第21話 アルメソシエ
マリーを回収した後、またヴァタラに戻る。
「タカシ様、ここが魔族の街なんですか?」
「そうみたいだな。とりあえず、奴隷商に向かうぞ」
「はい!」
マリーを連れ、奴隷商の館に入る。
人間族の奴隷商とは違って、絨毯や絵画など原色に近い色で埋め尽くされていて、館の中が派手だな。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」
「奴隷を見せてもらいたいんですが、良いですか?」
「えぇ、どうぞ。案内いたします。こちらへ」
何か堂々とした店主だな。
館の二回に通されて、小部屋が沢山並ぶ所に連れて行かれる。
「では、どうぞ。ごゆっくりご覧ください」
「え、あぁ、はい、どうも?」
階段を上がってすぐ、店主にそう告げられ、本人は近くにあったカウンターの椅子に座ってしまった。
自分でそれぞれの小部屋に入り、勝手に見ろってことだろうか。適当だな……。
仕方がないので、それぞれの小部屋にノックし、中に入ってからそれぞれの奴隷にパーティー申請を申し込む。
中には申請を拒む子も居たが、これも仕方がないのだろうか。
全ての小部屋を回って、パーティーで確認できた子は七人。
M奴隷Lv.8 村人Lv.4 戦士Lv.8 闘士Lv.1
M奴隷Lv.6 村人Lv.6 剣士Lv.12
M奴隷Lv.11 村人Lv.9
M奴隷Lv.2 村人Lv.5 魔術士Lv.6 射士Lv.1
M奴隷Lv.4 村人Lv.12 魔術士Lv.1
M奴隷Lv.1 村人Lv.4 商人Lv.4 魔術士Lv.1
M奴隷Lv.3 村人Lv.7 魔術士Lv.6
商人を持っている子だけ人間族で、他は全て魔族だ。
それにしても、全員奴隷のレベルが高いな。売れ残りか?
基本的には、盗賊だった子は奴隷のレベルが高い傾向にあるが、民族性なのだろうか。この館に居る子は皆奴隷レベルが高い。
商人の子はマルカみたいな、はわわタイプだろうか。パーティー申請をする時、かなり慌てていたな。
こういう子にヒーラーをやらせたいんだよな。
既にザクゼルとオスルムに居た子で決めていたが、こちらの子にするかな。
「マリー、どうだ?」
「えっと、はい、皆さん気が強そうですね」
「そうだな。店主といい、何なんだろうな?」
「タカシ様! 聞こえますよ!」
「別に良いさ。それよりあの人間の子、どうだった?」
「女子力が高そうです!」
いつも種付け種付けと言っているマリーの口から、まさか女子力というネタ単語が出るとは思わなかった。
「じゃあ、あの子にするか」
「えぇっ!? あぅ、ま、負けません!」
「何をだよ……」
「ええと、その、タカシ様の嫁候補です!」
「意味わかんねーよ。全員嫁で良いじゃねーか」
「え、あ、はい、そう、ですねっ!」
会話のキャッチボールが全くできていないが、マリーが警戒するほどの、女子力パワーを秘めている可能性があるらしい。
店主に人間族の子を買う旨伝える。
「ありがとうございます。あの子は40金になります」
「たけぇ」
思わず口に出てしまった。
「そうでしょうか? あの子は人間族の魔術士一族の生まれです。魔術が使えるようになる可能性もありますので、その価格です」
「でも、商人をやっていたんでしょう?」
「はい。商人をやっている魔術士一族の生まれです」
「その設定には無理があるでしょう」
「いえ、そういうことです」
どういうことだよ、とツッコミたくなったが、我慢。
それにしても40か…高いな。
「分かりました。では38金にしましょう」
「30で」
「はぁ……37金でどうです?」
「32」
「……36」
「33」
「36」
「34」
「無理です。36金が限界です」
仕方がない。一度決めたんだ。36金を払う。
「お買い上げありがとうございます。では、少々お待ちください」
小部屋から女の子を連れて来てもらい、奴隷契約を行う。
「これで完了です。今日からお前のご主人様は、この方だぞ?」
「よろしくな。俺はタカシ・ワタナベだ」
「ど、ども、ご主人様。ソシエ・フェルナルです」
「こんにちは。私はマリーです」
ソシエを連れて奴隷商に別れを告げた後、館を出る。
次はザクゼルだな。
「その恰好じゃ色々と問題だから、これを上から羽織ってくれ」
