表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
12/145

第11話 集団戦闘

 ひたすら薬草を見つけてはインベントリに入れ、見つけた兎を狩っていく。


「何でそんなに薬草の生えている位置が分かるんですか?」

「勘だよ、勘」


 そうやって誤魔化しながら、緑点を目印に森の先へ進んでいると、前方の方に茶色い生物が現れる。これが猪か。


「猪です! 突進してくるので気を付けてください!」


 そう聞いた頃には、もう走ってきていた。

 意外に速いな。あぁ、この方向だとミリアにぶつかるなぁ。


 ……なんて考えている場合じゃなかった! ミリアを守らないと! そう思い、ミリアと猪の前に出る。


ガシィ!


 ひとまず正面から牙を受け止めた。そのままナイフで刺すと、一撃で倒せたようだ。ズシンと血を流しながら猪が倒れる。


「なっ! 正面から受け止めるなんて、突き飛ばされたらどうするつもりだったんですか!」

「だって、あいつミリアを狙ってたじゃん。ミリアに傷なんて付けられたら嫌だもん」


 お、また赤くなった。照れてるな。しかも守られたこともあり何も言えないって顔だ。


「で、でも! も! あぁぁーっ!」


 足を地面にダンダンってやってる。照れを隠すプラス、説教したいけどできない感じだな。うん、分かってきた。


「ミリア」

「も、もう! なんですかっ!」

「照れてるミリアもかわいいよ」


 真っ赤になって口をパクパクさせている。後一押しか。

 ここでナデナデなんかしたら頭がショートするだろうな。


 ミリアの事がだんだん分かってきたけど、今は悪戯できる状況ではないし、辞めておこう。

 そんなミリアを観察しながら、HPを確認する。


HP:340(240+100)


 あれは受け止めただけだから、ダメージがないのか?

 とりあえず確認が終わったので、猪をインベントリに入れようとしたら、前方の方から獣の咆哮が聞こえた。


――ヲォォォオォオォォォォン!


「もしかして……」

「あ、あぁ、に、逃げましょう!」


 俺のジャージの裾を摘まんで、そんな事を言っているミリアの顔からは血の気が引いている。

 もしかして、猪の血の匂いに寄ってきたのか? 倒してすぐインベントリに入れておけば良かった。


 ひとまずミリアを抱え、走り出すことにした。


 マップではこのまま走れば森から出られるはずだ。


「ちょっと! 自分で走れます、走れますから!」

「いや、この方が速いから、少しだけ我慢してね」


 荷物みたいに小脇に抱えてるけど、本当はお姫様抱っこでもしたかったんだよ。でもナイフ持ってたから、ごめんね。


 そうやって全速力で走っていたのだが、いつの間にか目の前に回り込まれていたようで、一匹飛び掛かってきた。


「きゃ、きゃぁああ」

「よっと!」


 左に避け、持っていたナイフで狼の側面を勢いよく斬り裂く。

 しかし、更に正面にまた二匹待機しており、そのまま同時に飛び掛かってきた。


 くるっとステップを踏んで、一匹を背中で受け止め、さっきと同じようにもう一匹の側面を斬り裂く。

 そのまま回転して、背中の一匹も斬り裂く。


 背中で受け止めた際、左肩に噛みつかれたが、ちょっと痛い程度だ。

 大丈夫だろうが、念の為HPを確認する。


HP:320(240+100)


 一発大きいのをもらって20程度か。俺で20だから、防御力が俺の四分の一もないミリアが喰らったら瀕死だな。もしかしたら即死かもしれない。


 これはまずいと判断し、すぐに走り出そうとしたが、前から二匹、後ろに二匹、左に二匹出てきた。

 仕方がないので、方向を変えて右側に走り出す。


 暫く走ると、一本の大きな木がある広場に出た。

 走っている間襲ってこなかったのは、ここに追い込む為だったのか? 流石、集団で狩りを行うだけのことはある。


 ミリアを木の傍に下ろし、狼共の正面に向き直る。


「ど、どうしましょう……あ! 肩! 肩から血が!」

「ああ、これは大丈夫だよ。それよりミリア、怪我はない?」

「私は大丈夫です。何もしていないので……」

「それなら良かった。ちょっと戦うから、そこから動かないでね」


 しまったなぁ。ミリアに武器を持たせておくか、魔法を覚えさせておくべきだったな。

 俺のステータスが高いからなのか、相手の動きは全て目で追えるけど、俺だけで守り通せるか分からない。


 仲間三匹が一撃で倒されたことに警戒しているのか、狼が足を止めた。

 再度数えてみると、七匹に増えているようだ。まずいな……。


 一匹だけ、色が黒くて少し大きな奴が居る。あいつがリーダーか?

