてなかったからな」

「そうか」

「それで、どうしたんだよ?」

「あぁ、そろそろこの屋敷も狭くなってきたな、と」

「引っ越せば良いじゃないか、旦那なら一瞬だろう?」

「そりゃあ、移動は出来るさ。でも、土地と建物が問題なんだよ」

「そっか、そうだよな。家がねぇじゃねぇか。あははっ!」


 自分で言って自分で笑ってやがる。

 今の会話で笑うところがあったか……? 分からん。


「すまねぇな……オレと、ベルが加わったせいだろう?」

「いや、お前等が入る前からそう思ってたんだよ。それに、お前とベルが入ってくれて俺は嬉しいぞ?」

「旦那が喜んでくれるなら、こっちに来た甲斐があったぜ!」

「俺は嬉しいが、お前は良かったのか、団を抜けてしまって?」

「おう、オレは悔いねぇぜ? 旦那と一緒に居たら楽しそうだし、強くなれる! それに、魔術も教えてくれるんだろう?」

「まぁ、そうだな。お前次第だがな」

「オレ次第ってなんだよ?」

「俺から恩恵を受けて更に強くなりたければ、何をすれば良いか、マリーからじっくり聞いておけ」

「うぅ……」


 この様子だと、既に誰かから聞いているんだろうな。

 関係上、ベルには強要するが、ガルミは気長に待つ事としよう。


「お待たせしましたです!」

「お、噂をすれば」


 ガルミとの話が一区切りついたところで、マリーとベル部屋から出てきた。


「わ、私の噂をしておられたのです!? 何ですか!?」

「俺へのご奉仕は、マリーから聞けって伝えていたところだ」

「ご、ほう、し? ……あぁっ!」

「頼んだぞ、新人教育係」

「お、お任せくださいです!」


 マリーに任せると、もれなく“勇者が――”等という、くだらん話を吹き込まれるが、ご奉仕については適任だろう。

 他の誰よりも的確に、詳しく、卑猥に説明してくれる。


「わ、ワタクシに教育ですって!?」

「おう。お前は今、奴隷以下の立場なんだから、分を弁えろよ?」

「くっ……」


 悔しそうにしてはいるが、反論はしてこないので、俺との決闘に負けてしまった事は、一応理解しているようだ。


「旦那、あんまりベルをイジメないでやってくれよ?」

「おねぇさまぁ……」

「うるさい。庇うようなら、お前をめちゃくちゃにするぞ?」

「うっ……」

「お、お姉様には手を出させませんっ!」

「黙れ」

「むぅ……」


 黙った。

 プライドが高い割には、素直に言う事を聞く。

 負けたという事実があるので、プライドが高い故なのだろうか。


 それにしても、“黙れ”か……今後使う事が増えるだろうから、早速、神口の略語として登録しておこう。

 略語は“黙れ”。効果は“声が出なくなる”だ。


 あ……“黙れ”といえば、ゲームで良くある“沈黙効果”だな。

 効果は“詠唱が出来なくなるので魔法やスキルが使えなくなる”だが、この世界では存在する効果なのだろうか?

 後で実現可能かどうか、実験するとしよう!


「旦那まで何黙ってるんだよ?」

「え、あぁ、すまない。ちょっと考え事だ」

「旦那は、ほんっと良く考え事するよな。もっと皆を頼ろうぜ?」

「そうだな。ミリアやソシエに相談するよ」

「おいおい、そこはまず、目の前に居る、オレだろう!?」

「えっ、頭の弱い人はちょっと……」

「ぐぅ……旦那からしたら、そうかもだが、悔しいぜ……くっ!」


 腕を振って、地団駄しているが、全然悔しそうに見えない。

 こういう愛らしいところが、慕われる要素なのかもしれないな。

 今後、見習おう……。


「お姉様をバカにし――」

「にゃん」

「――にゃ、にゃん! にゃんっ!? にゃんにゃーん、にゃ? にゃん、にゃにゃにゃん!?」


 先日マリーに使用した呪いを略語登録していたのを忘れていた。

 ベルは銀髪の猫族らしいし、思い出したので使ってみる。


「命令したのに喋ったな? だから、俺が開発した呪いを掛けた。その呪いが発動中、主人の命令に二回逆らったら、全身の穴という穴から血を噴き出して、死ぬ。せいぜい、注意する事だな!」

「にゃ、にゃっ!?」


 当然、嘘だけれども。


 一度呪いを受けた事があるマリーは、嘘の説明を聞いて“えっ”という顔をしているが、面白くなりそうだし、無視しておこう。


「ベル、今すぐ服を脱げ」

「にゃん、にゃ、にゃん!」

「今、逆らったな? もう次は無いぞ」

「にゃあああ!?」

「さて、どんな無理難題を与えようか……くくくっ」

「にゃ……あぁ……んぅ……」


 ベルがプルプルと震え始めた。

 決闘の時は、わざと悪者ぶった口調で会話していたので、それを思い出したのかもしれない。


「タカシさん、何の話をしているんですか?」

「ちっ、邪魔が入ったか。命拾いしたな。ミリアに感謝する事だ。呪いを解いて欲しくば、俺に逆らわない事だな、くっくく……」

「にゃああああん!」


 ベルが、着替えを終えて部屋から出てきたミリアに、泣きながら抱き付いて行った。

 ガルミお姉様一筋じゃないのかよ! 女なら誰でも良いのか!?


