初めての出会い
ズドドドドドドドドド
『ヴモオオォォォォォォォォォォォ』
今俺はモンスターに追われていた、やつの名前はロックボア体長4mほどの岩の外皮をもつ猪だ。
なぜ追いかけられているか?簡単だ俺はこいつの上に落っこちてきたからさ。糞爺ぃ今度あったらあの長い髭を全部引きちぎってやる!
「ちくしょーしつこ過ぎる・・・もう2時間は走り回ってるぞ!」
流石にそろそろ体力の限界だ、息が上がり全身汗まみれ、パンツまでびしょびしょだぞ、替えがないのに最悪すぎる。
神さま?に白い空間に拉致されたまま、着の身着のままもらったものは剣一本。上は筒袖の半着に、下は普段着にもできるように裾をゴムにしてだぼっとさせた水干袴、靴はなく裸足だ。
前方に大きさ5メートルはありそうな岩が見える。
ぎりぎりまで引き付け横っ飛びに避けた!
ズドオオオォォォォォォンという大音量とともにロックボアが動きを止める。
「やったか?」
『ブモオオオオオオォォォォォォォッ』
だめだ怒らせただけのようだ、くそっ覚悟を決めるか。
俺は鞘から剣を抜き正眼に構える。狙うはやつの左前足、岩のような皮膚が覆っていない膝関節の骨と骨の隙間、俺の世界にいた猪と同じ構造ならやれる...
松永神明流一の構え豪!
【すべてはその一撃に賭ける、太刀を握れば一太刀で切り伏せ、槍を持たば一突きで貫く】
【ただ全てを一撃の威力に変え、つま先から頭の先まで全てを力を通す一個の武器と化せ】
奴が動く、後ろ足を数度蹴り上げ加速し突っ込んでくる。
俺は剣を左斜め後ろに大きく引き絞る。一閃、気づけば俺は4~5mほど吹っ飛んでいた、地面に叩きつけられる。
「ぐはっ・・・」背中を打ち息ができない、奴はどうなった?
『プギィィィィィィィ』ドォォォォォォン。
4メートルほどの巨体が崩れ落ちる。奴の左前足は俺よりもさらに後方に吹っ飛んでいた、賭けに勝ったようだ。
「よっしゃぁぁぁぁっ・・・がはっげほっげほっ」
くそー何とかなったのはいいが体中がいてー、さっさと止めをさして休みたい。
俺がロックボアに止めを刺そうと動いた時にきずいた、囲まれている!
8匹ほどのハイエナのような獣にいつの間にか囲まれていた、やべー・・・
『グルルルルルル・・・』
唸り声を上げて包囲を狭めてくる。
人の獲物を横取りするなんざまんまハイエナだな。
俺は剣を構え呼気を整える。
こんなとこで諦める気はない。
ハイエナどもが俺に飛び掛ろうとしたその時、上空に大きな影が映った、だんだん大きくなってくるぞ!
咄嗟に上を見上げてしまった普通なら致命的なミスだ。
だがそんな考えは上を見上げた瞬間吹き飛んだ!
「ドラ・・・ゴン・・・だと?」
そこにはこの世界の頂点にいると言ってもいい存在が居た。
のっぺりとしたトカゲのような顔短い手、足はまるで猛禽類のような足をしていた、太く長い尻尾に背中には大きな翼が羽ばたいている、鱗は真っ赤だ。
もしかして初めにあったあのドラゴンか?寝そべっていた時とはまた違う迫力がある。
『GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA』
ドラゴンがロックボアめがけて落ちてくる。
ドグシャッという音とともにロックボアの断末魔が響いた。
どうやらお目当ては猪肉らしい、俺やハイエナどもは見向きもされない。
今だとばかりに逃げていくハイエナども、俺も奴らを見習って逃げることにする。
いつか必ず戻ってくるそれまで首を洗って待っていやがれ!捨て台詞を頭の中で叫びながらこの場を離れることにした。
俺が境界を越えて初めて土を踏んだ地は見渡す限りの大草原だった。
右を向いても左を向いてもどこまでも続く草原にふときずいた・・・俺・・・どこに行けばいいの?
くそっ普通村や町が最初のスタート地点になるんじゃないのか?
せめて街道の見える場所とか。
途方にくれていてもどうにもならない、太陽が昇る方角が東だったか?
この世界がそうなのかわからないがとりあえず太陽に向かって歩くことにした。
しばらく歩いていると水の音が聞こえる。
その方向へ走っていくと川がみえた。
「助かった、もう喉がカラカラだ。」
俺は頭から川に突っ込み水を飲む。
何かが猛スピードで向かってくる!
「うおっ!」
俺は咄嗟に避けるが頬を掠った。
先のとがった銛のような頭をした魚が襲ってくる。
上等だ焼き魚にしてくれる!
次々に襲ってくる【トビアブラヒガイLv3】を叩き落とす。
半分ほど叩き落す事が出来たこれで食料ゲットだ。
そうそう、何故俺が見たことも無い生き物の名前やLvが分かるのか、おそらくだが神さまから貰った剣と魂が繋がってるからじゃないかと思っている。
ただ見ただけでは分からなく、どうやら一度でもいいから触らなければいけないようだ。
ちなみにロックボアはLv62だ・・・よく生きてたもんだ。
燃やすための木切れや火を起こすのに丁度よさそうな木を探すことにした。
そして分かったことは一つ、ここはモンスターの群生地だということだ。
川にそって下流に下りていくと2mほどの枯れ木が見つかった。
枯れ木でもないよりましと、枝を折りにちかずいた瞬間枯れ木が襲い掛かってきた。
こいつは枯れ木なんかじゃない【ウッドマンティスLv28】枯れ木に見えたのは蟷螂の擬態だ!
