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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第二章
122/145

第29話 パシリ

 オスルムダンジョンを出ると、本当にダンジョンから出たのかと心配になる程、辺りは真っ暗だった。

 ひとまず、マルカに光源を出してもらい、辺りを照らす。


「何処だここは?」

「怖いですね……」

「洞窟かのう」

「洞窟でしょうね」


 ソシエとジジイは、状況を理解しようと辺りを散策していたが、ミリアは怖いらしい。意外な弱点を発見したな。


 どうやらダンジョンへの出入り口は洞窟らしい。

 それにしても、オスルムダンジョン内より湿気が高いな。こっちの方がよりダンジョンらしいくらいだ。


「マリー、精霊を更に前に出して索敵させてくれ」

「はいです!」


 明かりにもなるので、火精霊を出してもらい、先行させる。


「ルリア、ラン、精霊の後に続いて、警戒しつつ前進」

「承知」

「はーい」


 ミュウは怖がってマルカに抱き付いていたので、ルリアとランを精霊の後に進ませる。

 念の為、ソシエとアルメは中央に配置し、守る布陣で先に進む。


「あ、お兄ちゃーん。出口っぽいよー!」


 暫く進むと、出口らしきところまで到着。

 幸いにも、モンスターには遭遇することはなかった。


「おいおい、折角出てきたのに、森かよ……」

「森だね」

「森だ」

「森ですね」


 皆揃ってモリモリ言っている。


「おい、ジジイ。ちょっと辺りを見てきてくれ」

「うぉ、我か!? ミリアではなく?」

「いいから行ってこい」


 ミリア達はスカートだからな。

 ジジイを空間魔術で空に射出し、全方向が見渡せるよう、上空でゆっくり回してやる。


「何でアレスティア様なんですか?」

「お前はスカートだろう? ジジイにパンツ見られるぞ?」

「あっ、もう……そういう目で見るのはタカシさんだけですよ!」

「いやいや、あいつも変態だぞ? 隙あれば、お前達にエロい事をしようと企んでいるからな」

「うぅ……」


 言い返せないらしい。思い当たるフシがあるのだろう。

 皆にも気を付けておくように伝え、ジジイを下ろす。


「どうだった?」

「今日中には無理そうじゃが、あっちの方角に街があるようじゃ」

「そんな距離が良く見えたな」

「アルメちゃんは我と違って目が良いからのう」


 ジジイは、ずっと研究したり書物を読んでたらのだろうし、目は悪かったのだろう。


「あぁ、さっきのアレを使えば今日中に着くと思うぞい」

「あれか……森の中じゃキツイだろう」

「こっちの方角は平原になっているようじゃし、森を迂回する感じにすれば、大丈夫じゃ」


 北西の方角に街。南の方に平原か。

 本当に森をぐるりと回る感じだな。


「さっさと屋敷に帰りたいしな。明日も歩きっぱなしっていうのは嫌だし、今日中に終わらせておくか」

「そうですね。面倒な事は先に終わらせておきましょう」


 パルやパロ達はジェットコースターに乗れる事が嬉しいらしく、後ろの方で“やったね!”などと言っている。

 それを聞いたファラやミュウ達もソワソワとしているようだし、子ども達には好評らしいな。

 喜んでもらえるのであれば、やってやるか。


 他の皆からも、南から迂回して街に向かう事で同意を得たので、まずは南に移動することにした。


 道中、ハーピーやバタフライ等の亜種モンスターに遭遇したが、初見にしてはスムーズに討伐できた。

 風魔術で遠距離から攻撃を仕掛けてくるのは厄介だったが、特に大きなダメージにはなりそうにないので、大丈夫そうだ。


 こちらの大陸に居るモンスターは、基本的にあちらの大陸に居るモンスターの亜種のようだな。

