第42話 一方的
ガデルの両サイドからアバンとルリアに攻撃してもらい、前衛を交代して、陣形を再構築する。
後ろに下がる際、マルカの方を見る。
サラの回復は既に終わり、今はガルミの回復をしているようだ。
彼女の腕は、治癒で治す事が出来るのだろうか?
治癒に時間が掛かるようだったら、マルカには直接指示を出して戻らせよう。
何とか最初の陣形に戻る事が出来た。
しかし、先程は容易に突破されてしまったし、次の手を考えないといけないな……。
ポーション類を飲み、作戦を考える。
――どうだ、ルリア。アバンさんと連携して倒せないか?
――――す、すまない、タカシ殿。我々では無理そうだ……。
ダメか。
やはり、俺やミリア、サラの魔術で倒すしかないな。
但し、それにはガデルの動きを止める必要がある。
闇雲に魔術を放っても、避けられるだけだ。
――アバンさん、ガデルの動きを止める事って出来ませんか?
――――申し訳ない……猛攻を留めるので手一杯です。
こちらもダメか。
――パル、罠で何とか足止め出来ないか?
――――ダメだよ、ボス。全部破壊されてる。
――パロ、罠がダメらしい。隙を突いてスキルを叩き込め。
――――任せて、ボス!
パルとパロには罠設置をお願いしていたが、効かないようだ。
定期的にガデルの周りが爆発していたのは、罠に掛かったのではなく、破壊されていたのか……。
「そらそら、どうした! お前には期待したのだぞ!」
「いたっ、くっ、このっ、せいっ、やぁっ!」
また、ランを集中的に攻撃されている。
これでは作戦を考える前に、ランが倒されてしまうな……。
ミリアとサラが、ガデルの隙を突いて上下から魔術を放っているが、決定的なダメージは与えられていない。
「儂の血を強く継いでいるのだろうに、その程度か!」
「がっ、ぐぅっ、このぉっ! ふっ、はぁっ! ぐっ!」
一方的に攻撃を受けているランをフォローするように、アバンとルリアが連続攻撃を放つ。
上手く連携の取れた攻撃だ。
しかし、ランを吹き飛ばし、回避スペースを作った後、アバンとルリアの連携攻撃は数発掠った程度で、全て避けられて終わる。
くそっ! 本当に戦い慣れているな。
更に、まずはルリアの背後に回り込み、盾にした後、腕を掴んで投げ飛ばす。
そして、アバンのリズムを崩したところで隙を突いて、アバンを吹き飛ばす。
それぞれ、ルリアがミュウ、アバンがソシエにぶつけられ、四人が戦線から排除された形になる。
どうやったら、あそこまで計算した戦い方が出来るんだよ……。
それよりも、今はランが一人だ。まずいな……。
前衛の四人が吹き飛ばされ、ガデルがフリーになっていたので、破壊力のある魔術をガデルの上下左右から放ってみる。
数発掠った程度か……。
更にガデルの正面に転移し、魔術を連射する。
「喰らえ、くそったれが!」
「甘い! お前は、魔術より前線の方が素質あるぞ」
「くそっ! 当たれ!」
魔術を連射した後、剣で斬り付ける。
「はぁっ!」
「ぐっはっ……」
腹と右手に大きな一撃を貰い、吹き飛ばされてしまう。
いってぇ。ダメなやつだこれ……折れたかもしれない。
吹き飛ばされている間にランに接近され、一撃を加えられる。
「うああぁぁっ!?」
良く見ると、ランの肩に、ガデルの腕が貫通している。
「お前には失望した」
「ぐぅぅ……」
何か強そうなスキルを使うようだ。ミリアとサラの魔術を上手く躱しながら、力を溜めている。
まずいまずい、あれはまずい!
「さらばだ、子孫よ。儂の全力で屠ってやろう。はぁぁっ!」
「ダメエエエエエエ!」
サラの大きな叫びが辺りに響き渡り、サラを見ると、両手を前に突き出して、何かの魔術を詠唱した後のようだった。
次にガデルを再度見ると、左腕が無い。
サラがやったのか……?
ガデルも驚いており、ランではなくサラの方を見ていた。
「な、何だ、今のは……?」
チャンスだ。
――ラン! ラン、こっちに来い! 早く!
――――……。
反応が無い。くそっ!
「ラン、こっちだ! おい、ラン!」
咄嗟に左手で魔力をランに向けて放出し、ランを引き寄せる。
「おい、ラン。しっかりしろ。おい!」
「うぅ……」
ランのHPはまだ残っているが、意識がない。
――マルカ、ランを頼む!
――――ひゃ、ひゃい!
