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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第二章
128/145

第35話 瀕死

 いつもの浮遊感を味わった後、足に地面の感触がある。

 しっかり着地できたようだ。


 辺りに明かりは無く、真っ暗で地面が堅い事しか分からないが、ここがダンジョン内であることは間違いないだろう。


「儂にたった三人で挑むとは、愚かな人間共よ……」

「は?」


 ランでもガルミでもない、野太い声が聞こえる。

 警戒しつつ、火魔術で明かりを出して見渡す。


「ほう……魔術か」

「誰だ!?」

「なになに!?」

「どこだ!?」


 俺の火魔術に反応して、どこからともなく野太い声が聞こえる。

 声が反響していて、何処から聞こえているのか分からない。

 ランとガルミも驚いているようで、周りを見渡している。


 魔眼を使うと後ろからデカい物体が迫ってきていた――早い!


「ここだ!」


 一直線にガルミへ向け迫っているのが分かる。

 まだ何も手を加えていないガルミのステータスで、未知の攻撃を受けてしまったらまずい。

 しかも、ガルミとランは反対方向を向いている。背後から攻撃を受けたらひとたまりもないだろう。


「ガルミ、ラン! 前に走れ!」

「うん!」

「おう!」


 咄嗟に背負っていた盾を装備しつつ、ガルミと迫っている物体の間に入り防御態勢を取る。


「儂の動きが見えるか。ふんっ!」


 構えていた盾に、今まで受けた事の無い重い衝撃が伝わり、吹き飛ばされる。


「ぐああっ!」

「タカシくん!」

「旦那っ!」


 攻撃を受ける瞬間に相手の姿を確認出来た。

 耳と尻尾のある、獣人のような人型タイプだ。


「くそっ! バインド!」

「ぐっ……」


 普通のモンスターなら、バインドを受けると地面に張り付くはずなのに、膝を着いただけで耐えやがった……。


「貴様はやるようだな……ふ、まずは娘共からと思っておったが、貴様から相手をしてやろう」


 こいつはやばい。このメンバーでは分が悪い。

 あいつの蹴り一撃で、防御状態の俺からHPの三分の一を持っていきやがった。

 あの攻撃力……ランはまだ戦えるとしても、ガルミを守りながら戦うのは厳しいだろう。


 二人の位置を確認すると、その奥に出入り口のような所がある。


――ラン、俺が引き付ける。その間にガルミを連れて、お前の後ろにある通路まで走れ。今すぐに!


 ランにも、こいつの強さが分かるのだろう。出した指示を察してくれたようで、ガルミの手を取り、返事も無しに走り出した。

 二人を確認後、盾で前方を隠し、ポーションを飲み、自分に強化付与を施しておく。


「がははっ! 見ろ。あやつら何も言わずに逃げ出したぞ!」

「俺はあいつらが無事なら、それで良い」

「強がるな。貴様たち人間の仲間意識とは、その程度なのだ」

「賢者! フォーカス! ウィーク! 拒絶! 昇天、ガデル!」

「んっふぉっ!? な、何をした!?」


▼ガデル・フォン・クドラング Lv.68

HP:3700(3300+400)

MP:2600(1725+0)

ATK:1985(1875+110)

MAG:375(375+0)

DEF:1540(1425+115)

AGI:1430(1350+80)


 化け物かよ……。

 ステータス的に全く勝てる気がしない。

 しかも、クドラング姓ということはモンスターではないのか?


「ガデル・フォン・クドラング。お前は獣人ではないのか?」

「ん? ふぅ……貴様、儂を知っておるのか?」

「獣人なのか、モンスターなのか、どっちだ?」

「元、な。それがどうした」


 “元”ということは、今はモンスターなのか?

 ステータス上にジョブ表記が無く、モンスターと同じ表示なので“人”ではない何かなのだろうか……。

 でも、どう見ても獣人だよな……。


「ここから出たいのであろう? では、さっさと掛かって来い!」


 ダンジョンから出たいなら、自分を倒せということは、こいつはこのダンジョンのボスなのか?

