第20話 美無し
昨日と同じく、朝食を食べながらミリアに相談する。
「なぁ、ミリア。次のダンジョンの事も考えて、新しいメンバーを探そうかと思うんだが、どうだろうか?」
「また女の子を増やすんですか!?」
「ダメ?」
「えっ、いや、別にダメ、ではないですけど、ね」
「じゃあ、何で驚いたのさ」
ミリアが溜息を吐いている。俺の考えはおかしいのか……?
「だって、既に9人ですよ?」
「嫁や娘は何人居たっていいじゃん?」
「貴族だってこんなに多い嫁を抱えていたりしませんよ!?」
「え、そうなの?」
「そうですよ! せいぜい多くても4人とかですよ!」
「まぁ、良いじゃないか。皆で幸せになろうぜ、第一夫人?」
「はぁ……」
呆れられた。
いつもなら、嫁じゃないです! とか言うのに。
もう、このやり取り自体に慣れてしまったのだろうか。また別のからかい方を見つけないといけないな。
「そういえば、昨日の魔族の村だが、近くに街はないのか?」
「もう……本当ころころ話題が変わりますね……。ありますよ」
「ミリアと話すのは楽しいんだから、仕方がないだろう? その街までは歩いてどのくらいなんだ?」
「シュスルスの森から昨日の村までの距離と同じくらいです」
「そうか。じゃあ、俺は奴隷商のところに行くから、今日もお願いして良いか?」
「そんなことだろうと思いましたよ……」
流石ミリア。分かってらっしゃる。
「そんなわけだ、皆。聞いていたか? 今日も頼むな!」
「お兄ちゃん、今日は誰も連れていかないの?」
「ただ奴隷商のところに行くだけだし、何も面白くないぞ?」
「タカシと一緒がいい」
「あ、あの! 私も行きたいです!」
ファラとマリーが食いついてきた。
ランめ、余計な事を言いやがって……。
「だから、付いて来ても何もないぞ?」
「別に良い」
「はい! タカシ様のお傍に居るだけでも!」
「ふむ……でも、二人とも来てしまうとレイドパーティーが崩れてしまうから、どちらかだけなら良いぞ」
「む」
「うぅ……」
ファラとマリーが見つめ合っている。険悪なムードではないが、お互い譲る気は無いようだな。
場も静まり返ってしまったし、仕方がない。
「分かったよ。じゃあ、コインを投げて、いや、ここで回すから、それで決めろ」
「わかった」
「はい! ありがとうございます!」
コイントスをしようかと思ったが、食事中だったので、コインをテーブルの上で回すことにする。
「よし、ファラが先に行きたいって言ったから、ファラから決めて良いぞ。表と裏、どっちがだと思う? ちなみに、こっちが表な」
「おもて」
「では、私が裏ですね」
表裏が決まったので、コインをテーブルの上に立て、指でピンと跳ねて勢い良く回す。
何度か皿にカンッと当たるが、それでもクルクルと周り続けて、やがて止まる。
「うら……」
「裏です!」
「裏だな。じゃあ今日はマリーな」
「はい! 頑張りますです!」
そんなに気合いを入れて、何を頑張るのか分からないが、誰かが一緒に来て困る事はないので、良しとしよう。
予定も決まったところで食事も終わったので、マルカとミュウが片付けをしている間に皆に準備をさせる。
「準備は出来たか? 出来たら集まれ」
「大丈夫です。いつでも行けます」
「それじゃあ行くぞ」
皆集まってきたので、昨日の魔族の村まで神脚で飛ぶ。
「よし、それじゃあ、後は頼むな?」
「はい。任せてください」
「ファラ、いつまでも落ち込んでないで、魔法の練習しろよ?」
「ん」
後の事はミリアに任せて、とりあえず一番近いザクゼルに飛ぶ。
「ここは……ザクゼルですね!」
