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プロローグ:フェンリルスレイヤー

 何度も書き直して申し訳ございませんが、よろしくお願いします。


 フェンリルがいる!?


 俺の名前は神威(かむい) 狼我(ろうが)17歳、都内の高校に通う高校二年生だ。

 何言っているかわからないかも知れないが、今俺の目の前には体長三メートル以上ある巨大な狼がいる。



 確か俺の記憶では、幼馴染と喧嘩をしてしまい、学校を早退したはずだった。専業主婦の母親がいるため、ちょうどいい時間帯になるまでゲームセンターなどをうろつき、吉●家の牛丼特盛つゆだくを買って帰った。

 自宅の玄関の扉を開けて、そのまま靴を脱ごうとして顔を地面から正面へと上げたら巨大な狼が目の前で寝ていた。一体どういうことだ。これは?



 現状を理解できず数秒の間ぼーっとして、ふと気づき慌てて振り返るとすでに玄関の扉が閉まるところだった。

 手を伸ばして扉が閉まるのを防ごうとするが、あと一歩の所で届かない。扉が閉まると最初から存在していないみたいに消えてなくなってしまった。


 恐る恐る振り返って見ると巨狼はまだ眠っているようだ。そのため安堵からため息をついてしまった。気づかれたかと肝を冷やしたけど大丈夫らしい。


 両手で口をふさぎ、気づかれないようにゆっくり歩き出す。一歩づつ動いているため、最初の位置からそれほど進んではいない。



 巨狼からは眠っていても分かるぐらい強大で重厚な威圧感と野生の獣が持つ独特の気配、そして臭いが鼻にこびり付く。手は震え、体中からは冷や汗が噴き出し、心臓がかつてないほどの鼓動を繰り返す。






「矮小なる者よ」





 気づかれた!! 声を掛けられた瞬間、俺の心臓は大きく脈動する。パニックを起こしてしまい、息を吸うことが出来なくなってしまった。


「我が縄張りに足を踏み入れて何をしている。我がここまで接近されて気づかないとは考えられん。貴様は一体何者だ?」


 巨狼が何か言っているけどこっちはそれどころじゃない。


 目が覚めることで先ほどからの威圧感がさらに増大し、大きな口や手足から見える牙や爪は触れただけで引き裂かれてしまうのが分かる。


 受け答え一つで生か死が決まってしまうため、簡単に答えることが出来ない。というか巨狼のこちらを射抜くような鋭い眼差しを見つめていると人間の本能的な恐怖が刺激されるのか、先ほどから言葉が声として口から出ない。



 先ほどから俺が口をパクパクさせているのを不思議に思ったのか、巨狼は怪訝な表情でこちらを窺っている。


「どうした。なぜ答えない?」



 怪訝な表情をした巨狼はその考えに納得がいったのか、先ほどから感じていた威圧感は最初から存在しないみたいに消えた。


「ふぅむ――人間とは不便なものだな。この程度の気当たりにも耐えられないとは……これで大丈夫だろう。我の質問に答えるがよい」



 こちらに身を乗り出し、大きな口が開く。このまま食べられてしまうんじゃないかと錯覚してしまうが、先ほどの威圧感がないだけでも大分楽になった。


 目の前の巨狼にはなるべく失礼を感じさせないように丁寧な口調で答えよう。



「自分でもわからないです。気づいたらここにいました」

「気づいたらここにいただと? 貴様が近づいてくる気配は全く感じなかったぞ。矮小なる者よ。ここに来るまでの経緯を詳しく話してみるがいい」



 信じてもらえるかわからないけどここに来るまでの経緯を巨狼に話した。



 ◇◇◇



「では貴様はこの世界の人間ではなく、地球という場所から来た別世界の人間というわけだな」

「はい。そうです」

「にわかには信じがたい。……しかし貴様からはこれまで出会った人間たちとは少し違った匂いがする。よかろう。貴様の話を信じてやる」

「ありがとうございます!!」


 よかった……信じてもらえないと思っていたからこれで殺されずにすむかもしれない。


「それにしても興味深いものだ。地球という場所は……可能ならもっと話を聞きたいと思う。だが、いつまでもこの場所に人を置いておくわけにはいかぬな。矮小なる者よ! 貴様は我が縄張りに入った。ここから生かして返すわけにはいかぬ」