 いきなりボス部屋とか、俺は運が良いのか悪いのか……。


「お前を倒せば、ここから出られるのか?」

「そうだ。ほら、どうした。掛かって来ぬのなら、儂から行くぞ」


 ラン達は、通路まで逃げたようだな。

 よし、ここはひとまず撤退だ。


「オラオラ、オラァッ!」

「ぐっ!」


 動きが早い――一瞬で間合いを詰められた。

 俺もAGIは高いので、何とか動きには付いていけるが、攻撃は更に早くて何発か貰ってしまう。


「がっはっ、くそ! お前を倒すのは俺じゃない。また来るから、その時まで待ってろ!」

「そうはいくか。ハッ!」

「があっ! ば、バインド! 昇天、ガデル! スリープ!」

「ぐっ、ふっ、貴様はさっきから何をしている!」


 吹き飛ばされながら、嫌がらせをしておく。


「またな」

「なっ、待て! まだ」


――シュン!


 ランの側に転移し、二人を連れて、更にミリアの下に飛ぶ。


「わぁっ!?」


 ミリアの驚いた顔を間近に見て、安心した。


「ふぅ……」


 そのまま、地面に大の字になって倒れる。疲れた。

 HPを確認すると、ほぼ無い。ゲーム的には瀕死状態だろう。


「た、タカシ様!?」

「「ボスッ!」」

「ミリア、パル、パロ。治癒してくれ」

「どうしたんですか、何があったんですか、タカシさん!」


 目を閉じて、治癒してくれるのを待つ。


「ご主人様、大丈夫ですか!?」

「ラン様、タカシ様の身に何があったのですか!?」

「えっと、何かめっちゃ強いのと戦ったんだよ」

「なぁ、姫。あれは何だ? 動きが早くて見えなかったぜ?」


 このバカ二人に説明させるのは無理があるだろう。

 今説明しても、ファラ達のパーティーにも説明する必要があるし二度手間だ。まずは合流だな。

 まだMPに余裕はあるが、マナポーションを出して飲んでおく。


――ファラ、今どんな状態だ?

――――戦ってる。

――今から迎えに行く。用意しておいてくれ。

――――まって。敵つよい。少し時間かかる。


「周囲警戒しろ。モンスターは居ないか?」

「居ませんよ。どうしたんですか?」

「ファラ達が戦闘中だ。敵が強いって言っている。援護に行くぞ。皆、俺の体に触れてくれ」


 こういう時は皆素直で察しが良いんだよな。

 治癒途中ではあったが、それより、合流が先だ。

 皆を連れて、ファラの下に飛ぶ。


――シュン!


