伝説
「〝伝説のバンチョウ〟について、何かお聞きになっていますか?」
店員は世之介の目の前の通路を、積み上がった商品の間をすり抜けながら歩いていく。
世之介、茜、イッパチの順で迷路のような店内をぞろぞろと連れ立って歩いた。店員は何度か角を曲がったところで、前述の台詞を口にしたのだった。
「〝伝説のバンチョウ〟?」
世之介が呟くと、茜が勢い込んで口を開いた。
「あたし、知っている! この番長星で最初に【バンチョウ】の称号を得た人よ!」
「そうです」と店員は、ちらりと世之介を振り返ると、一瞬、意味ありげな笑いを浮かべた。
「〝伝説のバンチョウ〟は番長星を統合したあと、ある言葉を残しました……」
「それって……」
店員の言葉に、茜の声が高くなる。
世之介は段々、不安が高まった。いったい、この店員は何を言わんとしているのか?
世之介を時折ちらちら振り返る女店員の両目は、きらきらと輝き、唇を舐め回す舌先の動きが激しくなってくる。
とうとう女店員はくるりと振り向き、後ろ足になりながら、両手を高く差し上げる。
「〝伝説のバンチョウ〟は、こう言い残しました。『いつか、天空から番長星を救いに、真の【バンチョウ】がやってくる!』と」
ぴたり、と女店員の足取りが止まる。差し上げた両手を今度は世之介に向けた。手の指が内側に曲がり、猛禽類の爪のように何かを掴むようにしている。
「いま〝伝説のバンチョウ〟が予言した人が現れたのです! そう! あなたです!」