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プロローグ

カン、カン、カン、木と木の打ち合う音が響く。

『松永神明流・古流剣術道場』

正面に神座を設け、額縁に墨書きで道場訓を飾っている。

道場主と思われる、少し白髪の混じった初老の男の前で2人の門下生が木剣を激しく打ち合っていた。

一人は30代半ば、170cmほどの引き締まった体躯を気合とともに激しく木剣を打ちおろしている。

もう一人は年の頃18前後か、手入れを怠ったぼさぼさの髪に、非常に目つきの悪い三白眼、整った顔立ちをしているだけにもったいない雰囲気をかもし出している。

身長は180cmほどの、こちらも引き締まった体躯をしている。

相手の剣戟を受け流し、時には切り返し相対する。

少年の名は松永陣。道場主の息子であり、松永神明流・古流剣術免許皆伝の腕をもつ剣の天才である。







あぁくそだりー毎日毎日同じ事させやがって、刺激がないんだよなー。八代さんも腕は立つんだがこぉ緊張感てのがね、何か面白い事が起こらないかなー、血沸き肉踊るような何かが。


≪ほぅ・・・なんと強い魂をしておる・・・時間もあまりない、こやつを連れて行くか≫


「誰だ!!」


≪わしの存在を知覚するか・・・思った以上の逸材よの...≫


くそっ、なんだ?いきなり何処かから声が聞こえてくる。まるで頭の中に直接響くような、とうとう俺の頭がおかしくなっちまったか?


≪来るがよい強き魂を持つ少年よ。小さき希望の灯火よ≫


目の前に光が広がり音が消え、視界が光で塗りつぶされる。

そして、俺は何もない真っ白な空間に立っていた。





≪ようこそ少年ここは境界の狭間、異世界への入り口じゃ≫


「異世界だぁ?」


目の前に厳しい杖をついた貧相な爺さんが立っていた。

どうやら目の前の爺さんが犯人らしい。

普通なら爺さんの頭を心配するとこだが、今俺は道場ではなく真っ白な変な場所に立っている。

少なくても目の前の爺さんが何かした事だけはたしかだ。


≪そうじゃ、お主にとっては異世界への入り口。そしてわしが神として見守っている世界エファリースじゃ≫


神か神ときたぞ、くははははははは。


「ふざけてんじゃねぇぇぇぇぇぇっ!どんな手品を使ったかしらねーがさっさと元の場所にもどしやがれ!」


≪おぬしはそれでよいのか?何の刺激もなくお主と渡り合える物のもいない。そのまま腐っていくことをお主は恐れていたのではないか?≫


「...っ!」


≪境界をわたり、異世界にいけばお主の求めていた生と死の狭間、そこでしか手に入らぬ生きているという充足感を得られるとしても?≫


...そうだ、俺は飢えている生きているという感覚に。代わり映えのない毎日平和な日常このままいけば、俺は飢えに犯され気が触れるかすべてをあきらめ腐っていくだろう。


小さな時から親父に山を走らされていた。

鍛錬と称して血反吐を吐くほど木剣で叩きつけられていた。

才能があったのだろう、俺は瞬く間に腕を上げ16になったときは親父を超えていた。

それで調子にのって周りに暴力を振りまいたわけでもない、だがきずけば俺の周りにはだれもいなかった。

ただ強い人はそれだけで恐怖しそして疎む。中には憧れをもって接してくる奴もいたが、対等に付き合える奴はひとりも居なかった。

俺は一人だった、俺は欲しかった俺と渡り合える奴が、俺は欲しかったすべてを出し尽くして焼き焦がれるような奴を。


「神さん...でいいのか?あんたが言ったことどうやって証明してくれるんだ?」


≪ふむ、論より証拠じゃなまずは逝ってくるがよい≫


また目の前が光に塗りつぶされる、またどこかに連れて行かれるみたいだ。上等だこうなりゃ毒を食わらば皿までだ。






今俺は広い洞窟らしい場所に立っている、東京ドームが丸々入るぐらい広いかもしれない。

天井は大穴が開いていて太陽の光が差し込み。洞窟の奥には、金銀財宝といっても過分ではない宝の山が色鮮やかに光っているのが見える。

しかし、今はそんなもん関係ねー、目の前にでっかいトカゲがいる・・・

体長は10mは超えてそうだ。

のっぺりとしたトカゲ独特の顔、手は短く足は猛禽類のような形をしている、太く長い尻尾に背には大きな翼、全身は真っ赤な鱗に包まれている。


あ、目があった・・・でっかいトカゲはいきなり現れた俺のことを不思議そうにみている・・・ように見える。


動けない、蛇ににらまれた蛙ってこんな感じなんだな、奴と俺では生物としての格がちがいすぎる。

息ができない、脂汗がとまらない、俺はここで死ぬ。


でっかいトカ...いやもういい認めるこいつはあれだドラゴンだ本物の!

真っ赤なドラゴンが動く、口をあけ今にもなにかを吐こうとしているブレスってやつかな?