「んっ!?」


 地面に寝た状態から飛んだので、転移先がファラの股下だった。

 ファラのパンツを眺めながら、皆に指示を出す。


「皆、周囲のモンスター共をさっさと討伐して、安全を確保しろ。あと、ファラは動くな。マルカは、俺に治癒を」

「わかった」

「ひゃい!」


 絶景を眺めながら、マルカに癒してもらう。

 ただ、明かりが足りないのは残念だな。薄暗くて、折角の景色が見えたり見えなかったりする。俺も光魔術覚えようかな……。


「討伐完了で……って、まだやってるんですか、タカシさん!」


 モンスターを倒し終わったようで、皆ゾロゾロと集まってくる。


「皆、お疲れ様。おやつには、まだ早い時間だけど、作戦会議だ。ミリア、マリー、サラ、俺を中心に家を用意してくれ」

「もう! ファラも手伝ってください!」

「タカシから動くなって言われた」

「私と代わりましょう! ファラさん、私がやります!」

「もう……ほんとタカシさんは……」


 ミリアとサラが、仕方ないという感じで家を造り始める。

 マリーはファラと代わるなどと言っているが、スカートじゃないからダメだというと、渋々ミリアの手伝いを始める。


「タカシしゃま! も、大丈夫でしゅ!」

「タカシ、もういい?」

「おう、二人共ありがとうな。癒されたよ」


 ファラを少し前に移動させて、起き上がった後、そのまま定位置である膝の上に乗せる。


 家という名の壁が出来たところで、テーブルと椅子を用意して、皆にはそこに座ってもらう。

 俺はファラを抱っこしたまま地面だ。


「それで、タカシさん。何があったんですか?」

「いきなりボス部屋に飛ばされて、一方的に攻撃された」

「はぁっ!?」

「あいつは強い。現状で、勝てるか分からん」

「タカシ様にそこまでのダメージを……」

「動き早いし、攻撃重いし、あれでまだ全力ではなかったな」

「そんなに!?」


 殴られたり、蹴られたりしただけで、何もスキルや魔術を使ってこなかったしな。本気ではないだろう。


「あと、サラ。ガデル・フォン・クドラングって知ってるか?」

「え、えぇ。私の父の、父の父の、父? だから……高祖父?」


 “ちち”が多すぎて、何を言っているか分からん。

 サラ本人も自分の続柄を辿っているのだろう。“父”という度、人差指を上に動かしている。


 サラのお爺ちゃんの爺ちゃんだから、サラからすれば、ひいひいじいちゃんって事なんだろうな。


「うん、間違いないわ。高祖父よ。それがどうかしたの?」

「クドラング家の事なのに、何でお姉ちゃんだけなの? ランには聞かないの、お兄ちゃん?」

「お前、ガデルを知ってるのか?」

「知らないけど」

「だからだよ、バカ」

「ひどいっ!?」


 そこまで喋っておいて、知らないって……別ひどくないだろう。バカが……。


「このダンジョンのボスは、ガデル・フォン・クドラングだ」

「へっ……!?」

「お兄ちゃんこそ何バカな事言ってるの?」

「うるさい。バカは黙ってろ」

「やっぱりひどいっ!?」


 サラは驚いている。自分の一族なのだから、無理もないだろう。


「確かに、このダンジョンに入って、戻って来なかったとは聞いたけれど、年齢的に無理があるわよ」

「戻って来なかったのなら、この中で死んでしまったんだろうな。姿形は獣人だったが、中身はモンスターのみたいな感じだったし」

「そんなっ!?」

「我等に世代があるように、ダンジョンも成長と共にモンスターが入れ替わる。ボスが変わる事もあるじゃろう」

「そういうもんなのか」

「そういうもんじゃ」


 ジジイの言う事も分かる。ダンジョンの内部が変わっても、モンスターやボスが弱いままだったら、すぐに攻略されるだろうしな。


「ただな、モンスター化しているのは良いとして、あいつには知能があった。意志があるし、言葉も喋る。かなり面倒な敵だ」

「あー、お兄ちゃん。あれと何か喋ってたよね」

「あぁ、そういえば、ランと同じ尻尾だったな」

「え、そこは見てなかったな。そっか、ランのご先祖様だもんね。同じだとしてもおかしくないよねー」

「おう、ランの殴る蹴るしかできない猪突猛進バカは、あいつから受け継いだんだろうな」

「ひどいっ!?」


 ランに似ているということは、魔術は使えない可能性が高いな。

 使えないとしても、あの素早い動きに対応できなければ、意味が無いわけだけれども。


「まぁ、そういうわけだ。あいつの打撃はやばい」

「やばい? どのくらいですか、タカシさん?」

「んー、そうだな。あいつの渾身の一撃を喰らったら、例えガードしていたとしても、俺ですら三発で死ぬだろうな」

「そんなに!?」

「あぁ、そんなに、だ」

「ご先祖様強いね!」


 強いから困っているんじゃないか……何を喜んでいるんだ、このバカランは。


「そういうわけで、現状では確実に死人が出るだろう。戦い方は、俺が考えるから、まずはレベルを上げよう」

「分かりました」


 あいつのステータスは大体メモした。

 近距離組には、防御力と素早さメインのステータスに書き換える必要があるな。

 遠距離組には、どういったステータスにするかな……。

 とりあえずはレベルを上げて、ジョブの調整をしつつ考えるか。


「休憩したら、早速狩りに出掛けるぞ」

「承知した」

「わかりました」

「はわわ……」


 俺のMPが回復するまでは、休憩にしよう。

 そこからはひたすら狩りだ。

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