その他にも【ストーカーウルフLv20】【キリサキスズメLv28】【レッドベアLv50】などLvにばらつきはあるがどいつもこいつも好戦的で見つかれば即襲ってきやがる。
数が多い、俺は逃げる事しか出来なかった。
「だめだ体が持たない。」
この地に降り立ってから2日経とうとしているが、いまだに草原の終わりが見えない。
何時襲い掛かってくるか分からないモンスターを、警戒してまともな睡眠が取れず。
火を起こすことができなく魚を生で食べたことで腹痛を起こした。
見通しの立たない移動で神経が磨り減っていく。
駄目だこのままでは行き倒れてしまう。
俺はこんなとこで死ぬために、異世界に渡ったんじゃ無いと自分に言い聞かせ進んでいると、何処かから話し声のような叫び声のような物が聞こえてきた。
モンスターたちの唸り声なんかじゃない、人だ人がいるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!
「馬鹿ほんと馬鹿、幻覚蝶をまともに見ちゃ駄目だってあれほど言ったのにぃぃぃぃ」
「...あう...ごめん...」
いたっ人だ!どうやらストーカーウルフの集団に囲まれているみたいだ。
いかんあいつらが死んでしまったら俺も助からない!!
俺はストーカーウルフどもにきずかれないよう、気配を出来るだけ消し背後に近ずいて行く。
草原の草は背が高く屈んで近ずけばほとんどばれない。
あと5mまで近づいた、ここからなら一息で剣が届く。
「助太刀するぞ!」
俺は飛び出し後ろからストーカーウルフを斬る。
一匹目を中段から斬り落とし、斬り返しで2匹目を斬る!残り6匹。
いきなり飛び出した俺に驚いたようだが、すぐに状況を把握しストーカーウルフに反撃する2人組。
見る限り2匹程度なら問題なさそうだ、俺の分担はあと2匹一気に決める。
松永神明流二の構え瞬!
古流武術では珍しい摺足ではなく左右にステップを踏む、上下左右に剣先を動かし素早く動き切り刻む。
ストーカーウルフの後ろ足に力がこもる・・・来る!
左のウルフが先に飛び掛り時間差をおいて右のウルフが飛び掛ってくる。
ステップを左に刻み目の前の無防備な首筋に一撃!まずは一匹。
右のウルフが振り返る、5mほどの距離を一歩で縮め片手突き。
口内を突き破り首筋から剣が突き出る。
二人のほうを見てみるとこちらも片がつきそうだ。
よかったこれで助かるうぅぅぅぅ、うぐっまた腹が・・・
「いや~助かったよ!あのままだったら確実にやられてたね!危ないところで助太刀が来るこれも日ごろの行いがいいからだよね~。あ、私の名前はミア、ミア・ユースクッド、こっちの無口なのがバルア・ユースクッド、これでも冒険者見習いさ、よろしくね」
「俺は陣、ジン・マツナガだよろしくな。」
なんていうか元気のいい奴だなー。
髪は栗色のボブカット、目はパッチリとしていてこちらも栗色の瞳をしている。
顔立ちは綺麗より可愛い、ニコニコ笑っていて愛嬌溢れる少女だ。
服は冒険者らしい頑丈で乾きやすそうな布の服とズボン、革の胸当てに革の小手とブーツ。
黄色と茶色の縞々なマフラーをしていて背には短弓、腰にはショートソードを下げている。
「・・・助かった・・・ありがとう・・・」
こちらはずいぶんと無口だ。
愛想が悪いというより恥ずかしがりや?なのかもしれない。
髪は黒く短く刈り込んでいて、瞳の色も黒く何処か犬めいた雰囲気をかもしだしている。
こちらも服は頑丈で乾きやすい布の服とズボン、レザースーツに鉄で覆った革の小手に革のブーツ、腰には2本のハンドアックスをぶら下げている。
「でさジンもやっぱり幻覚蝶を捕獲しにきたの?モンスターの平均Lv40のメレーゲ草原にしか生息してない幻覚蝶の捕獲だなんてきついよね。遠い上に運が悪いとロックボアなんて高Lvのモンスターに襲われるし?」
会ったよロックボアどころか火竜にも、よく生きてたな俺・・・
「幻覚蝶とか試験とかってなに?実は俺迷子になっててさここが何処かも分かってないんだ・・・」
「へ?」
どうやらおかしな事を言ってしまったらしい。
「えーとここメレーゲ草原だよ?オストライト王国の最西端にある草原・・・どうやったら迷ってここに来るの?」
さてどうやって説明すればいいのだろう。
最初から全部正直に話す?頭がおかしいとしか思えない。
神さまのことを言わなければ話にならないし、信じてもらえるとは思わない、どうするか。
俺が悩んでいるとバルアが助け舟を出してくれた。
「・・・ジン恩人・・・」
そういってミアの肩に手を置いて首を左右に振る。
「ん~そだね、誰にもいえないことがあるし、ジンって目つきは悪いけど悪人にはみえないしねー」
うっせー
「何時までもここで立ち話もなんだし、少し歩いたとこでキャンプをするのに丁度いい場所があるからそこで休憩しない?」
俺は一も二もなくうなずいた。
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