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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第二章
132/145

第39話 訓練

 今回のダンジョンは、まさか中で訓練をするとは思わなかった。


 基本的に、俺の好みだけで集めた子達なので、戦闘自体を行った事がない素人だ。

 当然、俺も素人だ。しかし、この子達より知識だけはあるので、今回は教える側に回っている。


 戦闘訓練は、三日間続けて行った。


 初日は、近距離組には連携の練習を行わせ、中距離組には回復のタイミング調整。遠距離組には魔術行使の精密化。

 二日目は、遠距離組を交えた連携。

 三日目は、連携を意識しながら、皆全力で敵を討伐する訓練。


 全力ということもあって、何度か誤射していたようだが、そこはマルカの練習にもなったので良しとしよう。


 この三日間で、かなり濃密な訓練が出来たと思う。


 モンスターを探しながら移動していた事もあり、ダンジョン内のマッピングもほぼ終えている状態だ。

 ボスの部屋は始めから分かっていたので、そこだけは避けつつ、順調にレベル上げ兼訓練を行った。


 ミリアは大魔導士、ファラは賢聖、ランは武聖、ミュウは戦聖、ルリアとアバン、ガルミは剣聖になることができた。

 他の皆もそれぞれ違うジョブを極めている最中だ。


 マリーは大精霊師、パルとパロは暗殺者、マルカは聖司祭、サラは巴術士。

 ソシエとアルメは、まだレベル上げが終わっていない。


 皆のジョブが変わったことで、驚いたことが数点ある。


 まず、ミリアの大魔導士は魔導士のレベルを引き継ぎのようだ。

 魔導士のレベルが50になると、自動的に大魔導士に昇格して、魔導士が習得済みになっていた。

 そして、レベルが50になってもジョブが変わっただけであり、新しいスキルを覚えていなかった。

 ジジイに聞いてみると、60から覚えるとのこと。

 特殊条件などではなくて、良かった。


 何故ジジイが知っていたかというと、賢神がそうらしい。

 賢聖がレベル50になることで自動的に賢神に昇格し、レベルが60になってからスキルを覚え始めるらしい。


 ついでに言うと、剣聖、武聖、戦聖も同じらしい。

 レベル60にならないと、何も始まらない。


 レベル50になってから、レベルの上がりも遅くなってきたし、先は長いな……。


 次に驚いたのが、召喚、付与、空間、錬金のジョブだ。

 それぞれレベル40にしたら、術ではなく、法を覚える。

 錬金魔術ではなく、錬金魔法だ。


 ジジイ曰く、魔法系は最上位職が最後に覚えるスキルらしい。

 覚えた本人ですら、寿命までに使えるかどうか分からないのが、魔法というスキルらしい。


 本来は、賢聖で上級魔術を覚え、賢神で魔法を覚えるらしいが、稀にその道を究めた者が賢聖を飛び級し、魔法を覚えるらしい。


 ちなみに俺は、錬金魔法と空間魔法を覚えた。

 レベルが40になったところで、錬金術士から錬金師になった。空間術士も同様だ。

 そして今は、召喚術士のレベルを上げている。


 ファラには地道に頑張ってもらっているところ悪い気はするが、これもジョブやスキルが見える、アンノウンの特権かもな。


 それにしても、実際に使った事がないから仕方がないとはいえ、さっきから“~らしい”ばかりだ。

 とりあえず、分かった事は全てミリアにメモさせておこう。

 それを元に調べて、また新しいジョブが分かるかもしれないし。


――というわけだ。

――――すごい! 今まで、良く分からなかった部分が、少しずつ埋められていく感じです。(これだけで一つの研究ができそう!)

――喜んでもらえると嬉しいよ。また分かったら教えるわ。

――――お願いします!(タカシさんに出会えて良かった……)

――ミリアは俺の嫁だからな。あ、でもミリアにしか教えていないから、内緒な?

