会話
「どうした、助三郎。物凄い音が聞こえたが。何かあったのか?」
助三郎の背後から格乃進が現れる。
格乃進は、助三郎と対峙する世之介を認め、立ち竦んだ。
「あんた、世之介さん……だろうな?」
ガクランの襟が世之介の顔を半ば覆っているため、一瞬、誰か判らなかったのだろう。助三郎は世之介を見詰めたまま、答えた。
「ああ、間違いなく世之介さんだ。だが、気をつけろ! 今の世之介さんは、普通じゃない!」
「何?」
尋ねかける格乃進に、世之介は猛然と突進した。一跳びで、格乃進に体当たりを食らわす。
爆発音に似た衝撃音が響き渡り、格乃進の身体は十間近く吹っ飛んだ。背後の壁にぶち当たると、格乃進の身体は壁に大きな罅割れを作ってめり込む。
格乃進は、ばらばらと壁の破片を飛び散らかせながら立ち上がる。格乃進の顔には呆然とした驚きが浮かんでいた。
助三郎は、さっと身構えた。
──格乃進! 加速しろっ!
助三郎は圧縮言語で格乃進に話し掛ける。賽博格同士が戦闘の間に使用する、高速言語である。
数分の一秒という一瞬の間に、言葉を圧縮して会話する。当然、超音波で、普通の人間には聞き取れない賽博格専用の会話方法である。