鋼と影
オストライト王国、バールバリラ大陸西方に位置し建国986年を誇る大陸最古の王国である。
その首都ぺネベアは中心に王城が建ち、円を囲むように貴族達の住む上級市民区になっている。
さらに大きく円を描くように商人や官僚、騎士たちなどの住む中級市民区。
平民の家や商店などが立ち並ぶ下級市民区。
教会や孤児院が立ち並ぶ教会区などがある。
中心に建つタリスリア城。
周りを深い堀に囲まれ2本の尖塔と中心に一際高い尖塔が建つ白亜の王城。
かつん、かつん、かつん、と白大理石で作られた廊下を一人の男が歩いている。
ハリアス・アーキリスア・オストライト、オストライト国王その人である。
向かう先は第二王妃が療養している部屋。
そこには第二王妃、ミシア・ペンシェシス・オストライト。
そして第二王子アーサー・ペンフェルト・オストライトがいた。
コンコンとノックをして入ってくるハリアス。
「失礼するよ?気分はどうだい?ミシア」
「陛下・・・今日はとても調子がいいですわ」
第二王妃であるミシアは長い間病を患っていた、原因はいまだ分からず年々体が弱っていく。
「そうか・・・さて、今日はアーサー、お前に話があってね。」
「はい、何でしょうかお父様。」
「うん少し外で話そうか、ミシア、ゆっくりと休むんだよ?」
夫と子供自分の一番大切な二人が部屋から出て行く時、なぜかミシアは不吉な予感がするのを止められなかった。
テラスに向かう廊下を歩きながらハリスはアーサーに話しかける。
「アーサー、お前も今年で16になる、わが国のしきたりでお前はあの儀式をしなければならない。」
「はい、必ずや勤めを果たして見せます。」
「いや・・・私お前にあの儀式をさせるつもりは無いんだよ。」
「え?それはどういうことでしょうか。」
「アーサーお前は正規冒険者試験を受け、それに見事合格し王族として証を立てなければいけない。」
「私が・・・ですか?」
「そう・・だ、お前は今からグレーを連れてパスコットに行きなさい。」
「いっ今からですか?」
「早くいくんだ!!」
突然ハリスが大声を上げる、振り向いた目は血走り今にも襲い掛かかってきそうだ。
「お父様っ」
「いいかアーサー絶対に試験お合格するまで帰ってきてはならんぞ!」
そういってハリスは歩きさっていく。
正規冒険者試験を王族が実際に受けることなんて今は形骸化した伝統だ。
それをいきなり受けて合格せよという。
あの優しい父が声を張り上げ厳命したのだ、合格せねば私はここに戻ってこれないだろう。
アーサーはわけも分からずただ呆然と立ち尽くすだけだった。
お父様に絶対の忠誠を誓う騎士グレー・マッショア。
近衛騎士のクロック・トランデ、女騎士のアレーシア・デライト。
この3人を共にパスコットに滞在してすでに20日が過ぎた。
明日はとうとう試験開始日。
受験者の情報を集めた報告書を、暇つぶしとして流し読みしていたら気になる人物がいた。
ジン・マツナガ16age気になるといっても単に歳が近いというだけ。
詳しく読むと他にも同じ歳近くの3人でPTを組んでいるなど書いていた・・・
同じ歳ごろの少年少女が死ぬかもしれない試験を受ける・・・話をしてみたいな。
初めてグレーの言いつけを破り一人で外に出る。
ただ当ても無く歩くだけ、もしかしたら偶然会うかもしれないそうなったらいいなという気まぐれ。
「アーサー様ーどちらにいらっしゃいますかー」
クロックの声だ私を探している。
見つかってもかまわないのについ早足で逃げてしまう。
そして角を曲がったところに彼がいた、ジン・マツナガ。
「そこの平民」
声をかけてしまった。
彼はどんな反応をしてくれるのだろうと期待していたら。
なんと無視されてしまった。
先ほどばっちりと目があった、こちらの声が聞こえてないはずが無い。
「・・・っそこの平民」
今度はさっきよりも大きな声で呼んだ。
しかしまたも無視して何処かへ行こうとしている。
「~~~~~っ」
そこに私を見つけ近ずいてきていたクロックが彼に怒声を放つ。
「おい貴様この方を誰だと思っている、オストライト王国第二王子にして第二王位継承者、アーサー・ペンフェルト・オストライト様にあらされるぞ」
あまり王家の名前を使いたくはないがここまで無視されるのなら仕方ない。
「それで?」
「「なっ」」
馬鹿な、王家の名前を出されそれに反抗するのは国に反抗するのに等しいのだぞ!