――――もちろんです!(ふふ、タカシさんったら)


 ミリアポイントを稼ぎつつ、二人でやっていた勉強会を終える。

 やっぱり、こういう知識関係は、ミリアに相談するのが良いな。本人も喜んでくれるし、俺の評価も上がる。一石二鳥だ。


「ミリア」

「はい、何ですか?」

「好きだよ」

「も、もう……っ!」


 ほら、この照れた顔が堪らない。

 顔を赤くして、目を逸らしている。

 前はテンパって頭がショートしていたのに、今はこれだもんな。

 前のショートも良かったが、これはこれで良い。すごく良い。


「ファラは?」

「もちろん、ファラの事も好きだぞ」

「ん」


 本当なら声に出して勉強会するつもりだったが、こうしてファラが膝の上に乗っているので、雑談をしながら、念話していたのだ。

 ミリアがノートにメモをしていたが、ファラからは見えないので問題ないだろう。


「最近、ミリアがタカシにほれてる」

「は、はぁっ!? ちょ、ちょちょっと、ファラ!?」

「それは嬉しいな。嫁に惚れられていなかったらショックだし」

「ちょっと! ほ、ほれ、違う、違いますし!」

「ファラは初めから惚れてる」

「ありがとう。俺もファラに一目惚れしたから買ったんだぞ?」

「ん」

「だから、何変な事を言ってるんですか、ファラ!」


 顔を真っ赤にしながら、否定されてもなぁ。


「へんなこと? ほんとのこと」

「確かに、いえ、あれ、違う! そういうのは言ったらダメ!」

「ほんとのことでも?」

「うぅ……」

「まぁ、いいじゃないか。俺はお前達の事が大好き。それで良い」

「うん」

「もう!」


 三人でいつものイチャイチャを堪能する。


「のう……我って必要か? これは拷問か?」

「あ、すまん。忘れてたわ」

「色々と聞いておきながら、それは酷いと思うのじゃが?」

「ちゃんと報酬は出すって約束だろう? 別に良いじゃないか」

「むぅ。それはそれ。後に天国が待っていようが、今が地獄じゃ」

「アルメは賢神を目指さないんですか?」

「飽きたしの」


 ミリアがいつまで経っても、ジジイの事をアレスティア様と呼ぶから、アルメと呼ぶように命令しておいた。

 それでも敬語は変わらないが、それくらいは目を瞑ろう。


「そんなものなんですか?」

「うむ。この体はアルメちゃんのモノじゃしの。もし、我が居なくなった時の事を考えて、この子の特性を伸ばしてやらないとのう」

「流石です! そこまでお考えだったのですね……」

「本当は、回復を使えたら女性の体にも触る事ができるからとか、そういう理由だろうが」

「ち、ちがっ、違うわい!」

「図星らしいぞ、ミリア?」

「そんな……」


 ミリアのジジイに対する評価が急降下したのが、見て分かる。

 俺もこんな感じだったんだろうな。


「ち、違うからの? 全てはアルメちゃんの為じゃからな?」

「そういう事にしておきます……」


 ざまぁねぇぜ、ジジイ。


「何なのじゃ、お主は! 酷い事ばかり言いおってからに!」

「本当の事だろう?」

「ぐぅっ……」

「はぁ……、もういいですよ。大体分かってきましたし。それで、明日からどうするんですか、タカシさん?」

「どうするって、何をだ?」

「今日、お風呂で訓練は終わりみたいな事を言っていましたが」

「あぁ、明日からの話か。どうしようかね……そろそろガデルにも勝てそうな気はするが」

「攻略しちゃいます? ボスの部屋も近いんでしょう?」

「そうだなぁ……」


 このダンジョン内のモンスターでは、これ以上の訓練は厳しい。

 皆、既に訓練の内容に慣れてしまっているので、もう実戦形式の組手くらいしか、上達方法は無いだろう。


 まだレベルを上げたいところではあるが、後はレベル100まで進むだけなので、そんなに急がなくても良いか……。


「よし、明日は決戦といくか!」

「分かりました!」

「ミリア、ファラ。皆を集めてきてくれるか?」

「はい!」

「わかった」


 ミリアとファラに皆を集合させるよう指示し、茶の用意をする。

 マルカにお願いしたいところだが、今は皆とスキル練習中だから仕方がないので、ジジイに手伝ってもらう。


 暫くして皆が集まってきた。

 茶の用意をマルカに引き継ぎ、皆には座ってもらい、明日の決戦に向けて、作戦会議を行う。


「明日、ガデルに勝負を挑む」

「ご先祖様と対面するのね」

