対応
助三郎と格乃進が、店の壁に穿たれた大穴から飛び出すと、世之介も追いかけ、跳躍する。
穴は、店の二階部分に空けられた。二人の賽博格は空中に飛び出すと、回転して足先から着地する。
世之介は壁を蹴って加速し、前転して【集会所】前の駐車場に降り立った。
賽博格たちは目配せしあった。
格乃進がずい、と前に出ると、世之介の動きを止めるために両腕を横に広げた。
つつ──、と助三郎が世之介の背後に回りこむ。無論、二人とも通常の人間の数倍から、数百倍もの速度で動き回る、加速状態にあった。
普通の相手なら、充分に対応できる。が、世之介は助三郎の動きを目で追い、格乃進にも気を配って身構えている。
格乃進の眉が顰められた。
──どういうことだ? 世之介さんが俺たちと同じ賽博格であるはずがない! なのに、俺の動きを見切っているぞ。
──あの真っ赤な学生服が、鍵を握っているに違いない! 世之介さんの身体の熱分布を見ると、以前と違った模様が現れている。
格乃進の口調に、決意がこもった。
──ひと当て、してみよう……。危険ではあるが、しかたない!
格乃進の言葉に、世之介は身構えた。明らかに自分たちの高速言語が世之介によって聞き取られていることを知り、格乃進の顔に真剣な表情が浮かんでいた。
軽く跳躍した格乃進は、空中で素早く前蹴りを繰り出し、世之介に殺到した。
世之介は僅かに仰け反り、格乃進の第一撃をすれすれで躱す。