声
「世之介さんは、どうですかな? どこにも怪我は、ありませぬか?」
皴枯れた、老人の声が聞こえてくる。光右衛門の声だ。光右衛門の質問に、格乃進の応える声が聞こえてくる。
「ええ。幸いなことに、多少の擦り傷はあるようですが、それ以上の怪我はないようです。まあ、無事でなによりです」
光右衛門の溜息が聞こえた。
「いったい、何事があったのですかな? 突然、怖ろしいほどの音が聞こえたと思ったら、格さん助さんの二人が消えてしまって、壁には大穴が空いて、外の駐車場に世之介さんが倒れていた、とこういうわけです。実際、肝を冷やしましたぞ」
助三郎の声が聞こえた。
「世之介さんが突然、人が変わったようになって、わたしどもに攻撃してきたのです。しかも、賽博格のわたしどもと同じくらいの攻撃力で……。止むを得ないこととはいえ、加速状態になって戦う羽目になってしまいました。あの場合、そうでもしなければ、世之介さんを止めることは全然できなかったでしょう」
光右衛門の口調に、疑念が滲む。
「信じられませんな。世之介さんは、ただの人間でしょう。なぜ、あなたがた賽博格と互角に戦えるのです。やはり、あの学生服に原因があるのですかな?」