 この使い回している感じ、正にRPGのようだ。


 でも、こいつらがダンジョンで出てきたら厄介そうだな。

 ダンジョンモンスターは、フィールドに出てくるモンスターより幾分か強くなっているし、今後は形違いや色違いのモンスターにも気を付けないといけないな。


「お、開けてきたな」

「タカシ殿、森から出たようだよ」

「はぁー。この解放感いいねー!」


 太陽の光を浴びる事ができず、ずっとジメジメしていたからな。

 皆も疲れが見えてきているし、さっさと移動して街を覚えた後、早めに屋敷へ戻ることにしよう。


 ダンジョン内で考案した乗り物をまた作成する。

 全員乗った状態で浮かせて移動させる事ができれば良いんだが、俺の覚えている空間魔術では出来ないのが難点だ。

 ジジイが言うには、空間魔術士を極めないとできないらしいし、今度ミリアとソシエ達に何か別の方法でも考えてもらおう。

 それとは別に、俺は科学的に乗り物が造り出す事ができないか、この世界にある素材で研究だな。


「皆乗ったか?」

「大丈夫っぽいねー」


 ランと二人、皆が乗っている事を確認して、ゆっくり走り出す。

 先程は洞窟内という事もあり、少し力を押さえて走っていたが、平野なら周りが見えるので安心して全力で走れそうだ。

 ランは、全力を出せる事が気持ち良いらしく、少しずつ俺の前に行こうとしている。

 この野生児め……ついていくのがやっとだぞ。


 でも、良く考えたら俺も人類ではあり得ない速度だよな。

 一秒間で二十メートル以上は走っているだろうし。

 それに、肉体強化のお陰で疲れもあまり感じないから、元の世界基準で考えたら、既に人ではない何かだ。


 そんな超越した力に酔いしれつつ、調子に乗って走っていると、次第に疲れてきた。

 しかし、街が見えてきたので良かった……。


「はぁはぁ、もう着いたのか。意外に早かったな?」

「そだねー。もっと走っていても良かったけど」


 こっちはやせ我慢をして見栄を張っているのに、こいつは化け物かよ……。


「ボス―、あれ街じゃないの?」

「えぇー。もう終わり―?」


 こいつらも好き勝手言いやがって。


「終わりだ終わりっ! さぁ、街だぞ。このままだと、はぁはぁ、あまりにも目立つから、ここからは歩きだ」

「「はーい」」

「ふんっ、みゅのためにもっと走れば良いのに」


 ミュウは後でお仕置きしてやる。


「ほら、降りろ降りろ」

「タカシさん、お疲れ様でした」

「おう、やっぱりミリアは分かってるな。流石は俺の嫁だぞ……。俺は、その言葉を聞きたかったんだ。なぁ、ミュウ?」

「よくやったです」

「てめぇ」


 後ろから羽交い絞めにして、くすぐり攻撃をする。


「わひゃひゃひゃっ、やめっ、やめてっ!」

「主人に向かって、よくやった、だってよ。聞いたか、マルカ?」

「めっだよー、ミュウちゃん? 運んでもらったんだからー」

「ひゃっひゃ、あっひゃ、ひゃっ、ごめっ、ごめなさっ、やめっ、あひっ、あひがひょっ、ごじゃひたっ」

「よろしい」

「ひーっ、ふーっ、ふーっ」


 その場に崩れ落ちているミュウを放置して、乗り物から下りず、ジッとこちらを見ているファラを、下ろすついでに肩車する。

 頭をぺしぺしと叩かれるが、怒っている叩き方ではなかったのでスルーしておく。


「よし、行くぞ」


 街までの範囲にモンスターが居ないので、雑談しながらゾロゾロと街に向かって歩き始める。

 門からは乗り物が見えていたかもしれないが、適当に誤魔化せば良いだろう。


「そういえば、ここは違う大陸だよな? 言葉とか通じるのか?」

「言葉? 相手は人ですよ?」

「え、そうか。そうだよな」


 元の世界では、国が違えば言語も違う事が多かったので、聞いてしまったが、ミリアの反応からするに、この世界では共通なのか?