「へぁ、はい」
流石に、薄いボロボロのワンピースだけというのはみすぼらしいので、皆が着なくなっていたマジックローブを肩に掛けてあげる。
そのまま路地裏に移動し、ソシエの着替えが終わったところで、マリーとソシエの肩に触れ、ザクゼルに飛ぶ。
「わわっ、な、なに!?」
「一つ用事があるんだ。すまないが、付き合ってくれ」
「は、はい」
どうせもう一度説明する事になるので、驚いているソシエには、ついてくるよう指示だけ行う。
「タカシ様、やっぱりあの小さな子にされるのですか?」
「おう」
マリーが“やっぱり幼女……”とぼやいているが、気にしない。
マリーを無視して、館に入っていく。
「おぉ、おぉ、タカシ様ではないですか! 戻ってきていただけたのですか!」
「はい。他の街では、あまり良い子が見つからなかったので」
「左様ですか。それは残念ではございましたが、その中でも当店をお選びいただき、大変嬉しく思います!」
「それで、早速で悪いんですが、今朝見せてもらった奴隷の中で、一番小さかった子、まだ居ますか?」
「はい! すぐに連れて参ります!」
ソファーを勧められたので、アステルが戻るまで座って待つ。
今回は使用人を使わずに自分で呼びに行ったな。あの使用人は、休憩中なのだろうか。姿が見えない。
「お待たせいたしました!」
「わぁ、お兄さんがアルメを買ってくれるのー? 嬉しい!」
何だ……このキャピキャピした子は?
姿形は今朝のどっしり構えていた子で間違いないのだが、両手を頬に当て、首を傾げながら可愛さアピールなんかしやがって……。
随分と違和感があるな。
無理してキャラを作っている感じで、正直気持ち悪い。
「アステルさん。この子、今朝見た子と別人じゃないですよね?」
「え、はい。今朝の子ですが」
「アルメはアルメだよー? きゃは☆」
「気持ち悪いな」
「ちっ……」
こいつ、アステルの後ろに隠れて睨みつけてきやがった。
しかも今舌打ちしたよな?
「こいつ猫かぶってますよね。今朝見た時は欲しいと思ったけど、気持ち悪いので、やっぱ辞めにします」
「えぇっ、そんなっ!?」
「やだやだー。アルメ、お兄さんと一緒にいきたーい☆」
「うざい。素で喋ってくれ。だったら考えないこともない」
「うぅぅ、イジめちゃやだぁ」
「タカシ様。この子が何か失礼な事でもしましたでしょうか」
マリーもソシエも、幼女の豹変ぶりにポカーンとしている。
アステルは気付いていないのだろうか。
慌てているアステルの後ろに隠れ、舌を出して、挑発するような態度になっている。
何か、からかわれているようでイラついてきたな。
頭にゲンコツでも落としてやりたいが、商品だしな。
「あの、タカシ様……?」
「え、あぁ、すみません。その子に見惚れていました」
「ははは、そうだったのですか」
「えへへー、まだアルメに惚れちゃだ・め・だ・よ? きゃは☆」
懲らしめてやりたいな。
「いくらですか?」
「おお、お買い上げいただけるのですか!」
「値段次第で」
「左様ですか。この子は、何故か親が破格で売りに出してきましたので、お安くできます。タカシ様にはお世話になっておりますし、22金でいかがでしょう?」
「20でどうです?」
「分かりました。では20金でお願いいたします」
アステルに20金を支払い、奴隷契約をしてもらう。
「これでもう、俺のモノですかね」
「えぇ、マリーに引き続き、お買い上げありがとうございます」
「アルメ・ファスティでーす☆ よろしくね、お兄さん?」
「昇天」
「ん?」
「へ?」
アルメを指差し、昇天を使う。
幼女にも効くのか試してみたかったので、丁度良い。
「あの、タカシ様? しょうてんとは何でしょうか?」
「あぁ、“アルメ”でしたね。名前を間違えました」
「きゅぅっ」
アルメがビクンッとなり、両腕で自分を抱き、床に膝をつく。
「どうした、アルメ!?」
「うっ」
アステルの追い打ちにより、そのまま前に倒れる。
ガクガクなってやがる。ざまあみろ。
これだけの為に20金では莫迦莫迦しいが、これからしっかりと調教していこう。俺をイラつかせた罰だ。
「タカシ様! 決して、病人を売り付けたわけでは! 決して!」
「えぇ、分かってますよ。大丈夫です」