 天国から地獄に突き落とされたような絶望感が俺を襲う。


「ちょっと待ってください。俺に敵対する意思はありません」

「貴様には気の毒だがそれは関係ない。しかし、貴様は別世界の人間。この世界の人間なら有無を言わさず殺してしまうのだが……そうだな。我に何か貢物を捧げよ。それで生きてこの場から離れることを許そう」



 どうやら生命の危機は去ったようだ。だが、貢物と言っても俺の持ち物は携帯に財布、それに吉●家で買った牛丼ぐらいしかないぞ。


 携帯はもしかすると興味を持ってくれるかもしれないが、リスクが高すぎるので却下。

 財布は論外。こんな安物を欲しいわけがない。巨狼からすればただの布きれだから却下。

 最後に牛丼だけど……いけるか? 俺の世界からしたら安物だとわかるけど巨狼からしたら未知の食べ物。絶対に興味を持ってくれる。いける!! これしかない。

 


「わかりました。それでは俺の世界の食べ物を捧げます」


 そう言って俺は右手に持っている牛丼の入った袋を前に突き出す。


「ほう。さっきから我の鼻を刺激しているその香ばしい食べ物のことか? まぁいいだろう。我も気になっていたところだ。その食べ物を我の傍に持ってくるがいい」


 巨狼は興味を持ったのか先ほどよりも声のトーンが高い気がする。よかった。貢物が気に入ったようで尻尾をゆっくりと左右に振るって体を起こす。



 俺は巨狼に言われるまま近づき、袋から牛丼を取り出して地面に置く。その際に蓋を取り外しておくことは忘れない。


 巨狼は鼻を近づけて匂いを嗅いでいる。どうやらお気に召したようで、表情に嫌悪などの感情は感じられない。


「量が少ないのは仕方ない。いいだろう貴様を殺さないでやる。我の気が変わらないうちにここから立ち去るがよい」

 


 巨狼に言われて急いでここから立ち去ろうと周りを見渡してみる。ここは森の木々がない場所になっているらしく、半径50メートルは何もない平地になっていた。



 ちょうど森と狼との距離が中間に差し迫ったとき、気になって後ろを振り返る。すると巨狼は前足を器用に使って牛丼を食べようとしていた。


 俺は巨狼が牛丼を食べて気が変わらないうちにこの場から立ち去ろうと歩く速さを上げた。


 ちょうど木々のない場所から森へと差し迫ったときだった。

 後ろからとてつもなく大きな悲鳴が聞こえ、何者かの断末魔の苦しみが辺りに響き渡ったのを聞こえたのは。


 俺はまさかという思いを頭の中で浮かべながら後ろを振り返ると巨狼が致死量の血を吐いて倒れていた。

巨狼の苦しみは続いており、地面を転げまわりながら呻いている。やがて力尽きたのかその大きな体を横にして、動きを完全に止めてしまった。


 一体何が起きたのだろう? あまりの突然の事態に頭がついてこない。


 巨狼は直前に牛丼を食べていた。その後、血を吐いて倒れる。


 もしかして俺が捧げた牛丼のせいか!? 


