第36話 ネタバレ
休憩後、早速狩りを開始する。
まさか、初戦がボスだとは思わなかったが、そのお陰もあって、どの程度レベルを上げると良いのか目標が出来た。
ある意味ネタバレな展開ではあるが、これは大きな収獲だ。
もし何も知らずにガデルと戦闘になった場合、現状のステータスでは死人が出た可能性だってある。
そうならない為にも、今回のボス戦では俺が前線に出て、ガデルの足止めをする事も考えないといけないな……。
しかし、俺の手の内は既に見せてしまっているから、出来るだけ今の前衛達に任せたい。
ひとまずは、ダンジョン内に居るモンスターを全滅させるくらい狩って、皆のレベルを上げよう。
話はそれからだな。
「どうしたんですか、タカシさん?」
「ん、おう。ガデルをどう倒そうか考えてた」
「タカシさん、私達が戦っている間、いつも考えてますよね」
「代わりに戦ってくれるミリア達には、いつも感謝してるぞ?」
「それは、その、はい、分かります。でも、考えただけで強くなれ……あぁ、前に一度、頭の中で実験しているとか言ってましたね。あれですか?」
「似たようなものだ。今はお前達をどう育てるか考えている」
「育てるって……」
言い方がまずかったな。ゲーム感覚で返答してしまった。
でも、ステータスの調整と言っても分からないだろうし、間違いではないから否定はしないでおこう。
勘の良いミリアの事だ。何かを察するかもしれない。
「何を話しているの、タカシさん?」
「サラか。いつも俺の代わりに戦ってくれている皆に、ありがとうって伝えていたのさ」
「はぁ、素直に嬉しいけれど、その台詞別に恰好良くないわよ?」
「すまん」
「冗談は置いておいて。それで、何の話なの?」
「冗談じゃねーし!」
俺の事なのに、本人をスルーしてミリアに聞きに行きやがった。
いいもん……俺は一人で考えるから!
「私達の育て方、いえ、育てる方向性? を考えているそうです」
流石ミリアだ。俺の言わんとすることを察してくれた。
そうだよな。先日風呂の中で、それぞれに就いてもらうジョブを伝えたばかりなのに、またこうやって悩んでいるわけだから、そう捉える事もできるよな。
話に入ると面倒なことになりそうなので、考え事をしているフリをしておこう。
「そう。でも、それをタカシさんが考えたところで、どうにかなる問題なのかしら?」
「そこですよ。私も同じ事を聞いたところでした」
「そうよね。また、便利な恩恵とやらで誤魔化すのかしら?」
「そう、かもしれませんね。そろそろ、本当の事を教えてくれても良いと思うんですけどね」
こいつら……。
やっぱり、賢い女性が集まると怖いね。
本人が居るのに、チラチラと本人を見ながら、わざと聞こえる声で会話をしてやがる。
「そうだ、俺もそろそろ訓練しなきゃ」
「あ、逃げたわ」
「逃げましたね」
期待のこもった眼差しで見られているのが分かったので、独り言を言いながら、戦闘が行われている方に逃げる。
「何で逃げるのかしら、タカシさん?」
「何で逃げるんですか、タカシさん?」
しかし、回り込まれてしまった。
右腕にサラ、左腕にミリアが抱き付いてきた。
背後に気配を感じ、振り向いてみるとソシエが立っていた。
完全に逃げ道を失ってしまったな……。
「ミリア、おっぱい当たってるぞ」
「うぇっ!? い、いえ、今はいいんです。当ててるんです!」
「そうか。じゃあ、直に触らせてくれ」
「嫌です! サラさんにお願いしてください」
「えぇっ、私!? うーん、す、少しなら……」
「冗談です」
「えぇ!?」
何こいつら。いっそのことコンビでも組めば良いのに。
それよりも、サラの素が徐々に出てきた。まるでランみたいだ。
「ミリアも言うようになったな」
「また誤魔化そうとしているのが、分かりましたから」
「そ、そうよ。今はそんな事どうでもいいのよ」
後ろでクスクスとソシエが笑っているのが分かる。
あぁ、こいつら邪魔だ。ソシエの笑顔が見たかったな……。