そうか。買った瞬間に商品が動かなくなったら、心配するよな。アステルには悪い事をしたな。
「アステルさん、すみません」
「どうか、どうかご容赦を! おい、アルメ! 起きなさい!」
「かはっ……」
「いえ、そうじゃなくてですね。それは、俺がやったことなので、病気とかじゃないですよ。だから気にしないでください」
「えっ!?」
アステルが可哀想になってきたので、ネタをバラす。
「もう、調教は始まっているんです」
「ちょうきょ、う……ですか。では、これはタカシ様がやったことなのでしょうか?」
「えぇ、そうです。呪いを掛けました」
「ひぃっ、の、呪い、ですか!?」
「いきなりですみませんね。生意気な態度だったので、つい」
「はぁ……いえ、良かった。本当に良かった。驚きましたよ……」
「そんなわけで、これは回収していきますね。このままだと、この部屋を汚してしまうので」
アルメをひょいっと肩に担ぎ、アステルにお詫びをしておく。
「でも、その、この子は本当に大丈夫なのでしょうか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。これからしっかり調教しますから」
アルメに失禁されても困るので、早々に館の廊下を歩く。
すると、後ろでアステルとマリーが小さな声で会話しているのが聞こえてきた。
「マリー、タカシ様は奴隷に対して、いつもあんななのか?」
「とんでもないです。私以外にも、沢山の奴隷が居ますが、とても優しく、欲しい物は何でも買ってくださる、優しい勇者様です」
「だが、あれは何だったのだ……」
「さぁ……私にも分かりませんが、あの子が私のタカシ様に喧嘩を売ったのは間違いありません」
「なんだと? それは本当か!?」
「えぇ、あなた様の後ろから私のタカシ様に向かい、舌を出したり調子に乗っておりました」
「なんてことだ……マリー、すまないが、タカシ様に謝っておいてくれないだろうか?」
「心配しなくても、タカシ様はお優しいので大丈夫ですよ」
神口のお陰で、ほとんど聞こえているんですけど。
マリーめ、どさくさに紛れて“勇者様”や“私のタカシ様”など好き勝手言いやがって。
「それじゃ、また奴隷を買う時は顔を出しますね」
「はい。この度は、誠にご迷惑をお掛けいたしました」
「いえいえ、では」
「マリーも元気でな」
「はい。お世話になりました」
別れを告げ、路地裏に移動する。
「アルメアルメアルメ」
――ガクガクガクガクッ
痙攣を始めたな。
漏らさないし、尿は溜まっていないのだろう。良かった。
それよりも、今後生意気な言動や行動をさせないよう、こいつに対する制限という名の呪いを考えておかないとな。
そんな事を考えつつ、路地裏に到着。
ヴァタラに戻るためソシエの手を取ろうとした時、ビクっと一瞬手を引かれた。地味にショックだ。
まぁ、何の説明も無い状態であんな現場を見せられたら、普通に引くよな。後で皆にフォローしてもらおう……。
アルメを肩に担いだまま、マリーとソシエに触れ、転移する。
奴隷商横の路地から出て、ミリアから聞いていた建物へ向かう。
「タカシ、マリー、おかえり」
「おう、ただいま」
「戻りましたです!」
何故か建物の外にファラが居た。待っていてくれたのだろうか。
「皆は?」
「もうでてくる」
どうやら待っていたのではなく、ちょうど会計を済ませたところで、ゾロゾロと皆が出てきた。
「あ、タカシさん、マリー、おかえりなさい」
「おう、戻った」
「ただいまです!」
「その子は……?」
「後で話す。とりあえず、屋敷に帰ろうか」
「はい」
皆で手を繋ぎ、屋敷に戻る。
往来での転移だったが、面倒だったので、そのまま転移する。
「ふぅ。やっぱり自宅が落ち着くな」
「そうですね」
「元はランの家なんだけど!」
「うるさい。さて、こいつらの紹介をしないとな」
皆、俺の後ろに居るソシエよりも、肩に担いでいるアルメの方が気になるようで、視線はアルメが独り占めだ。
「ソシエ、この子達が俺の家族だ。自己紹介してくれ」
「は、はい……ええと、その、ソシエ・フェルナルです。今日からご主人様の奴隷になりました」
「ソシエ、この子が俺の第一夫人、ミリアだ」
「嫁じゃないです! えと、ミリア・ウェールです。よろしくね」
「よろしくお願いします。奥様?」