「おう、良く覚えていたな。そうだ。今日は、各街にある奴隷商を全て回ってみようかと思ってな。とりあえず近い所というわけだ」
「はい!」
ザクゼルは覚えていて当然だよな。ここは、マリーを買った場所でもあるのだから。
街に入り、そのまま真っ直ぐ奴隷商を目指す。
奴隷商の館に入ると、すぐに主人が現れた。
「やあ、アステルさん。俺の事、覚えていますか?」
「これはこれは。えぇ、忘れはしませんとも。タカシ様ですね。先日は、ご助言いただき誠にありがとうございました」
「いえいえ、まだ買うかどうかは決めていませんが、今日も見せてもらって良いですか?」
「もちろんです! ささ、すぐにご紹介させていただきますので、こちらの部屋でお待ちください。おい」
使用人らしき女の子にフィンガースナップで指示を出し、何かの準備に向かわせた。
使用人が指を鳴らすだけで動くとは……良く教育されているな。
「それで、本日はどのようなタイプの奴隷をお探しでしょうか」
「今回は特に無いですね。明るい女の子であれば」
「明るい、ですか。そうですねぇ、奴隷はどうしても暗くなりがちですから、その条件が一番難しかったりします」
「ですよね。まぁ、見て決めますよ。また何か俺の方で気が付いたことがあれば、教えますんで」
「おぉ、ありがとうございます!」
ここで買うかどうか分からないしな。まずは見せてもらおう。
それにしても、やはり専門家だからだろうか。俺には席を勧めてマリーには勧めなかったな。
そのせいもあり、マリーが立ったままなので、マリーを横に隣に座るよう指示しておく。
「ところで、そちらの奴隷は……先日お買い上げいただいたマリーでしょうか?」
「えぇ、そうですよ」
「なんとっ!? やはりそうでしたか! いやはや、主人が良いと変わるものですね」
あの時は前髪を下ろして無表情だったし、今はニコニコしているので、印象も全然違うからな。
「タカシ様以上の奴隷環境は無いと思っています!」
「それは良かったですねぇ、マリー。他の子にも是非、同じ環境を味あわせてあげたいところです」
「タカシ様は寛大で、お優しいので、後輩が出来るのは歓迎です」
マリーは俺が褒められた事で気を良くしたのか、アステルと二人現在の生活環境などの話で盛り上がっている。
こいつにはあまり喋らせない方が良さそうだな……。
マリーが俺のすごい箇所を喋りだしたところで、先程の使用人が戻ってきた。危ないところだった。
「お、来たようです。どうぞ、ご覧になってください」
次々に奴隷が部屋の中に入ってきて一列に並ぶ。
全部で十人ほどか。確か前回も十人だったな。
「またパーティーを組んでみて良いですか?」
「えぇ、もちろんです! またよろしくお願いいたします!」
順にパーティーに入れて、ジョブやレベルを確認していく。
M奴隷Lv.1 村人Lv.4 剣士Lv.1 戦士Lv.1
M奴隷Lv.2 村人Lv.6 盗賊Lv.11
M奴隷Lv.1 村人Lv.7 戦士Lv.1 射士Lv.1
M奴隷Lv.14 S剣士Lv.15 村人Lv.2 戦士Lv.8
M奴隷Lv.1 村人Lv.22
M奴隷Lv.1 村人Lv.5 魔術士Lv.1
M奴隷Lv.1 村人Lv.2 商人Lv.7 神官Lv.1
M奴隷Lv.3 村人Lv.4 盗賊Lv.7
M奴隷Lv. 1 村人Lv. 2 神官Lv. 1
M奴隷Lv.1 村人Lv.4 討伐者Lv.1 戦士Lv.6
何か二人ほど場違いな子が居るな。
その二人の内、村人レベルの高い子は美人さんで、サブに剣士の方は、良い体をしている。筋肉的な意味で。
あと気になるのは、圧倒的にレベルの低い神官持ち幼女だ。