「ソシエー。こいつらに何とか言ってやってくれよ」
「わたしもご主人様の秘密、気になります」
「お前もか!」
「ふふっ……」
首だけ後ろを向いて、ソシエに助けを求めたら裏切られた。
でも、笑顔を見れたので良しとしよう。
「それで、どうやって恩恵を与えているんですか?」
「どうやって、育てるつもりだったのかしら?」
「分かった、分かったよ。話す。だから解放してくれ」
「本当ですか? だったら……」
「分かったわ。じゃあ……」
二人が腕を離してくれたので、また掴まれないように腕を組んで周囲にミリア、サラ、ソシエ以外が居ない事を確認しておく。
「但し! 俺が墓まで持って行こうと思っていた秘密を話すんだ。それなりの見返りは、あるんだろうな?」
「最大の秘密なんですか……?」
「特に何もないわ。ただ聞くだけよ」
「え、えぇっ、わたしも!?」
「それは当然だろう。世界の常識が、覆るような内容だ。生半可な見返りでは絶対に話せない」
「またまた、そうやって誤魔化すつもりなんでしょう?」
「嘘はダメよ、タカシさん?」
こいつら、何も分かってないな……。
あぁ、何も言ってないから分からなくて当然か。
でも、世界の常識が覆るような内容なのは確かだ。俺の意志一つで、ステータス的に人を生かす事も殺す事も出来るのだから。
「本当だ。これを知れば、お前達を口止めしないといけなくなる。最悪の場合、俺がお前達と一緒に居られなくなる」
「ほ、本当……ですか?」
「それこそ冗談よ。そんなわけ、ない、わよね……?」
「嘘ではない。話しても良い。でも、それだけの覚悟が必要だ」
「…………」
真顔で声のトーンを落として喋っていたので、三人共さっきまでの冗談半分の様子ではなくなった。
ソシエなんかは、何も喋らずに目が泳いでいる。
そんな状況で、暫く無言で三人を見つめる。
「他言無用だが、どうする? 聞くか? 何を見返りにする?」
「わ、私は……それでも聞きたいです。当然秘密にします。本当にとんでもないことだったら、何でもします」
「私は国を背負う身よ。秘密は守るわ。もし、本当に世界に影響を与えるようなことだったら、身も心も捧げるわ」
「…………」
「ソシエはどうだ? まだ間に合うぞ。何事も無かったかのように皆の所に戻って狩りを続けてくれ」
「わ、わたしは……わたしは……」
「無理はしなくて良い。こいつらは特別好奇心が強いだけだ」
「いえ、わたしはご主人様の奴隷です。もし……もし、ご主人様の秘密を知った事で不都合が起きるのでしたら、殺していただいても構いません。それくらい気になります……」
「そうか……」
こんなに良い子を殺すなんて事は絶対に無いが、それだけ覚悟はあるということなのだろう。
「分かった。お前達だけには話す。大きな声を出すなよ? あと、身内だとしても絶対にバラすなよ?」
「分かりました」
「えぇ、もちろんよ」
「…………」
ここまで長い前振りをしたんだ。ソシエはまた黙ってしまったが話すことにするか……。
「俺はな、人の能力を数字として見る事が出来る。そして、それを足したり引いたりして、その数字を操作する事が出来るんだ。更に他人のジョブを自由に変更する事も出来る」
「数字……?」
「操作……?」
「変更……?」
「三人共、あまりピンとこないようだな。俺が今まで言った事を、頭の中でもう一度考えてみろ」
ミリアなんかはすぐに分かるはずだ。
俺がエロい事をする度に、魔力を上げたりジョブを変えたりしていたからな。
「あ、え、でも、そんな……うそ……全部!?」
「私も操作され……でも……」
「そういうことだったんですね……納得できました」
三者三様の反応だな。
ミリアは難しい顔をしたり、恥ずかしそうにしたり、忙しい。
サラは、信じられないとでもいうような顔をしている。
ソシエは、割と普通だ。一番肝が据わっているのかもしれない。
「どうだ? 分かったか?」
