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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第二章
140/145

第47話 挨拶

 会場に戻ると、皆は未だ戻って来ていないようだった。

 仕方が無いので、意識の無いベルを隣に寝かせ、膝枕する。


「ベ、ベルさん!?」

「ん?」


 さっきまでベルが立っていた場所に、違う子猫ちゃんが居た。


「ベ、ベルさんに何をしたんですか!?」

「説明が面倒だ。後でガルミに聞け。ほら、仕事に戻りなさい」

「そ、そんなっ……」


 この子猫ちゃんも可愛いな。今度声を掛けよう。

 とりあえず、今は無視だ。これ以上、面倒事を増やしたくない。


 膝の上にあるベルの頭を撫でながら、皆を待つ。

 今は、王がミリア達を一人一人紹介しているところだろうか? 順に一歩前に出て、何か喋った後、拍手されている。

 そんな状況を眺めていると、アバンが走ってきた。

 さすがサラにアバン。仕事が早いな。


「た、タカシ様! サラ様から聞きました! 決闘とはどういう、なっ、その子ですか!?」

「はい、この子です。いきなり喧嘩売られましてね」

「誠に申し訳ございません……この失態、どうかお許しを……」

「いえ、気にしてないですよ。ただ、こいつをクビ? 除名? にしてくれます?」

「そ、それはもちろんです。ひとまず牢に入れま――」

「いや、決闘に勝ったので奴隷にしました。もう俺のモノです」

「なっ!? しかし、それでは……」

「いいんです。騎士団の面子とか俺は知りません。既に奴隷登録もしたので、俺の家族です。だから、この事は内密にお願いします」


 騎士団の事なんて俺の知った事ではない。

 アバンはどうしたものかと唸っているが、ここは押し通そう。


「はぁ……タカシ様の考えが、たまに分からなくなります……」

「ははは、こういう男です。慣れてください」

「分かりました……ご迷惑をお掛けして、本当にすみません」

「いえいえ、大丈夫ですから。それより仕事に戻ってください」

「はい。本当にすみませんでした」


 何度も謝られてしまったが、折角手に入れたからかい相手だ……処刑されると分かっていて、手放すわけにはいかない。


 これからガルミをネタに、こいつとどう遊ぶ事を考えていたら、アバンと入れ違いに皆が戻ってきた。


「タカシ、それ、なに?」


 戻って来て早々、ファラがベルを指差し質問してくる。


「新しい奴隷だ」

「はぁ!? 私達が居ない間に、何してるんですか!」

「もう……お兄ちゃんてば、手が早いね……」

「任せろ」

「褒めてないです! ほら、早く返しに行きましょう!?」


 いやいや、拾ってきた猫じゃないんだからさ……。

 ぎゃあぎゃあとやり取りをしていたら、ベルの目が覚めた。


「ん……、何ですの……?」

「おう、おはようさん。ほら、ベル。皆に挨拶しろ」

「はっ!? 決闘は! 何処ですの、ここは!?」


 バッと立ち上がり、左腰に両手を当てている。

 剣を抜こうとしたのだろうが、当然剣は無い。


「なっ!?」

「おいベル。皆に挨拶するのが先だろうが」

「まだ決着はっ!」

「いや、もう付いてるから。お前、負けたから」

「そんなわけっがぁあぁぁっ!?」


 俺を睨み、殺気でも出したのだろうか、勝手に苦しんでいる。

 これが奴隷紋の効果なのか。


「お前、負けたから約束通り奴隷にした。それは奴隷紋の効果だ」

「はぁはぁ……い、いつの間に……」

「ほら、それより皆に挨拶しろ」

「くっ……」


 立ち上がり、皆の顔を一通り見た後、挨拶をし始めた。


「ベル・ファ・フォードですわ。以後お見知りおき……はっ!? こ、この服は!?」

「あぁ、俺が着せ替えた」