「もう! 違いますからね?」
ミリアには、外堀から埋めていく作戦だ。
「この子は第二夫人のファラだ」
「タカシはファラの」
「は、はい。よろしくお願いします。奥様」
ファラは相変わらずだが、慣れてもらおう。
「こいつは第三夫人のランだ」
「よろしくー」
「はい、よろしくお願いします」
面倒なので、ランが姫であることは隠しておこう。
「マリーは、いいか。こいつがルリアだ」
「ひどい!?」
「ボクはルリア・S・ツェルトン。よろしくな」
「は、はい」
肉奴隷ということも伏せておこう。
「こっちがマルカ、そっちがミュウ」
「この家の家事全般を任されています、マルカ・サプタルでしゅ」
「ふんっ、ミュウ・ウルダンです」
「よろしくお願いします」
惜しい。噛まずに言えていたのに、最後の最後で噛んだ……。
「最後に、パルとパロだ」
「アタイはパル。間違えないでね!」
「アタシはパロだよー」
「はい、よろしくです」
俺でもたまに間違えそうになるのに、いきなり新人が覚えるのは無理があるだろう。
「あの、ソシエさんは分かりました。それで、その肩に乗せている子は誰なんですか?」
「タカシはやるときはやる」
「お兄ちゃん、まさか……攫ってきたの?」
「さっすが、ボス! 人攫いもお手の物だねっ!」
「ボスは盗賊の素質あるよ、パロが言うんだから間違いない!」
「タカシ殿、正直に話すんだ。本当なのか?」
「あうあう、タカシしゃま……」
「ふんっ、しょせんエロ男爵です」
ファラの一言によって攫ってきたことになってしまった。
「お前ら、好き勝手言いやがって。お仕置きされたいのは誰だ?」
「皆さん違いますよ。ちゃんと奴隷として買ってきたんです」
「そうだぞ。なぁ、ソシエ?」
「はっ!? えぇ、まぁ……」
何でそこで怯えるんだよ。
「こいつの名前はアルメ、はっ!?」
――ビクンッ!
しまった。つい名前を言ってしまった。
「アルメ?」×8
慌てて呪いを解除したが時既に遅く、恐る恐るアルメを見ると泡を吹きながら白目を剥いて痙攣していた。
折角の美幼女顔が台無しだ。これはもう、ダメかもしれないな。
「あ、それってもしかして! ランに掛けた呪いじゃない!?」
「ランのくせに、良く分かったな。そうだ。その呪いだ」
「それより、大丈夫なの? 人がしてはいけないを顔してるけど」
「分からん。手遅れかもな。まぁ、罰だから自業自得だ」
「え、何かされたの? マリー知ってる?」
「この子はタカシ様に喧嘩を売ったのです」
「ひえー、よくやるねー」
この呪いのせいで、脳に異常をもたらしたり、中毒になったり、頭がおかしくなったりしなければ良いが。
まぁ、その時は本物の肉奴隷にでもするから良いか。
「そういうわけだ。暫くは目を覚まさないと思うから飯にしよう。マルカお願いできるか?」
「ひゃい!」
「俺はこいつを寝かせてくる。ソシエはゆっくりしていてくれ」
「は、はい……」
アルメを担いだまま、寝室に移動。
服を全て脱がせた後、魔法で濡らした布を使い丁寧に体を拭く。
サイズの合う下着はストックが無かったので、下着は穿かせずに寝苦しくない服を着せて布団に入れておく。
リビングに戻り、飯が出来るまでソシエを交え、改めて皆と俺の細かい関係などを説明しておく。
ついでに、俺は優しいご主人様だぞアピールをしておく。
俺の言う事はあまり信じていないようだったが、ミリアやファラの言うことは真剣に聞いていた。
こういう時はやはり、女として嫁の方を警戒するのだろうか。
しばらくして、飯が出来たので全員で食べる。
当然風呂にも一緒に入る。
恥ずかしがっていたが、奴隷ということもあり、そういうことは知識とあるようで、渋々といった感じで風呂に付き合ってくれる。
華奢な体付きだったが、形の良い胸をしていた。
大きさはランより、一回り小さい程度だろうか。細い割にある。着痩せするタイプなのだろう。
風呂から上がった後、寝室に移動することでアルメが居たことを思い出すが、まだ意識は戻らないので、横に寝かせることにした。
一人意識不明だが、これでメンバーは揃ったな。
明日、今後の日程などを決めよう。
今は、抱いているアルメと、それを見た事でヤキモチを妬いて、後ろから抱き付いているファラの温もりを感じて眠ることにする。