「おお! やっとだねー。勝てるかな?」

「勝たないといけないんだよ。誰も死なせる訳にはいかないから、あんなに沢山の訓練をしたんだ」

「はい。訓練の甲斐もあって、かなりの域に達していると思いますので、単体相手なら大丈夫ではないかと思います」

「アバンさんのお陰ですよ」

「いえいえ、皆さまお強いですから」


 訓練中は、かなりアバンのお世話になった。

 流石騎士団の長というだけの事はある。教え方が上手い。


「それで、相手は今までのモンスターとは比べ物にならないくらい素早い。それに、知能もある。前衛がしっかりしないと、すぐ隙を突いて後衛まで向かってくるだろう」

「やってやるです!」

「まっかせてよ! 成長したところ、見せてあげる!」

「それ、フラグだぞ。そんな事を言う奴は、大抵やられる」

「ひどいっ!?」


 近距離組もやる気は十分みたいだし、何とかなるだろう。

 もしもの時は、マルカとアルメ達の護衛をファラに任せて、俺が前衛に入れば良い。


「対象との距離は、今まで練習した通り、常に一定を保て。距離を詰めたり、離れたりしないこと」

「はい!」

「大丈夫です!」

「おっけー、ボス!」

「アタシだってやる時はやるもんねっ!」


 訓練の時はパルとパロの罠が常に作動していたが、それは相手の知能が低かったことにある。

 ガデル戦ではあまり役に立ちそうもないが、無いよりはマシだ。

 危なくなったら逃げ回ってもらおう。


「相手は、ランと同じく殴る蹴るが主体の、超近接戦闘型だ。懐に入られたら、形振り構わず下がれ。他の者は、即援護するように」

「はーい」

「承知した」

「承知しました」

「まかせやがるです!」

「が、がんばります……」


 ランとミュウも連携が取れるようになったし、無謀な特攻などをしなければ、大丈夫だろう。

 まぁ、そんなことができるような相手ではないわけだが。

 ソシエが心配ではあるが、ランやミュウよりは冷静な戦い方だし大丈夫だろう。


「マルカとジジイは、回復だけに専念。攻撃は一切しなくて良い」

「はわわ……だ、だだだいじょぶでしょうか!?」

「任せるのじゃ」


 ガデル相手だと、間違いなく被弾が多いだろうから、マルカ達は今回、重要なポジションだ。

 何としても守り通さないといけない。


「遠距離組は、基本皆を守る事に集中してくれ。隙があれば攻撃」

「任せてください!」

「ご先祖様だろうが、大きなのぶち込んでやるわ」

「精一杯がんばりますです!」

「護衛はオレに任せてくれ!」


 ガルミの戦闘センスは、中々のモノだ。本能的な感じがするが、護衛をしっかりやってくれるだろう。


 これだけの人数で一人を相手にするんだ。

 訓練もしたし、楽勝とはいかないまでも、死人は出ないだろう。


「何か疑問や質問などはあるか?」


 皆それぞれの顔色を窺うかのようにキョロキョロとしているが、特に何もないようだな。


「それじゃあ、明日に備えて寝るとするか」

「はい!」

「そうしましょう」


 皆におやすみの挨拶をして、それぞれの部屋に戻ってもらう。

 それぞれと言っても、俺は複数人で寝る部屋だが。


「明日は、ミリア達遠距離職にとってはキツイ戦いになると思う。マズイと思ったら、俺を盾にしてでも攻撃を回避してくれよ?」

「どうせタカシが守ってくれる」

「そうそう、結局タカシさんが何とかすると思うので大丈夫です」

「お兄ちゃんだし!」

「タカシ様ですから!」

「タカシ殿だからなぁ……」

「ご主人様ですし」

「分かった。俺が何とかする」


 一度戦っているとはいえ、手も足も出なかった相手だ。

 何とかするとは言ったが、大丈夫だろうか。


「さーて、寝るぞ! もう、練習も終わっただろう?」

「あ、私は勉強していたので、少しだけ練習してから寝ますね」

「そうか。すまないな」

「いえいえ、またお願いしますね!」

「おう。それじゃあ、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 ミリアは魔術の練習を行うそうなので、一足先に布団に入る。


 今日は、ルリアの胸に埋もれながら寝ることにした。

 どうせ朝には、ファラを抱き締めていることになっているんだ。今だけはこの感触を楽しもう。


 おやすみなさい。

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