「なっ、ななっ、なんと……このような屈辱をっきゃうっ!」


 また俺を睨んで悶絶している。コントかよ。


「はぁはぁ……、あ、アン! け、剣を貸しなさい!」


 ベルが後ろに立っていた子猫ちゃんに走り寄り、剣を奪う。


「もう生きていけません。ワタクシの人生はここまっがぁぁっ!」


 剣を自分の腹に刺そうとしているが、刺す前に悶絶して倒れる。

 奴隷は自殺出来ないんだな。


「タカシさん、何なんですか、これ……」

「プライドの塊だ。それより、ガルミを呼んできてくれ」

「は、はい……」


 これ以上コントを繰り広げられるのも迷惑だ。

 ミリアに食事を調達している最中のガルミを呼んできてもらう。


「旦那、どうしたんだ? 飯はもう少し待ってくれ」

「飯はいい。それより、こいつに一言頼む」

「お、お姉様!?」


――俺に決闘を挑んできたんだよ。負けたら奴隷になるっていう、条件で。それで、俺に負けて奴隷になった途端、屈辱だとか言って自殺しようとしやがった。


 ガルミに現状を報告しておく。


「なっ!? べ、ベル、お前なんて事しやがるんだっ!」

「そ、その、ワタクシは、その、お姉様の事を思って……」

「言い訳は要らん! 屈辱だから死ぬ? バカじゃないのか!? オレが殺してやる!」

「お、お姉様に殺されるのなら本望ですわ……」


 まずい、俺の思っていた方向と違う方に話が進んでしまった。

 ただ宥めて貰おうと思っただけなんだが……。


「おい、ガルミ。俺の奴隷に手を出すなよ?」

「なっ、だ、旦那っ! でも、オレの部下なんだ、オレにケジメを付けさせてくれ!」

「じゃあ、お前が俺の奴隷になれ。それがケジメじゃないか?」

「ぐぅっ……わ、分かったよ」

「なっ!? ダメです! お姉様は関係ありませんっ!」

「うるさいっ! お前は黙ってろ! 旦那、隊長に事情を説明してくるから、少しだけ時間をくれるか?」

「おう」

「ダメです、お姉様! お願いです! うぅ、お願いですから!」


 しがみ付くベルを振り払い、ガルミがアバンの下に歩いて行く。


「うぅ……お、お姉さまぁ……」


 まるで、昔のヤクザ映画を見ているようだ……。

 ベルは地面に蹲って泣いているし、庭の隅で良かったな……。


「タカシさん、どうするんですか、この状況……」

「お兄ちゃん、鬼畜すぎない?」

「はぅ……タカシ様、さすがです……」

「ガルミが仲間になるんだ。結果的に、良いじゃないか」

「ご主人様、そういう問題ではないと思うんですが……」


 鬼畜と言われようが、ガルミが手に入るのなら結果オーライだ。若干一人だけ、憧れの眼差しで見ている奴が居るけれども……。


「またアバンさんにご迷惑をお掛けしますね……」

「あの人なら、何とかしてくれるだろう。大丈夫だ」

「それをタカシさんが言うんですか……はぁ……」


 クドラング騎士団の副団長とその部下が抜けてしまうことになるが、アバンの強さは既に当時の倍にはなっているだろうし、サラも強くなった。

 サラとアバンの二人だけでも、騎士団全員より戦力的に上だ。

 だから、問題は無いな。うん、そう考えよう。


 歩いて行ったガルミを皆で見ていると、アバンと何かを話して、戻ってきた。


「旦那、これからよろしくな」

「おう」

「そんなにあっさり!?」

「おねぇざばぁ……」


 戻ってきたガルミの足にベルが抱き付き、号泣している。

 それにしても、ミリアの言う通り、あっさりしすぎだな……。

 何かあるのだろうか。


「アバンさんとは何を話したんだ?」

「騎士団を抜けて、今日から旦那のところに行くって伝えた」

「そしたら?」

「分かりました、ラン様を頼みましたよ。だってさ!」

「簡単だな、おい!」

「まぁ、こんなもんじゃないか? オレ、副団長ではあったけれどバカだったからな! あっはっはっ!」