「はっ!? ほ、本当なんですか!?」
「本当なの、タカシさん!?」
「ご主人様がそんなにすごい方だったとは、驚きです……」
「全て、本当だ」
「すごい……すごいです。本当だとしたらすごいです!」
「えぇ、すごいわ。本当に。本当なの!?」
「だから、全て、本当の事、だ」
ミリアはすごいしか言っていない。
サラに至ってはまだ疑っているし……。
「タカシさん……勇者じゃなかったんですね……」
「そうよ。これはもう、勇者レベルの話じゃないわ……」
「そうですよね。もう、神様レベルの話ですよ、それ……」
「そりゃあそうだろう。神から貰った能力だし」
「えぇっ!?」
「はぁっ!?」
「うるさい」
「すみません……」
「ごめんなさい……」
「ご主人様、神様なんですね……」
神とはいえ、自称神だが、間違いではないだろう。
この世界の常識からしたら、超常の力になるわけなのだから。
「どうだ、世界の常識が覆る内容だろう?」
「えぇ、正直そこまでの話だとは思ってもみませんでした……」
「驚いたわ……私、神が手を付けた女になるのかしら?」
「神様……」
ソシエが何かうっとりしているぞ……これはポイント高いな。
でも、勘違いされても困る。訂正するところはしておこう。
「言っておくが、俺は神じゃないぞ。ただ力を持っているだけの、普通の人間だ。死んだら、そこで終わり。当然、死ぬ」
「それでもすごいですよ……それで、私達の育てる方法を考えたりしていたわけですね」
「そうだ。皆の能力は、どれをどのくらい伸ばすか、何のジョブにしようか、色々考えていたんだ。それをお前達に邪魔された」
「邪魔だなんて……でも、すごいわね。ミリアちゃん、あなた……神のお嫁さんよ?」
「およっ!? よ、嫁じゃないです! うぅ……」
「わたしは、神様の奴隷ですね」
「だから、俺は神じゃないんだって!」
神なのに嫁や奴隷を持ってるのかよ……。
何か、話が変な方向に向かってるな。
「そ、そそ、そうです! タカシさんはタカシさんですよ! 私はお嫁さんじゃないです!」
「神の力を持った男の嫁よ? すごいじゃない。私と代わる?」
「代わらないです!」
「代わらないんだ……」
「ちがっ! そ、そういう意味じゃ!」
「どういう意味かしら……?」
「うぅ……」
「おい、喧嘩するな。それで、お前達は俺の秘密を知ったわけだ。……後は分かるな?」
三人同時にビクッとなり、こちらを向く。
喋らざるを得ない状況を作られてしまったわけだから、当然その見返りは貰わないといけないよな。
「その……何でもっていうのは……言い過ぎたっていうか……」
「そうね。今この時をもって、私は身も心もタカシさんのモノよ」
「わたしは、既に神様のモノです。好きにしてください」
「えぇ、ちょっと!?」
ミリアが躊躇したところを、すかさずサラとソシエが裏切る。
これは俺も追い打ちをしておかないとな。
「ミリアは今日から正式に俺の嫁な。異論は認めない。もちろん、人に挨拶する度、タカシの妻ミリアです、と言うように」
「えぇっ!?」
「二人は約束を守ったのに、一人だけ約束を破ろうとした罰だ」
「はい……ごめんなさい」
「子作り、がんばろうな!」
「うぅ……それは、ちょっと、まだ早いというか……」
「俺等、夫婦だろう?」
「えぅ……はい……」
よし、ミリアイジメはこんなものだろう。
三人には、俺が良いというまで絶対に口外しないよう釘を刺しておく。
ミリアのドジっ子モード時以外は、大丈夫だろうが、念の為だ。
「じゃあ、そろそろ先発隊の体力や精神力も尽きてきただろうし、交代してやってくれ」
「はい……」
「分かったわ」
「行きます」
ジジイやガルミはマリーとファラに護衛させているが、そろそろポイントを割り振って、前線に出しても良い頃合いかもしれない。
ミリア達三人には、それぞれ今現在戦闘中のメンバーと交代するように伝え、再度、皆のステータスについて考える。