 あいつを倒したら、他の奴ら逃げ――まぁ、無理だろうな。


 それよりも、全部で十匹も居たのか。一斉に襲い掛かってこられていたら危なかったな。

 今は背後に木があるから正面だけに集中できる。

 ただ、時間を掛けると連携してくるだろうから、速攻だな。


 そう判断して、狼共に走り寄る。それに反応して、狼が左に二匹、正面に三匹、右に二匹に分かれる。

 なるほど。正面に行ったら左右から、右に行ったら左から、左に行ったら右から襲うって感じか。


 左右どちらかを狩ろうとしたら、反対側の狼と距離が空いてしまう。そしたらミリアが狙われる危険性がある。それはまずい。


 仕方ない。肉を切らせて骨を断つ、だ!

 まとめて相手してやる!


 そう思い、一気に詰め寄る。すると、やはり左右の四匹が走ってきた。

 バックステップで少しフェイントを入れて、四匹飛び掛かってきたところで、左に移動し、一番近い一匹を狩る。

 そのまま、右から飛んできた一匹を狩ったところで、残りの二匹には噛み付けと言わんばかりに、わざと左手と左足を出す。


――ガアッ!


 よし、うまい具合に噛みついてきてくれた!


 そのまま噛みついている2匹の横腹にそれぞれナイフを突き刺す。


(HPは大丈夫か?)


HP:216(240+100)


 おいおい、さっきよりダメージ大きいじゃないか。

 攻撃される部位によってダメージが違うのか? それとも疲労度が関係してるとか?

 まぁ、良い。残り三匹だ。


 狼を見ると、じりじりと左右に一匹ずつ移動している。


 少し距離があるな、これ以上離れるとミリアに矛先が向かう可能性がある。

 そう思い、ジャージを破れているところから引きちぎり、左手に巻き付けながら、ミリアに走っても間に合う距離まで移動しようと、数歩下がる。


 俺が下がった事に勝機を見たのか、そこで襲い掛かってきた。今度は三匹同時だ。

 しかし動きは見えているので、素早く正面に走り出し、左手の狼の口の中にジャージを巻き付けた左手をぶち込み、正面の狼を斬り付ける。

 そして左手に噛みついている狼を刺し、最後に右足に噛み付いた狼にトドメを刺した。


 ふう……何とかなったな。HPは大丈夫か?


HP:104(240+50)


 何とか大丈夫なようだ。

 安心して座り込む。


「わあぁあぁぁん!」


 ミリアが泣き叫びながら飛び込んできた。


「よかっだぁぁ! わあぁぁん! わだ、し、私!」


 飛び込んできたミリアを左手で抱き寄せ、右手でナデナデしてあげる。


「大丈夫、大丈夫だから。ね?」

「でもぉ! わあぁん! こ、こわ、がったよぉぉ!」


 ひとしきり泣いた後、すんすん、と鼻を啜り始めたので、ミリアをくるんっと回転させ俺の膝の上に乗せ、頭をポンポンしてやりながら落ち着かせてあげる。


「怖かった、です。戦っているのを見ることしかできなくて。タカシさんが食べられてしまったらどうしようって……」

「ちゃんと戦えてたでしょ? 大丈夫だよ。俺もミリアも生きてるから」


 ミリアはまだ震えている。よほど怖かったのだろう。また泣き出しそうだ。


「そうじゃないです! そういうのじゃないんです! タカシさんが傷付いていく姿を見ることしか……何もできなかった」

「惚れた?」


 ビクっとした後、俯いてしまった。


「こういう時に、そういうこと言うのは反則です。惚れてはないんですけど、恰好は……良かったです」


 惚れてないかー。でもこれはかなりミリアポイントを稼いだイベントではあったな。好感触だ。


「私にもっと力があればって思いました」

「まだ駆け出しなんだから、今は仕方ないよ。これからがんばろうな?」


 そう、今日はパーティーを組んで初日。

 俺達の冒険はまだ始まったばかりだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