 おっと……そんな事よりも、抱き付かれたミリアがベルの背中をポンポンと叩きながら、こちらをジト目で見ている……。

 これは早々に“ごめんなさい”をしないといけないやつだが……もう少しベルで遊びたい。


「タカシさん……?」

「そういえば、ミリアのドレス姿、すげぇキレイだったなぁ」

「誤魔化しは要りませんよ。それで、この状況は何ですか……?」

「俺も抱き付いて良いか?」

「今はベルさんが居るので、無理ですね。……で?」

「じゃあ、ベルが居ない時に抱き付く事にするよ」

「……で?」

「怒った顔も可愛いな、ミリア?」

「な、ん、で、な、い、て、い、る、ん、で、す、か?」


 この対応、お前は俺のオカンかよ……。


 最近、ミリアの俺に対する対応は、大体こんな感じばかりだが、俺はそんな対応が好きで好きで仕方がない。

 俺はいつも過剰というか、少しやりすぎる傾向がある。それは、後で後悔するから、自分でも分かっている。


 でも、性格だからな。分かってはいても、ついやってしまう。

 それに、今までそれを止めてくれる、諌めてくれる親しい間柄の人が居なかったから、憧れていたのかもしれない。


 あれ……?

 そうなると、俺を尻に敷いて、叱ってくれる女性が好きなのか?


 だが、ミリアは俺の半分しか生きていない、まだ子どもだぞ? そんな子に叱られて興奮しているとか……いや、アリだ。

 どうせなら、年上の美人さんに汚物を見るような目で叱られたいところではあるが、ミリアはミリアで、アリだ。


「あぁ、ミリア可愛いよミリア。大好きだ」

「はぁ……」

「どうしちまったんだよ……旦那……」

「タカシさんは、たまにこうなるんです……はぁ……」

「にゃ、にゃ、にゃん……」


 少し前までは、呆れた様子を表す時の溜息ですら上手くできず、“はふぅ”となっていたのに、今ではちゃんと出来ているしな。

 ミリアも精神的に少しずつ成長しているという事なのだろう……身体的にはいつまで経っても成長しないが。


「もう、気は済みました?」

「すまない。大好きなミリアの事を考えていた」

「ベルさんを何故泣かせたんですか? 何故ベルさんが“にゃん”になっているんですか?」

「生意気だったから」

「今、私も生意気だと思いますが?」

「ミリアは、嫁だから良いんだよ。むしろ、そのままで居てくれ。にゃんにゃん言わせるのは夜だけにする」

「よ、夜でも言いません! タカシさん言ってたじゃないですか。俺の奴隷になったら家族だ、って」

「言ったな。今でもそう思ってるぞ?」

「じゃあ、生意気だからってイジメちゃダメですよね?」

「分かったよ。すまなかったな、ベル。呪いは解いてやる」

「にゃん……」


 良し……ベルには、メンバー内カーストにおいてミリアが最上位だと勘違いさせておこう。

 ガルミ以外の誰かに懐いてくれると便利だしな。


「ベル、死なずに済んだのは可愛い可愛いミリアちゃんのお陰だ。十二分に感謝しておけよ」

「にゃにゃん……」

「何ですかそれ……」


 茶番はこのくらいにして、今後の事を考えないとな。


「ミリア、今俺が考えている事を相談して良いか?」

「え、あぁ、はい。是非」

「俺が今考えているのは、屋敷が狭くなってきたので、引っ越し。次に行くダンジョン。ベルの育成方法。ミリアとエッチする方法」

「引っ越しですか……どんな所が良いですか?」

「そうだなぁ、自由に出来る所が良いな」

「自由に出来る所、ですか……難しいですね」

「そうだろう? いっその事、自分で作るか!」

「簡単に言いますね。国とか、領地運営とか、タカシさんに出来る気がしませんが……」

「簡単に言いますね。俺だって、やる時はやるぞ?」

「それは十分、分かっていますよ? ただ、隣国との外交も色々と難しいでしょうし、王に喧嘩を売るタカシさんじゃ……ね」


 痛い所を突かれた。

 そうだよな、面倒な事があれば力でねじ伏せるかもしれない。


「なぁ、世界征服をする勇者って……どうだ?」

「何を言い出すかと思えば……。そんな事止めてくださいよ?」

「ダメか」

「はい。国や領地は諦めて、静かな所でのんびりやりましょう?」

「ミリアがそう言うならそうしよう」

「はい。のんびり自由に……あぁっ!」

「びっくりしたぁ……何だよ?」


 突然、ミリアらしからぬ大声を出しやがって……。

 何か閃いたのだろうか?