体格的に5、6歳くらいだろうか、可愛い。
いや、可愛いというより美人だな。
歳の割には貫禄がある態度というか……腕を組んで、足を開き、すわった目でこちらを見ている。
ミュウとはまた違った偉そうな子だな。
とりあえず、美幼女を候補に入れておこう。
ひとまずは、魔術士の子と討滅者の子のサブをセットしておく。
「いかがでしょうか?」
「そうですね。あの髪の短い子は魔術士の才能があります。そして、あの褐色の子は討伐者の才能がありますね」
「おぉ、左様ですか。ありがとうございます! それで、気になる子などは居りましたでしょうか?」
「うーん、今から、いくつかの街を巡って決めようと思っているんですよ。とりあえず今回は保留で、他の街よりアステルさんの処が良ければ戻ってきます」
「そうですか……残念です」
「ウチのメンバーは転移が使えるので、今から見て回ってきます。今日中に、アステルさんの処に戻って来なかったら、残念ですが、今回はご縁が無かったということで」
「転移!? タカシ様は只者ではないと思っておりましたが、私の想像より、更に上をいっていたようです。失礼いたしました……。分かりました。お待ちしております!」
まずは一軒目だったので、アステルには悪いが保留だ。
別れを告げて、館を出る。
「タカシ様! 次はどちらに行かれるのです?」
「次はオスルムだな」
「はい! 何処までもお供します!」
オスルムの奴隷商は初めてだったが、歓迎された。
奴隷ではレア扱いのエルフを連れている事が大きいのだろうか。偶然とはいえ、マリーを連れてきて良かったかもしれない。
オスルムで紹介された奴隷は八人だ。
M奴隷Lv.2 村人Lv.3 魔術士Lv.1
M奴隷Lv.3 S魔術士Lv.1 村人Lv.6
M奴隷Lv.1 村人Lv.3 魔術士Lv.5
M奴隷Lv.2 村人Lv.7 射士Lv.1 魔術士Lv.1
M奴隷Lv.3 村人Lv.4 神官Lv.4 僧侶Lv.1 魔術士Lv.1
M奴隷Lv.3 村人Lv.4
M奴隷Lv.2 村人Lv.6
M奴隷Lv.1 村人Lv.4 魔術士Lv.1 商人Lv.1
魔術士は多かったが、僧侶持ちの美少女以外には、ある程度歳をとっている、疲れた顔をした女性が多かった。
僧侶の子を第一候補として、エストルに向かう。
エストルでは、ファラやパルパロを購入したので当たりが多い。今回も良い子が居ると助かるな。
マリーとエストルに飛び、館に入る。
館の主――エルモートがすぐに現れて、奴隷を紹介してくれる。
M奴隷Lv.1 村人Lv.4 剣士Lv.1 戦士Lv.1
M奴隷Lv.1 村人Lv.6
M奴隷Lv.4 村人Lv.6 盗賊Lv.15
M奴隷Lv.2 村人Lv.3 射士Lv.7 剣士Lv.1
M奴隷Lv.6 村人Lv.4 盗賊Lv.9
M奴隷Lv.1 村人Lv.3 魔術士Lv.8
M奴隷Lv.1 村人Lv.8
M奴隷Lv.3 村人Lv.2 盗賊Lv.11
この中では、村人のみでレベルの高い方の子は美少女だったが、ただの村人や盗賊に用はない。
気になるとすれば、射士持ちのクールそうな美人さんくらいだ。
エルモートには、また来ると別れを告げ、次はビエグに向かう。
ビエグでも八人の奴隷を紹介された。
M奴隷Lv.2 村人Lv.6 戦士Lv.4
M奴隷Lv.1 村人Lv.7
M奴隷Lv.1 S戦士Lv.2 村人Lv.3 剣士Lv.4
M奴隷Lv.1 村人Lv.7 獣剣士Lv.3
M奴隷Lv.2 村人Lv.8 射士Lv.1
M奴隷Lv.1 村人Lv.2
M奴隷Lv.1 村人Lv.5 魔術士Lv.1
