第38話 連携強化
翌日は、早々に狩りを再開する。
戦い方は既に話しておいた通りのフォーメーションだ。
アバンとルリアは上手く連携できているようだが、それに対してランとミュウが合わせ辛そうにしている。
今まではどちらかというと、ランとミュウに合わせていた感じがあるから、仕方がないのかもしれない。
それに引き換え、パルとパロは人に合わせるのが上手だな。
ソシエは、まだぎこちないが教えた分だけ吸収してくれるので、問題は無いだろう。
さて、どうしたものか。
「ラン、ミュウ。アバンさんとルリア達の動きを良く見て、それに合わせて邪魔にならないように攻撃してみろ」
「難しいけど、やってみるよー」
「さっきから、やってるです!(むずかしいんだもん……)」
ランとミュウに、タイミングなどを教えつつ、練習を繰り返す。
今までの一撃でモンスターを倒せるダンジョンと違い、出てくるモンスターが強いので、何度でも練習出来るのは助かるな。
「あの、ご主人様。わたしは、今のままで良いのでしょうか?」
「そうだな。ソシエは教えた通りに動いてくれるから楽で助かる」
「あ、ありがとうございます」
「しっかりとアバンさんやルリアの動きを見て、分からなかったら二人に聞いて覚えると良い」
「は、はい!」
ランはバカだけど、戦闘に関しては教育を受けているだけある。
それに、アバンの動きや癖なども分かっているだろうし、徐々にではあるが、合わせることができている。
今は集中させるためにも、何も言わずにおこう。
やっぱり、問題はミュウか。
まだ子どもだし、戦闘時に連携を取るなどは難しいだろう。
そもそも戦闘目的で迎え入れたわけではないし、幼い事もあり、基本は力任せにモンスターをぶん殴っているだけだ。
何とかしてあげたいところだが、言っても聞かないし。
いや、一つだけ方法がある!
「ミュウ。ルリアが攻撃を止めたり、下がったら、前に出て攻撃」
「わかってるです!(わからないです……)」
「ほら、今ルリアが一歩下がっただろう、そこで前に出て攻撃だ」
「ちゃんと見てるです!(あれのことかぁ……)」
「ほら、今はルリアが攻撃を続けているけど、モンスターの後ろが空いているだろう? そんなときは後ろからモンスターを攻撃だ」
「やるです!(こんな時は待たなくていいんだ?)」
「ほら、今度はランが下がってこっちに来たぞ? そんなときは、ランと場所を入れ替わってアバンさんの方に行かないと」
「いくです!(空いてるところで攻撃すればいいんだ!)」
「良く倒したな。でも、ルリアとランの方がまだ終わってないぞ。あれ? ランが右を攻撃していて、左が空いてるな?」
「はいです!(あっちいったりこっちいったりたのしい!)」
「流石、天才ミュウは違うな。一回教えただけで覚えるとは」
「ふ、ふふーん、らくしょーです!(えへへ……)」
やっぱり口で説明しても、実践しないと分からないんだろう。
暫くの間は褒め殺しで、指示しながらパターンを覚えさせよう。
そうやって何度も繰り返せば、一人で動けるようになるだろう。
「ボス―! アタイ達はどうすればいいの?」
「罠は仕掛けてるけど、攻撃しなくていいの?」
「罠の仕掛け方はばっちりだ。的確に仕掛けているから問題ない。上出来だ。罠設置後、隙があったら攻撃して良いぞ」
「はいさ!」
「らじゃ!」
パルとパロの罠設置も上達したな。
しっかり、皆の動きを見て、誰も居ない場所に仕掛けているし、アバンやルリアもそれを確認して、誘導まで出来ている。
文句の付けようがない。
パルとパロを褒めながら、裏ではステータスを微調整していく。
調整しつつ、ふと時間を見ると、いつの間にか昼を過ぎていた。
「そういえば、魔術が飛んでこないな?」
「そうだねぇー。皆集まって話をしながら来ているみたいだけど、何してるんだろ?」
「どう魔術を使うか相談してるんじゃないか?」
「かもねー」
「ちょっとあっちに行ってくる。練習しておいてくれ」
「はーい」
ランに後の事を頼み、後衛が集まっているところに移動する。
「お前達、何をしているんだ? ちゃんと練習できているか?」
「え、えぇ。ちゃんとやっているわよ?」
「そうか? 何か話しているようにしか見えなかったが」
「そ、そうですよ。ち、ちゃんとやってました!」
怪しい。
ミリアの焦りようは、間違いなく嘘を吐いている時のそれだ。
――本当に練習していたのか?
――――し、してましたよ?(タカシさんの事を話しながら、少しやってたし嘘じゃない、よね?)
――何かさっき、俺の名前が聞こえたんだけど?