「平民よ、お前も冒険者試験をうけるのだな?」
それでも私はなぜかこの者と話をしたい。
「ん?ああ平民よばわりはむかつくが確かに俺も参加者だぜ?」
「なっなら平民も私と一緒に来ることを許す、付いて来い」
私は馬鹿かっ先ほど平民呼ばわりがだめだといわれたばかりなのに・・・
「断る」
「貴様!」
だめだクロック、今のは私が悪かったのだ。
だが声がでない、今の私は王族という立場にすがりつきたいのだ、帰るためにも。
いきなり彼が右方向に向く、そこには、オストライト王国上級騎士であるグレー・マッショアがいた。
「なかなか鋭いな・・・少年こちらの連れが少々失礼をした様だ、私が変わりに詫びようすまなかった」
「グレー!」
「グレー様!!」
私のせいでグレーの名前に傷をつけてしまった!
こちらを睨み付けて私とクロックを黙らせる。
「いや、俺も少し大人気なかった、あんたが頭を下げる必要はねーよ。」
「そうか、すまなかったな、試験ではライバルになるだろうがお互い合格するために力をつくそう。」
そういって私とクロックを促しやどの方に移動する。
「いいですか?アーサー様、王族には王族の貴族には貴族の誇りがあるように、人には誰にでも譲れぬ物があります、特に彼のような意思の強い人間は王侯貴族だというだけでは認めたりわし無いでしょう。」
「でわ、どうすればいいのだ。」
「彼のような人間に認められる何かを成さなければいけないでしょう、それは簡単なことではありません、ゆっくりでもいいのですまずは明日から始まる試験を合格することを考えましょう。」
「そうだな・・・分かった、いきなり宿を抜け出して心配をかけた、すまない。」
そうだ、まずは明日からの試験を合格する、そして堂々と王城に帰るのだ。
「まずはパスコットの森を踏破しなければ行かんな、クロック、お前は先行し道を確保しろ、アレーシアはそのままアーサー様のそばを離れるな!」
「「了解」」
うん、グレーさえいればこんな試験なんてなんでもない。
お父様に一番信頼されているグレーをつけて貰えたのだ、あの時きっと私がなにか至らなかっただけ。
試験を合格したらお父様にお詫びいたそう。
異変は2時間ほど移動したときに起きた。
先行して道を確保してるはずのクロックが木にもたれ掛かり動こうとしていない。
「アレーシア周囲の警戒!」
グレーが指示を出した瞬間いくつもの銀閃が走る!
「アーサー様!」
グレーが私を庇う、ギンギンギンと金属と金属がぶつかり合ったような音が響く!
アレーシアが崩れ落ちる、どうなったのかが分からない。
ただ攻撃をうけて最低でも動けなくなってしまったのわ分かる。
素早くグレーが立ち、私を起こしてくれる。
その時何も無い場所から人が現れた。
180cmほどの長身にほっそりとした体型。
顔にピエロのようなメイクを施し、金色の髪を上に立たせ。
全身を黒く染めた上下衣を着込み、銀色に光る短剣を両手に持ちくるくると回し遊んでいる。
「あはぁ~、こんにちは王子様、わたくしこのたび王子様のお命を貰い受けに参上致しましたイズィーと申します、貴方様のお命を貰い受ける短い間ですがよろしくお願いいたします。」
そういって暗殺者はねっとりとした目を私に向けてくる。
「それを私が許すとでも思っているのか、シャドウーウォーカー、イズィー!」
「あははぁ~君の事しってるよ?金剛の騎士グレー・マッショアだよね?」
(アーサー様奴は私が仕留めます、アーサー様はこの場を離れてテグロス山脈えとおいきください)
(ばかなグレーを置いて私だけ逃げるなんてできない)
(イズィーのタレントは暗殺に特化した物です、残念ですが奴相手にアーサー様を守りきる事は難しい、ここは私にまかせ、おいきください!)