そこで俺はまた光に包まれた。


≪どうじゃ?信じる気にはなったかの?≫


「ふっ」


≪ふっ?≫


「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!あんなもんに勝てるかぁぁぁぁぁぁ!!」


確かに俺は強い奴と戦いたい、すべてを出し切りたいと思ったさ。

だけどあれはだめだ、勝てる勝てない以前の問題だ。走っている10tトラックに剣振り回しながら「きぇぇぇぇぇぇっ」て叫んでつっこみ吹っ飛ばされるようなもんじゃねぇかっ!


≪まぁいまのままでは勝つ可能性はゼロじゃな。しかしエファリースの世界でなら先ほどのドラゴンですら、鍛錬しだいで人間でも勝てるといったらどうするかの?≫


勝てる?あの存在に?人間がドラゴンに勝てるだと?


「本気でいってるのか?」


≪本気じゃよ?何故なら世界にはルールがあるからじゃけっして覆す事のでないルールがの≫


「ルールだと?」


≪そうじゃ、お主の世界に物理法則が万有引力の法則があるように≫


さっきのドラゴンを見た後だからわかるこの爺さんも格が違う、格が違いすぎてわからなかっただけだ。


≪エファリースの世界にもけっして覆せぬルールがある≫


本当に神様なのかもしれない、だったらもしかしたらあのドラゴンにすら俺は勝てるようになるのかもしれない。


「万有引力の法則ってなんだ?」


≪・・・≫


「・・・」


いやぁ参ったな、はっはっはっはっはっはっ。






≪まぁよいわい、ごほん、エファリースの世界にはLvという物が存在しとる。お主の世界ではゲームなぞによく使われておる概念じゃな≫


≪エファリースでは魔物や魔獣、人や動物それに順ずる物を殺したときに、死体から出てくる目には見えない光の粒子をあびて力に変え、一定の量を取り組むことによってLvがあがるのじゃ≫


≪Lvが上がる毎にその者の特性にそって力や体力、器用さや素早さなど身体的な部分が成長していくんじゃ≫


≪そしてLvがある一定の水準を越えたとき、その者は生物としてのランクが一つ上がるのじゃよ≫


「つまりLvを上げまくってランクを上げていけばドラゴンにすら勝てるようになると?」


≪そのとおりじゃ、まぁ流石にドラゴンに勝とうと思ったらかなりのLvにならんといかんがの~≫


「誰かドラゴンに勝ったっていう人間はいるのか?」


≪もちろんおるとも≫


おおっいるのか、いったいどんな奴が倒したんだろうか。


「ならおれもガンガンLvを上げればいいんだな?」


≪ああ残念じゃがお主はそのままではLvはいっこも上がらん≫


は?なんですと?


≪お主は別の世界の住人じゃからのエファリースのルールはほぼ適用されん≫


「ふざけんなああああああああああああここまで引っ張てLvあがりませんですむかああああああああ」


俺は糞爺の襟をつかんで頭を上下にシェイクする、シンデシマエ。


≪まっまて、その代わりにお主に専用の剣を作っておる≫


「俺専用の剣だと?」


≪そうじゃ、その剣はお主にかわり光の粒子を取り込み成長していく剣なのじゃ≫


「それで?」


≪剣とお主は魂で繋がっておる、わしがそう作った。剣のLvが上がれば使い手であるお主に付加価値が付く、力や体力など身体的な物が上がるのじゃ≫


≪そして剣にもランクが存在しておる、剣のランクがあがれば使い手であるお主もランクが上がるという寸法じゃ≫


なるほどその剣のLvがあがればエファリースの人間でない俺でもLvやランクがあがることと同列ということか、なっとくした。


≪そして最後にじゃ、お主と剣が成長するにしたがってタレントを身に付けるじゃろう≫


「タレント?テレビでてくる?」


≪いやいやタレント(才能)の方じゃ、これはお主だけのお主の魂から出てくるものじゃ真に強くなりたいのじゃったらタレントを鍛え上げるのじゃ≫


≪さて、そろそろ時間がなくなってきたのぅ、最後に松永陣に聞く。すべてを捨てエファリースに渡る覚悟がお主にあるか?今から一歩前に進む事を選べばもう戻ることはできん、これが最後の選択じゃ≫






そして俺松永陣は、一本の剣だけを手に境界をわたった。










≪ふぅ...最後にとても小さく儚いが希望の灯火は残した...そろそろ結界がやぶれるかの≫


ビシッ  ビシビシッ バキバキバキバキバキ

無理やり壁を引き裂くような音が空間を走る、白い空間がひび割れ壊れる。


    パキン


《こんな場所におられたのですなアトゥラム様》


≪来たかアギセウス・・・≫


《貴方ももうお疲れでしょう、後は私どもが引き継ぎますどうか安らかにお眠りください》


≪ただではやられはせんよ・・・≫




今エファリースは破滅へと歩みだす。















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