 でも、わざわざ“人”というからには違う言葉もあるのだろう。

 今度聞いてみよう。


「もう夕方だし、今から帰って飯の支度するのも大変だ。今日は、あの街で飯を食べて帰るか。それでいいか、マルカ?」

「だっ、だいじょぶでしゅ! 作れましゅ!」

「お前も疲れているだろうから、たまには外食しようぜ」

「はうぅ、でも、家事はウチの仕事でしゅから……」

「気にするな。俺はお前をただの召使ではなく、もう家族同然だと思っているんだ。疲れている時くらい楽にしてくれ」

「あうあう、家族……ありがとうごじゃいましゅ……」


 マルカの頭をポンポンと叩きながら、宥めておく。

 毎日毎日、朝晩と休まず頑張ってくれているからな。たまには、外食も良いだろう。


「そんなわけだ、お前達。街に着いたら、俺はギルドに行くから、その間に美味そうな飯が食える店を探しておいてくれ」

「「はーい」」

「よーし、がんばるよー」

「ボクは食べられたら何でも良いんだけど」

「でも、予算は大丈夫なんですか? 大人数ですが……」


 ミリアは金の心配をしているが、全員が死ぬほど食べたとしても余裕があるくらいには蓄えているつもりだ。


「金の事なら心配はしなくて良いぞ。高くても、美味ければ良い。ミリアとは一度、そういう食事デートをしただろう?」

「あ、あれは! で、デートなんかじゃないです!」

「いや、あれはデートで間違いない。店のお姉さんも彼氏彼女って言っていたしな」

「も、もう! まだあの頃は……」


 ミリアが顔を赤くしてブツブツと言い始めたところで、髪の毛を引っ張られたので、髪が抜ける前にこの話題は止めておく。


 街に到着後、門番には変な目で見られたが、街に入る事ができた。

 そりゃあ女の子ばかりの集団が、外から現れたら驚くよな……。

 そそくさと門から離れ、待ち合わせ場所を決めて散開する。


「ファラは飯屋を探しに行かなくて良かったのか?」

「いい。タカシについてく」

「そうか。一人は寂しいから助かるよ。ありがとうな」

「ん」


 ファラを肩に乗せたまま、ギルドに入り、報酬の貰えそうな依頼を受けて、換金をする。

 今回はモンスターもあまり討伐できていないので、20金ほどにしかならなかったが、晩飯代には十分すぎるだろう。


「あいつらはまだ店を探しているだろうし、どうしようか」

「お菓子」


 晩飯の前にお菓子って……。

 あぁ、俺と一緒に来たのはこれが狙いだったのか? まさかな。


「おい、今から晩飯だぞ? 今、お菓子なんて食べてしまったら、お腹がいっぱいになるだろう?」

「別の日に食べる。この街のお菓子がみたいだけ」

「そうか。なら、少し見に行ってみるか。少しだけだぞ?」

「うん。ありがと。すき」


 甘やかし過ぎかとも思ったが、普段は一切我儘を言わないから、このくらいなら別に良いか。

 不愛想で取って付けたような“すき”だが、これを聞きたかったというのもある。

 ファラは俺に対して“すき”とさえ言っておけば、お菓子でも何でも好きな物を買って貰えると思っているかもしれないが……。


 うむ、正解だ。


 美幼女、美少女から、好きだと言われたら何だってしてやるぞ!

 単純なバカだと言われようが、俺は何だってやるぞ!