(分かった、そのかわり絶対に戻ってきてくれ)
「ん~~お話わ終わったかな?大丈夫王子様は逃げるのならまだ狙わないよ?僕はおいしい物は最後にとっておくんだ~」
「ふんっその余裕・・・後悔するぞ?」
グレーがイズィーに襲い掛かる隙に私は走り出す。
地図とコンパスは持っている、だから一人でもたどり着ける。
だけど一人で走る森がここまで不気味だなんて、無我夢中になって走る。
その時前方に人影が3つ見えた、あれはジン・マツナガ。
なぜか私は彼に惹きつけられる、まだ一度しか会っていないのに。
「そこのもの達止まってくれ」
3人がこちらを見ジン・マツナガ以外の2人が驚愕した顔をしている。
ああこれが普通の反応なんだなとこんな時なのに思い心の中でつい笑ってしまった。
「そこの3人頼みがある、私をテグロス山脈まで連れて行ってくれ!」
「寝言は寝てから言いやがれちび。」
「「「んなっ」」」
間髪いれずに彼は私の頼みごとを断った、悪口付きで・・・
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「時間になりましたー、皆さんスタートしてくださーい。」
リップちゃんのスタートの合図で67名の人間が一斉に走り出す。
「さて、私達も急いでいこうか~」
「・・・うん・・・」
「よっし、絶対合格するぜ!」
「うわー気合はいってるねー。」
「そりゃーな、目の前であんなもん見せられたら張り切るしか無いだろ?最低でも試験を合格してガンガン修行して、いざタレントマスターだぜ!」
そして俺達は森の中を走り出した。
先頭はミア、罠の発見&解除にかなり自身があるらしい。
なら任せるに限る、俺とバルアは周囲の警戒。
モンスターや受験者がいつ襲ってくるか分からないからな。
途中試験官が仕掛けたと思われる罠(ギルドマークが付いていた)をミアが発見解除しつつ、3時間ほど森を移動してると後方から近ずいてくる気配にきがついた。
「後ろから誰かが近ずいてくる。」
俺は2人に注意を促し近ずいてくる物を静かに待つ。
ん?あれはもしかしてこのまえあったイケメンちびじゃねーか?
またなにかちょっかいかけに来たのか、めんどくせー。
ミアとバルアは近ずいてくる人間が誰か分かると息を呑んだ。
ちびは苦しそうに息を整え俺達にむかって口を開いた。
「そこの3人頼みがある、私をテグロス山脈まで連れて行ってくれ!」
この前よりはまだましなたのみかただな、だが断る。
「寝言は寝てからいいやがれちび。」
「「「んなっ」」」
(ちょっとっなんてこといってんのー王族なのよ?恩を売るチャンスでしょうー)
(・・・ジン、あの人王族、後が怖い・・・)
まぁ2人の言いたいことも分かる、だけどだ。
「あの強そうな人はどうしたんだ?」
「そっそれは、グレーは私を逃がすために暗殺者と戦っている」
「お前は部下だけ残して一人で逃げてきたのかよっ。」
「~~~私だって逃げたくなかった!でも、私がいたら足手まといになるんだ!」
うっこれは予想外の反応だ、ミアとバルアのじと~とした目が痛い。
「だけどな、俺らも試験中なんだ、流石に足手まといを連れて行くほど余裕はねーぜ?」
ぬぅぅ、つい言ってしまったけどこれは流石に酷いか?2人のじと目が突き刺さる。
何を思ったのかいきなり土下座しやがった、というか土下座があるのか?
