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蠍1

いきなり現れて、コントみたいなことを始めたエルフ忍者?が


「ピンチに颯爽と訪れるワイ・・・くぅぅぅ格好いいやんけ!」


なんて口に出して言い始める。

間抜けであっても決して格好よくはない。

しかも口に出してるし・・・なんだこの生物は、これがエルフなのか!

余りにも酷い、俺のなかでエルフという生き物は、神秘な生き物でなくナマモノに変わった瞬間だった。


「よしっ!そこのにーちゃんワイが手伝ったる、大船に乗ったつもりで任せとき!」


いきなり現れてそんな事を言い始める。

任せる気はないが、危険もなさそうだ。


「ちっ、訳がわからんがとりあえず無視だ!アシェリーは風魔法で、スズハはアシェリーの護衛!」


「分かった!」「しょっ承知!」


俺の言葉に2人が返事をし、其れにつられポカーンとしていたチンピラたちも正気に戻る。


「おいっそこのナマモノ、俺の邪魔だけはするんじゃねーぞ!」


「誰がナマモノや!そっちこそ下手うつんやないで!」


そして乱闘が始まった!


松永神明流二の構え瞬!


俺は素早く目の前にいる敵の手首の腱を斬る!

ぎゃっと悲鳴を上げた敵を蹴飛ばし、その影に隠れるように移動する。

右にいた敵の方に向きを変え一気に距離を詰め、腕を斬り飛ばす!

身体能力ではLv差で此方が不利だが、俺の動きに奴らはついてこれてない!



「ほっ、やっ、とりゃっ!」


エセ忍者エルフも負けていない。

素早い動きでかく乱し、敵の囲みを崩す。

時には手裏剣を投げ、時には懐にもぐりこみ短刀を振る。


「ハッ!」


スズハも2人の敵相手に遅れを取っていない。

倒すまでは行かないが、きちんとアシェリーを守っている。


そして魔法が完成する!


『その風は荒荒しく、全ての物を拒絶する、吹きすさぶは嵐の烈風!』


【ウインドブラスト】


アシェリーが放った風の塊は、チンピラどもだけを狙い撃ち打ち倒す!


「なんだこいつらっ、こっちは15人居たんだぞ!」


「はんったった15人なんぞワイの敵やあらへんは!」


お前がいばるなナマモノ。


「さてと、後はお前一人だぜ、どうする?」


顔面を蒼白にして後退さる。

にがさねーよ!

一気に飛び込み叩き斬る!