――――き、気のせいですよ!(ば、バレてる!? もしかして、昨晩ソシエとイチャイチャしてたことを報告した事も!?)
こいつ、何をサラに報告してんだよ……。
何かそういう協定でもあるのか?
――そういえば、ソシエの名前も出てたな?
――――そ、ソシエも剣術上手くなったね、と!(やっぱり!? じゃあ、それに対してサラさんが嫉妬していたことも!?)
ミリアとサラを放置しておくと、すぐそういう話になるな。
性格的に合うのだろう。本当に仲の良い姉妹みたいだ。
それにしても、嫉妬していたのか。可愛いやつだな。
――大丈夫だ。何もバレていないぞ。
「な、なな、ば、バレてるじゃないですか!?」
「何で声出してんだよ」
「あ、あぁ!? うぅ……」
「何を話していたのかしら?」
「タカシ、せつめい」
「タカシ様。皆が居るところで内緒話は酷いです」
「うるさい。嫁と内緒話をするくらい良いだろうが」
「じゃあ、私とはしてくださらないのね。はぁ……酷いわ……」
わざわざ説明しないといけないのかよ。
別に俺が誰と一緒に寝ようが、良いじゃ……良くないな。
「俺が昨晩、ソシエを抱き枕にして寝たことをサラが聞いて、俺に対して嫉妬をしていたんだろう?」
「うっ……」
「でも、朝になったらソシエじゃなくてファラになってたぞ?」
「あ、そうですよね。いつも思ってたんですが、必ず朝はファラになってますよね? あれ、何でですか?」
「俺も朝起きたら必ずそうなってるから知らん。ファラに聞け」
「何でなの、ファラ?」
「あそこはファラの場所」
「え?」
「そういうことだ。それ以上、聞いてやるな」
「あ、はい」
やはりファラ本人の仕業か。この中で一番嫉妬深いのかもな。
今は髪を抜かれたり蹴られるだけだから、今後刺されないように気を付けて接しておこう。
「じゃあ、今日はサラを抱こうかな」
「えっ!?」
「だから、嫉妬なんかしていないで、しっかり真面目に練習しろ。このダンジョンはお前の夢なんだろ?」
「も、もも、もちろんよ」
「はい、この話はこれで終わり。さぁ、午後も頑張るぞ!」
「はい!」
井戸端会議を強制終了させ、戦闘に集中させる。
「前衛に当たらず、邪魔にならないよう、魔術を行使する練習だ。どのようにすれば良いか分かるか?」
「鋭く尖った岩を飛ばすとか?」
「上から炎を当てるとか?」
「そうだな。でも、岩はタイミングが合わないと危ないな。当たる個所によっては致命傷になる」
「で、ですね……」
「とりあえず、慣れるまでは対象の上下から攻撃しよう」
「はい。でも、どんな魔術で攻撃しますか?」
「そうだな。やってみるから、見ててくれ」
右手を前に出し、魔力を込め、戦闘中であるモンスターの足元に段差を付ける。
更に、真上から鋭く尖った岩を無数に打ち込む。
最後に、モンスターの真下から火柱を上げさせる。
「こんな感じでどうだ?」
「バランスを崩させ、そこに岩を撃ち込んで、燃やす。ですか……相変わらずでたらめな連射ですね……」
「私にも出来るかしら?」
「別に一人で全てやらなくても良いだろう? 相手のバランスを崩す人と攻撃する人で分ければ良い」
「そうですね! 流石です!」
バランスを崩すタイミングは、前衛と合わせないといけないし、更に崩れたタイミングで岩を射出するのも難しい。
折角複数人の魔術士が居るんだ。全員が全員同じ事をやらないといけないという事はない。
「おぉ、ミリアに褒められると素直に嬉しいな」
「なっ!? 私はいつでも褒めているじゃないですか!」
「そうか? 最近は、またタカシさんは……しか言ってないぞ?」
「そんな事言ってっ、ますね……ごめんなさい」
「おお、素直に謝るミリアも可愛いぞ?」
「茶化さないでください」
ミリアとサラに、何度か行動阻害と攻撃の練習をさせる。
入れ替わりながら練習をしていると、サラは火力が高いだけで、精密な魔術行使が苦手のようだ。
それはそうだろう。いきなり魔術を使えるようにしたわけだし、ミリア達みたいに、毎晩練習していないのだから。
そのような理由もあり、行動阻害をサラが担当。攻撃はミリアということになった。
「あの、タカシ様! 私の事をお忘れじゃないです!?」
「おう、忘れてたな!」
「ひどいです……」
そういえば、マリーは精霊法士から精霊師になったんだ。
精霊師は、精霊を身に宿して、自身が精霊化するっていうスキルがある。それで攻撃してもらおう。