「お、あそこから甘い匂いがするな」

「いこ」


 今まで俺の頭を叩くか髪を引っ張る事しかしなかったファラが、足をプラプラさせて心は既に店に向かっている。

 もう、俺に好きだと言った事は忘れてしまっているんだろうな。


「ケーキか。うまそうだな」

「けーき? パン?」


 見た目はパンに見えない事もないが、スポンジケーキみたいな、元の世界でいうマドレーヌのような物だろうな。

 いわゆる焼き菓子だ。


「ふわふわした甘いパンだ」

「甘いパン……ふわふわ……」


 ファラが前に乗り出して、焼き菓子を見ていたので、購入する。


「おばさん、それ十二個ちょうだい。それと、ここら辺でお菓子が売っている店、他にないかな?」

「3銀60銅だよ。そうね、あそこに煙が出てるの見えるかい? あそこにも、売ってるよ。この街では、こことあそこくらいかね」

「そっか、ありがと。はいこれ」

「はい、どうもありがとうね」


 焼き菓子とお金を交換し、教えてもらった店に向かう。

 受け取った焼き菓子をファラに渡すと、十二個の意味を理解したのだろう。包みを解かずに、そのままインベントリに入れていた。


 次の店では、丸い円盤のような物が売っていた。

 店主に聞くと、中は豆を甘く煮て潰した物が入っているらしい。今川焼きみたいなやつのようだ。

 これも十二個買っておく。


 それにしても、この世界のお菓子って焼き菓子ばかりだな。

 衛生的な面もあるのだろうが、こうも同じような物ばかりだと、何の面白みもない。


「ファラ。今度お菓子の研究をしよう」

「する!」

「どの街も、同じような焼き菓子ばかりだからな。もっと違った、オリジナルのお菓子を作ろうぜ」

「つくる!」


 素材などは売っている物をベースに、あとは錬金で何とかして、知識についてはマルカ次第でどうにでもなるだろう。


「色々考えておいてくれな?」

「わかった!」

「それじゃあ、皆と合流しようか」

「うん、タカシほんとすき」

「ありがとうな。俺も大好きだよ」


 本日二度目の“すき”を頂戴したので、今日は安眠できそうだ。


 ファラを肩に乗せた状態で、皆との合流地点まで歩いて行くと、遠目から見ても分かる女の子の集団がある。ウチの連中だ。

 あまり大きな街ではないので、もう探し終えたのだろう。皆は、既に集まっていた。


「どうだ? 美味しそうな店は見つかったか?」

「今、皆で話し合っていたところです。タカシさんは、どんな料理が食べたいですか?」

「任せるよ。お前達が食べたい物を話し合って決めてくれ」

「いいんですか?」

「おう。簡単ではあったが、ダンジョン攻略を頑張ってくれたからな。何でも好きな物を食べて良いぞ」


 皆に任せると、あれが良い、これが良いと会議が始まったので、決まるまで周りの店をウロウロする。

 通りから道具屋、武具屋などを覗いてみたが、あまり面白そうなアイテムは無さそうだった。


 それにしても、これだけ女の子が集まると賑やかだな。

 いつも、あの輪の内側で話をしているから気が付かなかったが、傍から見るとかなり目立つ。

 美少女達の集団は、存在だけでも目立つのに、道端で会議なんかしていたら、人目を集めるのは当然だな。


 会議内容は、ミリアの見つけてきた羊、ランの見つけてきた牛、マリーの見つけてきた海鮮、ジジイの見つけてきた酒場の中から、どれにするかというものだった。

 子どもが居るので、酒場はあり得ないだろう。というか、見た目幼女のくせに、酒場とか調子に乗りやがって。

 案の定、飲めない人も居るからと、ミリアに怒られてやがる。


「ファラはどれが良いと思う?」

「海が近いから魚? 何でもいい」

「そっか」

「ん」


 いつまでも決まらなかったら海鮮……と思っていたら、決まったようだ。


「タカシさん、お待たせしました! 三ヶ所を多数決で決めたら、3、3、4で海鮮料理になりました」

「よし、早速行こう。マリー、案内してくれ」

「お任せくださいです!」


 マリーを先頭にゾロゾロと移動を開始する。

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