 そうか。ウチにはランが居るからな。それもあるのか。

 ベルの事を伝えないあたり、ガルミも部下思いなんだな。

 まぁ、アバンは既に事情を知っているわけだから、それを察して退団を許したのかもしれないが。


「じゃあ、今日からガルミとベルの教育係はマリーな」

「おう、マリー。よろしく頼むぜ!」

「ぐすっ、よろじぐおねがいじばず……」

「わ、私ですかっ!?」

「おう、色々と教えてやってくれ。期待してるぞ?」

「は、はい! ふ、ふふ、お、お任せくださいです!」


 マリーに任せておけば、ご奉仕についても教えるだろう。

 ガルミはそっち方面の知識が全く無いので、じっくりいこう。


「よし、じゃあ帰るか!」

「いやいやいやいや、何終わらせようとしてるんですか!」

「え、何だよミリア。折角良い感じに終わったのに」

「終わってませんから! 王様との会話は今からですから!」

「王と話す事なんて、何もないぞ?」


 向こうにはあっても、こちらには無い。

 話の分かるマル王妃となら話しても良いが、ガス王とはな……。

 一度喧嘩してしまったし。


「それに、サラさんからタカシさんが帰らないように、引き留めておいてねってお願いされたんですよ……」

「むぅ。仕方が無いな……」


 再度椅子に座り、戻ってきたマルカ達から並べてもらった料理を食べながら待つことにした。


「早く終わらねぇかな」

「もう少しですから……ね?」


 何か、ミリアのオカン度が、また上がっている気がする。

 俺がまるで、宥められている息子みたいだ。


「そういえばさっきは、何をさせられたんだ?」

「それです! 何でタカシさん来なかったんですか!?」

「すまん。目立つの嫌だからさ。それで、何を喋ってたんだ?」

「えと、サラさんと一緒にダンジョンを攻略したメンバーとして、それぞれ一言ずつ挨拶させられたんです」

「ミリア、タカシの妻って言ってた」

「おおう、ちゃんと約束は守ってくれているんだな。偉いぞ!」

「うぅ……すごく恥ずかしかったんですから……」


 あんな大勢が居る前で、よく出来たな……。いや、待てよ……。

 もしかしたら、皆の関心を少しでも俺の方に向けさせようとした結果なのかもしれないな。


「それで、ファラは何て挨拶したんだ?」

「同じくタカシの妻って言った」

「ほ、ほう……、マリーは?」

「え? もちろん、タカシ様の妻だと言いましたです!」

「ボス、ボス! アタイも妻だって言っておいたよ!」

「うんうん、アタシもー!」


 まさか……。


「ルリアやソシエ……も?」

「ボクは、タカシ殿の奴隷、だと言ったよ」

「わたしも、タカシ様の奴隷、と紹介させていただきました」


 そうか。良かった。全員タカシの妻とか言い出したら、どうなっ……違う。既に、幼女に妻と言わせている時点で危ない奴だ。


「マルカとミュウは?」

「う、ウチは、や、雇われミェイド、と……」

「みゅもです」


 噛まずにちゃんと自己紹介出来たのだろうか……。


「お前は?」

「我は“あそこに居る人の肉奴隷ですっ、きゃはっ☆”じゃ!」

「お前、もうご褒美やらないからな」

「な、なぜじゃ!? 流れ的に、フリじゃろ!?」


 完全に俺は変態じゃないか……。

 それよりも、その場の空気は酷い事になっていただろうな……。


「ミリア、場の空気どうだった?」

「何か、皆さん笑っておられましたよ?」

「はぁ!?」


 笑って済まされる程度の変態なのか。

 いや、待てよ……幼女が“妻です”なんて、背伸びをした子ども程度にしか見られていなかった可能性があるな。

 それならば、ジジイのは冗談だと思って貰えただろう。


 まぁ、今更どうしようもないし、事実だし、良いか……。


「あ、話が終わったみたいです」


――サラ、これから何があるんだ?