MP消耗は激しいようだが、身体能力も全体的に強化されるし、前衛にしても良かったかもな……。
今となっては作戦通りに練習しているから、替えられないが。
「じゃあ、マリーも攻撃に専念してくれ」
「はいです! お任せください!」
精霊師の事を思い出したついでに、皆のステータスを調整。
こいつらは徐々に修正せずとも、既にバレているので一気に調整してしまう。
ファラやマリーは知らないが、いつもの事なので、初めは違和感を感じるだろうが、すぐに慣れる。
「そういえば、今気が付いた。何でファラがここに居るんだ?」
「タカシのこと話してたから」
「マルカとジジイを守るのが、お前の仕事だろう?」
「ガルミにたのんだ」
だから、こっちの護衛であるガルミが居ないのか。
護衛を変わったにしても、あっちはガルミには荷が重すぎる。
「そうか。でも、自分より格下の者に、大事な仕事を任せるのは、関心しないな」
「ごめん。すぐもどる」
「じゃあ、一緒に行くか」
「うん」
「よし、お前達。しっかり練習するんだぞ?」
「はい!」
「分かったわ」
「はいです!」
これで遠距離組は問題ないな。
後は勝手に練習して、いつの間にか最適解に辿り着くだろう。
「ガルミ、ファラと代わってくれていたんだって? すまないな」
「オレも暇だったしな。問題ないぜ、旦那!」
「そうか、ありがとうな。それで、お前の実力も知っておきたい。前線に出て戦ってみてくれないか?」
「おう、任せてくれ! 今か? 護衛は良いのか? 行くぞ?」
どうやら前衛に出てみたかったらしい。丁度良かったな。
「しっかり見ておくから、思う存分やって来い」
「おう、行ってくるぜ!」
尻尾を振りながら走って行った。
犬みたいな奴だな。狼らしいけど。
「して、お主は何しておったんじゃ?」
「皆に色々教えたりしてたんだよ。お前こそ何していたんだ?」
「マルカ嬢とお話じゃ」
「マルカ、こいつに何かエロい事されなかったか?」
「ひゃい!? な、何もされ、されないでしゅ!」
「お主からしたら、我はどんな扱いなのかの?」
「害虫、かな?」
「ひどいやつじゃ……。のう、マルカ嬢よ」
「害虫は言い過ぎかもしれませんね」
何でジジイと会話の時は普通なんだよ。
しかも、遠回しに俺の事を否定してやがるし。
「そんなことよりも、どうだ? 回復やれそうか?」
「だ、だじょぶですゆ!」
「余裕じゃ」
ジジイの心配はしていないが、マルカも大丈夫そうだな。
「ファラ。誰かを回復しに行く時は、必ず護衛に付くんだぞ?」
「わかった」
ファラは自分を召喚獣として複数出せるし、護衛には最適だな。
「ところで、お主。昨日は、何故あやつと同部屋にしたのじゃ? 我の大事なアルメちゃんが傷物にされたらどうするのじゃ?」
「アバンさんか。彼は大丈夫だ。心配ない。安心して相部屋しろ」
「何かあってからでは遅いんじゃぞ!?」
「問題ない。お前が誘惑しなければ大丈夫だ」
「す、するわけがなかろう! 奴は男じゃぞ!?」
「何かさ、お前と喋っていると、男と女の境目が分からなくなる時があって怖いな。黙ってたら可愛いんだから、喋らないでくれ」
「ひどいぞ、おい!」
ジジイが喋らず、ジッとしているアルメは美幼女だ。
性的な意味ではなく、純粋に、可愛がってあげたくなるんだが、喋られるとジジイがチラついて萎える。
何度ジジイを浄化させようと考えたことか……。
今は便利に使えるのでそのままにしているが、アルメがもう少し大きくなったら、アルメ蘇生作戦を実行せねば。
「お主、今いやらしいことを考えておるじゃろ」
「は? 何言ってんだよ。なぁ、マルカ」
「ひゃ、ひゃい!?」
「タカシはいつもかんがえてる」
「なら仕方がないのう」
「そう」
「おい、お前等。勝手に決めつけるな! なぁ、マルカ」
「あの、しょの、う、ウチにはわかり、ましぇん!」
マルカともイチャイチャしたいんだがなぁ。まだ先は長そうだ。
いつか、あの胸を……いや、まだ我慢だ。
「よし、じゃあファラ。後は任せたぞ? 召喚等の練習も兼ねて、ジジイに色々と教えて貰えよ?」
「わかった」
「任せておくのじゃ」
中距離組には、特に何も教える事はないだろう。
それぞれの役割を分かっているし、ジジイも居る。
遠距離組もミリアが居るし、大丈夫だ。
やっぱり、近距離組次第だな。
モンスターは、シュスルスダンジョンのボスには劣るが強いし、次々と出て来るから、練習だけでなくレベルの上がりも早い。
午後もステータスを調整しつつ、みっちり練習だな。




