表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウラバン!~SF好色一代男~  作者: 万卜人
世之介の旅支度
77/236

言葉

「わたくし、地球からまいりました、但馬世之介と申す者で御座います。今日は茜さんの紹介で、二輪車を求めることになりましたので、どうぞ宜しくお願いいたします」


 店主はパクリと口を開け、仰け反るような姿勢になった。


「ひゃあ! よっくもスラスラと、くっちゃべるもんだっぺ! おりゃ、一っ言も判んねえだべっちゃ!」

 なぜか店主は、茜とはガラリと口調を変えて話し出した。まるでわざと田舎臭い口調を意識しているようだった。

 しきりと「だっぺ」だとか「だっちゃ」などを連発する。破裂音の多い言葉は聞き取りにくく、店主の顔には「どうだ、判らないだろう」とでも言いたそうな表情が浮かんでいる。


 茜とさっき喋っていたときは、銀河標準語である現代日本語に近い言葉つきだったのだが、世之介が話し掛けた瞬間、がらりと豹変したのだ。

 店主は、世之介の言葉は充分に理解できるし、喋れるのだが、それが何だか自分の恥であると固く思い込んでいると見える。


 茜は肩を竦めた。


「叔父さん! この世之介さんは【バンチョウ】なのよ! そんな喋り方じゃ、失礼じゃない?」

「【バンチョウ】!」

 店主は、さらに頓狂な声を上げた。

 さっと赤らんだ顔が青ざめ、ぶるぶると全身が震えだす。

 ぺたりと地面に座り込み、世之介の顔を見上げ身を捩るようにして声を上げた。


「す、すみません! 知らないこととはいえ、申し訳ねえ! どうぞ、ご勘弁を!」


 世之介は往生した。まったくこの星の人間は、どうなっているのだ! 店主は両手をべったりと地面につけ、土下座の態勢である。

「お手をお上げ下さい。わたくし、妙な成り行きで【バンチョウ】などと言われておりますが、ともかく二輪車を求めたいだけの話しですから」


「へえ?」


 店主の顔色がもとに戻った。ひょい、と顔を上げると、さっさと立ち上がる。あっという間の変わり身に、世之介は少々呆れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