何度か治癒を施して、そのまま空間魔術でマルカの方に飛ばす。
無意識にランを引き寄せたが、あれは空間魔術の応用だろう。
魔力にはこういう使い方もあるんだな。
自分に治癒を唱え、少しでも回復しておく。
俺の治癒では、傷は回復しても骨折は治らないのか? まだ腕が動かない。
でも、悠長に回復を唱えている余裕は無い。
「進化しているだけはある。先に始末しておくべきだったな」
次の標的をサラに切り替えたようだし、ここで決めるか。
「そうはいかねぇぞ。お前の相手は俺だ」
ガデルの前に転移する。
「お互い、片腕が動かないようだし、丁度良いじゃないか」
「ふん、お前なぞ指一本で十分なのだぞ?」
「言ってくれるな」
「わざわざ儂の前に出てきたということは、何か策があるのか?」
「あ、っ」
“ある”と答えようとした瞬間に懐に飛び込まれる。
質問に答えようとしただけじゃないか。
「策があるのならば、あの娘よりお前が先だ!」
「くそっ!」
右手が上手く動かないので、乱打を浴びてしまうが、まだHPに余裕はある。
「どうした! 策があるのではないのか! そらそら!」
「がっ、く、くそがっ! ぐっ、ぶあっ」
「何も出来ぬではないか、もっと儂を楽しませろ!」
「ぐっ、はっ、がっ、くっ」
更に乱打を浴びる。
あぁ、ボーっとしてきた。これはマズイんだろうな……。
「もう終わりのようだな。トドメだ」
ステップで後ろに下がり、力を溜めている。
その技で俺にトドメを刺すつもりなのだろう。
助かった……。
ボロボロになり、無様にもその場に尻もちを着いてしまったが、ガデルに“感謝の言葉”を告げる。
「下がってくれて、ありがとうな」
「な、に!?」
乱打を食らいながらも、ガデルの全身を覆うように展開していた魔力に力を込める。
そして、左手を前に突き出しながら、ガデルを浮かせる。
「なっ!? 何をしたっ!?」
「さっき思い付いた新しい魔術だ。存分に味わえ」
浮かせているガデルはジタバタしているが、無重力空間のようにその場で動いているだけで、何も出来ない。
全力で魔力を放出しながら、ガデルを宙に固定する。
「ミリアッ! サラッ! 全力でやれ!」
「は、はい!」
「いくわよ!」
二人は俺の意図を察してくれたようで、全力で魔術を放つ。
「ぐああああああああっ!?」
「まだだ! 自身の魔力が尽きるまでやれ! ファラにマリー! お前達もだ!」
「はい!」
「任せて!」
「わかった!」
「はいです!」
ガデルを覆っている俺の魔力が、邪魔をしているのだろうか……あまり大きなダメージを与えている気がしない。
しかし、HPを削っているのは確かだ。
彼女達の魔術が当たった部位は、俺の魔力も吹き飛ばされるようで、そこに魔力を補充するのに大きなMPを使ってしまう。
俺のMPが尽きるのが先か。それともガデルのHPが尽きるのが先か。勝負だな……。
「がああああっ!」
はぁ……最初からこれが使えていたら……。
咄嗟に思い付いた事なので、今更後悔しても遅いわけだが。
ガデルのHPを確認しながら、暫く一方的な攻撃が続く。
――マルカ、今の内に皆に治癒を頼む。
――――お、お任せくだしゃい!
――ミュウ、今からマルカが皆を回復するから護衛しろ。
――――任せるです!
――アバンさん、俺の魔力が尽きたら、ガデルが地面に降ります。その時は、頼みます。
――――承知しました!
――ルリア、アバンさんが攻撃を仕掛けたら、形振り構わず全力で攻撃してくれ。
――――分かったよ。ボクの全力で倒す!
――ソシエ、もう少ししたら俺、ミリア、サラ、ファラ、マリーは意識を失う。後の事はお前とアバンさんに頼むぞ。
――――え、え!? は、はい!
――ガルミ、ミリアとサラの護衛は頼んだ。
――パル、もう姿を出して良いぞ。皆が攻撃を開始したら、全力でスキルを叩き込め。
――――はーい!
――パロ、姿を出して、パロと相談して攻撃しろ。
――――え、何か分からないけど、分かったよ、ボス!
ランとジジイは意識が無いし、放置だ。
ガルミには返答方法を教えていないので、一方的な頼みになったが、後は皆に任せるしかない。
パルとパロには姿を消してもらって、背後から攻撃を入れさせていたが、もうその必要はないだろう。
後は全力で倒すのみだ。
ミリアとサラは既にMPが尽きて、倒れている。
ファラとマリーもそろそろ尽きる頃だろう。
俺もそろそろMPが尽きそうだ……。
ガデルのHPも一割を切っている。
それに、ミリアやサラの魔術によって両手両足を激しく損傷しているし、この状態なら皆で攻撃すれば倒せるだろう。
最後は格好良く倒したかったが、倒す前に気を失う事になるとは予想外だ……すごく格好悪いな……。
でも、ランが殺されるよりはマシだったし、こうなってしまっては、後の事を皆に頼むしかない。
あ、ファラとマリーもMPが尽きたようだな。
全力を出しているし仕方が無いか。
神心が一回使えるMPを残し、ガデルへの魔力供給を解除する。
――行け! 後は頼……
情けない……。
言葉途中で意識が……。
後は頼んだぞ。