M奴隷Lv.2 村人Lv.3 神官Lv.1
やっぱり、それぞれの奴隷商で特徴が出るんだな。
オスルムは魔術士が多かったし、ビエグでは近接職が多い。
ここにも幼女が居た。ザクゼルとは違い、ジョブを持っていないただの幼女だ。可哀想に。
まぁ、アレなんで買わないが。
この中で気になるとすれば、射士を持った子くらいだ。
全て見て回ったが、“こいつだ!”と思う子は居なかった。
少し考えをまとめたかったので、外に出て、マリーと少し会話をしながら定食屋風の店に入る。
「マリー。少し考えをまとめたいから、甘い物と飲み物を、二人分頼んでおいてくれ」
「はい! 分かりましたです!」
注文はマリーに任せ、考えをまとめる。
ザクゼルの神官美幼女、オスルムの僧侶美少女、エストルの射士美女、ビエグの射士女。
この中で二人選ぶとすれば、ザクゼルとオスルムだな。
ただ、二人共回復担当――ヒーラーというのは、どうだろうか。流石に、三人もヒーラーは要らない気がする。
ただ、マルカは既に俺のモノだと勝手に決めつけているが、いつマルカが居なくなるか分からないしな。
一応、ミリアやファラも使えることには使えるが、あの子たちは主戦力だし、補欠として育てておくのも良いかもしれないな。
「そういえば、マリー。お前は気になった子、居たか?」
「私はタカシ様がお選びになる子であれば、誰とでも仲良くできる自信がありますです!」
「いや、そういうことを聞いているわけじゃないんだが……」
「うぅ……すみませんです。あっ! ザクゼルに居た、あの小さい子は何故か気になりました。他の方と目の輝きが違いました!」
こいつも俺と同じ事を考えていたのか。
確かに、他の子と雰囲気が違った。幼女らしからぬというか……達観している目をしていた、というか。
気になり始めたらダメだな。もう、その子の事しか考えられなくなってきたぞ。
もう買うしかないな!
とりあえずは、おやつタイムも過ぎていることだし、買いに行く前にミリアへ連絡をしておこう。
――ミリア、聞こえるか?
――――あ、はい。聞こえますよ。
――そっちはどんな感じだ?
――――思ったより早く到着して、今お茶しているところです。
――そうか。じゃあ、俺を呼んでくれるか?
――――はい! ちょっと待ってくださいね!
あちらも何処かの店に入って休憩していたのだろう。
「よし、ミリア達も街に到着したみたいだし、一度店を出るぞ」
「はい!」
こちらも会計を済ませて、店を出た後、路地裏に入る。
移動中に、腕輪の方に魔力を感じたので魔力を送り、マリーには路地裏で待つように指示し、ミリアの所まで転移させてもらう。
――シュンッ!
「わぁっ!?」
「うぉ、俺の転移と違うから、毎回びっくりするな」
「ですね。集中している最中に突然現れるので驚きます」
ミリアに案内され、街の中を少し見てマップなども確認する。
街とはいっても、エストルより小さな街だ。
「ここは何ていう名前の街なんだ? あ、それと、ここに奴隷商はあるか?」
「ここは、ヴァタラって街です。奴隷商はあれですね」
ミリアが指差した先に、少し大きな建物がある。それが奴隷商の館なのだろう。
「ついでに行ってみるかな。ところで、皆は?」
「あぁ、まだおやつを食べているみたいです」
「そうか。マリーを向こうに残したままだから、回収して奴隷商に行ってくるよ。ミリアは皆のところに戻って待っていてくれ」
「分かりました。私達は、そこの建物の中にいますので」
「了解した。それじゃあまたな後でな」
「はい」
ミリアと別れ、マリーを回収するためビエグに戻る。