「ふぅ、こんなもんか」


「ジンお疲れ様」「お疲れ様です師匠!」


「ああっ2人ともお疲れ、あと師匠ってもう確定なんだな、まあいい」


さて、後は他の誰かに任せて一度神殿に戻るか、俺たちはそのまま立ち去ろうとする。


「ちょいまちちょいまち、何か忘れてないですかー?ワイヤワイ、ワイのこと忘れてるで!」


「ん?ああ、まだ居たのかナマモノ」


「居たのかちゃうわ!しかもナマモノって何でやねん!何処から出てきたんや!」


なんというか、すごく鬱陶しい・・・


「そうか、まあきにするな、じゃな」ひらひらと手を振る。


「だからちょいまちぃぃぃぃ、何も礼をしろっていう気はないんや!ちょっと話きいてくれればええねん」


「ジン、話ぐらい聞いても。助けに来てくれたんだし」


「おぉ、ええこと言ってくれた、さすが別嬪さんはちがうなーどこぞの三白眼とはちがう!」


「喧嘩売ってるなら帰るぞ!」


「ああ、すまんすまん、直ぐに本題にはいるから怒らんといて。ただ場所だけ移動しよか」


遠巻きにじろじろと見られる、確かにここで話なんて悠長なことは出来ないな。


「それなら太陽神殿に一度帰るか、そこなら多少は落ち着いて話せる」


「おおー太陽神殿の信者やったんか、そら都合ええは、よっしゃ直ぐにいこか」


俺たちはこの場を後にして、ナマモノを加えて太陽神殿に戻る事にした。






「それで?話ってのは?」


俺たちは太陽神殿に戻りロランの話しを聴くことにした。

ロラン・リスタート、それがエセ忍者エルフの名前だ。

東方大陸の神秘、忍者に憧れてちんどん屋みたいな格好をしてるらしい。

ロランが特殊なだけで、ほかのエルフは違うみたいだ。少しホットした。


「ジンたちは蠍に狙われてるみたいやないか、あいつらはしつこい上に数が多い。今のままやとなんどでも襲撃される」


ふむ・・・ちらりとスズハを見る。


「ロランさんの言うとおりです、蠍の構成員は500を超えると聞いています」


かなり多いんだな。


「そこでやっ、そんな数一々相手にしてられへん。かといってこの都市は特殊すぎて治安維持の組織があらへんねん」


「?それでよく治安がたもてるのね」


アシェリーの言う事ももっともだ。それじゃ犯罪者やアウトローが好き放題しそうだが。


「そこは何か被害があった信者の宗教関係の神殿騎士団や、冒険者ギルドに依頼が入ったりして解決してんねん」


「犯罪者達を野放しにしていれば次はわが身ですから、被害が出れば其れ相応の対応をしています」


ロランやスズハの言葉をまとめると犯罪を犯せば神殿騎士や冒険者ギルドが敵に回るという事か。

この都市でそうなったら致命的だな。


「なら、なぜ蠍なんてほったらかしにされてるんだ?いくら500名もいるとはいえ神殿側やギルドが本気になればすぐに叩き潰せるだろう?」


俺の言葉に、ロランがわが意を得たとばかりに意気込む。


「問題はそこや、神殿もギルドも本気にならへんねん、というか本気になられへんねや」


「どういう意味だ?」


「まずは神殿側やな、この都市にあるんやから他の宗教と基本いざこざはおかさへん、けれど別に仲がいいって訳でもないんや」


「そう・・・ですね、信者はともかく神殿関係者は殆どが挨拶はするがそれだけって関係だと思います」


「そや、だから仲良くお手手つないで蠍潰しましょってならんのや」


「例外は太陽神殿のウサ耳族の方達ぐらいでしょうか。彼らは誰にも仲良くして、しかもみなさん可愛らしいのでとても人気が高いんです」


ロランの説明にスズハが補足してくれるおかげで、神殿関係はどうなっているか大体のとこは分かった。


「それじゃギルドは?」


「そっちは簡単や、500もの集団を退治する為の資金なんて、誰もださへんかだせないんや」


「なるほどな・・・見も蓋も無いな」


「世の中そんなもんや」


「それじゃー蠍のことは襲ってくる相手をそのつど追い返すしかないの?」


「ちゃうちゃうアシェリーはん、ワイが言いたいのは蠍の数は多いけど、其れを纏めれるのはボスのラウギス・ラウガしかおらんってことや」


なるほどな、つまりロランはそいつをどうにかして倒したい、だから俺たちにこんな話をしてるんだな。


「俺たちは今後うっとおしく付きまとわれなくはなる、ならロラン、お前になんのメリットがあるんだ?」


「・・・実はワイの妹があいつらに浚われたんや・・・」


「「「!」」」


「それは、すまん」


「なんや、気にしてんのか?まだ大丈夫や、ワイとセリアは魔法具でお互いの無事は確認できる。それにエルフは高く売れるらしいからな、乱暴なことはされとらんやろ」


さっきまでのお調子者な顔がなりを潜め、沈痛なな表情になる。


「それにセリアはまだ10歳や、人間の10歳と見た目も変わらん、蠍のボスは普通の感性しとるらしいし、性的な暴力もうけとらん」


そうか、それは心配だろう・・・


「ほんまはセリアを助けたくてジン達に近づいてん」


そうかそれでいきなりあんな登場をしたのか。


「蠍どもと戦う理由があって腕の立つ人間、ワイはそんな奴を探してたんや」


俺はアシェリーとスズハを見る、2人とも同じ気持ちのようだ。

ならば俺が迷う必要は無い!


「ロラン、俺もて・・・・・」


「話は聞きました!!今までの悪事ですら許しがたき蠍の一味!しかも幼いエルフの少女を誘拐するなんて、アトゥラム様が許されても私が地獄へ叩き落します!」


いきなりリッツさんが割り込んできた、鼻息が荒いぞ!

はっ・・・ロランの妹は見た目10歳、エルフの幼女=可愛い。


「ロランさん!太陽神殿はセリアちゃん救出作戦を全力でお手伝いしますわ!」


「ほっほんまでっか、ジン達が太陽神殿の関係者だと知った時はもしかしたらおもったけど、有難うございます、これでセリアを助けれる希望がもてます!」


「いえ、困った方がいれば助けるのは当たり前の事です、さっ顔をおあげになって」


「しっ師匠、さすが太陽神殿の神官さまですね!私感動しました!」


ロランやスズハはリッツさんの申し出に、さすが太陽神殿神官様と感動しているが。

俺とアシェリーはじっとりとした目でリッツさんをみるのであった。

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