「タカシさん、オスルムのダンジョンですよ! あそこみたいに、自分で作ったらどうですか!?」

「自作ダンジョンか」

「はい! ダンジョンなら、出入り口さえ何とかすれば、領地とか気にせず好きに出来ますよ!?」

「ふむ……」


 そうか。その手があったか。


 確かにダンジョンを生成すれば、そこは自由空間だ。俺の好みで中を好きに造る事が出来る。

 周りの国や領地なんて存在しない。俺が王だ。

 これは良い案だ。


「さすがミリアだな! 凄い発想だ!」

「えへへ……」

「よし、早速造ろう!」

「え、いや、どこに?」

「ここに」

「どうやって?」

「知らん」

「……」


 ダンジョン生成なんてやった事が無いし、分からない。

 どうやって造るんだろうか……?


「ダメじゃないですかーっ!」

「ダメダメだな」

「あ、でもアルメなら分かるかも……」

「そうか、ジジイが居たか! あいつ知ってる風だったもんな!」


 ジジイに期待を込めて、皆が着替えている部屋の方を見る。

 すると、タイミング良くドアが開き、皆がぞろぞろと出てきた。


「おい、ジジイ!」

「ひっ!? な、何じゃ……我は何もしとらん。見とらんぞ!?」

「ん? 何かしたのか?」

「何もしとらん!」


 あれ……? 何でジジイが皆と一緒に部屋から出てきたんだ?

 皆着替えていたんだよな?

 当然服を脱ぐから、下着や裸が見えるんじゃないか?


「おい、ミリア。何でお前は着替えが早かったんだ?」

「え、だってアルメが居たから……」

「なぁ、ジジイ。何でお前は皆と一緒に着替えていたんだ?」

「え、な、流れ、で……」

「見たか?」

「み、見とらん、見とらんからな!?」

「今、本当の事を言えば許してやろう」

「……み、みみ、み、見ちゃった☆」

「昇天、アルメ!」

「ふぁっ!?」


 今から色々教えてもらう立場なので、許してやろうと思ったが、両足を広げ、瞑った右目に右手でピースを作って舌を出し、左手を腰に当てながらアルメモードになり、てへぺろしやがったので、思わずお仕置きをしてしまった。

 そのままだと話が進まないので、ビクンッとした後、膝を突いたジジイを、空間魔術で引き寄せる。


「くふぅ……」

「おい、ジジイ。そこに座れ」

「はぁはぁ……」


 テーブルの上に正座させる。


「覗きは、今のでチャラにしてやる。ここからは、取引だ」

「ふぅ……な、何じゃ……」

「こないだ、オスルムダンジョンに行っただろう? あんな感じの人工ダンジョンって、どうやって造るんだ?」

「ダン、ジョン……。はぁはぁ、そ、そうじゃな。空間魔術をな、マスターすると、ふぅ、空間を造れる、のじゃ……」

「ほう。それで?」

「ふぃー……空間が造ったら、固定して、中に入り、後は、好きに造れば良い。要は魔力次第じゃな」

「魔力で作るのか。そんなんで維持できるのか?」

「そこはコアじゃ。ダンジョンの維持には膨大な魔力を消費する。それをコアに任せるのじゃ」

「なるほどな。コアはどうやって造るんだ?」

「コアか……コアの使用方法は分かるのじゃがな、生成方法までは分からぬ」

「使えねー奴だな」


 ダンジョンを造り、空間を固定、中に入って、コアを固定、後は好きに作成。という感じか。

 ただ、肝心のコアが無いのでは作っても意味が無いな。


「ふぅむ、ババアの研究資料さえあれば、分かるかもじゃが……」

「ババア?」

「何というか、我の事をライバル視しておったババアじゃ」

「そんな奴が居たのか」

「アレスティア様のライバル……デュミノア・テイオス様!?」

「そう、デュミノア・テイオスじゃ。あのババアは、そっち方面の魔術に詳しかったからのう」


 またミリアが過剰な反応をしている。

 そのババアとやらは、そんなに有名人なのか?


「まだ生きているのか?」

「さぁのう……向こうが勝手にライバルと言っておっただだけで、ババアには興味無かったからのう」

「そういえば、ファルメル様――アルメがお亡くなりになった後、テイオス様の噂は全く聞かないですね」

「老衰で死んだんじゃないかのう? ババアじゃし」

「ババアババアって、そんなに嫌いだったのか?」

「何をするにしても対抗してきて、面倒な奴だったのじゃ」


 それはまたプライドの高そうな奴だな……。


「でも、そいつの研究資料があればコア生成が出来るのか?」

「ふむ。恐らく出来るじゃろう。あのババア、実際にダンジョンを作って我に自慢しておったくらいじゃし」

「そうか。じゃあ、ババアを探すか」

「そうですね。ご存命でしたら、一度お会いしてみたいです」

「ミリアが会いたいなら会わざるを得ないな」

「何で私なんですか……」

「まぁ、良いじゃないか。引っ越しの件は、ひとまず保留だな」

「そうですね。テイオス様次第ということで」


 引っ越しの件に関しては、ババアの情報を得るまで保留という事にしておこう。

 残りの件は、皆揃った事だし、皆にも相談する事にするか……。

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