――――お父様が少し話をしたいそうよ。時間良いかしら?

――帰る。

――――ちょっ!? お礼をしたいらしいから、少しだけ、ねっ?

――お礼をしたいのなら、仕方が無いな。少しだけだぞ?

――――もう、現金なんだから……。


 サラと念話していると、王と王妃が並び、後ろにサラ、アバンという順で、こちらに歩いてきた。

 ミリア達の挨拶のせいで囲まれたらどうしようかとも思ったが、参加者達は遠巻きに見ているだけだ。助かった……。


「勇者ワタナベよ。此度は娘の夢を叶えてくれて、感謝する」

「お、今日は剣を抜かないんですか、お義父さん?」

「タカシさんっ!」

「冗談だ冗談」

「くっ……下手に出れば……こほんっ! その、礼をしたいのだが……何か希望はあるか?」


 先日斬られたお返しだ。刃は俺の肌に到達していないが……。


「娘さん、いえ、サラを俺にください」

「なっ!? まだそんな戯言を抜かすのかっ!」

「じゃあ、お金ください」

「ちょっ、タカシさん!? 私ってその程度なの!?」

「冗談だ冗談」

「冗談に聞こえないわよ、もう……」


 サラが貰えない、その代わりに金銭を要求したらサラが怒る……いくらガス王を煽る為とはいえ、順番を間違えたな。


「サラに王位を譲ってくれ」

「それは貴様の決める事ではない」

「希望を聞いてきたのは、そちらだろう?」

「よし、希望通り金を贈るとしよう」

「人の話を聞いてないな」

「うむ、此度はご苦労であった。また頼むぞ」

「おい、無視か。おい!」

「はっはっは!」


 去って行きやがった。あいつ……仕留めてやろうか!?


「タカシさん、あの人がごめんなさいね。報酬は、後ほど屋敷までお届させていただきます」

「いえ、こちらこそ喧嘩腰になってすみませんね」


 マル王妃が、ガス王を見ながら謝罪してきた。


「この度は、本当にありがとうございました。これからも、サラとランの事を、どうかよろしくお願いしますね」

「もちろんですよ」

「それでは。またいらしてくださいね?」

「えぇ。また遊びに来ます」


 小さな声で二人の事をお願いされ、そのまま去って行く。

 もっと気の強い人だと思っていたが、優しい人だな。


「タカシさん、色々ありがとう。楽しんでいってね」

「お疲れさん。もう終わりなんだろう? 俺達はそろそろ帰るよ」

「えっ……じゃあ、泊まっていかないかしら? 部屋を用意――」

「いや、城だと落ち着かないからな、帰るわ」

「そう……また会いに来てね?」

「おう。仕事頑張れよ」

「うん。ありがとう」


 城で高貴な気分を味わうのも良いかもしれないが、ウチは人数が多いからな。

 それに、城だと色々イケナイ遊びが出来ない。

 今日は、大人しく帰ることにしよう。


「タカシ様。ウチの者達が立て続けにご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございません」

「いえいえ、迷惑とは思っていないので、気にしないでください」

「そう言っていただけると助かります。ガルミ、タカシ様に迷惑を掛けるなよ? それと、ベル。タカシ様の温情に感謝しなさい」

「おう!」

「は、はい……」


 ベルめ、怒られてやんの。


「タカシ様。その子達の事を、くれぐれもよろしくお願いします。それでは、失礼しますね」

「はい、また来ますね」


 アバンは“迷惑を掛ける”と言うが、俺的にはハーレムの要員が増えたのは非常に嬉しい。

 団幹部が抜けてしまう事で、逆にアバンへ苦労を掛けてしまう事だろう。お詫びに、今度ステータスを更新してあげるか……。


「よし、お前達。今度こそ我が家に帰るぞ!」

「はい!」


 参加者達の下に王が戻ったのを確認し、屋敷へと戻る。

 あぁ、あの子猫ちゃんにも声を掛けておけば良かったな……。

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