で、でも牛丼を食べたからといって血を吐いて倒れるとは考えられない。原因は何だ? 牛丼の中にある玉ねぎか? 確かに玉ねぎは中毒症状を引き起こす可能性がある聞いたことがある。だけどそれは犬の話だ。間違っても異世界の狼が血を吐いて倒れる食べ物ではない。



 いつまでも立ち尽くしているわけにもいかずこのまま立ち去るか、それとも巨狼の様子を確かめに行くか悩んだ挙句、結局確かめることにした。


 恐る恐る近づいてみる。巨狼の息はまだあるみたいだ。でもすでに一歩も動けないらしく、こちらを睨みつけるだけで精一杯らしい。ただ巨狼の目にはそれ以上近づけば喉笛を食い破ってやるぞという意思が宿っており、自然と足が止まった。



 よく見ると巨狼がいる場所周辺は凄惨な状況だった。

 巨狼の口周りや周辺の土には吐いた血で紅く染まり、周囲には濃い鉄分の臭いが漂っている。それにところどころ地面の形状が変わって深く抉れていた。



「貴様……油断させておいて我を毒物で殺すとは人間らしい汚いやり方だ。何の力もない人間だと思って侮ったわ。貴様の名は……? どんな方法とはいえ我を殺した相手の名前は知っておきたい」

神威(かむい) 狼我(ろうが)。神威が苗字で狼我が名前です」

「ロウガ・カムイか――ではロウガよ。ここから少し奥に進んだところに洞窟がある。洞窟の中にある財宝は我が長い時をかけて集めたものだ。他にも我に挑んで敗れた者たちの所持品等が放置されてある。貴様の好きにするといい。では……さらばだ」



 それだけを言うと巨狼は息絶えたのか目を閉じて動かなくなった。



 動かなくなった巨狼を前にして、俺は本当に死んでいるのか確かめるため、近づこうと一歩踏み出したとき、全身を引き裂くような痛みが襲う。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」



 痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!



 俺は自分の肉体がバラバラになる感覚に耐え切れず、地面に両膝をつき、自然と体を丸めて痛みに耐える姿勢を取る。


 体中の至るところから汗が噴出し、全身が燃えるように熱く、内側から膨大なエネルギー、いや力が外へ出てくのを抑えるのに必死だった。

 

 肉体が壊れて、再構成されるのがわかった。

 

 筋肉が千切れて、骨が砕けて、神経が磨り潰される。


 しばらくの間、壊され、再生される感覚が続く。


 自分が生まれ変わっていくのがわかる。



 永遠に続くと思われた感覚もやがておさまり、痛みが消えて、違う人間にいや人とは違う生命体になったと思えるほどに力があふれて、体中を駆け巡っている。


 今までとは違う感覚に少し戸惑いを覚えながらも巨狼の死体に近づく。


 体はとてつもない脱力感に襲われているが、動けないほどじゃない。自身の体を叱咤しながら巨狼の死体に手を触れる。


 すると巨狼の死体が突如強烈な光を発する。それは目も開けられぬほどの光であり、目を瞑ってさえ、まぶたの裏に焼きつく。

 

巨狼の死体が光ってから何秒経ったのかはわからない。しかし、やがて光も収まり、目を開くと巨狼の死体があった場所に一振りの剣が地面に突き刺さっていた。



 その剣の刀身自体はシンプルな両刃の剣だが、柄の部分の意匠には翼と牙が合わさったような複雑な形をしており、おそらくこの剣は完成されている。これは全ての鍛冶師の理想だ。全ての鍛冶師がこの剣を作りたいために剣を打ち、現実を突きつけられ、挫折または繰り返し剣を打つ。そんな剣が今、俺の目の前にある。



 巨狼の死体から生み出された剣は、その場に存在しているだけで見る者を魅了させるような不思議な魔力を放っていた。それに剣に纏わりつく聖なるオーラで呪いや魔など浄化できるそんな感じがする。

 


 フェンリルの剣(仮)に触れて、手に持ってみる。

すると昔から持っていたのではないかという強い既視感に襲われた。そんなはずはないのにこの感覚を味わってしまったらもうこの剣以外を使用するのは考えられないほどだ。



 とりあえずこれからどうしよう? と考えていたとき巨狼が言っていたことを思い出した。



「確かこの先に洞窟があってそこに財宝が眠っていると言っていたよな? それを見てから行動しても遅くはない」



 異世界に来てしまった俺はあまり深いことは考えずに洞窟に向けて歩き出す。

 このときの俺はまさかあんな未来が待ち受けるとは思いもよらなかった。

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