変身
袴を脱ぎ、ガクランのズボンに足を入れる。上着はそのままに、袖を通した。
無意識に上着の釦を嵌めようと手が動いたが、ぴたりと止まった。何だか、このガクランで、釦をきちんと留めるのは似合わない――という判断が働いたのだ。
暫く、じっとしている。
轟きのように、ガクランの意思が世之介の脳裏に染み渡ってくる感覚に耐えた。
ガクランは世之介の潜在意識、体力、反応速度などあらゆる側面を調査している様子だった。そろそろとガクランの見えない触手が世之介の全てを探り回り、やがて何らかの結論に達したようであった。
「!」
いきなりの衝撃が世之介の全身を貫いた。まるで電流のように、世之介は自分が変化していることを悟っていた。
今、自分は別の何かに造りかえられている!
恐怖はあったが、それは同時に甘美な感覚でもあった。世之介は叫んでいた。
「あああああああああ──!」
筋肉が、骨格が、血管が変化していた。世之介の神経細胞が、あらたな配置に繋ぎ直されている。
世之介の血液が、細胞一つ一つが、新たな相に変わっていく。世之介の叫びは、赤ん坊の産声のようであった。
「世之介さん! どうしたの!」
茜が叫んでいる。