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貴方  作者: 華泥棒
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第1話

目が覚めると 貴方は寝息をたてていた。


「・・・おはよう」


寝たままの貴方に言う。


貴方は起きない。


起き上がって服を着る。


顔をあらって 髪をとかして 歯を磨いて・・・


かばんを持って玄関へ向かうと後ろから声がした。


「・・・加奈?どこ行くんだ?」


貴方の声に振り返る。


いつ目を覚ましたのか知らないけど 貴方はじっと私の顔を見る。


「今日、仕事入ったって昨日言ったでしょ?」


「・・・そうだったっけ?」


「・・・確かに言った」


「じゃあ聞いてなかった」


「じゃあ、行くから」




貴方はいつもそう


私のことはどうでもいいんでしょう。


だから私の話をいつも聞いてないのよ


上の空


だから 確認しても『そうだっけ?』『いつ話したの?』『知らない』『聞いてない』


そればっかり


もう うんざり。


私のことはどうでもよくて


私じゃなくてもよくて


あぁ だったら私はなんのために貴方のそばにいるんだろう?




「・・・ただいま」


帰ると貴方はテレビを見てる。


「あーおかえり!」


「ねぇ 頼んでたたまねぎ 買ってきてくれた?」


「え?頼まれたっけ?」


ホラ やっぱり。


「・・・ねぇ いつもさ私の話ちゃんと聞いてくれてる?」


「んー?聞いてるよ?」


「・・・絶対上の空だよね」


「何言ってんだよ 今日機嫌悪ィな?」


誰のせいだと・・・




なんのためにこの人のそばにいるんだっけ?


私の話は聞いてくれない ていうことは私の興味ない 無関心 上の空


一緒にいるとイライラする 自分勝手


なんで私この人の こんな人のそばにいるんだっけ?


甘い台詞を吐きあって 同棲して どちらも結婚を切り出さないままもう6年近く


何してるんだろう 私・・・


6年の間 言い寄ってきたいい人なんていらはずなのに


何でこの人を選んでたんだろう?


もう 意味ないか・・・




「ねぇ 修一」


「んー?」


「私達 別れない?」


返事はない


「ねぇ 聞いてるの?」


「聞いてるよ」


それでも私のほうは見ないで テレビを見てる。


「・・・別れてほしいの」


左手の指輪をはずす。


そこには赤い跡。


愛の跡


「なんでさ」


「なんでって 自分の胸に聞いてみて?」


指輪を貴方の手に握らせる。


「おい ちょっと待てよ!!」


やっと私のほうを向く。


「離れていく時だけはこっち向くんだね」


軽く嫌味を吐き捨てる。


財布 携帯 通帳 印鑑等


必要なものを会社のかばんに詰めていく。


「おい 待てよ・・・なんなんだよ急に」


貴方が止めても 聞かない


だって 今まで私の話をスルーし続けたんだもん 今度は私がしたっていいでしょう?


「んじゃ さよなら!」


私はそういうと家を出た。


今までずっと ほとんどを私が払ってきたこの部屋の家賃


自給800円のバイトをしてるだけの貴方に どうやってこれから払っていく?


私の大切さを知ればいい!!


知って謝ってきても もう許さない!!




もう 忘れよう


そう思ってるのに・・・


「・・・加奈さん?加奈さん?」


「えっ あっごめん!」


同僚の井上さんが心配そうに私を見る。


「デート中にボーッとするなんて ひどいね」


「ごっごめんなさい・・・」


「他の男のこと考えてたりして?」


「え・・・アハハッそんなわけないじゃない〜」


図星だった


ずっと ずっと 毎日考えてる 貴方のこと


ちゃんとご飯食べてる?


ちゃんと朝起きてるの?


洗濯とかできてるの?


お金とか・・・ちゃんとできてる?


「最近会社でもミス多いし・・・どうしたの?相談にのるよ?」


「ぅ ううん なんでもないよ?」


彼氏 の前で他の男 しかも元彼氏の相談なんてできるわけないじゃない・・・


「まったく 心配だなぁ・・・」


「え・・・えへへ・・・」


心配


私ばっかり心配してて 貴方はきっと私を心配していない


今も これまでも


「じゃあ また明日」


「うん 明日ね」


キスをして 別れて


あの人が見えなくなるまで待って 大きくため息をつく。


会いたい 会いたい 会いたい


話をしたい


声が聞きたいの


顔が見たいの


抱きしめて欲しいの




それを満たしてくれる人ならいるのに


貴方にしてほしい





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