「たのむ、いやおねがいします、私はどうしてもこの試験を合格しなければいけないんだ!」
ミアが素早くちびの手を取り起き上がらせる。
「顔を上げてください王子様っ、この分からず屋には私があとで言って(拳で)聞かせますから、私達と一緒にいきましょう!」
「ほっ本当にいいのか?私が一緒でも。」
ミアとバルアが俺をじと~と見てくる。
「わかったよ、俺が悪かった。」
「あっありがとう。」
うっこいつ笑うと可愛いじゃねーか・・・はっ、こいつは男こいつは男こいつは男こいつは男。
ぶつぶつ言い出したをれをよそにミア達が自己紹介をする。
「私はミア・ユースクッド、ミアと及びください、こちらはバルア・ユースクッド・」
「・・・バルアと呼んでください・・・」
「私はアーサー・ペンフェルト・オストライト、アーサーと呼んで欲しい、それと敬語はいらない。その、同年代のものと接するのはこれが初めてなんだ、だからよろしく頼む。」
「わかりました、いえわかったわ、よろしくねアーサー。」
「・・・よろしくアーサー・・・」
「ほらージンいつまでぶつぶついってるの?あなたもあいさつしなくちゃね。」
「ん?ああ、ジン・マツナガだ、よろしくなおちび」
「んなっ、私の名前はアーサーだっ」
「あと5cm身長がのびたらアーサーって呼んでやるよ、さーて、少し時間くっちまったしいそごうぜ3人とも。」
「んーそだねー少しいそぎますかー」
俺達はアーサーをいれて4人で森を走り出した、目指すはテグロス山脈だ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
銀の刃がグレーを襲う、目を首を心臓をあらゆる急所という急所を銀の刃が襲う。
しかしグレーは微動だにしない、ギンギンギンギンギンと刃をはじいて行く。
グレー・マッショア、金剛の騎士、タレントの名前は【鋼の忠誠】ハリアス国王に絶対の忠誠誓いその生き様はタレントとして現れる。
グレーがハリス国王に忠誠を誓う限り、彼の肉体と手にした物は鋼のような硬さを手に入れる。
「どうした?イズィーお前の武器は私に傷一つつけることは出来ていないぞ?
「あはぁ~噂に違わぬ硬さだね~んふふふふふ」
「こんどはこちらから行かせて貰うぞ?」
グレーは腰に巻いた皮のベルトを抜く。
ぐるぐる巻きにしてあったベルトは長さ3mにもなる。
そこにグレーのタレントが発動する、長さ3mの鋼よりも固く、革の軽さをもつ武器になる。
「ぬああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
グレーが剣を振るうたびに木が真っ二つになっていく。
硬い体に鋭い刃、これが上級騎士たるグレーの実力。
しかし、それでもイズィーを捕らえきれない。
イズィーのタレント【影に潜む物】それはシャドウ・ウォーカーの二つ名の元となった能力。
影のある場所ならば影から影えと移動することが出来る。
これにイズィーの暗殺者としての高い能力が彼を化け物へと昇華する。
影から影えと渡り一度に8つの斬撃を繰り出す。
しかしグレーに傷をつけるどころか衣服を切り裂くことすら出来ない。
グレーがタレントで強化したベルト製の剣を振る。
しかし、イズィーの驚異的な反射神経とタレントでグレーの攻撃が届かない。
一方イズィーの攻撃もグレーに対して脅威にならない。
お互い有効な攻撃が出来ず時間だけが進んでいく。
「ちぃ、このままではきりが無いな、しかし奴を捕らえる術も無い、ここは奴を足止めすることをよしとするしかないのか・・・」
「あはぁはぁ~そろそろ始めて30分はたつね~ほんとにしぶといな~、でも、そろそろ効いてきたみたいだね~?」
「?なにおいっている。」
「あはぁ~さっきから僕は一生懸命きみの風上に行くように行くように頑張ったんだよ~?」
まさか!
「ぬぅ体が」
「や~ときいたね~、この痺れ薬は魔法を併用した特注品中の特注品の粉で、見えにくくて匂わない優れものなのに全部なくなっちゃった。」
くったしかに体がしびれて動かない。
だが私の【鋼の忠誠】は意識をなくしても常時発動することが出来る。
発動中の私にやつの攻撃は効かん、体の痺れさえとれれば。
「くふふ、くふふふふふ、ねぇ~すぐそこに川の流れる音がきこえな~い?」
こいつっまさかっ!
全身を振り絞って動こうとするが体がしびれていてゆうことを効かない。
「ふんふんふん~僕の【影に潜む物】は影から影え移動するだけじゃないんだよ?力が弱くてたいしたことには使えないんだけど、こうやって君の体を運ぶことぐらいならできるんだ~」
影から黒い靄のような物が出てきて体を運び出していく、行く着く先は川。
「ん~冒険者カードみっけ~Lv92か~やっぱり君強いね~、Lv92の君が動けるようになるまであと10分ぐらいかな~、それまで息が続けば助かるよ?それじゃぁ、僕をたのしませてね?」
ドッパーン
イズィーはもがき苦しむグレーを楽しそうに眺め、そして笑い出す。
「うふふふふふふ、あははははははははは、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
文章力をあげるにいはどうしたらいいのかどなたか教えてもらえるとうれしいです・w・
ご感想お待ちしております>w<ノ